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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
54/124

ep50.ホームルームと蒼空の戸惑い

※話数を修正しました。

 ボクと沙希ちゃんが教室に入ると、すでに席に着いてる子たちもけっこういた。 さすがにみんな緊張してるのか、しゃべってる子はほとんどいない。

 そんな中、ボクと沙希ちゃんは自分の席に向って歩いていく。

 教室の前を歩くから目立ってしまいそうでいやだなぁ……、っていうかやっぱ注目されちゃてるよ……ボク。

 なんかボクのこと興味津々って感じで見てる子、1人や2人じゃすまない感じなんだもん。 これHR前だからいいけど、終わったらどうなっちゃうんだろ? ちょっと心配になってきちゃう。


 ビクビクしながらもなんとか席に着いたボク。 沙希ちゃんは言ってたとおりボクの左斜め後ろだ。(間に1人入ってるけど) 見ると手を軽く振って笑顔を見せてくれた。 あぁ、ほんと沙希ちゃんが同じクラスにいてくれて良かった! ボク1人だったら心細くってどうにかなっちゃったに違いないもん……。


 春奈もとなりの教室でしっかりやってるかな?

 ボクは自分のことを棚に上げ、春奈の心配をしてみたりする。 まぁ、春奈のことだからこれは余計な心配に違いないんだけどさ……。


 人のことよりまず自分のことだよね。

 ボクはイスにキッチリ座りなおし、気持ちを落ち着かせようと背筋を伸ばし前を見た。

「あっ」

 ……つい小さな声、出しちゃった。 黒板になんかいっぱい書いてある。

 チョークを使って書いてあったのは、"入学おめでとう!"の大きな文字。 それに黒板を目いっぱい使って、たくさん書いてあるかわいいイラストだった。

 きっと先輩たちが一生懸命書いてくれたんだろうなぁ……。 ボクはそんなことを想像しちょっと気分が和んだような気がした。


 そして教室の席が、全て新入生で埋まるのを待ってたかのように、入学式でも紹介されてた先生が教室に入ってきた。

 ざわついてた教室内が静かになった。


「はい、みなさん、こんにちは!」


 先生は教室に入るとまず挨拶をみんなにしてきた。

 でもみんな周りの様子をうかがっているのか、まばらにしか挨拶を返さない。

 ボクも一人だけ声だしてしまうのがいやでちゃんと返せなかった……。


「あ~ん、元気がないなぁ? もいっかいしよっか? こんにちは~!」


「「「こんにちは~!!」」」


 今度は、みんなが一斉に挨拶を返した。

 もちろんボクも。 ちなみに沙希ちゃんはさっきも今も元気に挨拶してた。 さすがだね、沙希ちゃん!

 でもこんなのって、なんか小学生や中学生みたいだよ。


「はい、よく出来ました! みなさん清徳入学おめでとうございます。 あっ、それと中学から上がった人は進級おめでとう! かな?」

 先生はそういってボクたちの入学を祝福してくれながら教室内を見渡した。

 一瞬ボクも先生と目が合った気がする、かも。


「私は4年B組の担任をすることになった、来生(きすぎ) 多香子(たかこ)といいます。 担当教科は国語です。 これから1年みなさんと一緒に過ごすのがすごく楽しみです! 一緒にがんばって楽しい学校生活送れるようにしましょうね!」

 先生はそう言って話しを切り出すと、これから学校生活を送っていく上での注意事項の説明を始めた。


 来生先生は身長160の半ばくらい、ちーちゃんと同じかちょっと低いくらいで、大人の女の人としてはちょっと細身な感じだ。 ミディアムヘアの毛先は軽く内側にカールがかかってて、前髪は目のちょっと上くらいで右に流してる。 細面の顔に太目の赤茶色のフレームの眼鏡をかけてて、笑うとエクボができてかわいい感じがする。 歳のころは20代後半ってとこじゃないかな?


「はい、ではさっそくですが……、みなさんほとんどの人が初対面、もちろん先生もそうです。 ですからお互いを知るためにも1人ずつ自己紹介をしましょう! ちなみに今の席順は、廊下側の前から出席番号順になってま~す。 それじゃあ……、窓側の前から順番にお願いね?」


 窓側の子ったらガクッてなってる。 てっきり廊下側からだと思うよね……来生先生、案外いたずらずき?

 そしてその子はあきらめて自己紹介を始めた。


 いやだなぁ、みんなの前で立ってしゃべるの……。

「はぁ……」

 思わず小さなため息をついちゃうボク。

 でもそうやってボクがぐじぐじ考えてる間にも自己紹介は進み、沙希ちゃんの番がきた。


「渡辺 沙希です。 ・・・中学出身です。 趣味は漫画やアニメを見ること。 あとかわいいものが大好きです! よろしくお願いします」


 沙希ちゃん、漫画やアニメ好きなんだ? そういやボクたちって、たまに遊んでもそんな話したことなかったような……。 まぁ時々あやしい言葉、発してることあったような気もするけど。


渡里わたり 絵梨香えりか……。 ・・・中出身。 よろしく……です」


 ずいぶんあっさりした子だなぁって思い、一番後ろで話すその子を見ようと、振り返ってみる。 あっ、入学式でとなりに座ってたすっごく背の高い子だ!

 へぇ、渡里さんっていうんだ。 なんかしゃべるの苦手なのかな? ボクとおんなじだ。 えへへ。


 そうやってボクがいらないこと考えてると、来生先生がボクに向って何か言ってる。

「柚月さん? あなたの番よ?」

「はっ、……はい! ごめんなさい」

 し、しまった! 後ろからボクにまわってくるんだった……、ああぁん、目立っちゃったよぉ。 ボクは慌てて立ちあがった。


 ううっ、なんかみんながボクのこと見てる気がする……。


「ゆ、柚月 蒼空です。 そ、そのぉ、中学は、……出てません。 趣味も……特になくって、そのぉ……あっ、甘いもの食べるのが好きです! 特に苺ショートが大好き……はっ! す、すみません変なこと言っちゃった。 よ、よろしくお願いしますっ」

 ボクはそういって慌てて座った。

 クスクスって笑い声の他に、カワイイとか、色白い~とか、いろんなささやき声も聞こえてくる。 はっ、恥ずかしいよぉ……。


 ボクは恥ずかしくって、その後の子の自己紹介もろくに聞くことなく縮こまり、ひたすら終わるのを待ってた。 ちなみにボクのクラスは30人編成。 全員の顔と名前、ちゃんと覚えられるかちょっと心配。


 ――ようやく全員の自己紹介が終わると来生先生がまた話しをはじめた。


「一緒のクラスになったみんなは、今日からお互い助け合っていく仲間でもありますよね? そんなみなさんに先生からお願いがあります」

 そういってから来生先生はボクの方をちらっと見て、再び前を見てみんなに話しを続ける。


「ここに座っている柚月さんのことです。 どうやらみなさんも、さっきから気になってるようですが……、後で柚月さんがみなさんの問いかけにイチイチ説明しなくていいように、先に先生からお話しを少ししておきます」

 そういってから来生先生は、いいかな?って感じでボクの方を見た。 ボクは先に先生から説明してもらえるなら願ったりなことだから、大きくうなずいた。


「それじゃまず……、先ほど本人の自己紹介でもちょっと言ってたけど、柚月さんは中学は出ていません。 それに相当する試験を受けて、高校入試に受かって当校に入学しました。 中学へは病気が原因で行けなかったのですが、今はもちろん治って普通の生活を送ってます」


 来生先生の話に教室内がちょっとざわざわしだした。

 ボクはとても顔を上に上げられない……。

 そして先生の話は続く。


「でも、まだまだみなさんと一緒に運動したり、動き回るのには無理があるってことなの。 だからみなさん、柚月さんがなにか困ってるようなら助けてやってください。 もちろん何から何まで、手助けしてやってというのじゃないの。 それは本人のためにもならないですからね? それに本人からはたぶん言いにくいでしょうから……ですからみなさんが、自分の判断でサポートしてくれることを期待してますね!」 

 

 みんなが一斉に「はいっ」って返事を返してくれた。

 ボクはなんだかうれしいような、恥ずかしいような、ちょっとなさけないような……複雑な気持ちだ。


「あと柚月さんの外見についてです。 頭髪等、柚月さんの髪の色は白いですが、これは決して染めたり、色を抜いてるわけではないのね。 先天性白皮症アルビノという生まれながらにして色素がないという病気のため、白くなってしまったということなの」


 みんな、そうなんだぁ、とか、その病気知ってるとか、口々にささやいてる。


「その病気はお肌や目にも影響が出てて、直射日光にすごく弱いし、視力も弱いらしいの。 だから柚月さんの席は、一番前で固定になりますからこれも承知しておいてくださいね」

 ここまで来生先生が説明すると、さすがにみんな軽い気持ちで話しにくくなったのか、教室内は静かになってしまった。

 ボクはもういたたまれない気持ちになってしまった。


 はやくホームルーム終わってくれないかなぁ……、ボクはそんなことを考えながら、すでに別の話題になった来生先生の連絡事項に耳を傾けた。


「最初のホームルームは以上かな? 明日からは色々忙しい日々が始まります。 しっかり体を休めて、明日も元気な笑顔を見せてくださいね」


 クラスのみんなの返事を確認すると、最後にもう一つ連絡を来生先生が言う。


「それじゃ、今から昇降口前の階段で保護者の方を交えた集合写真を撮りますから外へ出てくださいね。 写真を撮ったらそのまま解散ですから忘れ物しないようにお願いします。 それでは移動してください」


 その言葉を合図にみんな一斉に席を立ち、HRでの配布物など荷物をまとめて移動を開始した。 早速新しい友達を作ろうと動き出してる元気な子もけっこういる。 みんなすごいや、ボクなんてずっとビクビクして時間が過ぎるの待ってたのに……。


「蒼空ちゃん! 大丈夫? 元気ないよ?」

 沙希ちゃんがボクのところに来てくれた。

 心配かけちゃったみたいだ……、ダメだなぁボク。 こんなことぐらいで落ち込んじゃうなんて。

「ありがと、沙希ちゃん。 大丈夫、ちょっと自分の情けなさに自己嫌悪しちゃってただけ」

 ボクはそういって微笑んだ。

「なら、いいんだけど……、じゃあとりあえず外、いこっか? 春奈ちゃんも早く合流したくてうずうずしてるだろうし」

「うん、そうだね! 行こう、いこう!」


 ボクが荷物をまとめたところで、沙希ちゃんはボクの手をとり教室から出るべく歩き出した。 そんなボクたちに周りの子たちが声をかけたそうなそぶりを見せるけど、実際声をかけてきた子はいなかった。

 まぁ、早くお外に行かなきゃいけないし、そんな余裕もないか?


 廊下に出てとなりの4-C組の教室前に行くと驚くことに春奈ったらもう知らない子たちと楽しそうにお話ししてた。

 ボクたちに気付くと春奈はその子たちと手を振って分かれ、ボクたちと合流した。

 聞くと、どうやら春奈の席の周りに座ってた子たちみたい。


 ほんと春奈の外交手腕には驚くばかりだ!


 下りの階段はいつもながらつらいなぁ、そんなことに多少苦労しながらも撮影場所の昇降口前の階段に到着。

 そこにはすでに保護者の姿もあり……、


「お母さん!」

 ボクは思わずそう呼びかけると、春奈や沙希ちゃんのことも忘れてお母さんの元へと歩み寄った。

 ボクは周りの目があるにもかかわらずお母さんに抱きついちゃった。


「そ、蒼空、どうしちゃったの? ほら、みんな見てるわよ」

 ボクの甘えっぷりぷりに戸惑うお母さん。 やっぱ周りの目が気になっちゃうみたい。

 しかたない……、もう離れよう。 元気もだいぶもらったし。


「お母さん、ゴメンね。 急にこんなトコで甘えちゃって……えへへ」

「まぁ、いいけど。 蒼空ももう高校生でしょう? それなりの自覚はもちなさい?」

 そう言いながらもボクのアタマをなでてくれるお母さん。 気持ちいい。


「ほんとお姉ちゃんって甘えんぼだよね? やっぱ中学の新入生のが良かったんじゃない?」

 春奈がニヤリと笑っていじわるを言う。

「ふーんだ、いいんだもん、ボクはボクなんだもん。 思うようにするもんねぇ。 いぃ~だ!」

 ボクも負けじと言い返してやった。


 そんなボクと春奈のやりとりに安心したのか、沙希ちゃんもかわいい笑顔を見せてくれてる。


 やっぱ知らない人の中にいるのはボクにとってすごいストレスだったみたい……。

 こんなことでボク、高校生活やってけるのかなぁ? ちょっと心配になってきちゃった。



 まだ高校生になったばかりの初々しい女子高生たち。

 そんな新しいクラスのみんなと、その保護者を交えて集合写真を撮影し、(ボクにとっては)長かった今日の入学式が終了した。



 明後日からの学校生活。

 うまくやっていけるのかなぁ? ほんと心配になってきちゃった……。


 ずっと待ち遠しかったはずなのに。




 憂鬱ゆううつだぁ。



うーん、難しい……。

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