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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
1章
6/124

ep5.兆し  ☆

※話数を修正しました。

 あれから10日ほどたち……、


 今は上半身の力をつけるため、がんばってる。

 外はもう8月も半ばになるところで……まだもうしばらくは暑さは続くんだろう。


 そしてボクは自分のカラダが女の子になったってことを、もういやっていうほど……実感させられてしまってた。

 妹の春奈は毎日ボクの様子(面倒)を見に、病院に通って来てくれている。

 今は夏休みだから学校の心配はいらないから……と言って、毎日来なくていいっていうボクのコトバは軽く流され、相手にされない。


 友達とも遊びたいはずなのに……。

 ボクのことは香織さんが見てくれているんだから無理しなくても大丈夫なのになぁ。

 彼氏とかいないのかな? 春奈はかわいいんだから中学で男の子が放っておくはずないんだ……。


 お母さんは、さすがに仕事があって毎日はこれない。平日は夜、週末のみ朝から来てくれるって感じだ。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん、聞いてる?」

「えっ? ぼ、ボク?」


「そう、お姉ちゃん。私がここで呼ぶのはお姉ちゃんしかいないんじゃない?」

「あ……そ、そうだね。ご、ごめん。 えへへへ」


「もぉ! いいかげん慣れてもいいんじゃないかなぁ? それともやっぱ見た目に合わせて私がお姉ちゃんってことにしましょうかぁ~?」


 と、途中からいじわるな表情で"からかう"ように言う春奈。


「そ、それはちょっと勘弁してよぉ! ね、これからはホント気をつけるから。さっきはちょっと考えごとしてただけなんだ」


 話し声だけ聞いてたら(まぁ実際は外見もそうなんだけど……)間違いなく春奈の言ってることが正論になってしまうから始末に負えない。年上ぶっても出てくる声は小さい女の子の、かわいらしい声なんだから。


 春奈、そしてお母さんもボクのことはもう「お姉ちゃん」って呼ぶことにしたらしい。

 病院の事情を知ってる人にも、そうしてもらうよう話してるみたい。

 外見が女の子なのにいつまでも「お兄ちゃん」ではあまりにも変だもんね。(ホントはお姉ちゃんっていうのにも相当な違和感があるわけなんだけど……春奈に妹扱いされるのだけは、ぜったい却下だ!)


 ボクの名前については、この病院に入ってすぐ話しはついてるらしくって「蒼空」のままだ。

 女の子でもある名前だし、無理して変える必要もないよね? ……ボクも変わってなくて良かったと思う、13年間使ってきた名前だしけっこう気に入ってるんだ。



「お、ね、え、ちゃ~ん!」

「は、はい!」


 し、しまった、また考えごとしちゃってた……。


「な、なに?」

「さっきから話しが進まな~い!」


 春奈が頬を膨らましてふてる。……かわいいな。


「今日はやっとあれ……、とってもらえるんでしょ?」


 といってニヤリとする春奈。


「うっ、知ってたんだ? 春奈」

「知ってますよぉ……お姉ちゃんのことならなんだって」


 何それ? いやすぎなんですけど……。


「香織さんとはもうすっかりお友達なんだからぁ♪」


 か、かおり……さん。 看護師さんには守秘義務はないんですか? 身内はスルーですか? やっぱ、ないんだよね? ……はぁ。


「でもよかったね? これで病院の中だけでも動けるようになれるし、ようやくリハビリも本格的に出来るようになるね!」

「う、うん! そうだね、ありがとう」


 春奈が言ってるのは、は、恥ずかしながらカテーテルのことで……、点滴はすでに1週間前に外してもらってて、軽いスープとかゲル食を食べるようになってたんだけど、その……おしっこのほうは上半身がある程度しっかりするまでは大変ってことで……。


 もう勘弁して~! ハズカシイっ。


 動かすのが大変だった上半身も、毎日体を起こしてもらい……軽い動きを繰り返しさせてもらうことでずいぶんマシになってきて、上半身くらいなら自分で起こせるようになってきてる。

 もちろんサポートは、お母さんに春奈、香織さん。どんだけ感謝してもしきれない。


 石渡先生にもいろんな検査をいっぱいされたけど、結果は問題無いのか、特に何にもいってこない。

 まぁ、元々目が覚めないだけで体自体には何の問題もなかったみたいだし。

 代わりに病室に来ると、変なことを言って帰ってく……、よくわからない人だ。


「あぁ、早く外に出てみたいなぁ……」


 ついそんな想いを口にしてしまうボク。


「お姉ちゃんったら……気、早すぎ! まだこれからリハビリだっていうのに……もう。

 それに初めて出るのがこんな真夏の……強い光が照りつける中じゃ」


 そう言ってちょっと心配げな顔をボクに向ける。


「う……ん、そうだけどさ……」


 しょぼくれるボク。

 でもめげずに、


「じゃあさ、朝とか夕方とかさ、日差しの弱いときなら大丈夫だよ……ね?」

「う~ん、どうなんだろ?」


 お、悩んでる悩んでる? もう一押しかな♪

 春奈もホントは一緒に外を歩きたい(ボクは車イスだろうけど)と思ってるだろうから、悩んでるんだろう……。


「大丈夫だよ。そんな……」


 ともう一押ししようと言いかけたところに……


「あら、春奈ちゃん……今日も早くからごくろうさま! お姉さん想いのいい娘ちゃんネ」


 香織さん……看護師の西森さん登場。


「もう、香織さん子供扱いする~」


 春奈がふてる。(そんなこと言うのはやっぱ子供だと思う……)

 それを笑顔であっさりスルーし、


「聞こえてきたわよぉ? 蒼空ちゃん、お外に出たいの? でも、まだダメよ。もうちょっとガマンして欲しいな?」


 すらっとしたスタイルの、程良いくびれの腰に手をあてて、ショートボブの髪が似合うそのキレイな顔でかわいく睨む。

 そして、ここからちょっと真剣になる。


「先生からもお話しがあったでしょう? 蒼空ちゃんのその体のこと……、お日さまの光を直接浴びるのは体にも、なにより目にもすごく良くないの」


 諭すように話す香織さん。


「それに体自身もまだ免疫力が付いてないから、外の悪いウイルスなんかにすぐ侵されちゃうでしょう? ん?」


 最後に問いかけるようにボクを見る香織さん。


「はぁい……」


 あきらめて返事をするボク。


挿絵(By みてみん)


 そう……ボクの体って、お日さまの光――、紫外線に弱いみたい。

 真っ白い髪に赤い目、白い肌は、"先天性白皮症" といって体の中のメラニン? って色素が欠乏してしまっているため、そう見えるらしい。

 だからお日さまの光に当たると、ひどい日焼けや目を傷めちゃったりするから十分な対策をしなきゃいけないみたい。

 おかげでボクの病室の窓もずっとカーテンが引かれたままで、明るいうちは外も見れない。


 免疫力も、ずっと寝たきりだったせいもありすごく弱くて……ちょっとした風邪でも大変なんだって。


 命あってのこととはいえ……悲しいな。

 しょんぼりしてしまったボクのアタマをなでながら香織さんが言う。


「大丈夫、これからずっと出るなって言ってるわけじゃないのよ? それについては私たちにまかせて? ね?」


 そう言いながら最後にぽんってボクのアタマを軽くたたくと、


「さて、それでは今日はお待ちかねのぉ……」


 と言っていたずらっぽく笑う香織さん。

 それを見てこちらはニヤリと露骨に笑う春奈。


 ボクは恥ずかしくてたまらない……のだけど多勢に無勢。

 思わずこう言ってしまった……。


「や、やさしくしてね……」



回復のペースは実際とは違うと思いますし、色々な病状・表現についてもシロウトの想像です。

物語ということでその辺はご勘弁いただけたらうれしいです……はい。

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