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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
1章
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ep4.ボクが女の子?

※ep7.とep8.を合わせました。 それに伴って話数を修正しました。

 飛び込んできた妹、春奈は、ボクの体に抱きついて顔をシーツにうずめる。


「は、春奈?」


 ちょっと慌てて、変な声を上げるボク……やっぱ、声の調子、オカシイかな?


 ボクはまだ自由がぜんぜんきかない体で、どうすることも出来ない。

 頭をなでてやりたいんだけど……。

 そんなボクの様子に気付き、春奈はボクの手をとってやさしく包み込んだ……暖かい。


「お兄ちゃん……」


 つぶらな瞳でボクのほうを見てくる、……やっぱ涙目だ。

 

「春奈……。し、心配かけてごめんね?」


「よかった……、よかったよぅ、うぇ~ん!」


 再び、抱きついてきた。

 とうとう感情のダムは決壊したみたい……、思いっきり泣きだしちゃった。


「春奈……」


 ボクは、外に出ていた手をにらみながら力をこめ、妹のふわっとしたポニーテールにしている頭まで運びきり……、なんとかなでる動きをした。

 たかだか30cmくらいの距離だったけど一日分の力を使った気がした。それにしても白くて細い、華奢な手になっちゃったなぁ……。


 春奈はそれに気付き、泣いていた顔を上にあげ……ニッコリと、笑顔になって喜んだ。


「これからはまた一緒に過ごせるね」


 まだ病院からは出られないけど……と苦笑いしながら春奈に言う。


「うん! 今までの分も取り戻さなきゃね!」


 明るくかわいい笑顔を見せる春奈に、ボクの顔も自然と笑顔が出るようになってきた気がする。

 それにしても春奈、1年半近く? ぶりのせいなんだろうか?

 なんだかずいぶん大きくなったような……、さっき見たときも微妙に大人びて見えた気はしたけど……。たしか春奈は、ボクよりも背が低くて小柄で、あの頃で150cmを少し越えたくらいだったと思うけど……、そばでこうして抱きつかれたりしていると何か変だ?


 なんなんだろ……、この違和感。


 笑顔から一転し考えこみ出したボクの表情を見て、春奈は一瞬 "はっ" とした表情になって、そしてお母さんを見た。

 お母さんは、春奈を見てうなずくとボクの方に近づいてきた……。

 春奈はボクをちらっと見てから、そばに来たお母さんにちょっと不安げにすがりついた。


 ボクは何かいやな感じがしてきた……。


 お母さんは、ベッドの横のイスに腰をかけるとボクの手をとり……、


「蒼空、落ち着いて聞いて欲しいことがあるの。 大事なお話よ」

 と言い続けて、

「蒼空も目が覚めて、2日目。 体のほうはまだまだこれからだけど、それでも気分はずいぶん落ち着いてきたみたいよね?」


「う、うん……」


 そういえば、昨日あれだけしてた頭痛も今日はほとんど気にならない……。


「だけどね、お母さんね。まだ、蒼空に伝えていない大事なことがあるの……」


 真剣な表情のお母さん。

 ……なんだかこの先、聞くのがこわい。


「聞いてくれる?」

「うん……」


 ボクがうなずくと、お母さんは話はじめた。


「蒼空、あなたは1年5ヶ月前の事故で、手の施しようのない……、もう助からないほどの重症だったの……」


「えっ?」


「それで助かるためにはその体を……、蒼空の体をあきらめるしかないくらいだったの……」

「で、でもボク」


 自分の体を目が覚めてから初めて見ようとする……。

 そんなボクにかまわず話しを続けるお母さん。


「それでその時の医師から出された治療案は……」


 そう言った時のお母さんの表情はすごく悔しそうな、悲しそうな表情……。


「蒼空の……蒼空の頭の中、脳を、別の体に移植するってことだったの……」


 聞いていて、わけが解らなくなってきたボク。


「え? い、移植ぅ? 別の体って……でもこの体……。ええっ?」

「落ち着いて、蒼空! 落ち着いて……」


 そういってボクの手をギュっと握るお母さん。

 そしてボクの頭をなでつつ、再び話しを続ける……。

 少し後ろで、春奈と看護師の西森さんも、つらそうな表情を浮かべながら聞いている。

 ボクの口のなかはカラカラだった。


「選択肢はなかったの……。そして蒼空、あなたの意思を確認することももちろん出来るはずもなくて……」


 こう話すお母さんはほんとに辛そうな顔をしている……。


「昨日、石渡先生がいってた手術というのは、その手術のことだったの……。

 手術……脳移植って手術はね。まだ世界でも例のない大変なものだったようなのだけど……。一縷いちるの望みをかけて……、手術に同意したの」


 お母さんは一呼吸おき、更に続けた。


「手術は無事成功したわ。でも蒼空、あなたの意識が戻ることは一度もなかったの」


 お母さんはとうとう涙声になり……、


「その時は、どれほど手術に……手術に同意したことを後悔したか。ごめんね……蒼空。 勝手にそんなことをしてしまって……」


 ボクの手をとりそっと頬ずりをする。お母さんの顔からは涙が止め処もなく流れてる。

 そんなお母さんを見ながら……、ボクは、さっきからの違和感はそのせいだったのかと、案外落ち着き出してぼんやり考えていた。それに結局生きてここにいるわけだし……。


 でもそんな落ち着きも、次の一言でくずれさった。


「そ、それでね……、蒼空の体はね?」

「うん?」


「お、女の子になってしまったの……」


 お母さんのその爆弾発言に、ボクは耳を疑った。


「え、えぇ~!」


 出た声は目覚めてから一番大きい……、しかも可愛らしい女の子の声だった。

 その声の高さ、かわいい? 声に自分でもびっくりしつつ、まだ信じられるわけもなく……戸惑いの言葉を出すボク。


「おっ、おんなの……こって? ……はっ、はえぇ~?」


 聞いたことにまだ現実味がわいて来ないボク……。

 自分の体を、見て、触って確認したい気持ちにかられたけど、まだうまく体が動かせない自分ではそれもかなわない。……無力だ。

 それでもなんとか顔をなでるくらい……は出来た……けど、顔触ってもよくわからなかった。


 そうしてる間に看護師の西森さんが何か持ってきて、それをお母さんに渡す。


「蒼空、これを見て?」


 お母さんが見せてくれたのはちょっと大きめの鏡……。

 そしてイスから立ちあがり、ベッドに腰かけてボクの見やすい位置に鏡を掲げてくれた。

 ボクは恐る恐る鏡を覗きこむ。


 そこには――、真っ白な髪が肩近くまで伸びて、顔色は病的……っていうほど青白い、そしてその鏡を見つめてる目は、まるでウサギさんのように真っ赤で……、すごく不安げな表情を浮かべた女の子の顔が映っていた。


「こ、これ……が、ボク?」


 女の子ってだけでもビックリするのに、 白い髪に赤い目だなんて。……しかもよく見ると眉毛やまつ毛までもが白い……、何なのこれっ?

 そ、それに映ってる顔つき……、とてももうじき15才になるって歳の子の顔じゃない! どう見ても小学生だ……。


 でも顔つき……、なんだかその歳の頃のボクに似てる気はする……けど。でもそんなわけない……。


 しばし呆然と……鏡を見つめ続けているボク。

 心の中はもうぐちゃぐちゃだ……。

 ……やっぱ、体も女の子? なんだろうか。自身の感覚を澄ましてみるけど、まだよくわかんない。


 そんなボクを、みんな押し黙って……まるでボクの様子を恐る恐る伺ってるみたいな感じで……固唾を呑んで見守ってくれてる。


 どれだけの時間がたったのだろう……(たぶんそう大した時間じゃないかも)


「お母さ……ん」


 ボクは思わず心細げな声をあげてしまった。

 お母さんはたまらずボクを見つめ……、そしてやさしく抱きしめてくれた。


「蒼空、蒼空……」


 やさしく声をかけてくるお母さん。


「心配しなくていいから……、女の子になっても、どんな姿になっても……蒼空は蒼空なんだからね?」


 そういいながらボクのアタマをなでてくれる。

 気持ちいいなぁ……。

 目覚めてからっていうもの、すごく甘えんぼさんになった気がする。もう年頃の男の子だったっていうのに。でも、いいよね? ……今は甘えてしまっても(それに外見は女の子……なんだし)


 このままずっとこうしていたい気もするけど、まだ疑問に思うことがある……。


「お母さん?」

「ん? 何なの蒼空」


「さっきのお話の中で、わからないことが……あるんだけど?」


 お母さんの表情がこわばる……。


「あの、ボクのこのカラダ……は、誰のモノなの? ううん、誰のモノだったの?」


 そう……なんだ、この体は誰のモノなの?

 この女の子は誰なの?


 脳移植? するには、移植するための体が必要なのに――、そんなにうまくその体って見つかるものなの?


 この女の子はどうなっちゃたの?

 もし、ボクのために女の子が……。


 お母さんはボクの質問に、言葉を失ったように無言になってしまった。

 後ろの二人、春奈と西森さんも表情を失ったようにして立ち尽くしている。


「そ、蒼空……」


 お母さんがポツリと言う。


「そ、その話しはお母さんも詳しくなくて……ね」


 すごく言いにくそうに話すお母さん……なんかつらそう。


「でもね……蒼空。あなたはもしかして自分のせいで誰かが犠牲になった? とか、考えているのかもしれないけど……ね、そんなことだけは絶対ないから!

 この話しはまた、ね、もっと落ち着いてから……詳しい人に、キチンと説明してもらうようにするから……」


 お母さんは、つらそうな顔をして、それでもボクに心配せさないよう一生懸命話してくれている。


 そう。


 お母さんもボクが目を覚ますまで、いっぱいいっぱい苦労して、悲しい思いをしてきたはずなんだ。妹の春奈もそうなんだろう……。


 ボクはお母さんを――、家族を困らせたくなんてない。


「うん、わかった」


 ボクはなるべく軽く、明るく聞こえるよう答えた。


「あの、ボク、女の子になれるようがんばるよ! お母さん……、それに春奈も協力してくれるよね?」


 そんなボクの様子にお母さんはちょっと呆けてる。意外な展開? なんだろな……えへへっ。

 そう言ったものの……正直、ボク自身ぜんぜん実感わかないし、これからどうなるのかもわかんないし……。


 そんな先のこと、今考えてもしょうがない。

 まずは動けるように……歩けるようにならなきゃ。迷惑ばっかかけるのはいやだ!

 これはなけなしの元? 男の子のプライド……。


「蒼空!」


 そう言うと、お母さんが "ぎゅっ" と抱きしめてきた。


 ボクは抱き返せないので代わりに頬をお母さんの頭によせた。

 自然と涙が出てきた。


 お母さんも泣いてるみたい。

 春奈と西森さんも泣いてる……。


 

 みんなが感傷にひたってる中――、


 今日はゴハン、食べられるのかな? なんて、変なことを考えてるボクだった。




脳移植はまだ実際には成功してないようです。

あくまでお話しってことでよろしくお願いします(笑)


でも動物実験では成功って話しも……すぐ死んじゃうようですが。


でも人体実験……どっかでやられてるのかも?


こわっ

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