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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
74/124

ep70.ふれあいは大切

ご期待の展開にはなってないかも?

「うわぁ、キレイなお風呂だねぇ」


 ボクはお風呂場へとつながる引き戸を開け、中の様子をうかがうと先に入ったエリちゃんたちに声をかけた。


「うん、そうだね。 それに見て? 露天風呂のほうもすごく気持ちよさそう」


 エリちゃんがボクの呼びかけにそう答えた。

 先に入ってたもう1人の同室の子が、その言葉に話しを続ける。


「露天風呂が温泉みたい。 雰囲気もいいし、外の景色もよく見えそう。 早くそっちへ出てみようよ!」


「あーん、待ってよ川上さん。 ボク日焼け止めとか落とさなきゃダメなんだから~」


 ボクはそう言いながら、壁際に並んでる3つある洗い場の一番奥に座り、持ってきたクレンジング剤を鏡の下にある棚におく。 ちなみに眼鏡は脱衣所で外しちゃってて、今は掛けてない。 赤い目が目立っちゃうけど……みんな知ってることだし、今さら気にしても仕方ない。


「待てなーい! じゃ、先行ってるよ? 柚月さん、早くきてね」


 ボクのこと待ってられない川上さんは、エリちゃんを半ば無理矢理……引っ張って露天風呂の方へ出ていった。 むぅ、ボクだって早く露天風呂入ってみたいのに。


 エリちゃんを引っ張って出てっちゃったのは川上かわかみ 優那ゆうなさん。

 ボクと同じ4年生だけど音楽科の子で、合唱部ではエリちゃんと同じアルトパートをやってる。

 美少女というよりかっこいい、ちょっとボーイッシュで気さくな感じの子なのだ。 エリちゃんと雰囲気似てるとこあるけど、川上さんは自信たっぷりで、すっごく頼りがいありそうな感じがして、その辺エリちゃんと違う。(ゴメンね、エリちゃん)

 なんか元男の子のボクが、同じ学年(というか年下だけど)の女の子のこと、頼りがいがあるって思うのも変な感じだけど。

 

 ちなみにお風呂はそんなに大勢で入れるほどおっきくないから、2部屋6人ずつ、3グループに分かれ順番に入ることになってるのだ。

 今は3人だけで入ってるけど、6年の先輩たちと一緒に入ることになってるから、そのうち現われるはずなんだけど……どうしたんだろ?

 ボクたちは最後のグループで、このあとお食事が控えてるからあんまりのんびりしてる時間もないはずだけど。


 まぁ、自由時間になってからまた入るってのもいいかもしんないよね。 

 とりあえず、今日のところは辻先輩たちと一緒にならなくてひと安心だよ……。


「よし、ささっと日焼け止め落としちゃおっと」


 日焼け止めは軽く洗ったくらいじゃ落ちないから、クレンジング剤を使って落としてる。 雑にやっちゃうとお肌に悪いって春奈に叱られちゃうから、いつしかお風呂に入るときは、キッチリ落とすようにするクセついちゃった。

 それにここはお家と違ってみんなが使うトコなんだし、キッチリ落として入らなきゃマナー違反だよね。


 そうだ、もう遅れついでだし、落とすついでに髪とかも洗っちゃお。

 そう思いつつ、ふと体を見下ろす。 ちょっとぼやけた視界の中でも目立つ、ひざ小僧のアザ……。


 かっこ悪いなぁ。


 だいぶ茶色っぽい色も薄まってきたとはいえ、真っ白なボクのカラダだとすっごく目立っちゃう……。


 そんなことを考えながらせっせと日焼け止めを落とすボク。 エリちゃんたち、先に露天風呂行っちゃったし、早く温泉入りたいもんね。

 で、ようやく日焼け止めを落としながら体も洗い、今度は髪を洗おうとしたところで脱衣所の方から声が聞こえてきた。


 あちゃ~、もしかして先輩たちかな?

 エリちゃんや川上さんは露天風呂の方だし……。 なんか落ち着かないよ~。


 少しして浴室の引き戸が開く。


 入ってきたのは……部長さんと、副部長さん。 それにアルトパートのリーダーしてる古川先輩だった。

 3人ともそれはもう、その、色々……堂々と入ってきて、ボクつい見いっちゃった。

 6年生の先輩たち、やっぱスタイルいいなぁ。 3人とも胸もおっきいし、もう大人の女の人って感じするもん。 そして、自分の胸と先輩たちの胸を見比べる。


 ううっ、ちっちゃいなぁ……ボクの胸。


 部長さんの大きく膨らんで存在を主張してる形のいい胸。 比べてボクの胸ったら、まだまだお山になる前の小高い丘って感じで……部長さんみたいに、おわんのような胸とはほど遠い……。

 でもこれでも最近かなり成長してきたと思うの。

 ブラだって今じゃジュニア用のかわいいのじゃなくて、大人用みたいな普通っぽいやつ付けるようになってきたんだもん。 まぁ、まだAカップだけど……。


 それにしても遅かったのは部長さんたちだったからかぁ。 色々やること多いだろうから、大変だよね。


「あれっ? 柚月さん。 1人なの?」


 1人で洗い場にいるボクを見て、部長さんが問いかけて来た。

「あ、いえ、渡里さんと川上さんは、先に露天風呂の方に行ってます。 ボ……私は、その、お湯につかる前に日焼け止めを落とさなきゃいけないから……手間取っちゃってて」


「あっ、そうか。 その、大変ね……。 慌てなくていいから、ゆっくりお風呂楽しんでね? ちょっとくらい遅れたってかまわないし。 なにしろ、私たちが行かなきゃ始まらないんだし」

 ボクのことを気にしてくれたあとに続いた……普段の部長さんからは考えられないセリフに、ボク絶対ぽかーんと、変な顔をしてるに違いない。


 そこにもう一言、部長さん。


「そういえば柚月さん、今、ボクって言おうとして言い直したでしょ? ふふっ、私たち相手だからってかしこまらなくたっていいよ? 普段どおりにしてないと肩こっちゃうでしょ。 それにボクっていってる柚月さん、すっごくかわいいし」


 そんなこと言って、いたずらっぽい顔をしながらも笑いかけてくれる。

 ぶ、部長さん。 なんか部活の時とのギャップ……ありすぎだよ~。


 それにしても、「私」って言いなおしたの……聞きとめられてたなんて。 は、恥ずかしい。 ボクがほんともう、ぼーぜんとした顔を部長さんに向けてると、


「萌ったら……奈々ちゃんじゃあるまいし、調子のりすぎ。 柚月さん、戸惑っちゃってるじゃない」

 副部長の今井先輩があきれた声で部長さんにつっこみを入れる。


「あら、いくらなんでもその例えはショックなんだけど。 ……ったく、まぁいいわ。 

 と、こ、ろ、で。 柚月さん、髪洗ったげよっか? せっかくお風呂、一緒に入ってるんだし。 それに柚月さんの髪、サラサラで透けるかのような白い髪で……ほんとキレイなんだもの。 ね、いいよね?」


 部長さん……藤村先輩の、その申し出にボクはちょっと驚いちゃったけど、正直髪の毛洗うのにはいつも苦労してるから、実を言うと助かっちゃう。


「はぇ? は、はい。 べ、別にいいですけど……その、いいのかなぁ? 先輩にそんなことしてもらうなんて……」

 ボクがそんな風にお願いしかねてると、

「柚月さん、そんなこと気にせずやってもらいなさいな? 長い髪って1人で洗うの大変でしょ。 だから遠慮なんていらないよ」

 今井先輩もそう言って勧めてくれる。

 そしてそのまま先輩はボクの隣りに座って、自分もシャワー浴びだしちゃった。 更に古川先輩もその隣りに座っちゃった。


「そ、それじゃ、よろしくお願いします」

 ボクが遠慮がちにそう言うと、

「よーし、それじゃ早速!」

 うれしそうに後ろに流してあったボクの髪を取り、洗いにかかる藤村先輩。 ボクはもうされるがままだ。 こうやって人に髪の毛洗ってもらうの、家族以外では初めてだ。


 ああ、やっぱ洗ってもらうのって気持ちいいな……。


 それに藤村先輩、洗い方すっごくやさしい。 こういっちゃなんだけど、春奈よか、ず~っと上手。 まるでお母さんに洗ってもらってるみたい……。


「あー、部長~。 それずるい! いつまで経っても柚月さん来ないと思ったら」

 

 いきなり現れた川上さんが部長さんにそういってグチってる。

 どうやらボクがなかなか露天風呂の方に来ないもんだから、様子を見に戻って来ちゃったみたい。 洗ってもらってる最中で声でしか判断できないけど、エリちゃんも戻って来てるのかな? 2人には悪いことしちゃった。


「あら、川上さん。 ごめんなさいね~、もしかしてあなたの楽しみとっちゃったのかな? でも、こうなったのもめぐり合わせよね。 お風呂遅れてまで、がんばってた私の役得かな?」

 ぶ、部長。 なんか言い方が……黒いです。


「む~。 そりゃ、それは認めますが……。 私も狙ってたのになぁ、そのポジション」


 ね、狙ってたって、川上さん。 ボクたちまだそんなにお話しもしたことないのに……。


「ふふっ、ごめんごめん。 明日は川上さんに譲るから。 とは言っても、そもそも明日はまた組み合わせ変わるから、いずれにせよ私は今日限りなんだし。 そういうことだから、今日は大目に見てくれない?」


 そう言って川上さんを説き伏せる部長さん。 なんか変な争いしてるなぁ。


 でもその間も部長さんの手は休むことなく動き、コンディショナーまで済ませ、シャワーですすいでくれる。 やっぱ気持ちいい……。


 一通りすんだら、髪をタオルでキッチリ巻き、アップにするところまでやってくれる。


 すごいや! ボク、タオルをアタマに巻くのってすっごく苦手で、自分でやってもすぐほどけちゃう。 今はほんとに髪長くなったから余計だ。

 だから尊敬の眼差しを込めて部長さんを見つめてたら……。


「ふふっ、タオル巻いたとき隙間を開けないようキッチリ巻くのが、ほどけたりしないコツね。 また試してみて?」

 ――うーん、そんな見つめてきちゃって。 タオルでアップにしてあげたの、ずいぶん気に入ってくれたみたいね。

 それにしても、透き通るような赤い瞳がほんとキレイで可愛らしい。 そんなあどけない表情で見つめられると女の子同士なのに、なんか照れちゃうんだけど。

 でも、こうやってキッチリ見るの始めてだけど、黒目のところ……ほんと深い赤だ。 虹彩は赤、っていうよりちょっと白みががっててピンクっぽい感じだけど。


 なんだか吸い込まれそうにキレイで宝石みたい……。


 はっ、いっけない。 本人は気にして、それに苦労もしてるのに……こんな風に考えるなんて――。



 部長さん、なんか黙りこんじゃった? どうしたのかな?


「そ、そうなんだ? 今度、そこ気にしてやってみます。 ありがとう!」


 とりあえずボクはそう言うと、洗い場を譲るためその場から離れる。 もちろんちゃんと椅子とかはシャワーで流してからだよ。

 立ち上がったボクをちょっと残念そうに見る、部長さん。 ふとボクのアザに気付いちゃう。

「ゆ、柚月さん! こんなところにアザ作ってるじゃない。 どうしたのっ?」

 表情を硬くして聞いてくる。

「はい、それ、ボクが貧血起しちゃったとき、お家でつまずいて転んだときに出来たアザなんで……。 もう直りかけです」


 ――貧血でって、それもう2週間も前の話じゃない。 それでまだこんなにはっきりアザが残ってるだなんて。 この子……シホちゃんからも言われてるし、わかってるつもりだったけど。 ほんと気をつけて、ちゃんと見ててあげないとまずいよね。


 ……にしても、ほんと治るの遅すぎない?


「危なっかしいなぁ。 気をつけなさいね? あなた体弱いんだから」


「はーい、気をつけます……」


 あーあ、とうとう部長さんにまで心配されるようになっちゃった。

 ボクってそんなに信用おけないのかなぁ? なんか自信なくしちゃうよ……。


「蒼空ちゃん、まだ露天風呂入ってないでしょ? 入りにいこう?」

 エリちゃんがそう言って声をかけてくれる。


 いっけない、ボクはだかで突っ立ったまんまじゃん。 恥ずかしいなぁ。


「うん。 エリちゃん、さっきはゴメンね? せっかく先行って待っててくれたのに」

「え? ああ、そんなのいいから。 別に気にしてないよ。 こっちこそ蒼空ちゃんの都合考えずにさっさと行っちゃったから……」


「ほらほら! 2人とも。 そんなとこで裸で突っ立ったまんまでしゃべってないで、早く露天風呂行こう! ねっ」


 川上さんの言葉にボクたちは顔を見合わせ、

「「そうだね」」

 口をそろえ笑顔でそう答えると、川上さんについて今度こそ三人で露天風呂の方へ向った。


 それにしても川上さん。 あっ、先輩たちもそうだけど、すっごく堂々として隠す気まったくないよね。



 まぁ、ボクももう今さらなんだけど……。



* * * * * *



 食事は窓から遠くの街の夜景が見えるステキな雰囲気のダイニングルームで食べたんだけど、フローリングなんかもぴっかぴかですっごくきれいだった。

 出てきた食事もペンションの雰囲気通り洋風のお料理で、お魚やお肉のなんて名前の料理か、全然わかんないけど……とにかく、すっごくおいしかった!

 みんなもおいしい、おいしいって、舌鼓を打ってたよ。


 ほんとはお料理が出されたとき、シェフでオーナーのおじさんも出てきて、色々説明してくれてたんだけど……全然覚えられなかったのはナイショ。

 でもこれはボクだけじゃないもんね。 エリちゃんにだけ後でこっそり聞いたら、やっぱ全然わからなかったって言ってたもん。


 熊と友だちってのはホントみたいで実際、2人して色々おしゃべりしてたけど……、オーナーさんはすっごく渋くてカッコイイ感じの人で、正直に言えばなんで熊と? て思っちゃった。


 ごめんなさい熊先生。


 でもまぁ、オーナーさんと奥さんの静流さんとがお似合いだっていうのは間違いないとこだよ、うん。


# # #


 すっごくおいしくて、そして楽しかったお食事の後、みんなお待ちかねの自由時間。

 ボクも楽しみにしてたんだけど……。


 眠気に勝てませんでした。 はい。


 一旦部屋に戻ったあと、お母さんに携帯で、今日どんだけ楽しかったかってことを"いーっぱい"報告して、春奈にもメール送って安心してもらい、心置きなく自由時間を楽しむ準備をし……、

 ラウンジに集まってわいわいやろうってことになってたから、意気揚々、エリちゃんや川上さんと一緒に出向いたまでは良かったんだけど……さ。


 ラウンジもとっても落ち着いた雰囲気で、それに軽く音楽とかもかかっててちょっと大人の空間って感じ。 テーブルやカウンター席には、お菓子や飲み物とか出してもらってあって、ちょっとそれは雰囲気ぶち壊し? って気がしないでもなかったけど。


 ボクったらそんな中、席についたとたん安心しちゃったのかすっごく眠くなってきちゃって……。

 そうなったらもうどうあがいたって無理だった。


「部長~! 柚月さん、寝ちゃいました」


「やっぱお子様には夜更かしは無理なんじゃない?」


「あ~あ、気持ち良さそうに寝ちゃってさ~」


「かわいい……」


 そんなコト言われてるなんて……寝てるボクにわかるはずもなく、そんなボクをサカナにみんなは向井先生が「いいかげん寝なさい!」って怒ってくるまで盛り上がってたらしい。


 そして最後に寝てるボクを真ん中に集合写真まで撮ったらしい。


 これは部屋に戻って、多少目が覚めてから川上さんに聞かされたんだけど。

 ううっ、ボクよだれとか垂らしてなかったよね? 後でぜ~ったい! 見せてもらわなきゃ。


 ちなみに部屋へは、辻先輩に強烈な・・・勢いでゆり起されて、なんとか自分の足で戻った(らしい)んだけど、その時、寝ぼけてふらふらでエリちゃんと川上さんに抱きつきまくってたらしい……ボク。


 これも部屋でニヤニヤ笑いながら川上さんが説明してくれた。 あやまったら、なぜかすっごい笑顔でこっちがお礼いいたいぐらいだからいいって言われた。 何それ?


 それにしても、せっかく夕方までは無難にこなしてたのにぃ。


 結局これじゃ、また春奈にあきれられちゃう。

 ――あれ? でも結局、迷惑かけたりとか……してないんだよね?


 う~、まあいいや。


 明日は、朝から課題曲の練習のはず。

 今日の自由時間のことはすっぱり忘れて、がんばろっと。


展開遅くてすみません。


もうちょっとだけ合宿話し……続きます。

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