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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
58/124

ep54.先輩たちのお楽しみ?

※話数を修正しました。

 その話しを聞いたのは入学式のあった週が明けた月曜日、同じクラスで友達になった亜理紗ちゃんと穂香ちゃん、2人と初めて食堂でお昼ごはんを食べたときのことだった。(ウチの学校はお昼はみんな、食堂で食べる規則になってる)

 ちなみにお姉ちゃんは、この日、熱出して学校休んでたりする。

 外で長時間かけての集合写真撮影、学校内見学で歩き回ったり階段の上り下りしたりと……、慣れないことが続き、やっぱ色々疲れがたまっちゃったみたいだ。 ほんとにまだまだ目が離せない……よわっちいお姉ちゃんだよ。


「ねぇ、春奈ちゃん。 ちょっと聞きたいことあるんだけど……いい?」

 亜理紗ちゃんが私にそれとなく話しを振ってきた。 彼女は私の右横に座ってる子で、成瀬なるせ 亜理紗ありさって名前だ。 小顔でショートボブの髪、ちょっとつり目がきつい印象受けるけど、話してみると気さくで明るい活発な子だ。 身長は私よりほんの少し高くって、同じ陸上を志す同士みたい。

「ん? なに亜理紗ちゃん?」

 私は食事の手を休め聞き返した。

「あのさぁ、B組の……春奈ちゃんが登下校で一緒の子って、春奈ちゃんとどういう関係なのかな? って思って」

 あ、お姉ちゃんのことね……ふんふん。 やっぱ気になるよね、それ。 で、答えようかと思ったらまだ続きがあった……。

「なんか名字もおんなじみたいだし? 親戚の子なのかな? とか」

 隣りで穂香ちゃんもウンウンと頷いてる。

 あ、穂香ちゃんは私の前に座ってる子で、八坂やさか 穂香ほのかって名前。 彼女は私より背がちょっと低くってすっごいテレ屋さん。 肩より少し長く伸びた髪をおさげにしててすっごく素朴でかわいらしい子だ。 書道をたしなむみたいでその腕はかなりのものらしい。

 それにしても親戚……、そうきましたかぁ、むふふっ。


 両サイドから私を見てくる2人。


「えっと、ね。 B組の一緒に通学してる子はねぇ……」

 私はもったいぶって一拍おく。

 更にじっと見てくる2人。 毎度このシチュエーションって面白い、にひひ。

「私の……お姉ちゃん!」

 私は短くいい切った。

「えっ? 今、お、お姉ちゃんっていった? 春奈ちゃん」

 亜理紗ちゃんが信じられないのか聞き返してきた。

 穂香ちゃんは呆然としてる。


「そう、お姉ちゃん。 B組の子は私のお姉ちゃんだよ?」

「う、うっそぉ……。 だって、あの子……こんな?」

 そういって手をアゴの下くらいの高さで前後させ、私を見ていう。

「ま、まじで? ……あ、もしかして、ふ、双子とか?」

「マジで。 それに双子じゃないし。 そんなに似てないっしょ?」

「た、確かに……」

 お姉ちゃんの顔を思い出しながら比べてるのか、私の顔を見つついう亜理紗ちゃん。

(私の顔はどっちかというとお父さん似。 お姉ちゃんはお母さん似だ。 だから姉妹だけどあんま似てない。 お姉ちゃんはさらに、アレだし……ね)


 いろいろ戸惑う2人に私はいつものごとく、お姉ちゃんの事情を話して聞かせた。


「そうなんだぁ……、あの子、そんな大変な経験してるんだ……」

「か、かわいそうですぅ……」

 亜理紗ちゃんと穂香ちゃんがちょっとしんみりした感じになってそういった。

 でも亜理紗ちゃん、どうもお姉ちゃんのこと年下の子みたいに感じてるみたいで、あの子呼ばわりが続いてる。 ま、実際、ホントに体はお子チャマだけど。


「あ、でももう全然大丈夫だから! 学校来れるくらいなんだから、心配いらないんだよ。 それに、まぁ体がよわっちいのは生まれつきなんだからしょーがないしね」

 私はそういってわざとらしいくらい明るくいってみせる。


「うーん。 じゃ、じゃあ本来ならあの子って5年生ってこと? あ、あれで?」

 今なお、信じられないみたいな口ぶりの亜理紗ちゃん。 その気持ちはよーくわかるけどね。

「ふふっ、まだ納得いかないみたいだけど、マジほんとだから。 ……まぁそーゆうことだから、お姉ちゃんのこともまたよろしくしてやってね?」

 私はそういいつつ、左右の2人の顔を交互に見やりニッと笑って見せた。


「はぁ、世の中驚くことは多いけど、こんな身近にあったなんて……」

 亜理紗ちゃん、ようやく落ち着いたのか、ため息まじりにそういって私のほうを見た。

 その顔はまだ言いたいことがあるみたいで、続きの話をしだした。


「元はと言えばこの話をするために、その……春奈ちゃんのお姉さんの話、したんだけどさ?」

 むむ、何だろ? でもまだいいにくそうだなぁ、亜理紗ちゃん。

「私のお姉ちゃんってのがさぁ、生徒会で副会長してるんだけど……」

「えっ、そうなの? すごいねぇ、副会長のお姉さんかぁ。 でも姉妹で同じ高校だなんて私とおんなじじゃん。 まあこっちはぜんぜん頼りない姉キだけど」

 私はそういって亜理紗ちゃんのお姉ちゃんを持ち上げ、私のお姉ちゃんを落とした。 ゴメンねお姉ちゃん! にひひ。

 そんなことないよっ、とかいいながら亜理紗ちゃんは話しを続ける。

「でね、生徒会って対面式はもちろんだけど、その前の入学式や、新入生説明会、入試に至るまで、会場準備やその場での案内とかで色々借り出されるんだって」

「ふーん、大変だねぇ? 生徒会入ってる人たちって」

 私は話が見えなくてとりあえず相づちをうっておく。

 穂香ちゃんも不思議そうな顔して聞いてる。


「で、こっからが本題!」

 亜理紗ちゃんがそういって私たちの顔を見渡して続ける。

「入試以降、やたらかわいらしい……1年生と間違えそうになっちゃう女の子が、4年に入学してくるって話が生徒会内で盛りあがってたらしいの」

 えっ? な、なんかそれ……。

「その子、試験のときとか説明会のときは杖を突きながら、たどたどしい足どりで歩いてたらしくって、すっごい保護欲かきたてられたっていってた」


「そ、それってうちのお姉ちゃん……のこと、だよね? やっぱ」

 私は思わず確認した。

「……みたいね。 で、とどめにあんな見たことないような白い髪に赤い目でしょ? だから対面式の時にはそれはもう、みんな盛り上がりもピークで……」

 すごかったらしいよって亜理紗ちゃんは私に話す。

 そしてそれは、生徒会のみならず上級生全体に広がっていってると? そういう訳なんだね? 亜理紗ちゃん。


「もう大変みたい。 それに誰が言い出したのかお姉さんのこと、『姫』とか『姫ちゃん』って呼ぶ先輩もいるらしいし。 ケータイや写メとかもあるから、そういうのって広がり出すと早いよ?」

 亜理紗ちゃんがちょっとうれい顔で私にいう。


「はっ、はぁ~!?」

 な、なにそれっ? どこの少女マンガの世界なのよっ?

「ふ、ふふっ、ま、マジなの? それ。 ちょっと話しについてけないんだけど……」

「……でも、なんかわかる気がしますぅ」

 ぽつりと穂香ちゃんがいう。

「げっ、穂香ちゃん?」

 私がそう聞き返すと穂香ちゃん、顔を赤くしてうつむいちゃった。

 亜理紗ちゃんはそれを生暖かい目で見てた。


 私はどっと脱力感にみまわれちゃったよ。

 ……ったく、これが女子高のノリってやつなんだろうか?

 そういや穂香ちゃん、中学からずっとここに通ってるんだっけ? 上級生で騒いでるのも案外そんな人たち? ……ま、さすがにそれはないよ……ね。


 それにしたって……お姉ちゃん。 こりゃ、この先大変かも?

 ほんと大丈夫かなぁ……。



* * * * * *



「ひ、ひめぇ? ぼ、ボクが?」

 春奈の話しを聞いてボクは呆気にとられちゃった……。

「そう、『姫ちゃん』なんだって? お姉ちゃんは。 なんか心あたりとかない?」

「心あたり? そんなこといったって……」

 ボクは今日までの、まだ少ないガッコでの出来事を思い返す。

 でも、そんなこと直接いわれたことないし……。

 ボクを見てウワサする声が聞こえてくるのはいつものことだし。


 しいていうなら……、

「むぅ~、バスの席、空けてもらってあった……とか?」


 そう、スクールバスの席。

 先週までも座ってた先輩が譲ってくれたりしてたけど……、今日乗ったときはもう初めから席空いてた。 ボク、最初は遠慮して座らなかったんだけど、周りの先輩たちがボクのために空けてあるんだからって、強引なくらいにすすめてくれるから……、それじゃあっていって座っちゃった。


「あっ! そういや私、思い出した! おととい、お姉ちゃんが学校休んだととき、バスでいつも一緒になる先輩に、「姫ちゃんは?」って聞かれたような気がする。 まぁ、その時は何いってるんだろって思っただけだったけど……」

 春奈が突然そんなコトをいい、にやけた顔をする。

 でもボクはあんまりうれしくない。

 そりゃ席を空けてもらうのはありがたいし、感謝もするけど……。 そんなことで特別扱いされたくないし、それに……そのせいで誰かから反感とか持たれちゃったりしたら……。


 そんな不安が顔に出ちゃったのか春奈がいう。

「お姉ちゃん。 心配なのはなんとなくわかるけど……、あんま気にしなくていいんじゃない? 今回のコトなんて、なんつうか……生徒会の人たちから広まったみたいなもんだし、なによりさ、女子高ってこんなことありがちなんじゃない?」

 まぁ、ちょっとお姉ちゃんは特殊かもしれないけど? と最後に余計な一言入れながらも春奈が安心させるようにボクにいった。

「う、うん……。 そりゃそうかもしんないけど……」

 春奈のいいたいこともわかるけど……、なんかボク、悪い予感しかしないよぉ。


 先輩たちの暇つぶしの……、いい"おもちゃ"にされちゃいそうな……そんな予感。


 ほんとかんべんして欲しい……。



* * * * * *



「はぁ」

 ボクはベッドの中で何度目かのため息をつく。


 昨日あんな話聞いたもんだからなんだかガッコ、行くの気が進まない。

 だからベッドの中でもぞもぞしつつも、なかなか起きる気にならない。 ほんとならもうとっくに起きなきゃいけない時間なんだけど……。


『コンコンッ』

「お姉ちゃん! 起きてるぅ~?」

 やっぱボクが起きてこないから春奈、起こしにきちゃった?

 ……もう、いやだなぁ。


 ボクがなおもぐずぐずしてたら……。

『ガンガンッ!』

「お姉ちゃ~ん? コラー! もう、入るよっ!」

 あちゃ~、とうとう怒っちゃった。 気、短いなぁ……。

 ドアをスラっと勢いよく開けて、春奈がずんずんと入ってきちゃった。


「お姉ちゃん! もう、早く起きないと遅刻しちゃうよ? なにぐずぐずしてるのよぉ?」

「ん~、ガッコ行きたくない……」

 ボクはシーツで顔を半分かくしながら春奈にいった。

「はぁ? なに寝ぼけたこと言ってるわけぇ」

 春奈はそういうと強行手段に出てきた!

「ほら、起きろぉ~!」

 シーツをガバっと引っぺがしボクの体をあらわにすると、両手をわきわきしながら伸ばし、脇の下あたりを思いっきりこそぐり出す。

「きゃ、キャ~! は、春奈、や、やめてぇ~!」

 ボクの肌って刺激にすごく敏感だから、こそぐり攻撃は最も苦手とするところなのだ。

「ほらほら、起きろ~♪」

 こちょこちょこちょ~と変な声と共にこそぐり続けてくる春奈。

 その手がだんだん脇から前の方に移ってくる。

「春奈、や、やめてっ、起きる、もう起きるから~! あ、あんっ」


 ううっ、思わず変な声出しちゃった。 は、恥ずかしい……。


「お姉ちゃん……。 やっぱ女の子だねぇ? にひひ」

 ニヤリとイジワルな顔をして笑う春奈。

「それに胸、びみょ~に成長してきてない? なんかふくらんだ感じしたよ~?」

「は、春奈っ、どこさわってるのさぁ! エッチ~。 もうっ知らない!」

 ボクは一応抗議したものの、顔は真っ赤で、恥ずかしさが先にたっちゃう。 胸は確かに少しくらいは成長してる気がするけど……まだまだほんの少しだ。 春奈と比べると悲しくなってくる……。

「ふふっ、何を今さら。 お姉ちゃんの体なんて、私、隅々まで知ってるもんねぇ~」

「す、隅々って……、は、春奈~」

 ほんとにニヤニヤとイジワルイ顔をしていう春奈。 も~! ほんと憎たらしいんだからぁ。

「ほらほらっ、もういいでしょ? いいかげんマジ遅刻しちゃうから。 ごはん食べよ?」

 春奈はそういうと、ボクの手を取りベッドから引きずり出す。 ボクも結局それに従い食堂へと向った。


 ……これは妹に負けたんじゃないよ? 戦略的撤退ってやつなのだ。 やっぱ遅刻するわけにもいかないし……。



 こうして今日も一日が始まった。

 ガッコで平穏無事に過ごせますように……。


 そう願わずにはいられない――。



ちょっと悪ノリしすぎ?

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