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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
53/124

ep49.入学式

3章開始です。


※話数を修正しました。

 4月4日の日曜日。

 今日はとうとう清徳大付属女子高等学校の入学式だ。

 

 ボクが無事この日を迎えることが出来たのは、お母さんや春奈、伯母さんにちーちゃん、それに病院の石渡先生に香織さん、あっ、県警の麗香さんも。そして……、女の子になってから出来たお友だち。

 そんなみんなの後押しがあったからこそだって、ほんとに感謝してる。そう、それこそどれだけ感謝してもしたりないくらいなのだ!

 

 学校前でバスから降り、春の暖かな日ざしがやわらかくふりそそぐ中、ボクと春奈、お母さんの3人は学校の敷地沿いの桜並木の横を歩いてる。桜は今まさに満開って感じでキレイに咲き誇ってた。


「うわぁ、キレイに咲いてる~! なんかこれからの入学式、祝福してくれてるみたいだね♪」

「うん、ほんとだね! キレェ~」

「お母さんお願い、この桜バックに私とお姉ちゃんの写メ撮ってぇ~?」

 春奈がそう言いながら自分の携帯をお母さんに渡してる。

 お母さんは微笑みながら、携帯を受け取ってる。


「さっ、お姉ちゃん! こっちこっち~」

 春奈は敷地の壁沿いに立つとボクを呼ぶ。

「うん、りょうか~い」

 ボクも喜んでそれに応じる。


 ずっと待ち望んでた学校生活……。その入学式、しかもこんなキレイな桜なんだもん、いっぱい撮ってもらっちゃおっと♪

 ボクと春奈はもちろん、おそろいの制服だ。

 白い長袖シャツに紺色のブレザーを羽織り、首元には赤地に黒のストライプが入ったリボン、下も紺色のスカートにハイソックスで黒のローファーを履いてて、すごく初々しい出で立ちなのだ。

 ボクと春奈は腕を組んで、ポーズをとると自然に笑顔が出てくる。

 そんなボクたちをお母さんは満開の桜をバックにいっぱい写メに撮ってくれた。ボクは自分の携帯もお母さんに渡して同じように撮ってもらっちゃった。えへへっ!


 春奈ったら絶対この写メ、亜由美ちゃんや優衣ちゃんにも送ると思う。

 まぁ、ボクは……特に送って見せたい子なんていないし……。


「お姉ちゃんも、山下くんにでも送ってあげればいいのに?」

「ちょ、春奈! へんな誤解生むようなこと言わないでよぉ! なんでボクが山下くんに送らなきゃなんないのさぁ?」

「えぇ、だってお姉ちゃん、この前のカラオケのとき、山下くんとけっこう楽しそうに歌、歌ってたじゃん? にひひぃ」

 春奈ったらなんていじわるそうな顔するのさ、ほんと高校生になっても春奈は春奈。いじめっ子だ。


「あれはそんなんじゃないもん! そもそもみんなが無理矢理一緒に歌わせたんじゃない~! ……それにメルアドも知らないもん」

 ボクはそう言って春奈に反論した、んだけど、思わぬところから伏兵まで出てきた。


「あら、蒼空ったら男の子と一緒に歌っちゃったの? お母さん聞いてないなぁ?」

 お母さんまで突っ込んできちゃった。

 その顔はすごくいたずらっぽい顔だ。もう、やっぱ春奈はお母さん似なの? おかあさんもいじわるだよぉ。


「もう2人とも知らないっ!」

 ボクは入学式前から、いきなり笑顔からふくれっ面のいじけ顔に早変わりだ。


「ふふっ、お姉ちゃんゴメン~! もう言わないから機嫌直してよぉ。お詫びに山下くんのメルアド、また優衣にでも聞いとくからさぁ?」

「もう春奈っ、ボク別に教えてもらわなくたっていいんだからぁ……」


 ボクがそうやってまた反論を開始しようとしたところで……、聞きなれた、かわいい声に呼びかけられた。


「蒼空ちゃ~ん! 春奈ちゃ~ん! おはよぉ~♪」


 うれしそうに声をかけてきたのは、やはりというか沙希ちゃんだった。

 沙希ちゃんも当然、制服で、みんなおそろいのブレザー姿なのだ。

 七海さんもピシリとスーツ姿で決まってる。あっ、もちろんボクたちのお母さんも負けちゃいないけどね。


「やぁ~ん、沙希ちゃんおはよ~! 制服似合ってるぅ、すっごくカワイイよぉ」

 春奈がそう言いつつ、沙希ちゃんと手を取り合って喜んでる。

「そんなぁ、春奈ちゃんこそすっごくカワイイよぉ! うふふふっ」


 2人して褒めあっちゃってる……かわいいよね、女の子って。男の子同士でこんなことやってたら変態かって思われちゃうもんね、えへへ。

 

「蒼空ちゃん、おはよぉ! もう蒼空ちゃんもこっち来て一緒に盛り上がらなきゃダメじゃん?」

「おはよっ、沙希ちゃん♪ あっ、ぼ、ボクはいいって、あぁ、いいってばぁ~」


 あえなくボクも2人の中に引き込まれちゃった。

 そんなボクたちを、お母さんと七海さんがうれしそうに目を細めて見ていた。


 結局、3人で満開の桜をバックに写メを撮ってもらい、ようやくボクたちは正門へと向う。 正門脇には誇らしげに清徳の名前と入学式の文字が入った立て看板が置かれていて、ボクたちはそれを見ながら中へと入っていった。あとで正門前でも写メ撮ろっかとか言いながら……。



 清徳大付属の入学式は、中学と高校で一緒に行うらしく、今も周りにはちょっと大き目の制服に着せられた感じの、かわいらしい女の子たちがお母さんに連れられて正門から入ってくる。


 ボクの気分はちょっと複雑だ。

 なにしろボクの身長って、そんな中学の新入生の中でもたぶんかなり低いほうなんだもん……。 このあとぜ~ったい、勘違いされるに決まってるんだ。まぁ制服が違うからそんなコトないかもしれないけど……、あぁ、いやだなぁ、もう。

 ちょっとふさいだ表情で中学の新入生のほうを見ていたら、春奈にアタマをポンって叩かれちゃった。

「ほら、お姉ちゃん、なにひたってるの? それとも中学生のほうが良かったのかなぁ? んふっ?」

「もう春奈ぁ、そんなことないもん。ちょっと気になっただけだよぉ」

 ボクは春奈に反論したけど、春奈がちょっと落ち込んだ気分になってるボクの気を紛らわせるために声をかけてくれたってわかるから、うれしかった。


「ほら、あなたたち、体育館のほうに行くわよ? あんまりゆっくりしてると間に合わなくなっちゃうわよ?」

「「「はーい!」」」

 ボクたちはそろって元気に返事を返し、みんなして体育館のほうへ向った。

 お母さんたちがボクらの前を歩き、ボクは春奈と沙希ちゃんに挟まれるようにして歩いてる。 まるで2人がボクを守ってくれてるようで、なんかこそばゆかった……。

 実際いつものごとく、周りの視線はイタイほどボクのほうに注がれたりしてるわけで、そんな中あまり緊張せずにこれたのも2人のおかげ……、感謝しなきゃね。


 清徳のすごく大きくて立派な体育館の入り口では、横長の机が並べられ、その上には入学式のプログラムが置かれてて、出席者はそこに並んでそれを受け取ってた。


 お母さんたちがそのプログラムを受け取り、戻ってきた。


「蒼空、春奈、会場ではクラスごとに分かれて座るみたいよ。2人のクラスもここにもう書いてあるわよ?」

 そう言ってお母さんが、プログラムを開けて見せてくれる。

「えっ、ほんと? 見せて見せて~!」

 ボクと春奈はあらそうようにお母さんの開いていたページを見る。


 ボクたち高校からの入学組は4年生になるようで、1~3年生は中学、4~6年生が高校生ってことみたい。

 4年生のクラスは普通科3クラスと音楽科1クラス、合わせて4クラス124人だ。 

 そんな中、ボクと春奈、そして沙希ちゃんのクラスは……。


「ええ~! そんなぁ、うそぉ~!」


 春奈が悲痛な叫び声を上げる。

 対照的にそのとなりでは……、


「やったぁ~♪ 蒼空ちゃんと同じクラスだぁ~!」


 見事に明暗が分かれた2人だった。


 ボクは4年生のB組、そして沙希ちゃんも同じくB組。

 春奈はというと……、


「ど、どうして私だけC組なのぉ? 不公平~! もう信じらんないぃ~!!」

 

 なかなか納得出来ない春奈を、お母さんが一生懸命なだめすかしてる。


 ボクも春奈と一緒になれなかったのは、正直すっごく残念でさみしかった。でもこうなる気はしてた……。 やっぱ、姉妹で同じクラスってのは何かと問題や面倒、ありそうだもんね……。学校としてもやりにくいんだと思うんだ。

 でも春奈には悪いけど、ボク自身は沙希ちゃんと同じクラスになれたから、ちょっとは安心した。ボクが春奈の立場になってたらと思うとぞっとしない……。



「新入生のみなさんは、クラスを確認したら速やかに体育館内のクラス別に分けてある席についてくださ~い! 席順は決まってませんので順番に詰めて座るようにしてくださ~い!」


 高校の上級生に見える女の人が、そうやって大きな声で会場内を呼びかけて回ってる。

 6年生なんだろうか? もうすごく大人っぽい感じがして、まだ学校が始まってもいないのに、ちょっと気後れしちゃいそうな感じがしてしまう。


「それじゃ、蒼空、春奈、沙希ちゃん。私と七海さんは会場の後ろの保護者席に移るから、あなたたちもしっかり式にのぞんでちょうだいね?」

「沙希~! 蒼空ちゃん、春奈ちゃ〜ん、がんばってね~」

 お母さんと七海さんがそう言ってボクらから離れていった。


 こっから先はボクらだけ。

 このあと、入学式が終わると各クラスに分かれて教室に入りHRを行ない、そのあと保護者も含めた集合写真をとって解散ってスケジュールのようだ。


「あ~あ、もう嘆いてても仕方ないし……、行きましょうか?」

 ようやく、というかしぶしぶあきらめをつけた春奈が言う。


「うん、行こう! もう席だいぶ埋まってきちゃってるよ?」


 沙希ちゃんがそう言ってボクと春奈の背中を押し、ボクらはそのまま会場の中へと入っていった。



 会場は大きく、中学生と高校生のエリアに2分されてて左が中学生、右が高校生って感じだ。中学生は1クラス分だけなので、高校生にくらべるとちょっとさみしいな……。

 

 ボクと沙希ちゃんは"4-B"って書いてある席のエリアの、空いている席に詰めるようにして座った。春奈はもちろんそのとなりのエリアになっちゃうわけで。

 別れるとき、なんだか恨みがましい目つきでボクらを見てた。ボクらにそんな目、向けられてもお門違いなんだけど……、春奈の気持ちもわかるから見てみぬふりして別れちゃった。

 

 "4-B"の席はもう3分の2は埋まっててボクと沙希ちゃんはけっこう後ろのほうに座ることになっちゃった。

 正直ボク、前が全然見えないや……。こんなときチビのボクってほんとに損だ。

 まぁどうせガッコの校長先生や、役員の人の話なんて聞いてても面白くもないから見えなくても全然かまわないけどさ……。

 ボクが席に着くと、となりになった女の子がボクのことに気付いてちょっとビックリした表情を浮かべたけど、とりあえずそれ以上気にする風もなくすんだみたい。それにしても背の高い子で、ボクよりアタマ一つ分以上は高い気がする。


 新入生が全員そろい、入学式が始まる。

 校長先生が小難しい話しを長々とした後、理事長さん、PTA会長さんが挨拶をし、そのあと新入生代表の挨拶(これってやっぱ成績優秀だった子がやってるのかな?)に続いた。そして最後に、これからボクたちがお世話になる先生方の紹介が行なわれたところで、ボクたち新入生は退場となった。


 案外あっけないなぁ……、入学式って。

 でもお母さんたちはその後も、色々連絡事項があるようでまだまだ終わらないみたいだ。


 退場したボクたちは、各クラスの教室に案内された。案内してくれたのはこれも上級生の女の人だった。ボクたちにとっては先輩になるんだよね。

 4年は3階が教室になるから、階段の登りにだいぶ苦労しちゃった。でも手摺りもあったし、沙希ちゃんもサポートしてくれたしで、ちょっと遅れつつもなんとかなった。(杖は一応持ってるけどクラスのみんなの前であんまり使いたくなかった……)

 でもこれがこれから毎日続くかと思うとちょっと憂鬱だ……。(沙希ちゃんにいつも一緒にいてもらうわけにもいかないし)


 その先輩はボクたちに席順を確認したら席に着いて、担任の先生が来るまで静かに待っているようにと言って、去っていった。プログラムだと確かHRをするはずだ。


 教室の入口前には席順が貼り出されてて、ボクと沙希ちゃんはどの場所に座る事になるのかドキドキしながら確認しに行った。

 みんなが見ようと集まっちゃうからボクはなかなかその席順表が見れない。遠くからだとボクの視力じゃ全然見えない……。


「蒼空ちゃん、蒼空ちゃんの席も確認したよ。あのねぇ、窓際から2列目、一番前の席だったよ?」

 沙希ちゃんがボクの席、確認してくれたみたい。うれしいな!


「沙希ちゃん、ありがとう! でも一番前かぁ、仕方ないとはいえ……いやだなぁ」


 たぶん一番前になったのは、ボクの視力のことを聞いてる学校の関係者の人が気を回してくれたんだと思うけど……。


 ――実は入学式の1週間ほど前、お母さんは学校に呼ばれ、色々とボクのことで事前に気をつけなきゃいけないことなんかを確認されたみたいなのだ。

 お母さん、ボクの視力のこと、目や体がお日さまに弱いこと、走ったりするのはまだ無理なこと、それに年齢のこと(これは学校側も当然知ってるだろうけど)……、色々話しをしておいてくれたみたい――。


「それで、沙希ちゃんは?」

「うん、私は蒼空ちゃんの斜め後ろ! 窓よりのね」


 それなら近くだからいいなぁ……、ボクは近くに沙希ちゃんが座るってことを聞いてちょっと安心した。

 今もボクは周りのみんなから興味津々って感じで見られてすごくいたたまれない気分なのだ。


「さっ、中に入って席につこっ!」


 そんなボクの気持ちを察してか、沙希ちゃんがそう言って、ボクの手をとり教室の中へと向かう。

「うん、行こう!」

 ボクもそう言って、その手をにぎり返してついて行った。



もうちょっと続きます。

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