ep7.発端
しばらく"うつ"展開かも……
※話数を修正しました。
とある山麓の研究学園都市の一角――、篠原製薬の広大な敷地内にある再生医療研究所。
蒼空の父親、柚月 雅行はその研究所の情報システム部門システムエンジニアとして従事しており、母親の 結城 日向はそこへコンピューター関連のオペレーターを主として派遣されていた。
数多くいるSEをまとめる主任であった雅行を、補佐する役を受けた日向は、当初は同じ職場で働く上司と部下という間柄であった。
そんな中、一緒に仕事をする時間が増えていくと共に親しい友人となり、いつしか恋人に……、お互い無くてはならない存在となり……そして結婚したのだった。
結婚当時、雅行が26才、そして日向は22才であり、まだまだ若く未熟な部分もあったにせよ二人して力をあわせ、幸せをかみしめながら日々を楽しく暮らしていた。
……結婚して1年ほどたち新しい生活にもなれた頃、日向はうれしい知らせを雅行に伝える。
赤ちゃんを授かった……そう伝えると雅行は精悍でありながらもやさしい顔をクシャリとゆがめ、大いに喜んだのだった。
そして14年前の10月――、かわいらしい男の子……蒼空は生まれた。
蒼空を生んでしばらくの間は、育児休暇をとり育児に専念した日向だったが、育児休暇の終了とともに職場へ復帰。
その後の蒼空の世話は、日向や雅行の母親(蒼空の祖母)に見てもらっていたのだが、日向に二人目の娘、春奈が生まれたためまたもや育児休暇をとることとなり、嬉しいやら忙しいやら……なんとも微笑ましいことこの上なかった。
時がすぎ蒼空が3才になろうとした頃、研究所内の福利厚生に力を入れるとの副所長の施策で"保育施設"が設けられることとなり……柚月親子は渡りに船とばかりにその恩恵に預かることになったのだった……。
思えばそこから柚月夫妻――、そして蒼空の悲しい運命は始まったのだろう。
篠原製薬再生医療研究所の副所長……篠原 征二、そして彼の率いる先鋭的な一部の研究者らによる、ある企てによって……。
* * * * * *
研究所内のある一室で、スクリーンに投影されているデータを興味深げに見る研究者たち……。
その中で、30代前半に見える、痩せぎすの男がそのスクリーンに投影されたデータを指し示しながら報告をしている。
「…………保育施設……のおかげ……"素体"のベース……細胞の入手が……非常に……となり…………
…………所内の健康管理センター内においても同様に……………………
サンプル提供者との近親者がいることも非常に……であり……ですが…………
……により、素体の成長は順調であり……で…………といったところです」
と発した言葉と同時にある映像が、スクリーンに映しだされる。
それを見た一堂から静かな歓声が上がる。
「おぉ、スバラシイ!」
そこに写っていたのは、浅めの透明な水槽の中で人工の羊水に浸かり、いくつかのチューブに繋がれた状態の……人間の "胎児" であった。
……その水槽は、全部で7つ ―― 心ある人が見れば眉をひそめるであろう光景……が写っていた。
もはやこの集団に、正常な倫理感に基づく思考は存在していないのかもしれない……。
最後に言葉を放ったのは、副所長である篠原征二であり……"篠原製薬社長" 篠原 正剛の息子である。
彼は、元"国立医療研究中央病院"の脳神経外科の"一流"と呼べる医師であったのだが、普段からの言動……そして、やはりその倫理感が問題となり病院を追われたのだった。
しかし、父親の庇護のもと、35才の若さでこの研究所の副所長にまんまと納まっていた。
ちなみに所長は、社長である正剛が兼務しており、彼は事実上の最高権力者といっても過言ではなかった。
彼の周囲を固めているのは、そんな彼に付き従って病院をやめてきたもの、あるいは同じ研究を行う同志として(彼が利用できると見て)、倫理にもとる行為にもかかわらず行動を共にするものたちである。
本来の再生医療研究からかけはなれて、犯罪行為といえるところまで行っているにもかかわらず、権力を使い隠蔽し露見させないどころか、更なる暴挙に出ようとしている彼ら……。
社長であり父親の、正剛 ──は、そのことについて……、息子のその所業について、きっちり把握することが出来ているのであろうか?
あるいは正剛もまた……?
彼らの行為はこれから更に……悪い方向、深みへと、沈み込んでいく……。
ごまかし多くてすみません……なにぶん知識ないもので……
しかし、やっとあらすじの話しが…………