ep38.蒼空の楽しい一日 ☆
※話数を修正しました。
「遅いぞ、春奈、蒼空ちゃん!」
優衣ちゃんがご立腹だ。
「ごめんごめん、色々手間取っちゃって。 とりあえずどうしよっか?」
そう言ってプール内を見回す春奈。
平日とはいえさすが夏休みで、けっこう人は多い。
屋内プールはどっちかというとまじめに泳いでる人が多い感じで、プールへもスイミングキャップをしてないと入れないのだ。 そのため一応ボクも買ってきたんだけど……。
「なんか屋内ってちょっと暗いよね? 居心地悪そうだし。 せっかくだから屋外行きたいけど……蒼空ちゃんどうなのかな?」
優衣ちゃんがズバリ聞いてくる。
「もう優衣ったら、ほんと配慮がたりないっていうか……」
亜由美ちゃんがあきれて言う。
「友達にそんな気を使ってどうするのさぁ? ねぇ、蒼空ちゃん」
「うん、ボク気にしないよ。 亜由美ちゃんもあんまり気を使わないでいいよ。 それにさぁ、優衣ちゃん言ってるように屋内ってあんまり楽しそうな雰囲気じゃないよねっ」
そう言ってボクは亜由美ちゃんと優衣ちゃんを見る。
亜由美ちゃんは、ちょっと大人っぽいおへそが見えるくらいの黒地にドット柄のタンキニ(タンクトップビキニ)を着てる。 着やせするタイプなのか胸がけっこう大きくって、背の高さもあって高校生だって言っても充分通用するスタイル!
優衣ちゃんは、ぱっと見ふわっとしたフリルスカート付きのピンク色のワンピースだけどセパレートになってて、肩ひもの代わりに胸元から首に掛けるようになっててすごくカワイイ! 胸……は、まあボクよりはあるよね。
「じゃあとりあえず外で遊んで、蒼空ちゃんの様子みて屋内に戻って来るようにしようか?」
亜由美ちゃんがそう提案する。
「そだね、そうしよっか? 外のすべり台とかやってみたいし♪」
春奈が賛成する。
ちなみに春奈の水着は、水色地の水玉模様のワンピースで肩ひもはかなり細い! 腰周りに控えめなかわいいフリルが付いてる。 春奈ってば、最近胸が大きくなってきたって自慢してくるだけあって多少はあるよ……。 いいよね成長してる人は……でも亜由美ちゃんには全然勝ててないしっ。
プールサイドを屋外に向けて歩くボクたち。
ボクは春奈に寄り添われてなんとか無難に歩いてる。
時々すれ違う人が、ボクのことちょっと驚いた感じで見てくるけど、春奈たちに囲まれるように歩いてるおかげで全然不安感はない。
目にはカラーコンタクトはめてるからそんなに目立たないはずだし、白い髪も案外染めてるとか抜いてるって思われたりするかも?
ボクたちは外に出ると大きめのプールの方へ向い、プールサイドにいくつか常設されてるパラソル付きのテーブルに陣取った。 お日様の光に敏感なボクにはウレシイ施設だ。
今日も8月の太陽が容赦なく照り付けてるから、なかったら大変なトコだよね。
「私、ちゃ~んとお弁当作ってきたからみんなで食べようね! でもその前にひと泳ぎする?」
亜由美ちゃんがそう言って春奈を見る。
「さっすが亜由美ちゃん! いい仕事してますねぇ~♪ でもやっぱ私はまずプールに入ってこの暑さから逃れたいかなぁ」
「私もまずプール! すべり台いこいこ!」
春奈も優衣ちゃんもプールかぁ、ボクどうしよっかなぁ……。 そうボクが悩んでると。
「お姉ちゃん、せっかく来たんだからまずは入ろうよ? プール」
どうやらプール入りは決定みたいだ……。
「「きゃー!」」
優衣ちゃんと亜由美ちゃんが喜声をあげつつ連続ですべり台から滑り降り、その勢いで水しぶきを盛大に上げながら水の中に突っ込んで行く。
すごく楽しそう! でも続けて降りたら危ないよ?
そして次はボクたちの番。
「ねぇ春奈ぁ。 ほんとにボクもやらなきゃダメ?」
「だ~め~! せっかく来たんだもん。 やっちゃいなよ、お姉ちゃん。 私先に滑って、下でちゃんと見てるから安心して、ね?」
「わかった。 やるよ、ボク」
体のことが不安だから躊躇してしまうけど、ほんとならボクもこういうのは大好きなのだ。
「じゃ、お姉ちゃん。 お先に~~! きゃー♪」
あっという間に滑り降り、水しぶきと派手な着水音を上げた春奈。 次はボクの番。
ボクはカラコンを無くさないよう買ってきたゴーグルを付け、思い切って滑り降りた!
「きゃー!」
自然と声が出て……。
ちょっと控えめな水しぶきと共にあっという間に水の中に突入。
ボクが水の中でもごもごしてたら誰かが腕を組んできた。
「お姉ちゃん、大丈夫だった?」
やはりというか春奈だった。
「うん! 大丈夫。 やっぱ気持ちいいねぇ、えへへっ」
そう言いながらも水の中に突っ込んだ拍子にずり上がってきちゃった水着を直す。
お尻んとこ、すぐ上がってきちゃうよね? もう。
でも……久しぶりに入ったプール。 みんなと遊ぶ夏休み。 懐かしいこの感覚。
ほんと楽しい!
「そう! よかった~♪」
そんなボクを見て春奈もうれしそうに笑う。
「春奈ありがとね! 今日は連れて来てくれて」
ボクは春奈に手を引かれ、プールサイドに向いながら言った。
「えへへぇ、まぁ、私もプールに行きたかったし、亜由美たちもお姉ちゃんと遊びたがってたしね? たいしたことないっしょ?」
春奈ったらめずらしく照れてる、かわいっ……えへへっ。
そしてしばらくすべり台まわりで遊んだところで……、
「よ~し、とりあえず水に入って涼んだことだし~、お弁当タイムにしよ~!」
春奈がみんなにそう言って声をかける。
「待ってました~!」
「もうお腹ぺこぺこぉ」
優衣ちゃんとボクがそれにうれしそうに答えた。
「じゃあ私、お弁当準備するね」
亜由美ちゃんがそう言って、いち早くパラソルの方へ向う。
ボクと春奈も続いてパラソルの方へ向かおうとしてたら、ふと春奈が気付いたように言う。
「あぁ、お姉ちゃん! 髪の毛ばらばらになっちゃってるよぉ。 しまったなぁ、最初にまとめとけばよかったねぇ」
「えっ、そう? まぁプールに入ったんだし仕方ないよ」
ボクが大して気にもせずそう言うと、
「だめだよっ、お姉ちゃんの髪の毛もずいぶん長くなってきたし、ちゃんとまとめとかないと水ん中で広がっちゃって大変だよ? 上がったらまとめたげるよ」
春奈がボクの髪の毛をいじりながら言う。
「わかった。 じゃあお願いするよ、よろしくね」
ボクはそういうのよくわかんないから春奈にお任せすることにした。
それよりお弁当だよ、お弁当~。
プールサイドのパラソルの下、テーブルの上には亜由美ちゃん作のお弁当がズラリと並んでた。 大きめのお弁当箱2つにはおにぎりがギッシリ詰まってる。 そしてちょっと小さめのお弁当箱も3つあってそれぞれにおかずが詰めてある。 から揚げやえびフライ、たこさんソーセージにコロッケ、たまご焼きにポテトサラダまで入ってる。 彩りもかねてちゃんとお野菜とかもそえられててキレイに仕上がっててすごくおいしそうだ。
「「すごいねぇ、亜由美ちゃん」」
ボクたちはそれを見て感嘆の声をあげた。
「うふふ、ありがと! おいしいかどうかわからないけど、どーぞ召し上がれっ」
うれしそうにそう言い、食べるようすすめてくれる亜由美ちゃん。
「じゃあ遠慮なしにいただくねぇ!」
優衣ちゃんがそう言うなり、早速お弁当に手をのばす。
ボクと春奈も負けじとお弁当に手をのばす。
「デザートに果物もあるからね? 遠慮せずにみんな食べちゃってね~!」
「「は~い!」」
ボクたちはおにぎりやおかずをお口いっぱいにほおばりながらも、亜由美ちゃんに元気良く答えた。
ボクはこうやってお外で遊ぶのも久しぶりなら、お弁当を食べるのも久しぶり、ホントに久しぶりのことだらけでうれしくて、楽しくてたまらない。
「亜由美ちゃん、どれもすごくおいしいっ!」
ボクは亜由美ちゃんに言う。
「ホント、ほんと、すごくおいしいね! 亜由美のお弁当、サイコーだよぉ」
春奈も満足そうに言う。
「ほふと、はゆひのほへんとーほひひーよへー」
優衣ちゃん、おかずをお口いっぱいにほおばったまま言う。 何言ってるのかさっぱり聞き取れないよ? 言ってることは想像つくけど。
「ちょっと優衣、お口に食べ物入れたままでしゃべらない! はしたないんだから」
亜由美ちゃんがあきれて注意し続けて……、
「でもお口にあったようでよかった! みんな褒めてくれてありがとね。 うふふっ」
うれしそうにお礼をいう亜由美ちゃん。
お礼を言うのはボクたちのほうです。 おいしいお弁当ありがとう!
そんなやりとりを楽しみながら昼食は進み、用意してきたお弁当はすべて食べつくされてしまうのだった。
「じゃお姉ちゃん、髪まとめよっか?」
春奈がさっきのことを忘れず、ボクの髪をいじりだした。
それを亜由美ちゃんと優衣ちゃんも見物してる。
「手元にヘアゴムしかないし、簡単にポニーテールでいいよね?」
「へっ? うん。 もうぜんぶ春奈にお任せします」
「もう、自分のことなのに投げやりなんだからぁ。 ……でも、まぁ仕方ないかぁ」
春奈はぶつくさ言いながらも手際よくボクの髪の毛を束ねていき、またたく間にポニーテールが出来上がった。
前髪を耳の前で両脇に少し残し、アタマの前と後ろの方からバランスよく髪の毛を集め、アタマの上よりちょっと後ろくらいで束ねて垂らすような感じにまとめてくれてるみたい。
あ、亜由美ちゃんったらまた写メ撮ってる。 前もお家で撮ってたよね。
「亜由美ちゃん、こんなの撮ったら恥ずかしいよぉ」
「うふふ、気にしないでくださいな。 私の秘蔵アルバムに入れるだけですからね? そのうち蒼空ちゃんアルバム作っちゃおうかなぁ? あ、もちろん春奈や優衣のもあるからね~」
「なによそれぇ! 亜由美そんなの作ってんの? 変なのないでしょうね~? もう油断も隙もあったもんじゃないんだから……」
春奈ったらブツクサ言ってる。
「また見せてよね? 変なの見つけたら即消しなんだからね」
「その時は私の分も消しといて、春奈」
春奈の言葉に優衣ちゃんも便乗してくる。
「そんなみんなひどいぃ! 私が一生懸命作ってるラブリー写真集なのに。 でも見たら絶対気に入るよ!」
亜由美ちゃん、妙に自信たっぷりだ。
「それにしても蒼空ちゃんのポニーテールかわいい! やっぱり素材がいいと、どんな髪型しても似合うね♪」
亜由美ちゃんが話をそらすかのようにボクの話題に振る。
「でしょでしょ! かわいくまとまったでしょ?」
春奈、あっさりそれに乗っちゃうし。 単純なんだから……ふふふ。
「ねぇ、もうひと泳ぎしようよぅ! 時間もどんどんなくなっちゃうよ」
優衣ちゃんがそう言ってみんなを促がす。 そういやだいぶ上がったままだよね。
「よし、じゃあ行こう!」
春奈も賛成する。
「お姉ちゃん、どうする? 体調とか大丈夫?」
「うん、まだ大丈夫。 それにせっかく春奈に髪の毛まとめてもらったし……」
蒼空はけっこう気に入ったようでそう答えた。
「そっか! じゃあ、日焼け止めだけもう一度塗りなおしてから入ってね」
春奈ほんとにお母さんみたいだ……。
それにしても結局屋外ばっかだからスイミングキャップ使わずにすんじゃったかな。 まぁホントは外でも使った方がいいのかもしれないけど……。
そしてみんなは次々、嬉々としてプールへと向っていった。
その後1時間ほどプールでみんなとはしゃぎまくり、あまり長い時間外に居るのも良くないってこともありボクたちはプールを後にしたのだった。
* * * * * *
帰りのバスの中。
「蒼空ちゃん寝ちゃってるよぉ」
「ほんとだ、今日はずいぶんとはしゃいじゃってたものね?」
「お姉ちゃんったら……、すぐ自分の体のこと忘れちゃうんだからぁ」
春奈がそう言いつつ、疲れて春奈に寄りかかって眠っている蒼空の頭をなでる。
蒼空のアタマはプールだとキレイに整えられなかったので今もポニーテールのままだ。
「なんかそうして並んで座ってるとさぁ、やっぱ春奈がお姉さんみたいだよねぇ?」
優衣が2人の様子を見ながら言う。
「そうだね、蒼空ちゃんが気にするから言えないけど、ちっちゃくてカワイイ蒼空ちゃんはどう見ても妹さんに見えちゃうわよね?」
そう言いつつそんな姿も写メに撮ってる亜由美。
「もう2人とも~、お姉ちゃんはお姉ちゃんなの! 大事な私のお姉ちゃんなんだから」
春奈はちょっとむくれた顔で2人に抗議する。
「ゴメンゴメン、そうだよね。 ついついかわいいからそう思っちゃって。 ごめんね春奈!」
亜由美がそう言って春奈をなだめる。
春奈も友達にそうは言うものの、実際そう見えるのは間違いない事実だからあまり本気で怒っているわけでもなく……。
「まぁ、いいんだけどねぇ。 でもあんまりお姉ちゃんの前では言わないでね?」
「「はーい、わかってま~す!」」
2人が声をそろえて言う。
春奈はやれやれと思いつつ、このままだと本気で寝ていってしまいそうな蒼空に声をかける。
「ほらお姉ちゃん! バスすぐ駅に着いちゃうから眠りこまないでぇ」
「ううん……」
「お姉ちゃん!」
「…………」
全く起きそうにない蒼空。
「起きないね?」
優衣が言う。
「無理やりにでも起こす?」
亜由美が聞く。
「はぁ、もういいわ。 私おぶって降りてタクシーで帰るよ。 この調子だと起きたってとても歩いてくれそうにないしねぇ……」
春奈があきらめて言う。
亜由美と優衣は顔を見合わせて笑い、そして言う。
「「やっぱ妹だよね」」
「「「ぷっ!」」」
今度は3人が顔を見合わせて吹き出す。
そんな3人に見られている蒼空は、相変わらずぐっすりと気持ち良さそうに眠り込んでいた。
蒼空にとってこの日は久しぶりに味わうことの出来た、友達との楽しい一日だった。
きっと今日はいい夢を見れることだろう。
いやもうすでに見ているのかも?
春奈はそんな蒼空を見てタメ息をつきつつも、やさしい気持ちで満たされて行くのだった。
予約投稿設定が1月1日だ。
元旦投稿めでたいな~♪
でもお話しは真夏です、はい。