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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
43/124

ep41.試験結果とこれからは?

※話数を修正しました。

「そ~らちゃん、お待たせ~」

 ちーちゃんがボクの部屋に明るい声を響かせて入ってきた。


「あっ、ちーちゃん! 採点終わったの?」

「えぇ、そりゃもうばっちりね。 結果聞きたい?」

 ちーちゃんのイジワル。 聞きたいに決まってるじゃんかぁ……。

「うん。 ききたい、聞きたい! 早く教えてっ?」

 ボクは、ベッドから身を起こし、ちーちゃんを急かすように答えた。

「ふふ、あんまりじらしてまた熱上がるといけないか? それでは教えて差し上げましょう!」


 ボクは試験のあと微熱を出してしまったため、大事をとってベッドに寝かされてしまっていた。 我ながら体の弱さに悲しいやら情けないやら……。

 何かする度にこうやって熱出してるようじゃ、そのうち何もさせてもらえなくなっちゃう。


「蒼空ちゃんの持って帰ってきた試験問題と、そこにメモしてあった蒼空ちゃんの解答。 それを元に採点しました結果……」

 

 ……あっと、ちーちゃんの話し聞かなきゃ。

 ドキドキしちゃうなぁ、まだじらすなんてけっこうちーちゃんもイジワルだよね。(やっぱ従姉だよ、春奈とそんなとこソックリ!)


「すごいよ蒼空ちゃん。 受けた5教科の平均、なんと79点!」

 ちーちゃんがうれしそうに点数を言う。

 配点がはっきりしないから絶対の点数じゃないみたいだけど、そんなに大きく変わらないだろうって。


「ふふっ、79点かぁ。 んーとぉ、それって心配ない点数なの?」

 ボクはこういっちゃなんだけど、自分なりに手ごたえを感じてたから点数自体にはあまり驚かなかった、えへへ。 でもどれくらいで合格なのかわかんないから安心出来ないんだよね……。


「あら、あんまり驚かないね? もしかしてかなり自信あったのかな? それでその点数で大丈夫か? だよね」


 そうそう、それが知りたいの。 じらさないでぇ!


「まぁ確実なことは私にも答えようがないけど、普通平均が79点もあればまず間違いなく合格だね!」

 ちーちゃんが自信たっぷりに言い切った。


「そもそも前にも言ったかもしれないけど、この試験って受験した人になるべく受かってもらいたいって主旨でやってるものだから、合格ラインは相当低いと思うのよね。 それに定数とかもないわけだし。 ちょっと前の試験結果のデータ、ネットで見つけたんだけど合格率、82%もあったよ」


「82パーセントぉ? す、すごいねぇ。 でもそれならほんと大丈夫そうだね!」

 ボクはちーちゃんが言った数字に驚き、そしてようやくホッとした気持ちになる。


「うん。 安心していいと思うよ! 試験終わったから言っちゃうけど、私初めから蒼空ちゃんが落ちる心配なんて全然してなかったよ?」


「ええぇ、そうなの? でもそれならそうと……」

 言ってくれればよかったのに、と言おうとしたけど……考えてみれば試験受ける前にそんな気が抜けるようなこと、教える立場の人が言わないかぁ?


「ふふっ、わかってくれたみたいね? でも大丈夫よって何回か言ったとは思うんけど」

「それは……普通に励ましてくれてるんだろなぁって思ってぇ。 でもほんと安心した! これでお熱もすぐ下がっちゃうかも?」


「まぁ! 調子いいこと言っちゃって。 でも合格発表はまだなんだから喜ぶのは早過ぎかもよ?」

 そう言って、ちょっと気を引き締めようとするちーちゃん。 でももう今さら緩んだ気分は戻りませんよぉだ! えへへっ。


「でも細かいこと言うと……、理数系とあと英語の点数がちょっと低めなのが気になるのよねぇ?」

 ちーちゃんはそう言うと各教科の点数をボクに教えてくれる。

 数学が74点、理科が78点、それに英語が67点だった。 英語70点割れだよ……ちょっとショック。 ちなみに残りの国語は92点、社会が86点だ。


「蒼空ちゃんが目指してる清徳大付属の試験科目が、国語、英語、数学でしょう? 国語はともかく、英語と数学……ちょっと心配なのよねぇ。 これからの勉強はその辺、力入れてがんばってこうね?」

「う、うん、がんばる! でも英語……、ほんと苦手」

 ボクはつい本音をポロリと漏らす。


「あらら、正直者ねぇ蒼空ちゃん。 大丈夫、まだ2ヶ月残ってるんだからなんとかなるよ! さぁもう横になった方がいいよ、肩冷えてきちゃってる」

 そう言うとちーちゃんはベッドで体を起こしてたボクの背中を取り、ゆっくり寝かし付けてくれた。

 ボクはおとなしくしたがったけど、もう熱は下がったと思うんだけどなぁ……。


「じゃあ蒼空ちゃん、おとなしく寝てなさいね! 採点結果は叔母さんにも報告しとくからね」

 そう言ってちーちゃんはボクの部屋から出て行った。


 試験結果は郵送で1ヶ月後くらいに送られてくるらしい。 それまではもやもやした気分が続く。


 でもまぁとりあえずは……、

「なんとか清徳入れるよう、がんばっとかなきゃ!」



 そんなことを考えつつ、横になったことで眠気が出てきたボクはいつしか眠りについていったのだった。



* * * * * *



 試験から1ヶ月ほどたったある日の午後、春奈とリビングでTVを見てたらお母さんがニコニコ顔でやってきた。


「蒼空、ついに来たわよ~!」


 むっ、お母さんの声がいつになく明るい! いいことなのは間違いないね。

「えっ? 何がきたの~?」

 ボクもつられて笑顔で聞き返す。


「あら、わからないかしら?」

 お母さんがいたずらっぽい顔でボクを見る。


「あっ、お母さん! それってあれでしょ~、試験結果の通知ぃ」

 春奈がボクより先に、先走って答える。

 あっそうかぁ。 そういえばそろそろ送られてきてもおかしくない頃だ。


「あら、春奈。 先に答えちゃったのね……」

 お母さんがちょっと残念そうな表情を見せる。

 "てへっ"とした表情をする春奈。


 もうちーちゃんといい、お母さんといい、なんでそうじらしたがるかなぁ……。


「ふふっ、そう当たり! 蒼空、試験結果の通知届いたわよ」

 はいっ! と言ってお母さんが届いた封筒をボクに渡す。

「悪いけどお母さん先に見ちゃった。 さぁ、早く見てごらんなさいな?」


「う、うん!」


 ボクは開封済みの封筒の中を見る。

 中には三つ折りの紙が入ってて、その紙をそっと取り出し広げる。


 そこにはボクの名前、『柚月 蒼空』 がまず書かれ、

 

 ――上記の者は就学義務猶予免除者等の中学校卒業程度認定規則により中学校を卒業した者と同等以上の学力があると認定したことを証する ――


 と続いていて、認印は文部科学省! すごいや。


 そう、それは試験合格の認定証書だった。



「合格だね……」

 後ろから覗き見していた春奈がポツリとボクに言う。

「うん、合格。 …………えへへぇ♪」

 ボクはまじめ顔で通そうと変な努力してみたけど、あえなく破顔しちゃった。


「おめでとう! 蒼空」

「やったね、お姉ちゃん!」


 お母さんと春奈が満面の笑みで祝福してくれる。


「ありがとう、お母さん! 春奈!」

 ボクは自分に出来る唯一のこと……、心からの感謝の言葉を二人に告げた。

 あとでちーちゃんにもお礼しなくちゃ。


「これで高校進学、間違いなく出来るようになったわね。 早速、中学校で推薦してもらえるよう認定書を提出しなきゃいけないわねぇ」

 忙しくなるわ……、そう言うとお母さんはボクのアタマをひとなでし、認定書を持ってリビングから出ていった。


「お姉ちゃん、ほんと良かったね! で、このこと、ほら! 沙希ちゃんにも早く教えてあげなきゃいけないね?」

「そうだね! 沙希ちゃん喜んでくれるかなぁ」

「喜ぶに決まってるじゃ~ん。 沙希ちゃんなんだよぉ?」


 春奈が何だか変な理由で決めつける。 でも喜んでくれるのは間違いないよね? うふふっ。



* * * * * *



「「こんにちわ~!」」


 ボクと春奈は玄関ドアを開けてもらうなりそろって挨拶した。


「はーい、いらっしゃいませ~!」

 それを元気に出迎えてくれたのは沙希ちゃんだ。

 ボクと春奈は沙希ちゃんのお家にオジャマしたのだ。


 沙希ちゃんのお家は、ボクん家のそばの駅から2つ北へ進んだ駅より、徒歩15分くらいのところにある、4階建てマンションの3階にある。

 さすがに15分歩くのはボクがつらいのでそこまでタクシーできて、3階まではエレベーターを使ったからラクチンだった。


「二人ともわざわざ来てもらってありがと~! 寒かったでしょう? 道迷わなかった?」

 沙希ちゃんはボク達たちをリビングのほうへ案内しながら聞いてきた。

 今日は12月も第3週目になる日曜日、冬の寒さが厳しくなってくる頃……。


「うん、全然大丈夫! っていうかタクシーできちゃったし。 えへへ」

 ニット帽を脱ぎながらボクがそう答えると……。

「あっ、そっかぁ……。 ゴメンねぇ、駅から家までけっこうあるもんね」

 沙希ちゃんはちょっと申し訳なさそうな顔をしてそう言った。


 沙希ちゃん、ボクの足のこと気にしちゃったみたい。 もう気にしなくていいのになぁ。


「そんな気にしなくていいよ? どうせ寒かったからタクシーのほうがラクチンだしね」

「そうそう、お姉ちゃんなんてちっちゃいから、すぐ寒がってどっちにしろ歩くなんてしないもんね~?」

 むぅ春奈めぇ、なにげにひどいこと言ってない?

「春奈、ひどいぃ~! 体の大きさと寒さなんて関係ないじゃん?」

「えぇ、そうだっけ? ああ、そっか! ちっちゃい方が面積狭いから寒さに強いのか~?」

 そう言ってニヒヒと笑う春奈。 


「ううぅ~!」

 春奈ったら、どうしてくれようかっ!


「まぁまぁ、春奈ちゃん。 それくらいにしといてあげてよ? 蒼空ちゃんむくれちゃうと後が大変だよ~」

 沙希ちゃんが微妙なフォローをしてくれた。 ううっ、後が大変ってなにさぁ?


「ふふ~ん、そうだね。 これ以上やるといじけちゃって大変か」

「ボク、いじけたりなんかしないもん! 失礼しちゃうっ」

 春奈めぇ、沙希ちゃん家に来てボクが抵抗できないことをいいことにぃ~。

「もう春奈なんて知らないんだから!」

 そう言ってぷぃっとそっぽを向くボク。


 ――あ~あ、もう完全いじけちゃってるよぉ。

 でもそこがまたかわいいの! むくれた顔も、か、かわいいぃ~♪

 やっぱ天使ちゃん見てると癒されるぅ……。


 いじけてる蒼空をよそに、自分の欲望に素直な沙希なのであった――。


「さあ二人ともとりあえず座って座って!」

 テーブルの席を勧める沙希。

 沙希ちゃん家もボクん家同様、リビングダイニングで、テーブルは4人がけだ。


「ありがと~!」

「う、うん……」

 春奈は元気よく、そしてボクはまだちょっとむくれながらも素直にしたがう。

 よそのお家では素直なのだ。(猫をかぶってるともいう?)


 そしてみんななんとか席につき、いよいよ今日の議題? についてお話しようとした矢先……。


「あら? まぁまぁ、沙希のお友達さんね? この寒い中ようこそ、いらっしゃい」

 


 沙希ちゃんママが登場した――。

 



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