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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
59/124

ep55.いろいろ測定しよう!

※話数を修正しました。

 はぁ~、今日はいつにも増してガッコに行くの憂鬱だなぁ……。

 ボクはガッコへ向うバスの中、もう何度同じこと考えたかわかんない……。


「お姉ちゃん、ほんっとっ! あきらめ良くないよねぇ? いいかげん観念したらぁ?」

 そんなボクを見て春奈が、これも何度目かのあきれた声を上げる。

「そ、そんなこと言ったってさぁ……。 ボク、絶対みんなのいい笑いものになっちゃうもん」

「も~、そんなことないってば。 みんなお姉ちゃんのことはわかってるんだから。 笑うわけないじゃん!」

「う~、だってぇ……」


 ボクがバスに乗り、もう当然のように空けてもらってあるシートに、まだ遠慮しながらも座り、それからもなおグズってる理由、……それは今日ガッコである、ある行事のせいなのだ。


 "身体測定"と"スポーツテスト"


 入学して2週間ほどたった今日。

 午前に身体測定、午後にスポーツテストという風に、授業はなく全校一斉で1日かけて実施される行事があるのだ。

 そしてボクはどっち受けるのもイヤでイヤでたまらない。

 だって、自分の体の情けなさを実感させられちゃうんだもん……それもみんなの前で。 そんなのイヤになるに決まってるよ。

 てっきりボク、身体測定はともかくスポーツテストは受けなくてもいいって思ってたのに……。 先生ったら、「体力の把握はしておきたいから、出来る範囲でかまわないから受けてみて」だなんて……さ。


「はぁ……」

 ほんと憂鬱だよぉ。


「どんだけタメ息ついてもダメなものはダメ。 受けなきゃいけないのは仕方ないんだから。 まっ、せいぜい今のうちにタメ息ついとけば? もう知らないよ」

 春奈、怒っちゃった? でも、でもさ……仕方ないじゃん。 どうせボクの気持ちなんてわかってもらえないんだ。 い、いいんだもん、ふんっだ。


 ボクはついには春奈に八つ当たりしちゃう始末だった。



* * * * * *



 登校早々、ボクたちはジャージに着替え、手には身体測定の結果を書き込む測定表を持って、体育館内に設けられた各測定場所に並んでる。 並ぶ場所は任意で、空いてるとこに次々行けばいいんだって。 まぁ、そうは言っても各クラスごと一斉に実施だから、どこも人でいっぱいだ。

 測定するのは、身長、体重のほかに、視力や聴力、心電図にレントゲンとかまで撮るみたいだから忙しいのだ。


 ボク、検査は今まで病院で、散々受けたっていうのにさ……。


「蒼空ちゃん、まだブツブツ言ってるの? 春奈ちゃんも言ってたけど、いいかげん観念しちゃいなよ?」

 沙希ちゃんがボクの後ろから声をかけて来る。 ボクは沙希ちゃんのほかに(杉山)優香ちゃんや(松本)莉子ちゃんといった、仲良しになった子たちとグループになって測定場所を周ってる。 ちなみに、もうみんなのことは名前で呼び合う仲にはなったよ。


「うっ、そ、そうだね。 わかった、もういわない……」

 さすがにボクもしつこすぎ? って思うから、いいけげんあきらめなきゃ……。

 今は身長、座高と体重を測り終えたところ。 数字はナイショ。 けど、とりあえずボクがクラスで一番チビで軽いってことは間違いなかった……。

 沙希ちゃん、励ましだろうか? 無言でボクの肩をポンポン叩いてから、次の場所へとボクを押していく。


 次の場所は視力検査。

 ボクの姿を見て担当の先生は事前に聞いてたんだろう、確認しにきた。

「柚月さん、大丈夫かしら? やれる?」


 ガッコの検査方法は壁に視力検査表を掛けて差し棒? で示したCマークの空いてるとこを当てるやつだ。(当てるって変か) 普段ボクが病院でやってるのは顕微鏡みたいなやつだからちょっと勝手が違う。 なによりガッコのやつだと外の光がまぶしくて眼鏡はずしちゃうと見えるものも見えなくなっちゃう。 まぁ眼鏡かけても、顕微鏡のやつよりは間違いなく見ずらいだろうけど。

 だからボクは先生にそう告げた。


「そうなのね。 じゃ、とりあえず参考までってことで、測定は一応しておかない?」

 先生は一応測定しておきたいのか、そう提案してきた。 もう、まぶしいのになぁ。 でもまぁ、やって見せたら納得するよね。

「はぁ。 わかりました、それじゃお願いします」


 結果は、眼鏡なしだとやっぱ体育館って環境じゃ、外の光が中途半端に入ってきて見づらく、ろくに検査表も見れず測定不能。 次いで眼鏡をかけたときは、まぶしさが多少軽減できて一番上のがなんとか見れたから……0.2程度かな? 

 病院で測った視力は0.3だから、まぁ、そんなもんかなぁ。

「やっぱ、外の光入ると見づらいです……」

「そうみたいね。 はい、測定表。 一応補足も書いておいたから」

 先生はそういってボクに視力を記入して渡してくれた。

 他のみんなもそれぞれ測定が終わり、ボクたちは、聴力、心電図と……、次々と測定を済ませていった。

 心電図やレントゲンはジャージの上着を脱いでTシャツ1枚にならなきゃだめでちょっと恥ずかしい……。 なにしろブラとかしてちゃダメだからって、外すよういわれちゃったのだ。


 ボクも多少なりとも胸が膨らんできてて(ほんとだもん)、最近、胸のさきっちょがちくちくしたり痛くなったりするって、恥ずかしかったけどお母さんに言ったら、ブラジャーつけるよういわれちゃった。

 それでお母さん、買ってきてくれたんだけど、ブラとはいってもまだカップの入ってない、いわゆるジュニア用ってやつ……みたいだった。

 それを初めてつけるときなんて、春奈にずいぶんからかわれちゃった。 ほんと春奈はイジワルだ。 でもまぁ手伝ってくれたんだけど……。

 しかもボクのってワイヤーとか入ってないみたいだから、ほんとならボク、外す必要なかったんじゃないかなぁ? ……まぁ、わざわざ確認なんてしないから仕方ないんだろうけど。


 それにしても沙希ちゃんはじめ、みんな胸おっきい。

 沙希ちゃんなんてDカップは確実にありそうだし、優香ちゃんやひな(陽菜乃)ちゃんもCカップらしい。 莉子ちゃんはAカップだけどそれでもボクよりはおっきいんだもん……。

 ボクってほんと、まだまだ子供体型だ。 やっぱりアレ……、まだ来てないからなのかなぁ? お母さんが、どんなものなのかはお話ししてくれてはいるけど……。


「蒼空ちゃん、蒼空ちゃん?」

「はっ、はいっ!」

 いけない! またいつものくせが。

「蒼空ちゃんの番だよ。 大丈夫? なんかぼーっとしてたみたいだけど?」

 優香ちゃんがちょっと心配げにボクを見ながらいう。

 今はレントゲンを撮るため、専用の車の中で順番待ちしてるところだ。

「あ、ううん、大丈夫。 ちょっと考えごとしてただけだから」

 ボクはそういうと、慌てたためちょっとふらつきながらレントゲン室へ入っていった。



* * * * * *



 午前の身体測定がなんとか終わってようやく昼食の時間だ。


 昼食の時間もボクにとっては安息の時間ってわけでもない。 なにしろ、食堂はボクたちの学年だけじゃなく上級生の人たちもいるから……。

 ボクを見る先輩たちの視線や、「姫ちゃんだ~」なんてはしゃいだ声が聞こえる中、食堂で用意されてる食事をとるのはあんまり楽しいことじゃない。 ぜんぜん落ち着いて食べられないんだもん。

 最初のころなんて(まぁ今もだけど)、春奈や沙希ちゃんが一緒にいてくれてなきゃ、とても落ち着いてごはんなんか食べられなかったはずだ。


 最近は優香ちゃんや莉子ちゃん、ひなちゃんに綾ちゃんも一緒になって食べてる。 それに春奈のお友だちとか、近くでお昼を食べる友だちも増えてきたから、気分的にずいぶんマシになってきた。

 やっぱ、お昼は楽しく食べたいもんね♪ 友だちっていいなぁ。


「あっ、お姉ちゃん、またピーマン残してる。 ちゃんと食べないと大きくなれないよ?」

 ニヤッと笑いながらそういう春奈。

「いいじゃん、ほっといて。 そういう春奈もニンジン残してるじゃん!」

「私はいいの。 もうそれなりにおっきくなってるもん。 ほらぁ」

 胸を下から支える動きまでして見せる春奈。


 むぅ~! さっきの言葉訂正っ。 若干、ううん。 かな~り、いじわるなのもいるっ!


「また始まった。 ほんと仲いいよね、この姉妹」

 ひなちゃんがぽつりと、あきれるようにいった。

 それを聞いたみんなは、激しくうなずいてた。


 も~、ボクいじめられてるのにぃ……。




 はぁ、この後はとうとうスポーツテストだ……。

 でもこうなったらやるだけ、やるしかないもんね。


 やるからには一生懸命やらなきゃ!



* * * * * *



「はい、握力終了ね」

 先生に測定表を渡されそれを見てみる。 右手11kg、左手9kg……。

 これってどうなんだろ?

「沙希ちゃんいくつだった?」

 ボクの後に続いてる沙希ちゃんに聞いてみる。

「私? えっとねぇ……、28kgと25kgだね」

「……」

「蒼空ちゃん、は? 聞いてもいい?」

「……」

「あはは……。 了解」


 くそぉ、次だ、次がんばる!


「ほら、蒼空ちゃん、 がんばれ!」

「む~!」

 マットの上で沙希ちゃんに足を持ってもらいながら一生懸命、体を起こそうとしてるんだけど……。


「「姫ちゃ~ん、がんばれ~!」」


 そんな中、体育館の壁際や入り口あたりで様子を伺いにきてる先輩たちが声援を送ってくれるんだけど……、今はそれどこじゃないの。

 それにっ、姫はやめてぇ~!


「むむ~っ! ……はぁ。 もうだめっ」

 ボクは両手をバタンと広げてマットに寝転んだ。

 先生が測定表を渡してくれる。 上体起こし……。

「2回……」

 泣けてきちゃうよぉ。

「どんまい……」

 さ、沙希ちゃん。 いいよ、気にしなくても。 ……はぁ。


 沙希ちゃんの測定の番。 だけど……。

「沙希ちゃん、ゴメンねぇ……」

 ボクは沙希ちゃんの足、キッチリ押さえてられなくて、変わりに先生に沙希ちゃんの足を押さえてもらってる。

「き、気にしないでぇ~~。 に、にじゅ~さんっ! くぅ、もうダメです」

 ボクと同じようにマットに寝転ぶ沙希ちゃん。

 23回ってけっこうスゴイんじゃ?

 それにひきかえ……。 はぁ……。 もう何度目のタメ息だろ?

 もう、次だよ、次。



「う~っ」

 ボクは思いっきり体をくの字に曲げ、手をめいっぱい伸ばす。

「46cmね」

 先生が目盛りを確認していう。


「わぁ、蒼空ちゃんスゴイ! やわらかいねぇ」

「ホント? えへへぇ」

 やっと褒められたよ! まぁ"長座体前屈" だから体力って感じじゃないけどさ。

 でも、初めてなんだもん。 褒めてもらったの。 うれしい♪


 でぇ、沙希ちゃんの前屈の記録は32cmだった。 沙希ちゃん、体……かたいね?


 この後、反復横飛びは一応やってはみたけど、ボクの足ではまだうまく横に飛んで戻るって動作が出来ず、また、1m飛ぶって動作もうまく出来ず……、測定不能になってしまった。

 ここでも沙希ちゃん、慰めてくれたけど。 ほんと気にしないで? 沙希ちゃん。

 これはまぁ、仕方ないってすっぱりあきらめるもん。


 そしてその次の20mシャトルラン。

 歩けるようになって以来、ボクはまだ走ったことなかった。 さっきの横っ飛びは難しかったけど、前に走るくらいなら少しくらいは……、と思い挑戦してみたけど。

 そもそも20mを時間内に走りきれなかった。 つうかやっぱ早くなんて走れないや。

 てことでまたもや測定不能。

「柚月さん、気落ちしないでね」

 先生がやさしい声をかけてくれる。 いいんです、先生。 想定内ですからこの結果は。

 ちなみに沙希ちゃんは47回折り返した。 まぁ平均なみらしい。


 

 それにしても、今までこんな運動ぜんぜんしたことなかったから、かなり疲れてきちゃった。 このあとの計測、ボロボロになるのは確定事項だよ……。

 この後は、グラウンドに出て50m走、立ち幅とび、ハンドボール投げと、3つの測定が残ってる。


 今日の天気はうす曇。 測定には逆にちょうどいいくらいの天気かも? でもそんな天気でもお日様の光はボクの天敵だ。 日焼け止めキッチリ塗っとかなきゃ。


 早く終わってしまったボクは、他のみんなが終わるまで壁際に座って待ちつつ、持ってきてたポーチから日焼け止め出し、肌に塗って時間をつぶしてた。



 

 でもこの後、あんなことになるなんて、このときボクはぜんぜん思ってもいなかった……。

 



なんなんでしょう?

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