ep51.初登校と初友達
※話数を修正しました。
高校に通うことになったボクの朝は、6時30分起床で始まる。
お家だけが全てだった今までと違う、新しい生活。
学校に通う。
すっごく楽しみだったけど、こんなに朝起きるのがつらいだなんてぇ~!
ただでさえ、なんかガッコ行きたくない憂鬱な気分なのにさっ。
いきなりめげそう……。
眠い目をこすってむりやり起きて制服を着る。
普通、大き目の制服を買って成長に備えるものだと思うけど……、ボクのはピッタリサイズ。 合うサイズの清徳の制服がなかったから完全オーダーメイドだ!
……なんかうれしくない。 ピッタリサイズで作るなんて、お母さん、ボクが大きくなんないって思ってるのかなぁ? もうっ。
ボクのこの目立つ白い髪は、学校へ行くときは結局、ポニーテールにするってことになった。 ボクはまだ自分でキレイにまとめられないからお母さんにしてもらう。
だからとりあえず起きたときは、きれいに梳かすだけだ。 けっこう長くなった髪は、今では腰に届きそうなところまで伸びてきてる。
ボクはもう切りたいんだけど、春奈やお母さんが切っちゃダメってうるさいからなかなか切れないのだ。 お風呂で髪の毛洗うの、面倒だからいやなんだけどなぁ……。
制服を着て髪を梳かし、顔を洗ったら今度は朝食だ。
ボクが食堂にいくと、春奈がすでにごはんを食べてた。
ちなみにちーちゃんはボク以上にぐーたらだ。 大学生っていいよね? 自由でさ。 (ボクもちょっと前までそうだったけど、えへへっ)
まぁ、ボクの家庭教師から開放されたってのもあるかもしんないけど……。
「お~! お姉ちゃんがちゃんと時間通り起きてきたよ~! すっごぉ~い」
「もう、うるさいなぁ、春奈は~!」
「だって、入学式んときのお姉ちゃんの様子見てたら、今日は休むぅ~とか、言い出しかねないって思ったんだもん」
ううっ、春奈めぇ、痛いトコ突いてくるんだからぁ……。
「そ、そんなことないもん! 言うわけないじゃん! それが証拠にちゃんと起きてきたじゃんか〜」
「ふ~ん、そうなんだぁ?」
ホントのことなんてお見通しって感じの表情を浮かべて春奈が言う。
なんて顔でボクのこと見るかなぁ、春奈ってば。
「春奈! いつまでもくだらないこと言ってないで早く食べちゃいなさいっ! ほら、蒼空も早く座って」
いつもの姉妹ゲンカをはじめそうなボクたちに、とうとうお母さんのカミナリが飛ぶ。
「「は~い」」
ボクたち2人はそう返事して、あっさり口ゲンカをやめて食事についた。
こんな口ゲンカはボクたちの日課のようなものだった。 本気でいい合ってるわけじゃないから、アッサリ終わっちゃう。
「お母さん、食べたら髪まとめてくれる?」
「もちろんいいわよ。 でも蒼空もそろそろ自分でも出来るように覚えないといけないわよ? 学校行くようになると泊まりで研修みたいなこともあるみたいよ?」
「う、うん……、そうだね。 覚えるようがんばる。 けど……さぁ、それよりもうちょっと髪、短くしちゃダメ?」
ボクはいつものごとくそう聞いてみた。
「だめだめ! お姉ちゃん、切っちゃダメだかんね! そんなキレイな髪なのに切っちゃもったいないよ。 まあ、たまに毛先を切り揃えるくらいでお願~い!」
やっぱ、春奈がまず反対だ。
「そうねぇ、お母さんも出来たら切らないでおいて欲しいとは思うけど。 まぁ、蒼空がどうしてもっていうなら無理じいはしないわ」
お母さんもやわらかく反対……。
「だってさ、お風呂で髪洗うのも大変だし、髪梳かすのもめんどくさいしさ……」
ボクはもうちょっとねばってみる。
するとすかさず、春奈がいう。
「そうなの? じゃ、私が一緒に入って洗ったげるよ! それで髪も梳かしたげる。 それで解決じゃん! にひひっ」
「ええっ、そんなのダメ! いいっ、わかった。 ボクこのままでいいよ」
……結局、いつも通りの顛末だった。
食事後、歯を磨き、再び顔を洗う。 そしてお母さんに髪をまとめてもらったら登校準備完了だ。
ボクと春奈が登校の準備が整い、さあ行こうって時にようやくちーちゃんが眠い目をこすってボクたちの前に現われた。
「おはよ~、蒼空ちゃん、春ちゃん。 今日から登校なんだね。 2人とも制服とっても似合ってるよ」
ちーちゃん、まずは社交辞令からだ。 でも褒められればウレシイんもんね。
そして励ましの言葉をかけてくれる。
「蒼空ちゃん、がんばって高校受かったんだから高校生活楽しめるよう、積極的にいこうね!」
積極的かぁ……そうだよね。 あれだけがんばって受かった高校なんだもん……。
人見知りして憂鬱になって、行きたくないなんて思ってちゃバカみたいだもんね、ボク。
「うん! ありがとう、ちーちゃん。 ボクがんばってみるね! お友達もいっぱい作らなきゃ」
「そう、その意気だよ! そのうちお友達紹介してもらうの楽しみにしてるからねぇ~」
そんな会話をしつつ、ボクと春奈は、お母さんとちーちゃんに見送られ家を出た。
登校は、春奈と一緒に家を出てスクールバス乗り場まで5分ほど歩かなきゃならない。
バスに乗ってしまえば、20分もかからずに学校に着くって感じだからそんなに大変なわけじゃない。 やっぱ歩きがネックなんだよねぇ……。 たった5分なんだけどさ。
バスといえば驚きというか、ありがたかったのは、それなりに混んでる車内で、みんながボクに席を譲ろうとしてくれたことだ。 さすがに知らない人ばかりだし、同じ清徳の生徒なんだし……で、最初は遠慮しちゃったんだけど、みんな(特に先輩たち)が強引なほどの勢いで勧めてくれるし、春奈も座っちゃいなよっていうし……で、恐縮しながらも座らせてもらっちゃった。
バス亭まで歩いたあとバスでも立ったままでの通学は、朝からかなり疲れちゃいそうだったから、実のところすごく助かったし、ほんとのほんとにうれしかった!
「せ、先輩、席譲っていただいて、あ、ありがとうございました!」
ボクは席を譲ってくれた先輩に、ありったけの笑顔と一緒にお礼をいった。
「はぅ! い、いいのっ、気にしなくても。 かわいい新入生のためなんだもの、ほんと気にしないで? うふふふっ」
先輩、なんだかちょっと様子が変だったけど、うれしそうにしてくれてた。
春奈はなんかにやけた顔してボクを見てきてやな感じだ。
それにしても、みんななんでボクに席、譲ろうしてくれるのかな? ガッコからなんか、いわれたりしてるのかなぁ……。
――お姉ちゃんったら、不思議そうな顔しちゃってぇ、みんながなんで席譲ってくれるかわからないって顔だよね、にひひ。 ほんといまだに自分のことわかってないんだから。
真っ白でちっちゃなお人形さんみたいなお姉ちゃんが、手をめいっぱい伸ばしてつらそうにつり革とか握って立ってたら、みんな譲ろうとするに決まってんじゃん。 それに無自覚にあんな笑顔でお礼なんかしちゃったら……。
これは明日からが見ものかも? 楽しみ増えちゃった――。
無事学校前に着き、ボクと春奈は並んで正門から校舎へと向った。
昇降口へ向うまでにもやたら注目あびちゃって、ボクは恥ずかしくって周りに目をやることもできず、ひたすら前だけを見て歩いてた。
春奈は横で、なんか必死に笑い……こらえてた。 なんてやつだよもう! お姉ちゃんが困ってるっていうのにニヤニヤ笑っちゃってさっ。 ふんっだ!
「あの子がうわさの? ほんとちっちゃ~い! かわいぃ~」
「でしょ、でも1年生じゃなくて4年生なんですってぇ」
「キレイな白い髪~! すご~い」
「眼鏡でわかりにくいけど、目が赤いんだってぇ! ウサギさんみたいだよねぇ」
「えっ、そうなのぉ~。 見てみたいよぉ」
「ほんとかわいいわぁ! 妹にしちゃいたい」
「妹といえば、隣りにいる子がほんとの妹さんなんだって!」
「ええっ、まじ? お姉さんじゃないの?」
ほんと、みんな勝手なこと言っちゃってさ。
いくら慣れてるっていっても、ほんとやな感じ。 でも……、どっからそんな情報仕入れてくるんだろ? 女子高ってこわいや。
もう行く先々で注目浴びちゃうから、さすがにちょっといやになってきちゃうよ……。
それでもなんとか昇降口から下駄箱までたどり着き、靴から上履きに履き替える。
下駄箱の場所もボクにぴったりの高さのところにしてもらってあるみたいで使いやすい。 入学式のHRのときといい、学校に協力してもらえてるって感じがする。 ほんとボクは恵まれてるんだと思う。 ……この現状以外はっ。
「お姉ちゃん、もうこれは景色だとか思ってさ、あきらめるしかないよ? 気にするとまいっちゃうし。 それにそのうちみんな飽きるって? だからもう少しガマンしよ? ね」
春奈がそういってボクをいたわってくれる。 ふだんはイジワルだけど、ここぞってときにはやさしいんだ、春奈って。
「うん、大丈夫。 これくらいでまいっちゃったりしないよ。 ありがとね、心配してくれて」
「ふふっ、そう? お姉ちゃんもだいぶ強くなったね? じゃ、教室まで行こっ!」
「うん!」
4年生の教室がある3階までなんとかたどりついたボク。
一段一段、確かめるように階段を上るボクに付き合ってくれた春奈と別れ、それぞれの教室へと向う。
沙希ちゃんもう来てるかなぁ? まだクラスのみんなとは全然打ち解けてないから、沙希ちゃんと一緒じゃない今は、とっても不安。
でもちーちゃんにはがんばるって言っちゃったし。 ……よし!
ボクは決意し、教室へと入っていく。
「おはよ……う」
ボクは教室に、恐る恐る挨拶をしながら入っていった。
ボクが教室に入ったとたん、そこにいたみんながこっちを見た気がするよぉ……。
ボクは弱音を吐きそうになる気持ちを抑え、自分の席めざして歩いた。
「おはよう!」
「おはよっ」
なんかみんなが挨拶してくれる。 ちょっと気分いいかも。
沙希ちゃんの席を見る。 いない。 まだ来てない。 ……がっかり。
「おはようっ」
「うん、お、おはよう……」
最後に自分の席の右横の子が挨拶してくれたのでボクも返して、やっと席に着いた。
スクールバッグを机の横につるし、人心地つくと、今さっき挨拶してくれた子がボクの席まできちゃった。 その子はちょっとテレながらも、意を決したかのようにボクに話しかけてきた。 まわりの子たち、なんかそれにピクリと反応してた……。 変なの。
「あの、柚月さん……だったよね? 私は杉山、杉山 優香っていうの。 これから……よろしくね?」
その子、杉山さんはそう言うとにこっと笑った。 八重歯がかわいらしかった。
「あっ、その、こちらこそよろしくです。 柚月 蒼空っていいますっ」
ボクも慌てて答えて、照れ笑いしちゃった。
「ふふっ、かわいいね、柚月さん。 お隣になったよしみでお友達になってくれるとウレシイなっ?」
杉山さんが早速友達になろうって言ってくれてる。 ボクも別に断る理由なんてない。
「うん、いいよっ。 こちらこそヨロシクね?」
ボクはそう言って微笑みながら杉山さんの顔を見上げた。
――うくっ、強烈です! かわいい!
「あ、いえっ、私こそよろしくお願いします。 うふふっ、良かった早速お友達になってもらえて」
杉山さんがうれしそうにそういった。 そして続けて、
「私、ここに知り合いとか、同じ中学の子とか1人もいなくて心細くって。 だからまずは隣りになった人とお友達になろうって決めてたの」
「へぇ、そうなんだぁ。 ボクはこのクラスに1人、友達いるから……」
――ぼ、ボク? ボクっ娘さんですか!
「あっ、入学式のときのHRで一緒にいた子だよね? 今日はまだ来てないみたいだけど。 大丈夫なのかな? 時間」
杉山さんが教室の前の時計を見ていう。 8時30分……、SHRは8時35分からだ。
「だ、大丈夫じゃなさそう……、どうしたのかなぁ? 沙希ちゃん」
「沙希ちゃんって言うんだあの子。 柚月さんとは中学のぉ……、あっ! ご、ごめんなさい……」
杉山さん、ボクが中学行ってないってこと思い出したみたい。
「あっ、いいの。 それくらい気にしないで? 沙希ちゃんとは……」
ボクが沙希ちゃんと知り合ったきっかけを話そうとしたら……。
息を荒げて教室に駆け込んで来た女の子。 その子はそのまま一直線に自分の席まで行くと「間に合った~」と言ってへたり込んだ。
なかなか息が整わない、その女の子はもちろん! 沙希ちゃんだ。
時計は8時33分……2分前だ。 ギリギリセーフだね、沙希ちゃん。
ボクは沙希ちゃんの方を見て手を振った。
沙希ちゃんはそれに気付き、ニッコり笑って手を振りかえしてくれた。 それと同時にちょと驚いた顔をする。
そっか、ボクの前に立ってる杉山さんにビックリしてるんだ? どうせボク1人で友達なんて出来ないって思ってたんだろなぁ? ……ふふふっ! でも友達出来たもんねぇ。 どんなもんだ~!
「柚月さん、どうしたの? 急にだまりこんじゃって」
あ、いけないついいつもの考え込むクセが……。
「ううん、なんでもない。 沙希ちゃん間に合って良かったなって思って……。 あ、沙希ちゃんは名字は渡辺っていうんだけどね」
「あ、うん、自己紹介面白かったから覚えてるっ。 かわいいのが好きって、もしかして……ねぇ? くすっ」
杉山さん、沙希ちゃんの正体をすでにあばきつつあるよ? これは。
「また後で紹介してくださいね? 柚月さん!」
「うん、喜んで♪」
うん、杉山さん、いい人みたいだ! 沙希ちゃんにもぜひ紹介しなきゃね。
……あっ、先生きた!
「はーい、みなさんおはようございま~す!」
こうしてボクの高校生活が始まった。
この後は対面式っていうのがあるらしい。 先輩と新入生が向き合って顔合わせする式典らしい……。
ボク、なんかいやな予感しかしない……。
まぁ、それでも入学式のときの憂鬱な気分から比べたら随分いい方向になってきた気がするよっ!
これから毎日……、がんばろ~!
主人公は鈍いのがデフォルトなんでしょうか?(笑)