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第21話 五人組の事情


 宇宙の中に惑星が在って、その惑星に生物が居る。生物の中には更に生物にカウントしていいものか議論になりそうな細菌がわんさか居て、せっせと働いている。

 今の私は自分の体内を覗き込んでいるようなものなのだろう。生物の体内もまた一つの世界と捉えるなら、そういう事だ。そういう事だと納得しよう。


 すぐ目の前に扉があったのでそこに入る。八畳くらいの広さだ。奥にはもう一つ扉が見え、部屋の中央では五つの魂が楽しそうにお喋りをしていた。


「ん? 君らは……」


 声をかけるとワチャワチャと手のひらサイズの魂たちが私の所に寄ってきた。

 元気ではあるのだけど、皆さん一様に丸っこくなって人の姿をしているの一人もいない……。なのに見分けがつく。不思議だなぁ。


「皆さん出身は東日本側だったよね。死んでからの事、話してくれる? 今までどう過ごしてきたの?」


 さっきは聞けなかったので聞いておこう。


「えーと、白っぽくて……ちょっと灰色が入ってるよーな白さ? そんなモヤモヤしたのばかりの場所に、いつの間にか立ってたんたんだよね」


 それは死者の河原だね。そこには辿り着いてるんだ。


「そうそう。そしたら引っ張られたの。風とかは感じなかった」

「うん風は感じなかった。でもまるで風に飛ばされる葉っぱみたいにピューッて浮き上がって、それで魔方陣みたいなやつにぶつかって、気が付いたら牢屋みたいな所に転がってたんだよね」


 はー、そんな仕掛けなのね。 


「鉄格子で囲まれてたから牢屋っぽいんだけど、でも床はフカフカだったよねー」

「他にも何人かいて、その後も追加で女性ばかりが来て、一杯になっちゃったーって思ったら、入ってる牢ごと動いて別の牢の上に重ねられたのよ。その時むしろ鳥籠とかのペットを飼うケージのような物だったんだと理解したのよね」

「あー、ケージかー。それだ。で、男女別に分けられてたって知ったのもその時だったよね」


 ほうほう、一度集めた魂をまとめる施設があるのか。


「そうそう。しばらくしたら何か検査っぽいやつされた。一人ずつロッカーみたいな箱に入れられて、何か結果が出るの。そこからまた仕分けされて、街っぽい所に案内されたんだよね」


 なお、ここまで喋ってくれているのは三人だけ。残りの二人は頷くだけだった。けれど締めくくるように片方……鈴木さんだったか? その人が口を開いた。


「私たち、偶然同じマンションの同じ階にいて、仲良くなったんです」


 四人が一斉に一人を見る。生前警察官だった人だ。この人どうも月のイメージが浮かぶんだよね。


「えーと、多分あなたで良いと思うっス。これ、預かってたっス」


 手紙? それを受け取ると、その手紙はビーズで作った小物に変化した。輪っか状に編んだやつだね。


「あ、これって……もしかして」


 中央にぶら下がっているドロップ型ビーズを強めにつまむと中空にモニターが出現し、白金の髪の美女の姿が映し出された。


 ◇◇◇◇◇◇


『はじめまして。お久しぶりと言いたかったのですが、あなたは覚えていないと思うので、はじめましてにしました。私は地球の輪廻の輪です。これを受け取った時点であの世ケータイのアドレスに私が登録されたはずです。いつでも話せますが、せっかくですので今ここで色々とお話しましょう』


 この姿は他人と話す時に使うイメージ画像だろうな。雑草の記憶に似たような場面があったもの。


「おお……ずっと行方不明だった。今までよく隠れていたね」

『先代の月……通称御月様の協力があったのです。彼女はあのユニコーンから身を隠す為に私を利用しているだけですが』

「あー、持ちつ持たれつ? で、あなたが色々やっていた事は御月様は知ってるの?」

『気付いていませんね。私自身の内部であれこれやっていましたから。彼女は輪廻の輪の内部の危険性を理解しているので覗こうともしません。たまに会話をするくらいです』

「ふーむ、ゲスコーンは御月様をどれくらい気に入ってるの? 遊び相手? それとも長く付き合う恋人?」

『え、ゲス、コーン!?』


 あ、やっぱりインパクトある? ノワさんと同じ反応だ。驚いてるけどウケて笑ってもいる表情。うん、本当にピッタリハマっててウケるよね。


『ゲス……何てピッタリな呼び名! ああ、失礼しました。そうですね……正妻二号とか、それくらい気に入っています。ですので彼女、逃げまくっているのですよ』


 ちょい待ちぃ! 何か衝撃的な言葉が出たぞ!?


「正妻で二号!? 側室とか愛人とかでなく、正妻で、二号なの……?」


 何かおかしくない? 他の子らもザワザワしてるよ。妻の死後に娶る後添えとも違うよね? いやその場合……いかん、闇が深すぎる。


『ええ、おかしいと思うでしょうが、あのゲス野郎は本気です。分体を使って浮気し放題のようですよ』

「……思ったんだけど、正妻のミントはゲスコーンの浮気知ってんの?」

『知らないようですねー』

「知っちゃったらどうなると思う? 分体でもアウトと判定するかな?」

『そうですねー……分体ならセーフでしょうか。分体の事を目と耳になってくれている協力者と思っている節があるので』

「本体が浮気しないと修羅場にならないってことか。ケンカしてる所をうさビームで片付けようかと考えたんだけどな」

『……いえ、むしろヤンデレぶりが加速して……どっちにしろ結果が予測出来ませんね。成り行きに任せた方が安全です』


 あ、今、ヤンデレ全開でゲスコーンを束縛するミント(メリッサ)の姿が浮かんだ。その後そのまんま閉じこもるのか、また創造の力を使うのか……どっちに転ぶのか分からん。予測不能だ。


「そうデスねー……ヤンデレめんどいデスねー……はい、放置で。それで、そちらはまだ隠れているの?」

『それなのですが、ちょっと面白い事になってきたので、もしかしたら姿を現すかもしれません。念のため私の居場所を教えますね。月の裏側にいますよ』

「おお……灯台もと暗し。あ、そうだ。どうしてこの子に手紙渡したの? その仕掛けはいつ?」

『彼女は月の眷族として調整した魂です。ですから人間に転生する前に仕込みましたね。そして魂になった時、お使い内容を思い出すよう仕掛けていたのです。それと豆知識として死者の荒野の石像の事も教えておきました』


 推測すると……地下都市を出て、石像を目指して死者の荒野を歩いていたって事になる。普通に歩くと結構キツイんじゃないかな? だからボロボロだったのだろうけど。


 ◇◇◇◇◇◇


 ネネさん(ノワさん同様そのまま呼ぶのは長いので、地球の輪廻の輪にあだ名を付けた。すっごく喜んでくれた)との会話を終え、私は魂五つを肩や頭に乗せて、奥に続くであろう扉を開いて進んだ。皆すっかり私になついてるよ。


「住んでいるマンションが同じ階だとしても、どうして五人一緒に脱走する事になったの?」


 長い通路だ。話をしながら進むとしよう。


「あー、私ら何てゆーか扱いが酷かったんスよ。古株の人によると容姿の基準は顔立ちやスタイルくらいだったのが、近頃身長や髪質にまで及んできたって話だったっス。さらに自分、キャラにダメ出しされて下層決定したっスね」


 ほーう。身長に髪質に……キャラ? 性格とか喋り方とかそんな事にまで選考基準が及んだ、と。


「婦警なら超ミニスカでセクシー路線だろ、とか言われたっス。漫画の影響っスかね?」


 うわぁ……現実の女性警官はセクシー路線じゃないですよー。明らかに漫画の影響だね。あったなあ、超ミニスカートでパンツ見せまくりな、そんなけしからん婦警が主人公で登場する漫画。


「身長170㎝超えてるくせにAカップかよ詐欺だろ、とか言われました……。身長が高いなら巨乳か爆乳であるべきなのだそうです。そういえば生前に彼氏にフラれた時のセリフは、外見とおっぱいと中身が一致してない詐欺だ! ……でしたね。現場はラブホテルで、彼は一通り罵ると服を着て部屋を出て行きました。なお、ラブホ代は私が支払いました……」


 切ない。金を払わずトンズラした男、その尻拭いをするフラれた女……。切ない。

 それに高身長イコールおっぱいデカイなんて、ここにも漫画やアニメやゲームキャラの影響が……。


「150㎝に届かない身長ならツルペタのはずだとか、顔は永久に小学生であるはずだとか、その他滅茶苦茶なダメ出しされました……」


 周囲の大人を見ろよ。小柄な人でもちゃんと年相応に見えるはずだ。おばあちゃんになれば等しくシワだらけになるんだ。これも明らかに……はぁ。


「身長が規定に足らない、髪は少しのクセでもアウトだから、お前価値無いって言われました……」


 そこまで言うか。この人普通に美人だと思うけどな……。


「私、お洒落大好きで。でも既製品が体に合わないので生前は自分で服を作ったり手直ししたりしていたんですよ。その時と同じ感覚で布を買って服を作っていたら “Mサイズが入らないのはお前がデブだからだ、不合格” って言われました。ただ身長が高いだけなのに!」


 ひどい。あれ? あの世の店で売られている服って、全てサイズ調整が可能だったはず。


「最初に器に各サイズの目安と体形に合わせた型データを入力すれば、購入した服は自動でサイズ修正されてたけど……? そっち、どうなっているの?」

「ええっ!?」

「何それすごく便利!」


 あー、考えてみればサイズの自動調整って、生前に欲しかった機能だわ。あったら凄く便利だよね。


「あー、仕組みが違うんだ。本来辿り着くべき場所でなら、服のサイズには悩まなくていいよ」

「脱走して良かったっス! 皆を連れて出て正解だったっスー!」

「案内所に行けば、器とあの世ケータイとお財布と貯金箱が無料で支給されるよ。あとサービスで服が幾つかその場で選べて、サイズを測定して型データも入力してくれる。希望すれば住む場所も斡旋してくれたっけ」

「天・国……!」


 五人の声が綺麗にハモった。しかもすごく目をキラキラさせてる姿が重なって見える。

 いや、悪さしたら地獄のお仕置きコースですよ? 良い子ならゆる~くまったりなあの世ライフを満喫出来ますが。


「大変だったけど、私たちは天国に向かっていたんだ……!」

「ああ、それそれ。脱走どうやって成功させたの? あと君ら、器に入ってないよね?」

「器を捨てて脱走したっス」


 おお!? 何て大胆な……。


「器そのものが発信器なので、魂だけだと魂レーダー頼りになるのです。つまり、魂レーダーに引っ掛からなければ外に出られると考えたのです」


 あー、はー、な~るほど。そしてその魂レーダーはどこにでもあるわけではない、と。


「ルートを検討しまくって、器を脱ぎ捨てる場所を決め、ついに決行したんです!」

「ギリギリだったねー。しかも冥府の神様が指示しなかったら私らあそこに行かなかったよ?」


 五人全員が一斉に青ざめた。まあ石像の中にいたし、あの中なら時間をかければ多少は回復しただろうから、魂が消滅するなんて事にはならなかっただろうよ。


「か……感謝するっス。冥府の神様にも、お礼を言わなきゃならないっスね」


 そうだねー。しかし都市での話はリコちゃんの話とちょっと違う部分もあるな。

 その事を聞いてみたら、トップの意向でコロコロ方針が変わる都市だったらしい。幾つもあるみたいだし、そこが例外なだけかもしれない。


「自分は使命があったっスが、皆を連れて出たのは雲行きが怪しくなってきたってのが大きいっスね」

「何があったの?」

「徴兵っス。それまでは規格外の魂は、魔力補充用に選ばれるまでは器に入って生前と同じく一定時間どこかで働く以外は自由だったっス。何でもミント様とユニコーン様に歯向かう連中の中でも最大戦力であろう存在を持ち出してくるから、それに備えるのだとか言ってたっスね」


 明らかに私の事だ。うん? とゆー事は……御月様あたりが情報流した? 内容が大雑把なのは彼女もその程度しか掴んでないのか、あるいはわざとなのか……。


「しかも女は全員ノーパンだとか、男にご奉仕しろとか、受け付けたくない事を叫び出したんです!」


 ノーパン強要!? 最低だな。


「ご奉仕って、身の回りのお世話の事ではなさそう……?」

「平たく言うと肉体関係っスね。男に命令されたら女はそれに逆らっちゃ駄目で、色々罰則を用意しているとかテレビで言ってたっス」


 テレビあるんだ。あー、映像メディアは便利だもんね。


「当初、利子としこさんは連れて出る予定だったっス。街が冬仕様になる度に怯えているのが不憫で、彼女も一緒に脱走ルートを検討してたんスよ。そしたら梨々華(りりか)さんも加わって、効率が上がってついにルート決定したっス。その直後に徴兵のニュースが流れてきたんスよ。すぐに決行だー! で外に出たら治子はるこさんがパイズリを男に要求され、友子ともこさんが男をゴミ箱の角で殴って治子さんを助ける場面に遭遇して、五人で逃げる事になったっス。怒濤の展開って奴っスね」


 なお、この人の名は満江みちえさん。

 何という行動力。そしてこの善良さ……。影月さんたちと仲良く出来そうね。


「しかし男共が底なしのクズだねー」


 類は友を呼んだのか、それとも後から染まったのか。リコちゃんから聞いたゲスコーン像そっくりな男共だ。


「クズっス!」

「クズですよ本当!」


 ◇◇◇◇◇◇


 結論が出る頃、次の部屋に辿り着いた。

 ……ふすまだ。何で襖? さっきまではドアノブ付きの木製の扉だったのに……。

 脇を見たら “回収の間” と書いてあった。もしかしてアヒル時代に回収しまくっていた魂が居るのかな?

 ガラリと襖を開けてみると、そこはただの宴会場だった。

 確か、この人ら地球以外の惑星で神様やっていた方々だよね? 神々しさゼロなんですが……?

 畳の上に寝そべったり、トランプゲームやってたり。あ、隠し芸大会やってる。……神の威厳なんて欠片も無いね。


「おお、来れるようになったのか」

「あー、完全に神になったぞこいつ。まだ目覚める前だが」

「よーっしゃ! 大宇宙の再生の神の復活を祝って……何をしよう?」


 あー、食べ物系が無いんだ。でもちゃんと宴会しているように見えるのは、きっとこのバカ騒ぎのおかげだろう。


「おい、聞いたかGM。せっかくだから依頼の報酬を百倍に……」

「なるかボケェ! 百倍って何だよっ! 増えすぎだろ!」

「欲しい武器があるんだよぉっ! 金が足りねーんだよぉっ!」


 TRPGやってら。


「うん、皆さん元気で何よりです。えー……どれだけ居るの?」


 広い広ーい和室一面に居るよ。多すぎ、数えるのやだ。

 なお五人組はビビったのか、私にびたっと張り付いている。


「む、我らの神としての力を感じ取ったか」

「ホッホッホッ、怯えるでない。何もせんよ」


 ん? 違うみたいですよ。生前の職場のエロオヤジたちのセクハラを思い出して戦慄した三名と、大学入学後のサークルのコンパでのイッキ飲み強要&セクハラ地獄を思い出したのが二名。つまり宴会にトラウマがあるだけだね。

 まあ、神の威光にビビっている一般人とゆー事にしておこうか。


「おーい、運命の。こっちじゃー。来い来い」


 あ、運命の女神さん来た。髪は綺麗なサラサラの銀髪なんだけど、長い髪が顔全体を覆っていてホラー系のキャラに見えてしまう。


「ああ……やっと話せる」


 ちゃんと高めの女性の声なのに、地の底から響くような印象を受けるのは何故でしょうか……。


「あのね、ここには惑星に宿っていた意思も居るの。彼らはこのまま消えたくないみたい。けどゲスコーンみたいなのがまた来たらって考えちゃって、ネガティブマイナス思考にハマっちゃったのね。何か考えてくれる?」


 ……もの凄い無茶振りされた気がします。


「えー、ここに居る方々全て、創造神と同じく再誕させろと?」


 いや、そうなるよね。いつかは出て行ってもらわなきゃならないんだから。


「そうなんだけど、その後の事も考えて欲しいの。再誕の時期はあなたの都合で決めて良いわ」


 星の意思かー。……ちょっきり百!? うわ、しかも月の神もたくさん居るよ。……あ、もしかしてまともな方々?


「分かりました。色々考えてから実行します」


 ちょっと月の神様たちに話を聞こう。当時の事を知っているはずだから。


 寄っていくと気さくに受け入れてくれた。月の神と言っても大宇宙の月の神の眷族ではないみたい。


「元々ね、あの御月様どうなのって思ってたの。何故か保身とかどうでもよかったわねー」

「そうそう。保身で従って不本意な事するよりも、スパッと終わった方がマシだって思ったのよ」

「その事は後悔していないんだけど、生物たちの事を考えると切ないの……」

「月の神でなくてもいいわ。とにかく今度はちゃんと星に生きる命に寄り添って終わりを迎えたい」


 皆さん「あんな終わり方は嫌だ」って思ってるんだね。そして「命に寄り添う」かー。

 そこだよね。 “愛” って恋愛だけじゃないんだよね。他者を思いやるのも “愛” だよね。そこをはき違えたからおかしな事になったんだろうな……。


 ◇◇◇◇◇◇


 五人組を引っ付けて回収の間を出る。通路を進んで行くと色んな扉が並ぶ所が目に入った。

 中を覗いてみたら空き部屋ばかりだ。ふむ、収納にはまだ余裕があるみたいだね。……すごいな自分。

 そんな事を思いながら進んでいると “子宮” と書かれた扉が現れた。あ、ここに我が子が居るのか。

 中に入ると十二個のゆりかごが扇状に並んでいた。そのゆりかごの中に一つだけ、ぼんやりと光っている物がある。

 うむ、実に分かりやすいな。


「我が子よ。調子はどう?」

「お母さん! 何か、回復が倍になったみたい」


 ピョコッ、ピョコンッと光る何かがジャンプして存在をアピールしてきた。

 あれ? 我が子の姿がただの光る球体だ。あ、魂だけだからか。夢の中のあの姿はイメージなのか。そーか、そーか。


「むう、後でパラメータを見るか。あ、そうだ。名前は “緑源りょくげん” に決めたから」


 ゆりかごの前面と内側に「緑源」と書かれた札が現れる。え、何この機能。便利。


「え、お母さんと一字同じ?」

「同じだね」

「えへへ、同じなんだー」


 よしよし。何だか幼児退行してるけど、多分これで良いのだろう。


「どうするの? どんな存在として再誕する?」


 我が子・緑源の選択で他の方々の再誕方針も定まる。聞いておかなきゃ。


「もう一度、やる。宇宙を創造する」


 迷いなく、力強く言い切った。


「ならば母は全力でその舞台を作り上げよう」


 お母さん頑張るよ!


「あのね、それでね、権能なんだけど……」

「んん? そういえば奪われてたっけ。あれ? でも創造の権能はある……?」


 うむ、どうやら私が本能で与えてたみたいだ。本当にすごいな再生の権能。


「うん。“大宇宙” が付いてないけど、あるの。で、宇宙を創造するには “大宇宙” の “創造” でないと無理。それでね、“大宇宙” が付くのは一種類につき一つだけだから、それを解決しない限り再誕してもやれる事が少ないと思う」

「ああ、ゲス馬鹿っプルどうにかしなきゃね。あれをまずどうにかしないとね。全てはそれからだね」

「そこは見届けたい。バジルに会えた。オレガノの声を聞けた。他の皆にも会いたいし声を聞きたい」


 外を見せた甲斐があったね! 希望に目を向け目的を持ったのなら、後は目標を作って自らの足で歩くだけだ。


「結果的に皆に会いに行く事になるから、安心して」


 ナデナデすると、喜んでいるのが伝わってくる。何でだろう、この関係がものすごく自然に思える。

 思い返せば最初からこの子の母である事を受け入れていた。

 本当にどうしてだろう? 一番の謎だ。


 ◇◇◇◇◇◇


 最後は再生の権能そのもの。 “再生の権能の間” と書かれた部屋の前に来た。

 さすがに五人組はここで待っててもらおう。もうビビる存在も居ないのにこの子らが私に引っ付いているのは、冬にコタツから出ようとしないのと同じ理由だと判明した。

 ならば代わりとして “回復の泉” ならぬ “回復のオブジェ” を作って置いておけば良い。

 ……うぬぅ、さすがは自分の体内。思い浮かべただけで美味しそうなホールケーキのオブジェが出来上がったぞ。


「ほら、これに乗っかって、ここで待ってなさい」


 素直に従ってくれた。周囲を囲むクリームが、いい背もたれになっているね。……ちょっと羨ましいかも。


「分かるっス。さすがに入っちゃいけないっス。ここで絞ったクリームをクッションにして待ってるっス」


 あー、何となく分かっちゃうのか。私もこれ、ヤバいと思う。

 しかし知っておかねばならない。大宇宙の再生の神として生きて行くのだから。


五人組の年齢(死亡時)と身長データを書いておきます。

利子(27):178㎝

梨々華(24):168㎝

治子(20):146㎝

友子(20):152㎝

満江(22):160㎝

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