第3話 舞台裏
紅月、神様、ゼウス様。以上の三名の視点による補足回です。
すみません、今回長いです……。
◆紅月視点の裏話◆
死者の河原、西日本霊脈集合地点に紅月は降り立つ。
霊脈は三途の川に繋がっており、死者の魂は霊脈に引き込まれて死者の河原に辿り着く。
大抵この河原に着くまで意識はなく、そのため死者にとってはいつの間にかここに移動していたと云う状況になる。
さて、目当ての人物はそろそろ河原に着く頃だ。霊脈に流されている間、魂は霊脈に守られ安全なはず。だから出てきた所を保護すればいい。
人間とその他の生物では霊脈から吐き出される位置が違うそうだが、人間が吐き出される位置の見当はついている。確かこの猫の岩の辺りだったはずだ。かつて自分がこの辺りで霊脈から吐き出されたのだから。
紅月はしっかり覚えていた為に自信満々であった。
だがしかし。
「……あら?」
どうやら時代と共に多少ルートが変わってしまったらしい。紅月が生きた7世紀と現在の21世紀、霊脈のルートが変わってもおかしくない年月である。
二百メートル程離れた場所で死者の魂たちがポイポイ吐き出されるのを目撃し、思い込みは危険である事を紅月は思い知った。
「まぁ、間に合いますよね」
急いで移動をしたのだが、すでに結構な数の死者が辺りをうろうろしていたのであった。
「こんな事なら戦闘力を測るあのアイテム、借りて来れば良かったですね……」
目当ての人物が見つからない。40代後半の中年女だ。現世での姿も資料で見てしっかり記憶している。しかし該当者が見当たらないので、いっそ全ての死者の戦闘力を測って……と考えてしまったのである。
「あのアヒルなら故障エフェクトが発生するに違いない。飛び抜けて高い戦闘力保持者発見、測定不能だと!? くっ……やってみたい」
そうぼやきながらも探すのは止めない。年寄り、男、子供……中年の女いた! でも別人だった、ハズレ!
焦りを覚えた時、宙に浮いている野球もしくはテニスのボールサイズの丸い発光体が目に入った。伝わってくる魔力は力強いのに、眩しさはそれほどでもない不思議な光を放っている。
何となくそれがあのアヒルであり、目当ての人物であるとわかった。
「ああ、見つけました。光っているので助かりましたよ」
ひょいっと持ち上げると、その中にもう一つの魂を感じた。どうやら創造神の魂を回収する任務は大成功したようだ。
しかし聞いていたアヒルの性格より随分と大人しい印象だと紅月は思った。あの神様にキックをかました程の気の強さの持ち主がこうも丸くなるとは。
「私、死んだ?」
呆然と呟いたその様子は ”人間として生きて丸くなった説“ を更に後押しした。
混乱している事を考慮しても、穏やかな気質の持ち主のようだ。これは付き合い易い、ラッキー! と紅月は心の中で小躍りしていた。
今は口に出す事は出来ないが、自分と息子はこれから彼女と創造神の信頼を得なければならないのだ。何せ先代であるアイツのせいで……うぬぬぐぬぅ、奴を見つけたら絶対ボコる!
紅月は決意を新たにした。
「お花畑ないけど?」
まだ記憶は戻らないらしい。状況的にも信頼関係を築いていくチャンスだ。
親切丁寧を心掛け、紅月は真緑の疑問に答えていった。
やがて彼女の姿が変わり出した。よりにもよってあの世ペットショップで見て以来、飼おっかな? どうしよっかな? と迷っていた垂れ耳のうさぎの姿にだ。
ただし額にはうさぎにないパーツが付いていたが。
「鏡! 鏡はどこですかっ! 鏡がないと自分の姿は見れないですよっ!?」
叫ぶ超絶キュートな垂れ耳のうさちゃん。高めの声に敬語でありながらどこかぞんざいな言葉遣い。
ハートを射抜かれ、ツボを直撃された瞬間であった。
改めて見ると額の宝石が見事な品である。最高級の何かだと思うが、エメラルドではないしヒスイでもない。しかし宝石商や欲深い人間が見たら狩りに来るに違いないのは確かだ。
自ら撃退可能であろうが、露払いを買って出れば心証も良くなるのではないだろうか。そしてご褒美にモフモフさせて貰えたり!?
よし、自分のペットアピールで守り抜こう!
紅月は勝手に決めてしまった。
こうして紅月は真緑をペット扱いするようになったのだが、相手への説明を省い……忘れた為に、うさフィーバーから我に返り冷静になった彼女に呆れた目で見られ、せっかくの友達認定が残念な方に修正されてしまうのだった。
◆神様視点◆
紅月に施した細工のおかげで、神様は三途の川を渡る前の真緑の様子をバッチリ見ることが出来た。
どうやら無事に創造神の魂を回収出来たようだ。そして真緑自身も神を目指せる程の力を持つ魂へと成長を遂げていた。
そのあたりは予想していたが、垂れ耳うさぎの姿になるとは思わなかった。しかも額に宝石が付くなんて、アヒルじゃなくて更に前の姿になるなんて……!
あれ、でもアイツあのうさちゃんの事知ってたっけ? 知っていても大した事ないって認識なんじゃないか?
ちょっと慌てたものの、神様はすぐに平静を取り戻したのだった。
「カーバンクルって今どんな姿だったかな」
幻獣エリアを覗く為に、今ある映像の横にその場所を映し出す。
カーバンクルたちは穴の中に居た。そして穴の奥で地下帝国を築いていた。
「前見た時より広くなって立派になってるね……」
こうなってしまった理由は神様にも心当たりがある。それぞれ元いた世界での仕打ちが原因だ。
皆もれなく額の宝石が最高品質な上に滅多にない大きさな為、欲深い者たちに狙われ、襲われるのが日常だった。
それ故に保護区に放り込まれた後、結託して身を守るようになったのだ。
しかし居並ぶ建物を見ると、どうしてもやり過ぎ感が否めない。斜め上すぎる。
「何処までやるんだろ、この子ら……」
それはさておき、カーバンクルの外見だ。
実は元々世界ごとに細かい違いがあった。宇宙が崩壊する時に片っ端から幻獣生物とか神話の神などを保護していたのだが、その時避難所はかなり大雑把な区分けをしていた。肉食、雑食、草食、大型、小型、〇〇世界の〇〇神話の関係者とか。
当時はそれで精一杯だったのだから仕方ないのだが、一部の幻獣たちが互いに影響し合って元とは少々別物になってしまう事件があちこちで起きてしまった。
その一つがカーバンクルたちである。
まず、額の宝石からのビームだが、これは保護当時たった一体しか使えなかった。しかし「カッコいい」「自分もやりたい」との声が集団内で広がりを見せ、結果全てのカーバンクルが額の宝石からビームを出すようになってしまう。
元々の共通点が “額に宝石を持つ小動物” しかなく、世界ごとに役割とか能力が違っていたのに、集団生活の中で見事にいいとこ取りでパワーアップして均質化してしまったのだ。
なお、額の宝石は皆色が異なっていたはずなのに、これまたいつの間にか赤系統に統一されていた。さすがにこの辺りの事情は把握していない。
「うーん、あの中に混じっても色違いの珍しい個体にしか見えないかもねー……」
何せ、今のカーバンクルはどう見てもうさぎっぽい生き物なのだ。尻尾もうさぎと同じ形状。(ただし、戦闘時には変形する素敵仕様だが)そして耳は長くて大きいが、日頃は後ろに倒しているだけで、垂れ耳はいない。いないのだが、ロップイヤーっぽく見せる個体もちらほらいたりする。
神様は知らない事だが、実はちょっと前にロップイヤーブームが起きた。カーバンクルたちはより愛らしさを求め、地球のうさぎに目を付けて、少しずつうさぎっぽい姿に自らの姿を変えていたのだ。
「しかしまた変わっちゃったね……」
元々の姿はげっ歯目の生物やうさぎ目の生物と様々だったのだが、今では見事にアナウサギ改良品種の姿に統一されている。
ただし色が地球上ではあり得ない、ぬいぐるみじゃない限り存在しないような色が大半を占めていたが。
「ちょっと声も拾ってみるかな……」
カーバンクルたちの声はこうだった。
『やっぱりキュルとかキュウ?』
『キュの派生系がウケが良かったよ』
『馬のお姉さんから聞いた理想のうさぎ像をまとめたよー』
『よし! 今月の定期集会のテーマが決まった』
『久々にコンテスト以外かー。あれちょっとマンネリだったんだよね』
馬のお姉さんとは、おそらくユニコーンの雌個体かな? と神様は思った。
ちょっと探索してみると、この地下帝国はユニコーンの雌たちが暮らすエリアに出入口を繋げていた。そこだけでなく、その昔カーバンクルたちを匿ってくれた幻獣たちのエリアにも出入口を作っていた。
このあたりの習性もアナウサギ寄りだから、アナウサギの姿に変化したのも必然なのかもしれないと神様は考える。
『甘え上手になる為には、甘えるって何かとゆー所からの研究が必要であるー』
『下手すると、うぜぇって言われるんだよー。難しーい』
『うーん、甘え上手な人間を観察してみたけど、そもそも人間とうさぎは違うよね……』
『そのレポート見せてー』
一体彼らは何を目指し、何処へ向かっているのだろうか。
そんな事を思いながら、神様は真緑の方に意識を向けた。そして目にしたのは、うさビームが放たれる瞬間だった。
『そ、そいつらは我らの中で最弱っ…』
ちゅどんっ
「……何かあの格好見覚えあるね。あー、ゲスコーンに騙された女たちか」
ゲスなユニコーン縮めてゲスコーン。ちょっと前はクズコーンと云う呼び方をしていたが、今は最近思い付いたゲスコーンの方を使っている。
『カーバンクルでなければ何なのよ!?』
『額に宝石の付いたうさぎっぽい小動物はカーバンクルでしょっ! 色が赤じゃないけど!』
『カーバンクルではありません、魔法うさぎです。とっとと縄につけ痴女共』
「へー、魔法うさぎか。いい響きじゃないか。あー、そういえばうさぎって猫以上に保有魔力が高い傾向にある上、魔術の適性高かったっけ。額の宝石に関しては、スタートが鉱物だったせいだろうねー。岩から始まって石ころ、アヒル、人間かー。考えてみれば中々ない転生歴だね」
「そうなのですか?」
神様の傍らに居た、三歳くらいの幼児が口を開いた。
「通常は微生物サイズから始まって、少しずつ大きく、食物連鎖の上の方へと転生を繰り返し、最終的に人間に転生するんだ。鉱物スタートの魂は下手をすると惑星が砕けるまで転生できない状態になりがちでね。そして彼女は一気にアヒルだ。これが珍しい。植物か虫あたりが魂の強さとしては適しているはずなのに、アヒルに転生できた」
「ぜんれいは、ないのですか?」
「無いね。彼女が初めての例だ。だけど、創造神の再生については大いに参考になったよ」
「どう、なさるのですか?」
「そうだねー。真緑に直接会ってから決めよう」
神様は、船が無事あの世の港に到着したのを見届けてから映像を消した。
「さあ、紅星。この間授けた技能がどれだけ身に付いたか見せて貰おうかな」
その幼児の顔立ちは美しく、どことなく紅月に似ていた。それもそのはずで、彼は紅月の息子である。
さて、神様も紅星もずっと感じている視線があった。神様がアイツ呼ばわりしていた者である。
その者の正体は神様と同格の大宇宙クラスの神で、常に創造神を敵視している危険な存在だ。
だから神様は重要な事を隠す為に当たり障りのない事を口にして誤魔化したし、紅星もそれを理解していて話を合わせていた。
これで奴に渡ったのは ”創造神の魂が回収された“ という事実のみで、真緑に関する情報は無いも同然になるはずだ。
あのアヒルとは思えない無敵アヒルが前世の人物というのは、実は秘密でも何でもない。彼女が脅威と受け取る程の強さではないのだし、多分「アヒルごとき」と見下している。
だからこそ計画を成功させるには真緑の正体はもう少し隠し続けた方がいい。
何せ奴が敵視していたのは創造神だけではない。
今の宇宙の状態になる大宇宙崩壊事件が起きたのは、奴が敵視していたもう一つの存在が自分たちの代の宇宙には居なかったからだ。
それが復活しようものなら全力で潰しにかかってくるだろう。
『わたくしが出しゃばるまでもありませんわね、ホーッホッホッホッ』
と高を括っていて、なおかつ紅星にメロメロの骨抜きポンコツ状態の今がチャンスなのだ。
絶対にこの機を逃すものか! と神様は改めて気合いを入れた。
◆その頃のゼウス様◆
その時自分はニンフちゃんたち相手にキャッキャウフフと追いかけっこをして遊んでいた。ふと何かを感じはしたものの、同時に一人のニンフちゃんの服の裾がフワリと浮き上がるのを目にしていたのでそちらに気を取られてしまったのだよ。
綺麗で可愛いオネーチャンの太ももが露になる瞬間を見逃すわけにはいかないだろう?
もちろん最高だったさ! 頭の中は目撃した太ももが占拠していて他の事は考えられなかったね!
だから奴が目の前に現れるまで気付けなかったのさ。ああ、何という間抜けだろうか……。
ついでに言い訳をさせてもらうと、ユニコーンの背に乗ったミントちゃんに驚いちゃったのよ。(本来なら ”様“ を付けて呼ぶべきなんだけど、ギリシャ神話のゼウスというキャラ設定のせいでどうしても ”ちゃん“ 付けになってしまうんだ……)
大地の女神・ミントはこの大宇宙を崩壊させた犯人とされている。
本当はもっと色々と事情かあるのだろうと思う。けど大宇宙の冥府の神がこれ以上の事を公表しないんだ。
情報が不確定な部分が多いのと、大宇宙の月の神が原因だろうね。きっと彼女の慢心を維持する為なのだろうなぁ……。
憧れの存在の一人が罪人扱いなのは心が痛むけれど、ちゃんと理由があるのだからと思い、これまで自分は静観してきた。
で、ユニコーンと共に現れたミントちゃんなんだけど……か~な~り違和感があった。
自分たち神話の神は、地球型惑星に施す細工の為の道具だ。いくつもある地球の、全ての人類の足跡と歴史が寸分違わず同じ物になるようにする為の存在なのだ。
だから我々は本当の意味での神ではない。
ミントちゃんは大宇宙の創造神が最初に手がけた十二人の大地の神の一人だ。もうね、オーラが違うの。格が違う。
それでね、ユニコーンと一緒にいたミントちゃんはね、何てゆーか……そっくりさん? な印象。
まあね、それで内心あの神様オーラは何処に? って首をひねっている間に、球体の中に閉じ込められてさらわれちゃった訳なのよ。
ああ、それで終わりじゃ無かったな。
ユニコーンがニンフちゃんたちを追いかけ始めて、ヘルメスがそのニンフちゃんたちを助けて回って、アプロディテの色ボケが「さあアタクシをさらいなさい」アピールをして「中古ビッチはいらん」と罵られて、他にも色々あって……うむ、まさしく大混乱だった!
そういえば混乱のどさくさでヘパイストスが冗談で作ったデカイ貝のベッドを盗んでいたな。
で、最後に遠くからヘラの声が聞こえてきたっけ。ああ、ヘラが無事なのが救いだよ。
そうして連れて来られて、部屋と女の子二人を与えられた。考えが変わるまでここでゆっくりしてろとさ。
うん、ねえ一体何の事?
しかし女の子たちを見て驚いた。何とミントちゃんの同期のカモミールちゃんとローズマリーちゃんだったのだ。
しかも二人共記憶と神としての力を失っていた。ずっと以前に会った事があるのだけど、まるで覚えていないようだったね。
偽の記憶を刷り込まれ「ユニコーン様に魔術の才を見込まれてここに勤めている」という事になっていた。
カモミールちゃんとローズマリーちゃんがいるという事は、他の大地の女神たちもこの空に浮かぶ城にいる可能性がある。
これは一先ず情報収集に徹した方がよさそうだ。
◇◇◇◇◇◇
「ゼウス様、お茶をどうぞ」
カモミールちゃんが紅茶とクッキーを運んで来た。
「桃の香りがするね、うんいい香りだ。……ところで、カモミールちゃんは日本人っぽい顔立ちだけど、日本人だったのかな?」
カップに砂糖を入れながら質問をしてみる。軽い探りのつもりだったのだけど、何だか彼女の様子がおかしい。ローズマリーちゃんまで固まってしまった。……あれ?
「どうしたのかね?」
「私……思い出せないんです。何歳で死んだのか、生前好きだった物は何なのかとか」
「私もです。ユニコーン様に愛される事ばかり考えていて、他の大切な思い出を捨ててしまったみたい……」
何と、早速偽の記憶にヒビを入れちゃったようだ。何てお粗末な記憶操作! ……きっと仕上げだけが雑だったんだろう。
うーむ、あのユニコーンは確かに肝心な部分を疎かにしてしまうタイプっぽくはあるが、同時に基本的に他人任せなスタイルだという印象を受けたのだが……。
ユニコーンたちの犯行に見せかける為に彼女が工作をした可能性もあるな。
ただ、犯人探しは不要だろう。それよりも目の前の女の子たちだ。
記憶に矛盾か出た事で精神状態が不安定になり、二人は泣き出してしまった。
あっ、あっ、まさかこの程度でここまで崩す事になるなんて思いもしなかったのだよ。ごめーん! 不安にさせてごめーん!
二人をまとめて抱きしめる。どうにか、どうにか安心させないとっ!
「大丈夫だ。君たちは今ここに存在している。それだけは確かだ」
言いながら、何かこことは違う景色を見せる事を思い付き、力を使って三途の川の様子を映し出した。
「これは……?」
「三途の川だ。死んだ者……人や動物をはじめ、あらゆる生き物の魂がこの川に辿り着き、冥府へと渡るのだよ。今では大型の船で人間の魂を運ぶらしいな」
色とりどりのパステルカラーの光の筋の上を大型客船が進んで行く光景に、二人は見入っていた。
ふーっ、一先ず成功のようだ。
「川に、見えないですよ……」
カモミールちゃんはクスッと笑いそう言った。
「うむ、俺もそう思う。でもちゃんと水の音はするらしいんだ」
「でも、綺麗……」
ローズマリーちゃんがうっとりと感想を口にする。
「そうね、綺麗……」
カモミールちゃんも同意してくれた。二人共涙は引っ込んだようだ。
いや良かった良かった。じゃあもっと見ていよう。
少し船を拡大しようか。乗客は皆船室だろうけど……うん? 甲板に誰かいるな。もう少し近付いて、角度も変えて……と。
ふむ……羽が生えてて、胴体だけスッポンポンの破廉恥娘が四人。……何者? 全員かなりの美人だけど、何か好みじゃないな。
「あら、あれってアンジェリカの部下ではないの?」
ローズマリーちゃんが知ってた。
え!? あの人たちここの所属なの? 何であんな恥ずかしい格好なの?
「本当。戦闘モードになっているけど、何か任務でも受けたのかしら」
カモミールちゃんから追加情報を得た。そうか、戦闘モードの格好なのか。
……せめてビキニアーマー的な物を身に着けて欲しいところだな。防御力とかツッコミの方に気を取られてしまって女の子の裸を見ても嬉しくも何ともない。何よりこんなのお色気じゃないやい!
お色気ってのはもっと夢とロマンを提供するものであってだな……そう、両隣の二人のように!
カモミールちゃんとローズマリーちゃんはJK風のミニスカ姿なんだけど、太ももが見えるだけのこの状態で十分なんだよ。
あ、見てるだけだよ。手は出さないからね。18歳以下は性の対象にしないって決めてるんだよ。そうしないとヘラに白い目で見られちゃうもん。
嫉妬は愛情の裏返しだけど、軽蔑は愛が離れる兆しだ。ヘラに見捨てられるのは嫌っ! 絶対にダメ!
だからちょっとなー、ちらっと見ただけだけとはいえここの女の子たち未成年(20歳未満)ばかりなの気になるなー。
あのユニコーンの趣味か? マジで成人女性の存在全否定? うむ、これも追々調べていこう。
「二人共、アンジェリカとは?」
「アンジェリカは戦闘部隊の一つを任されているのです」
あー! 思い出したっ!! 生真面目姫騎士ちゃんだ! ミントちゃんとこの戦いの女神のアンジェリカちゃん!
「他にも二つ。オレガノとソレルが率いる部隊があります」
お、その二人もここにいるのか。よし、この調子でもっと情報を引き出すぞ。
「へー、君たちは?」
「私もローズマリーも、部下はいません」
「彼女たちほどの数ではありませんが、マートルとマジョラムにも部下がいます」
あ、マートルちゃんとマジョラムちゃんもいるんだ。となると、ミントちゃんがよくフォローしていたバジルちゃんは……?
「そういえば、バジルは何処へ行ったのかしら? この頃見ていなかった気がするわ。カモミールはどう?」
ええー……名前が出たのはともかく言ってる事が何か不穏なんだけどー。
「私も見ていないわ。とにかく細い腰を追求していて、コルセットを持ち出したのを見たのが最後よ。あれってかなり前だわ」
そういえばちらっと見たここの女の子たちは腰細かったな。とゆーか、よく見るとこの画像に映っている四人、随分と不自然な腰のくびれをしている。
胸部の骨(主に下の方)が一部削られてるんじゃないか? 骨格の形状的にあり得ないぞ。
「細すぎじゃないかな……」
「ああ、これはですね」
思わず呟いた自分に、カモミールちゃんが解説を始めてくれた時だった。黒スーツ姿の美女が出てきて人間(女性ばかりのようだ)の塊を破廉恥娘たちの前に放り投げたのだ。
「え!?」
「ええっ!?」
二人は驚いているが、自分はそうでもなかった。あの人間を使った塊の作り方は、あの世で働く者たちにとっては基本技術だからだ。
「ほう」
あの黒スーツ姿の美女は紅月ではないか。ふむ、リュックを背負っているな。そこから薄茶色の何かが出ようとして……あ、出てきた。
「む、何だあの可愛いモフモフ生物は。カーバンクル……? いや少し違うような……」
耳が長い。見覚えがあるぞ。大きさ的には猫とかうさぎとかそのあたりの小動物だな。
「可愛いっ!」
「犬、じゃ……ない? 何あれすごく可愛い!」
そう、犬と間違えられる……うさぎ? そうそう垂れ耳のうさぎだ!
その垂れ耳のうさぎっぽい可愛いモフモフ生物は、額の宝石からビームを出し、アンジェリカの部下であるらしい破廉恥娘四人をまとめて吹っ飛ばした。
「え……? 今の、何?」
「ビーム? え? ええっ!?」
実は音声までは拾っていなかったので会話等は聞こえない。それでも何が起きているのかは理解出来る。
あの四人、まったく歯が立たないようだな。立ち上がった所に岩石が殺到し、動かなくなった。それを紅月が縛って新しい塊にしている。
あのモフモフ生物が強いのもあるが、それを考慮しても弱すぎないか……?
「ちょっと尋ねたいのだが、君たちも戦闘モードになるとあんな格好をするのかね?」
「えっと……羽が生えるだけって設定だったよね?」
「ええ。私たちは胸が小さくて見苦しいから羽だけだったわ」
カモミールちゃんがローズマリーちゃんに確認し、羽が生えるだけと判明してホッとする。
しかし「胸が小さくて見苦しい」か……。ここの連中ってどんな価値観をしているのだ。胸は小さくてもセクシーな女性って結構いるのになぁ……。
「あ、うさちゃん船の中に戻っちゃった……」
カモミールちゃんはあのモフモフ生物の事を完全にうさぎ認定してたんだね……。
「もっと見たかったわね……」
ローズマリーちゃんの残念そうな言葉に申し訳ない気持ちになった。
すまん、これ見るだけなんだ。写真を撮るとかそんな素敵機能は無いの。出来ていたらスマートで格好よかっただろうね~……くぅ、格好よく決められなくて残念、無念。
はー、しかしあのビームに込められた魔術構成はとにかく複雑だったな。もはや神レベルだったがそんな存在は……あっ!
あー、あー、あのアヒルか!
冥府の神にキックをかまして嘴でつついたと話題になった気の強いアヒルだ!
文句無しの神候補だから例の任務を与えて人間に転生させたって話だったな。呼び戻したのか、そうかそうか。
……という事はだ、ついに水面下で進めていた計画を表に出すのだな。
ふむ、そうなると自分はここで大人しく囚われている方が良いだろう。……あ、この状況って囚われのヒロイン(笑)だ。
ゼウス様は囚われのヒロイン(笑)ですが、メインヒロインは別に存在します。




