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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
92/124

ep86.出会い

 楽しかった外泊はあっという間に終わり……ボクはまた病院に戻ってきてた。


 2日目の夜、お昼に調子に乗りすぎちゃったのか微熱が出ちゃって、ちょっとヒヤッとしたけど……お薬飲んで安静にして寝たら、朝にはなんとか下がっててホッとした。

 でも、お母さんにはかなりにらまれちゃって。


 ――春奈と2人、謝った。


 おかげで病院に戻るときも、自分で歩きたいって言ったボクの言葉は軽くスルーされ、車イスに乗せられて移動する羽目になってしまった。


 ううっ、ボク、外泊からこっち、お母さんからの信用……がた落ちになっちゃったみたい。


 病院に戻り、ボクが入った病室はまだ前の病室のままだった。

 退院も近いはずだけど……念のためってことなのかな? まぁ大部屋で知らない人たちと一緒になるよりかはいいけど……ここじゃ相変わらず誰ともお話できずに寂しい。

 お散歩はしてもいいって言ってもらえたから……これから数日間? 時間はいっぱいあることだし、せっかくだからこの病棟の探検でもしちゃおっかな? もちろん、無理しない程度で……だけど。



 でも、その前に……。マルク……しなきゃなんないんだよね。


 いやだなぁ。



* * * * * *



「蒼空ちゃん、昨日の夜お熱出したんですって? だめよ、無理しちゃ。そりゃ、お家に戻れてうれしかったのはわかるけど……あなたの体はまだまだこれからが踏ん張りどころなの。……GVHDだってまだまだ終息したってわけじゃないんだし、ちょっとした油断からまたお顔や手足が赤くなっちゃったりしたらいやでしょ?」


 診察室で会うなり、村井先生がそう言ってボクの顔をしっかり見ながら注意してくる。お母さんもうんうん頷きながらボクを見てくる。


「はーい……ごめんなさい。これからはちゃんと注意して行動します……」


 ボクは反省の言葉と共に車イスの背もたれから背中を離し、がっくりうな垂れちゃう。


「それじゃ、予告してた通りマルクしますからね? そこのベッドに横になってちょうだいね」


 そう言う村井先生の顔が、ボクにはなんだかニヤリと笑ったように見えて、身のすくむ思いがした……。

 

# # #


「はい、よくガマンしました!」


 いつものごとく、まるで小さい子に言うように声をかけられてマルクが終わった。もう何も言い返す気にもなれないよ……。

 ほんとこれ、何度やっても慣れるってことない。とはいえ、これで血液検査の結果や、ウイルス感染さえしてなけりゃ退院出来るんだもん、ガマン出来ちゃうよ。けどまぁ、毎回必ず泣いちゃうんだけどさ……。


 しばらく仰向けで寝て、血が止まるのを待つ。


 白血球も、まだまだ正常値には遠いとはいえ随分増えて、初めてしたマルクのときのように血が止まらないなんてこともないようで、ボクは無事病室に戻ることが出来た。



* * * * * *



「蒼空。お母さん、お仕事もあるし今日はこれで帰るけど……1人だからって無茶や無理しちゃだめよ? 夕方前には春奈が様子見に来てくれると思うから、それまでおとなしくしてること。歩く練習とかも、まだしちゃダメよ? 昨日お熱出したばかりなんだから……わかってるわね、ん?」


 病気も快方に向かってきて、しかも昨日の前例もあり……、ボクがちゃんと大人しくしてるかどうか疑ってかかってるお母さんが、ボクを車イスからベッドに移すなり、そう言ってクギをさしてきた。


「うん、わかってる。絶対、無理したり……歩く練習したりなんかしないよ。ボクも早く退院したいもん! それに、マルクの後で腰も痛いから、そんなことしようだなんてとても思わないもん」

 

 マルク後ってこともあり、多少気だるげで弱々しい表情を見せながら言うと、


「それもそうか。でも、注意するに越したことはない、と思えるのはお母さんだけかしらね?」


 そう言って、ちょっといじわるそうな顔をして笑うお母さん。


「もう、お母さんのいじわるぅ!」


 ボクはちょっとふて腐れ気味に口を尖らせる。


「ふふっ、ごめんごめん。じゃ、お母さん行くから、くれぐれも大人しくしてるのよ」


 ボクのアタマを撫でながら言ったその言葉とともに、病室を後にするお母さん。


「お母さんありがとー! また明日ね~」


 ボクはそう言ってベッドからお母さんを見送り、それからしばらく、出て行ったドアの方をじーっと見つめてた……。


 また1人ぼっちになっちゃった。


 でも今回はたぶん……このまま調子よく行けば、一週間もしない内に退院出来るはずなんだ。今のボクにはそれがせめてもの救いだった。


# # #


 お昼になり、恵さんが持ってきてくれた病院食を食べ……そのお片付けに来た時、ついでにいろいろ外泊のときのお話をした。

 春奈と一緒にお風呂に入って、騒ぎすぎちゃってお母さんに叱られちゃったって……テレ笑いしながらお話ししたら、クスクスと笑われちゃった。他にも亜由美ちゃんや優衣ちゃんがお見舞いに来てくれたお話しもした。


「良かったね、蒼空ちゃん。これも病気、がんばって治療したおかげだね? でも……まだまだ油断できないんだから、動けるようになったからって無茶しちゃだめだよ? お母さんに心配かけないようにしないとね」


「は~い……」


 あちゃあ、恵さんにまでお小言もらっちゃった。ボクってそんなに頼りなく見えるのかなぁ? なんか理不尽だ。



 自分の行いを棚にあげ、そんなことを考える蒼空なのであった――。



* * * * * *



 翌日、朝から恒例の血液検査を受けたあと、特に何ごともない平穏な時間をすごす。

 朝一でお母さんが来てくれたけど、お話しを少しした後、すぐお仕事に行ってしまった。春奈はガッコだから今日も夕方にならないと来ないし……正直すっごく退屈。

 かといって歩く練習はまだまださせてもらえないし……ほんとどんだけ信用ないの? ボク。

 それでも昼食も済ませ、昼からの時間、春奈が取ってくれてる授業のノートや、ちーちゃんが用意してくれた復習を兼ねた小テストなんかをやったりして2時間ほどをガマンして過ごす。


 でも、それが限界だった。


「うう~ん、もう疲れちゃった。それに全然つまんない。はわぁ~」


 ボクは伸びをしながらそう言って、とどめに大きく口を開けてアクビをする。今は、はしたないとか、女の子らしくなさいって注意するお母さんはいないもんね、えへへっ。

 それにしても、1人病室でやるお勉強ほどつまんないものはない。2時間やっただけでもボクすごいと思う。昨日のマルクのせいでまだ腰がうずくし、イマイチお昼寝する気にもならないし……。


「ちょっとおトイレ行きたくなってきたし……暇だし、少しお散歩してみよっかな」


 そう思ったボクは、まだ微妙にうずく腰を気にしながらも、慣れた動作で車イスに乗り移る。今でも無理すれば少しくらい歩けるんだから、これくらいは楽勝だもんね。


 車イスに乗り移ったボクは早速、久しぶりに1人で病院のお散歩にいくことにした。

 2年前にここに居たときもよくお散歩したけど(あの時は沙希ちゃんと出会ったんだよね)、こっちの病棟では初めてだ。ずっと無菌病棟の病室にこもりきりだったもん……未だにここのレイアウトもよくわかってないや。

 とりあえず、看護師さんの詰所に寄り、一声かけてからまずはトイレに向うボク。ほんとは、おトイレだけなら病室にもあるけど……やっぱお散歩も行きたいもんね!


 病院のトイレに入ると、男の子から女の子のカラダになって、色々戸惑いが多かったときのこと思い出しちゃう。やっぱ何が戸惑うかっていえばトイレが一番だもん。

 今じゃ男の子の時のことを思い出すほうが難しいけど、初めはなかなか上手に……その……おしっこ出したり止めたり出来ず……香織さんにはかなり迷惑かけちゃった。カテーテル使ってたのと同じくらいボクの黒歴史の一つかもしんない。

 

 ちょっと恥ずかしいことを思い出しつつもトイレを無事済まし、とりあえずボクの病室もあるこの病棟の一般床エリアからお散歩を始める。

 久しぶりに1人で車イスを動かすとやっぱ腕に負担かかっちゃうけど……まだ病院のフロアは抵抗無くタイヤが回ってくれるからましだと思う。

 以前、お外に無断外出したときはほんとつらかったもん。あんなことは二度としたくないよ……。

 ちなみに詰所前の廊下の一方を進むと、ちょっと前に春奈と歩く練習してた場所になり、そのまま行けば、面会に使うラウンジだ。だから今回は反対側から攻めてる。


 いくら一般床エリアとはいえ、無菌病棟内だからさすがに人通りはまばら。さらに今は個室エリアだから余計だ。ドアも閉まってるから寂しさいっぱい。 で、寂しい個室エリアを気持ちの上では急いで抜け、4人部屋が並んでるエリアへと進めていく。


「おっしっ、そこだ! いけ~」

「あら、いやだ、ずるいわっ」

「へへん! 姉ちゃん、甘い、甘過ぎるよっ」


 ふぇ? なんだろ。

 なんか、病室とは思えない声がする。それにこれって男の子の声? それに女の人の声もするし……き、気になる。

 4人部屋の前にさしかかるなり聞こえてきた、随分楽しそうに盛り上がってる声。

 ボクは聞こえてきた、その男の子の声と女の人の声が気になってしまい……つい、その病室の中を覗きこんじゃった。


 病室の中はベッドごとにカーテンで仕切られ、一応プライベートが確保出来るようになってるみたい。ボクは恐る恐る車イスを部屋の中へと進め、その声の出所を探すように見渡した……んだけどっ、


 はわわっ、いきなり中にいた女の人と目があっちゃった。


「あら、かわいいお客さまね? どうしたの?」


 ボクにそう言って声をかけてくれたのは、さっき声が聞こえてきた女の人みたい。

 ちょっとバツが悪かったけど……せっかく声をかけてくれたし、そもそも中を覗き込んで、勝手に中に入っちゃったのもボクだしで……恥ずかしいけど、ちゃんとお返事を返した。


「勝手に入っちゃって、ご、ごめんなさい。前を通ったら、なんか楽しそうな声が聞こえてきたから……なんか、気になっちゃって……」


「まぁ、そうなんだ。ごめんなさいね? このお部屋、この子ともう1人の人の、2人しか入ってなくて、その人も昨日退院しちゃってね。だからつい、調子にのって大きな声だしてしまったの」


 そう言って、ベッドに起き上がって座ってる男の子のアタマをポンと叩き、軽く舌を出してテレ笑いする女の人。

 その人はちょっと色素が抜け気味の茶色っぽい髪に、きれいなウェーブをかけたロングヘアで、ちょっとたれ目ながらすっごく理知的なイメージのするキレイな人だった。


「い、いえ、そんな全然うるさくなんかなかったです。ほんと、ただ楽しそうだったから……気になっただけっていうか……」


 ボクは話しながらもだんだん萎縮してカラダが縮こまってくる気がした。そんなボクを見てその女の人、ボクの方に近づいてきた。


「ふふっ、そんな気にしなくていいのよ? かわいいお嬢ちゃん。そうだ、せっかくお近づきになったんだもの、ちょっとお話ししない? ちょうどケーキもあるし、お茶会もいいかも♪ ……だめ、かしら?」


 女の人ったらボクを見てちょっとねだるような表情を見せる。けっこうボクの目の前まで来て、ちゃんとしゃがんでお話してくれたし、なによりケーキって言葉に思わず反応してしまったボクは、あっさり警戒をとき、その誘いにのってしまった。


 仕方ないよね、だってケーキなんだもん。それに同じ無菌病棟に居る人なんだし、問題ないよね……。


# # #


「あなたが蒼空ちゃんかぁ、その髪とお目目を見てきっとそうだと思ってたのよね。ふふっ、ほんとかわいいっ。そこの瑛太なんて、もう、こ憎ったらしいことばかり言って可愛げないんだから……。ほんといいわぁ」


 ボクは知り合ったばかりの女の人、――名前は、喜多村きたむら 瑛美えいみさんって自己紹介してくれたけど――にやたらアタマを撫でられ、ちょっと閉口ぎみだ。

 どうやらボクはこの病棟内じゃけっこう有名になってしまってるみたいで、病室の中に案内されてすぐこの状況に陥ってしまった。やっぱこの白い髪に赤い目って目立っちゃうんだろうなぁ……どうしょうもないことだけど。


「ね、姉ちゃん、ひどいやっ! オレいつ、その、こ憎ったらしいこと……なんて言ったんだよぉ? 姉ちゃんの言うこと守らなかったことなんてないよね? っていうか守らなかったら……」


「エ~イ~タ~?」


 瑛太くんがお姉さんに反論しようとしたところで、瑛美さんが微妙なイントネーションでその名前を呼ぶ。

 

 途端、口ごもる瑛太くん。表情が強張っちゃってる。な、なんか恐怖政治?


 ちなみに瑛太っていうのは、もちろんベッドに座ってる男の子。喜多村きたむら 瑛太えいたって名前で、名前で分かるように二人は姉弟で、ちょっと歳の離れたお姉さんである瑛美さんがお見舞いに来てて……さっきはちょうど携帯ゲーム機で対戦ゲームをやってたとこだったらしい。

 瑛太くんもボクと同じように骨髄移植を受けたそうで、この一般床の4人部屋に居るってことはきっと退院も近いんだよね。

 瑛太くんもお姉さんと同じで、色素が抜け気味の茶色っぽい髪をしてるんだけど今は丸坊主に近い状態になってる。治療のせいで髪はほとんど抜けちゃってて、ようやくまた生えてきたとこみたい。まあそれはともかく、痩せ気味で線の細い女の子みたいな雰囲気があって、目がちょっときつめではあるものの……かわいらしい男の子だ。


「そっか、蒼空ちゃんももうすぐ退院出来そうなんだね? 良かったね~。ウチの瑛太も移植がうまくいってね。1週間後に退院が決まったのよ。そりゃ、私が痛い思いして骨髄提供してあげたんだもの、良くなるにきまってるわよねぇ?」


 瑛美さんが相変わらずボクのアタマを撫でつつ、うれしそうに瑛太くんのことを話す。そっか、瑛太くんはお姉さんがドナーになってくれたんだ。


「うん、たぶんボクも瑛太くんと同じか、もしかしてもうちょっとくらい早く出れるかもしれないの。でも……瑛太くんも良かったね? 退院決まって。おめでとう!」


 ボクはちょっとお姉さんぶって瑛太くんにおめでとうって言ってみた。


「えっ、あ、と、当然だよ! そ、蒼空もよかったな。退院出来るみたいでさ」


 瑛太くんがなんか顔を少し赤くし、ちょっとふて腐れたような調子でボクに言葉を返してきた。……蒼空もだって。いきなり呼び捨てだね。


 えへへっ、なんかちょっと悪ぶっちゃってさ、かわいいの。


 瑛太くんは13才ってことだからボクより随分年下なのだ。だから、そんな子に呼び捨てされたって別段気にもならないんだもんね、これがお姉さんの余裕ってやつかな? えへへへん!

 と、ボクは全然気にしてなかったんだけど……、


「瑛太! なにいきなり初対面の女の子、呼び捨てにしちゃってるの? それに蒼空ちゃんの方がお姉さんなのよ? ほんとしょうがないんだから」


 瑛美さんがそう言って瑛太くんを叱る。別にいいんだけどなぁ……でもそういうとこしっかりしてるのっていいな。ボクがせっかく感心してたのに瑛太くんったら、


「ええ~! 蒼空がオレよりお姉さん~? うっそだ~! オレとためか、下手したら年下って言ってもおかしくないよっ」


 ううっ! このバカ瑛太! 言うにことかいて年下だなんて。失礼しちゃう。

 ボクはさっきまでの笑顔から一転、ぶすっとした表情になり瑛太くんをにらみつける。


「むうぅ」

「な、なんだよぉ、うさぎみたいな目してさっ!」


 車イスに座るボクからだと必然的に上目使いになって見つめることになり、瑛太くんがそれをみて赤い顔がさらに赤くなり、苦し紛れにボクの外見のことを口に出す。きっと悪気があったわけじゃぜんぜんない。


「瑛太っ! おだまり!」


 さっきまでの温厚でやさしそうな口調から一転、するどい口調で瑛太くんを叱責する瑛美さん。


 それを聞いてビクッとし、首をすくめる瑛太くん。思わず手に持ってた携帯ゲーム機を落っことしちゃってた。そうとうビックリしたんだろうなぁ。かくゆうボクも、釣られてビクッとしちゃたんだもん。


「あ、蒼空ちゃんごめんなさい。驚かせちゃったね。それとごめんね、うちの瑛太が……デリカシーの無いこと言ってしまって……。ほら瑛太! あんたもあやまんなさい!」


 瑛美さんがボクに優しい笑顔を向け、反対に瑛太くんには厳しい表情と言葉をかける。


「う、うん……その、ごめん。べ、別に悪気があったわけじゃないんだけど……その謝る。そ、蒼空……ちゃん?」


 瑛太くんが、すっごくしょぼくれた表情でボクに謝ってくれる。でも瑛太くんから蒼空ちゃんっていわれてもなんかこそぐったい。


「ふふっ、いいよ。別に気にしてないから。瑛美さんも気を使ってくれてありがとー! それに瑛太くん、ボクのことは蒼空でいいよ。なんか君にちゃんづけで呼ばれるとこそばゆくって」


 ボクの言葉に瑛美さんが思わず笑顔を見せ、瑛太くんは戸惑いの表情を見せ口ごもる。

 そんな瑛太くんを見て瑛美さんが助け舟を出す。


「ほら瑛太。蒼空ちゃんがああ言ってくれてるのよ? あんたも言うことあるでしょ?」


「う、うん。その、蒼空……? お、オレのことも、え、瑛太でいいからな。その、と、友だちになってくれる?」


 瑛太くんがテレながらもはっきりと言った。

 まだ中一の子が、妙に大人ぶって言おうとして、でもなり切れてないとこが妙にかわいい。でもまぁ、そこはボクも人のこと言えないんだけど……。


「うん、いいよ。瑛太、これからよろしくね。なんか困ったことあったらお姉さんが相談にのるよ?」


 ボクが改めての挨拶とともに、ちょっと茶化して言うと、


「ちぇ、それだけは絶対信じらんない。絶対タメだよね? ……まぁいいや、蒼空、そっちこそなんかあったらオレに言ってよ?」


「うん! そうする」


 ボクは満面の笑みを浮かべ、そう言って瑛太の顔を立ててあげた。やっぱ男の子はそういうもんだよね?

 瑛太はまた顔を赤くして、口ごもりそのまま俯いてしまった。


 それを見ながら瑛美さんが苦笑いし、こう言った。


「ふふっ、若い若い。2人ともケンカしないで仲良くね? じゃ、話しがまとまったところで……ケーキ食べましょう! 蒼空ちゃん、大好きなんでしょ? うわさは看護師さんから聞いてるよ?」


 瑛美さんの言葉に、ボクはさらに笑みを深め、出してもらったケーキ……いちごショートで止めをさされちゃった。



 この日のボクが、その後自分の病室に戻ったあとも、終始ご機嫌だったのは言うまでもないことだよね。

 



 p.s.

 後で看護師の恵さんからこの話しを面白おかしく聞かされた春奈が、蒼空、自ら……男の子の友だちをつくった……ということを聞くにおよび、驚きを禁じえなかったというのは、まあ余談である。


ちょっと遅れましたが投稿します。

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