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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
42/124

ep40.最初の関門

※話数を修正しました。

 8月は友達とプールへ行ってその後ボクが熱を出したり、ちーちゃん共々お父さんのお墓参りに行ったり、更には夏季休暇で帰ってきた伯母さんの再度の来訪もあり……と、色々な出来事があり、あっという間の1ヶ月だったような気がする。


 もちろん勉強もさぼらずキッチリ進めたよ?(熱を出してお休みしちゃったのは勘弁して……)

 

 9月には中卒認定試験の願書も予定通り提出し、勉強もちーちゃんの先生っぷりに拍車がかかり、戦々恐々とする毎日だったよ……。(まあそれは今もだけど)

 もうこの頃になると春奈の授業に追いついてきて、春奈も一緒になってちーちゃんの出すテストを受けたりしてる。(もちろん3教科に重点をおいてね)



 そして10月――。


 ボクは16歳の誕生日を無事迎え、お誕生日のパーティーも開いてもらっちゃった。

 誕生パーティーには沙希ちゃんの他にも、亜由美ちゃんや優衣ちゃんまで来てくれてすっごく盛り上がって楽しかったよ!

 みんなからプレゼントもいっぱいもらってすごくうれしかったけど、中でもお母さんのプレゼントはこれからのボクに必要な、ボクのためを思ってのプレゼントで余計にうれしかった。

 お母さんがくれたのは "単眼鏡" で、眼鏡をかけても視力がほとんど良くならないボクのために遠くがちゃんと見れるように……って、プレゼントしてくれたんだ。  黒板の文字を読むにも大変なはずのボクにはこれから必要になるのは間違いないからホントうれしい!


 お祝いしてくれたみんな、ありがと~!



 誕生日が過ぎると次はいよいよ中卒認定試験。


 中卒認定試験は、11月の最初の週の水曜日に県庁のずいぶん上の方の階にある会議室で行われるらしい。 ボクは正直言って一人で試験を受けるのがちょっと不安。 会場まではお母さんが一緒に来てくれるけど……。



 そして試験日はどんどん近づいてくる――。


 ちーちゃんは試験日直前にも一度模擬テストをしてくれて、その結果を見たちーちゃんは自信満々の表情でボクの合格は間違い無しって言ってくれた。

 それがどこまで本心なのかはわからないけど、今まで一生懸命勉強を見てくれてたちーちゃんのためにもがんばらなくっちゃ!



* * * * * *



「じゃあ蒼空、お母さん一旦お外に出て時間つぶしてるから、お昼ごはんは一緒に食べましょうね?」


「は~ぃ……」


「蒼空、時間近くになったらちゃんと戻って、ここで待ってるからそんな顔しないの!」


 ボクは中卒認定試験の会場までお母さんと一緒に来ている。

 そして今は会場近くにある自販機コーナー前のベンチに座って、試験開始前までの時間をつぶしてた。 でも時間が近づいてきて一旦ここから出て行こうとしたお母さんにボクが不安そうな顔を見せたため、言い聞かされちゃってたのだ。


 だってすごく心細いんだもん……。

 

 さっき会場内をちらっとのぞき、そして今この周りを見る限り、ボクの他に女の子は居そうもなかった。 居たのは中学くらいの男の子が三人、どう見ても日本人じゃ無さそうな若い男の人が二人、そして年配の男の人が一人。 この人はこれから高校受けるって感じじゃないよね? たぶん。

 どうやら受けるのはこれで全てみたいでちょっと拍子抜けするけど。 それにしても周りは男の人ばかりでちょっと不安になってしまう。(元男の子っていっても、今は全然力のない女の子なんだし……仕方ないよね)


「それじゃ行くわね? 蒼空もそろそろ会場に入りなさい」


「う、うん……」


 そう言ってお母さんはボクの前からほんとに去っていった……。


 ボクは女の子の体になってから今まで、知らない人達の中で一人になるってことがほとんど無かったから、心細くってたまらない。


 でも助けてくれる人はもう誰もいないし……。

 あ~ん、春奈に後で笑われないためにもこんなトコロで弱気になってちゃダメだ、がんばらなくちゃ!


 

 会場に入ると予想通り、ボクは受験する人の注目をいやでも浴びちゃった。

 さすがにこんな日にちょっかいかけて来るような人はいないだろうけど、みんなの視線がなんかイタイよぉ。

 そりゃあ白い髪の、中学生にギリギリ見えるかどうかって女の子が杖をついて入ってくればビックリするだろうけど、もうちょっと遠慮してよぉ……。


 それでもボクはなるべく目立たないようにと、一番後ろの席に一度座ったんだけど、その場所からだと前の壁の白い板に貼ってある掲示物がぜんぜん見えないことに気が付いた。

 会場に入ってる人達も前の方はいやみたいで、前寄りの席は選びたい放題。

 ボクはもう仕方なしに前の席、それでも後ろに誰もいないトコロにいやいやながら移動した。

 中学くらいの男の子たち三人のうち、二人は知り合いみたいでボクの方を見てなんかボソボソしゃべり合ってる。


「おいあのちっちゃい子すげぇー、髪の毛真っ白じゃん! それにすっげカワイイっ」

「でもあれほんとに15才以上(※)の子なのかぁ? 来るトコ間違ってないかぁ?」

「んなことねぇだろぉ、いくらなんでもさぁ?」 


 そんな彼らのたわいない会話が聞こえてくる。


 はぁ、なんかいやな感じだなぁ……。

 ほっといてよボクのことは。


 そんなことがありつつも席に付き、やっと落ち着いて会場を見渡す。

 広さは学校の教室の半分くらいで、20人程度なら余裕で入れそうだ。 でも受験するのはやっぱりさっき見た人達だけみたいで、ボクを入れても七人だけ。 ほんと少ないんだなぁ……。


 そういや前の掲示物ってなんなのかな? 確認しなくっちゃ。


 ボクはお母さんからプレゼントしてもらった単眼鏡を取り出し、早速使ってみた。


 「うわぁ、すっごく……」

 思わず声出しちゃった。

 さっきの男の子達が不思議そうに見てる……。 ううっ、恥ずかしい。


 でもこれ小さいけどすっごく大きく見えるよ! 全体は見えなくなっちゃうけどこれならなんとか掲示物も読めるっ。 うふふ、お母さんありがとっ!


 掲示物は何のことはない……、時間割と試験の注意事項だった。 これなら受験票と一緒にもらった書類にも書いてあったし、今も持ってるじゃん!  ボクはとんだ無駄骨を折ってしまった……、目立ち損だよぉ!



「ガチャリ!」

 会場の前側のドアが開いた。

 

 試験官の人が来たみたい。


 いよいよボクの中卒認定試験が始まるんだ。

 これに受からなきゃ春奈たちと一緒に高校にいけなくなっちゃう。


 がんばろうっ!



 ――試験は午前中に国語と社会、午後から数学、理科、英語の5教科が行われ、途中お昼休みが1時間半ほどとられていて、充分外食する時間がある。


 蒼空は午前の2教科を緊張しながらもなんとかこなし、お昼休みになると親を探す子猫のごとく日向の元へと向う。

 そしてごはんを食べながら、会場の雰囲気や試験の内容について身振り手振りを交えながらも日向に話し、心細さを必死にごまかそうとする蒼空だった。

 日向はそんな健気な蒼空を見て、やさしく微笑みながら話しを聞いてあげるのだった。


 そして午後からの試験。


 残り3教科も、心細い気持ちは結局そのままながらも、それでもしっかりとこなし、無事最後の試験の終了まで迎えることが出来たのだった――。



「あ~ん、やっと終わったよぉ!」

 蒼空は自販機前のベンチで待っていた日向にそう言って、ちょっとよわよわしい足取りで歩みよる。 

 試験のストレス、そして同じ姿勢でずっと座っていたこともあり、疲れてしまったのだろう。


 日向はそんな蒼空を、手を差しのべて迎える。

「お疲れさま! 蒼空。 試験どうだった? 手ごたえ充分?」

 腰に軽くすがりついてくる蒼空のアタマをなでながら聞く。


 蒼空はすがりついたまま日向を見上げて言う。


「うん! けっこういいセンいってるってボク思うんだけどなぁ。 うふふっ」

 そう言うとまた顔を寄せる。

 今まで心細かったせいか、やたらと甘えてくる蒼空。

 日向は甘えてくる蒼空をかわいく思いながらも、ちょっと周りの目が気になってくる。 


「ほら蒼空、ここはいろんな人が使う場所だからそろそろ行きましょ?」

「えっ? う、うん。 わかった」

 蒼空も周りを見てちょっとばつが悪くなったようで、名残惜しげながら日向から離れるのだった。


 日向は蒼空の荷物を持ってやり、また蒼空の疲れておぼつかない足取りから、腕を腰にまわし支えるようにして、車へと向うべく歩き出す。

 車に向う最中さなかも蒼空は話しをする。 よほど一人でずっといたことがこたえたのか、そのうっぷんを晴らすかのようだ。


「でね中学くらいの男の子たちがねぇ、ボクのこと15才以上に見えない とか言ってるんだよ? ボクまで聞こえちゃってるのにさっ、失礼しちゃうよね!」

「あらあら、ほんと失礼ね」

 そう言いながらもこっそり苦笑いする日向。


「それとねぇ、試験の問題は持って帰っていいんだって。 だからボクも持ってきたよ! 後でちーちゃんに答え合わせしてもらうねっ」

「ふぅん、そんなこと許してくれるなんて随分寛容なのねぇ?」


「それからお母さんの……」


 蒼空の話は尽きない。

 日向は蒼空の話しに時折り言葉を返しつつも聞き役に徹しているが、この後の展開がなんとなく読める日向は、そろそろ落ち着いて欲しい……と思ったりもする。



# # #



 車まで戻った日向は、すでに先ほどまでの元気が無くなり"ふにゃふにゃ"になりつつある蒼空をリアシートに押し込み、ようやく県庁舎を離れることが出来たのだった。


「はぁ……、蒼空ったらほんと手の焼ける。 ふふっ、よっぽど試験、心細くて緊張しちゃったのね。 あんなに興奮した蒼空を見るのも久しぶりだわ」

 読み通り、リアシートでぐっすり眠り込んでいる蒼空をチラリと見つつ日向はひとりごちる。



「かわいい顔して寝ちゃって。 ほんとお疲れさま! 試験受かるといいわね」


 ……後は熱さえ出さないでくれるといいんだけど。


 日向はその言葉と少しの心配を最後に、春奈や千尋の待つ我が家へと帰路を急ぐのだった。



※その年度内に満15歳以上になるものに受験資格がある。


------------------------------------------------------

なんか説明文が多過ぎかなぁ……


ホントの試験がお昼休みに外食できるのか?

どうなんでしょうねぇ。

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