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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
45/124

ep43.初詣

※話数を修正しました。

 12月も終わりが近づき、高校入試の日がいやでも近づいてきた。

 清徳大付属の入学試験日は、1月の第2週目の月曜日。 世の中は成人式で盛り上がっちゃう日だ。 何もそんな日にやらなくてもいいのに……。

 

 入試が正月明け早々にあるから、クリスマスパーティーも友達みんなと騒ぐなんてことはさせてもらえず、家族だけで簡単に済ますことになっちゃった。 浮かれてないで勉強しなさいってことだよね……、お母さんキビシイ。


 ボク(と春奈)はちーちゃんのスパルタ家庭教師のおかげで、受験勉強は順調には進んでるって思う。 中卒認定試験の時はイマイチだった数学もかなり理解が進んだような気がするもん。 英語については……、ノーコメントってことで? えへへっ。


 そういえば、春奈や沙希ちゃんは一般入学枠での試験になるんだけど、試験日は推薦枠のボクより1週間後の月曜日。 ボクは結局また一人で試験受けなきゃなんない。 心細いなぁ……。


 でもあともう少しだ、がんばろっと……。




* * * * * *




「あっ、春奈ぁ、蒼空ちゃ~ん!」


 元気な声でボクたちを呼ぶのは優衣ちゃんだ。

 優衣ちゃんの隣には亜由美ちゃんが苦笑いして立ってる。


 優衣ちゃんは、チェックのニットシャツにボア付きコーデュロイショートパンツ、それにファー付きのフードがかわいいブルゾンをはおって、足元はニーハイにブーツだ。 そして耳当て付きのニット帽をかぶってる。 しかも耳当てが胸元まで伸びててすごくカワイイ!


 対する亜由美ちゃんは、ロンTにカーディガン、デニムのショートパンツ、黒いタイツにニーハイブーツで、フードにファーの付いた黒っぽいミリタリージャケットをはおってて、全体的になんかかっこいいのだ。


「優衣ぃ、亜由美~! お待たせぇ~!」

 春奈がそれに勝るとも劣らない声で返した。

 春奈のカッコは、パーカーワンピースで首にはマフラーを巻き、下はレギンスとブーツ、これもフードにファー付のダウンジャケットをはおってる。


 そしてみんなそろうとお互い一斉に……、


「「「「あけましておめでとうございま~す!」」」」

 ボクも一緒になって新年の挨拶をした。


 ここはボクたちの街の中にあるごく普通の神社だけど、さすがに正月だけあって初詣客でけっこう混雑してる。

 ボクん家からこの神社までは徒歩10分ってところ。 ちなみに春奈の通ってる中学校の目と鼻の先だったりする。 まぁ、ボクが一緒だから10分のところを20分近くかけて来たわけだけどさ……。

 新年からぐちっちゃうと、ボクの足はいまだに杖無しだとふらついちゃう。 これじゃ走れるようなるのなんて、いつのことになるのか……。


 あっと、話しがそれちゃった。


 それでボクたちは、神社前で待ち合わせをして一緒に初詣に行く約束をしてたのだ。 ちなみに今日は1月2日、昨日は家族(もちろんちーちゃんも一緒だ)でゆっくり過ごしたよ。 それに今日までお勉強も無し。 実はそれが一番うれしかったりするけどね? えへへぇ。


「わぁ、蒼空ちゃん! そのお洋服すっごくかわいい、似合ってるよ」

 亜由美ちゃんがボクを見て新年早々にほめてくれる。


「うん、ほんとだ! かわいいよっ蒼空ちゃん」

 優衣ちゃんまで一緒になって言い出す。 なんか恥ずかしいよぉ。


 ボクのカッコは、お母さんと春奈がいつものごとく用意してくれたものをされるがままに着せられたものだ。

 淡いふわふわピンク地に花柄のチュール付きワンピースに、真っ白な起毛のふわっふわ表面に襟から裾にかけてと袖にはふんわりとしたファーがついた、ほんとに暖かいショートジャケットコートを羽織り、足は白いストッキングにふくらはぎを覆うくらいの白いファー付きブーツ。 そしてアタマには、これもふんわりした淡いピンクのベレー帽をかぶってる。 白とピンクずくめだ……。


 でも、もうボクは最近はあきらめちゃっててなすがままだ……。


「かわいいでしょ? 年末に3人で買い物行った時、私とお母さんでお姉ちゃんを着せ替え人形にしてようやく決めたんだからぁ。 あの時は楽しかったよぉ、うふふ」


 むうぅ、おかしいよね? 勉強しろっていうくせに買い物行く時だけはOKなんてさ?


「いいなぁ、私もこんなお人形さん欲しいよ? 蒼空ちゃんウチにくれない? にひひぃ」

 優衣ちゃんが例のごとく暴言? をお吐きになられました。

「だーめ、お姉ちゃんは私のお人形さんなの! そう簡単にはあげないもんねぇ~」


 春奈もなに言ってるの? 簡単にはって? 条件合えばあげちゃうのぉ?

 春奈と優衣ちゃん、暴走しまくり……、ボクは人形扱い……、ううぅ。


「は、春奈のばかぁ!」


 ボクは別に泣くつもりじゃなかった、はず、なのに……。 泣いてた。

 おかしいな、なんで泣いてるんだろ? ボク。

 冗談なんてことわかってるのに……。


「うぅ……ぐすっ」


 ――まだ微妙に泣きながら鼻をすすっている蒼空。


「ちょ、お、ねぇ…ちゃん?」

「蒼空……ちゃん?」

「春奈っ、優衣! あなたたち調子乗り過ぎっ! あんなにお人形、お人形、繰り返し言ってたらいくら冗談でも傷つくよっ?」


 亜由美があきれ顔をして、二人をたしなめる。

 

「そ、そんな、ほんの冗談だったのに……」

 春奈は蒼空の思わぬ反応にとまどいを隠しきれない。

「私も……、蒼空ちゃん傷付ける気持ちなんて、……これっぽっちも持ってないもん」

 優衣もさっきまでの表情がウソのようにふさぎこんでいる。


「はぁ……、困った子たちなんだから、もう」

 亜由美はそう言うと、蒼空の背中を優しくなでて慰めながら、そして春奈と優衣をやれやれといった感じで見つめる。


「うぅ、ごめんねぇ。 ぼ、ボク泣くつもりなんかぜんぜんなかったの。 春奈も優衣ちゃんも、気にしないで……」


 蒼空は落ち着いてきたのか、落ち込んでる二人に声をかける。


「う、うん。 お姉ちゃん、ごめんなさい。 私……」

「私も……ごめんね? 蒼空ちゃん」


 普段の蒼空だったらこれくらいのことで泣くことはなかったのだろう……。

 しかし最近色々なストレスで気持ちに余裕のなくなっていた蒼空には、自分で遊ばれていることに、そしてふがいない自分に、いら立ちを感じてしまったのかも知れない。

 そして今の蒼空に出来ることといえば泣くことしかないのだから……。


「すんっ」


 蒼空が思いっきり鼻をすすった。 そしてまた話しだす。


「もう大丈夫だから……。 ほんとにごめんね、せっかくこれから初詣で楽しい気分だっていうのに、泣いちゃったりして」


「はいっ」


 蒼空が春奈に小さな手を差し出す。

 春奈は呆けて蒼空を見る。


「手、つないでこ? ボク春奈のこと大好きだよ! だから……」

 そう言うと蒼空は春奈を上目遣いで見る。


 春奈のふさぎこんでいた顔は、みるみる明るい、かわいらしい笑顔へと変わっていく。

 そして蒼空の手をぎゅっと握ると、

「よし、行こっか! 早く行かないと、どんどん人が増えてきちゃうもんね?」

 

 そんな二人の様子を見て優衣も元気を取り戻す。

「そ、そだね! 行こう行こう~! 蒼空ちゃん、さっきのミスはこれからの行動で挽回させてもらいま~す!」

 すでに気持ちの切り替えが出来たのか? あっさりしたものである。


「ったく。 わかってるのかしら? ほんとに?」

 そう言って優衣を見て、思わず顔をしかめる亜由美なのだった。



 神社の鳥居をくぐると、数は少ないものの屋台も出ていて、4人はその雰囲気で再び楽しい気分が盛り上がる。 その中でも一番気をとられていたのが以外にも蒼空だった。


「い、いちご飴だって! いちご! どんなのかなぁ? 食べてみたぁい」

 いちご飴の屋台に目を奪われたようで、落ち着かない蒼空。


「お姉ちゃん! ちょっとガマンして、ガマン! とりあえず参拝終わってからにしようよ!」

 春奈がそんな蒼空をなだめすかしてなんとか神社の中に向うのだった。



 ボクたちはまず身を清めるため、手水舎てみずやってところに向った。


「ゴクゴク、ごくり……。 うわぁ、お水冷たいよっ!」

「ちょっと優衣、柄杓ひしゃくに口つけない! あぁ、そんなにごくごく飲まなくていいの、含むくらいで~!」


 優衣ちゃんに注意する、亜由美ちゃん。

 優衣ちゃんはやっぱ色々しでかすよねぇ? 亜由美ちゃんも大変だね、ふふっ。


「でも、お水ほんと冷たいや」


 柄杓ですくった水で手を清めるときの水の冷たさときたら痛いほどだ。 ボクは左手、右手そしてお口と、身を清めていくと気分も引き締まる気がした。


「さて、それじゃ参拝といきますかぁ」

 春奈がみんなに声をかけ、ボクたちはようやく社殿へと向ったのだった……。


# # #


「何お願いしたぁ?」

 優衣ちゃんが亜由美ちゃんに聞く。


「ん~、ナイショ。 優衣こそ何お願いしたの?」


「えぇ~? 亜由美、自分はナイショにして私に聞くぅ?」

「それじゃ、春奈はぁ?」


「教えな~い!」


「なによぉ、つまんな~い。 じゃあ、みんなで教え合いっこしよっか?」


 3人が何祈願したのか探りあってる。

 ボクはもちろん清徳に無事合格出来ること、それに春奈や沙希ちゃんと一緒に行けますようにって。 それに体が不自由なく動けるようになれますように……とも。

 欲張りすぎかなぁ? やっぱり。


「よしっと、参拝も済んだことだし! お姉ちゃんお待ちかねの屋台でも見に行きますか?」


「うん! 行こ行こっ! いちご飴ぇ」

 ボクは一も二もなく賛成して、春奈の腕をとって両手で抱きしめるようにしてすがりついた。


「ううっ」


 お姉ちゃん、私にまでそんな攻撃を! くぅ~、実の姉をかわいすぎると思う私はいけない子なんだろうか? いや、そんなことない。 お姉ちゃんがかわいすぎるのがいけないんだもん。 そ、それにしてもお姉ちゃん、これってやっぱ……もう確信犯なの?


# # #


 屋台で念願のいちご飴を買った蒼空は、今日泣いたとはとても思えない、これ以上ないというほどの上機嫌である。 蒼空の苺好きはまさにとどまるところを知らないというべきか?


「おいしい! それにこれすっごくカワイイね♪」

 蒼空はその小さな口からかわいらしい舌を出し、なめては眺め、かじっては眺めと繰り返しながら、いちご飴を味わっている。


 春奈たちはそんな蒼空を半ばあきれ気味に、でも微笑ましげに見ていた。


 亜由美と優衣は見てばかりじゃ居られないと、他の屋台のたこ焼きとお好み焼きに目を付け出している。

 それもある意味仕方なく、さっきからソースとかつおぶしの匂いがハンパないのだ。


 そして二人がそこに突撃をかけようとした時……。



「あれ? 亜由美じゃん。 おまえも初詣?」

 


 そこには同世代の男子二人がこちらを伺うようにして立っていた……。




ついに男の子登場!?

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