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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
39/124

ep37.夏休み ―春奈の計画―

※話数を修正しました。

 ボクが清徳大付属に進路を決めたことでちーちゃんの勉強の進め方にも多少変化があったみたい。 清徳の推薦入学の試験は国語、英語、数学の3教科だ。 試験はマークシート方式みたいだからちょっと気が楽かも。 もちろんちゃんと考えて解答するけど……えへへっ。

 3教科に絞れる分、各教科の勉強に重点を置くことが出来るからボクにとってもメリットは大きいよね。


 中卒認定試験については、公開されてた過去の問題を見たちーちゃんいわく "今受けたとしても充分合格出来るレベル" ってことでもう全然心配していないのだ。 当日ポカしなけりゃ、よほどのことがない限り問題なしってお墨付きもらっちゃった。


 でも春奈がボクとおんなじトコを受けるって言ったときにはびっくりしちゃったけど、沙希ちゃんまで清徳を受けるって決めちゃうし……。 ボクとしては一緒に行ければそりゃうれしいけど、ホントにいいのかなぁ?

 そんなボクの心配をよそに2人は清徳大付属へ進学することに意欲満々のようだ。


 なによりボクは人の心配してる余裕なんかないんだった。 いくら推薦をもらえるっていっても試験は受けなきゃいけないんだから。 その試験に落ちてちゃ話しにならないもんね!

 中卒認定試験まであと3ヶ月を切って9月にはいよいよ出願、11月早々には試験があるはずだ。 それが無事終わるとその2ヶ月後には清徳の試験……。 残り約5ヶ月、がんばろう!


 そんなコトをリビングのソファーに座り、TVを流し見ながら ぼーっと考えていると、いつものごとく春奈が何かありそうな顔つきで声をかけてきた。

「お姉ちゃん! 今日ひまだよねぇ?」

「うん……。 特に何もないけど?」

 今日ちーちゃんは大学の友達と遊びに行ってるからお昼のお勉強はなしなのだ。 春奈は当然そのことを知ってるから、まず間違いなく計画的な犯行のはずだ。


「今日ねぇ、亜由美と優衣とでねぇ、となり街のプールに行こうって話になってるんだけどぉ。 お姉ちゃんもその面子に入ってますんで準備よろしくね!」

「ぷ、プール? ぼ、ボクも一緒にぃ?」

 やはりというか、いきなりすごいコト言い出した。


「で、でもぉ……。 ボクにはまだそんなトコ行くの早いんじゃ? それに水着持ってないし? ボク」

 とりあえず抵抗をくわだててみる。 たぶん無駄だけど……。


「お姉ちゃん、何言ってるの? プールなんてある意味リハビリにもってこいじゃん! それにそこのプール、子供用もあるよぅ? えっへへぇ」

 春奈め、さりげなくなんか付け加えてるしぃ~、むうぅ。


 でも更なる抵抗を試みるボク。

「ううっ、そうかもしんないけどぉ……人も多そうだしさっ、それにボクなんか一緒だと亜由美ちゃんや優衣ちゃんにも迷惑なんじゃ?」

「お姉ちゃん! またそんなコト言う~! 誰も迷惑だなんて考えてないんだからね。 それどころかみんな楽しみにしてるよ? お姉ちゃんとプール行くの。 それに人にももっとなれとかなきゃまずいっしょ? 高校行かなきゃいけないんだしさぁ」


「そりゃそうだけど……さぁ」

 ボクがまだぐずぐず言ってると……。

「それにこのコトはお母さんにもちゃんと話してあって、バッチリOKもらってるから」

 そう言ってニタリと笑う春奈。


 ぐぅ、外堀完全に埋められた……。


「でも、水着……」

 それでもなお言いかけると、


「水着は今から駅前のショッピングセンター行って買えば問題なし! 駅からプール行くバスも出てるからちょうどいいしね?」


 もう観念するしかなさそうだ……。

 それにしても水着だなんて……、ただでさえ恥ずかしいのにさっ。 ほんとに春奈は強引なんだからぁ。


「はいはい、いつまでもブツブツ言ってないで、じゅんび、準備!」

「は~い……」

 ボクは仕方なく外出の準備をしに部屋に戻るのだった。



* * * * * *



「やっほー!」

 春奈が駅の待ち合わせ場所にいた優衣ちゃんに声をかける。

「あっ、春奈ぁ! おっはよ~♪ おっ、蒼空ちゃんもちゃんと連れてきたねぇ」

 優衣ちゃんが元気に答える。 でもやっぱみんなで共謀だったんだね……。

「もっちろん! お姉ちゃんに拒否権なんてないも~ん」

 言い切る春奈。

 ひどっ! どうせボクは妹にすら勝てないひ弱なお姉ちゃんですよぉ~だ!

 

 そして周りを見渡しながら、

「亜由美はまだ来てないの?」

 と、春奈が聞く。

「ううん、もう来てるよ。 ちょっとおトイレ行ってるだ、け……あ、ほら、来た来た!」

 ウワサをすれば……のことわざ通り、姿を見せる亜由美ちゃん。

 それを見て春奈が声をかける。

「亜由美ぃ、おはよ~! お姉ちゃんもこのとーり連れて来たよ~!」

 むぅ、また春奈ったら人のこと指さすぅ。 指ささないでよっ! 指を。 たくぅ。


「春奈、蒼空ちゃん。 おはよ~!」

 亜由美ちゃんも優衣ちゃんも、ボクの呼び方はすっかり蒼空ちゃんだ。 ボクの方が年上なんだけど、ボクがそれでもいいって言ったのと、やっぱ見た目からしてその方が呼びやすいんだと思う……。


「よし、みんなそろったトコロでまずはお姉ちゃんの水着を見にいこー!」

「「りょ~か~い!」」

 やたらとそろった声で亜由美ちゃんと優衣ちゃんが春奈の呼びかけに答える。

 そしてボクは春奈に腕を組まれ、半ば引きずられるようにショッピングセンターへと連れて行かれる。

 それを残りの2人が楽しそうに笑って見てた。 ボクに味方はいないようです……はぁ。



* * * * * *



「これなんてどうかな?」

「こっちのほうがカワイイよぉ~!」

「きゃ~、それちょっとえっちぃよぉ?」


 水着売り場で盛り上がる女の子3人。 もちろん春奈たちだ。

 ボクはそのテンションにまったく付いていけない。 っていうかボクに何を着せようとしてるの? さっきから見てると、だんだん肌の露出の高い水着が取り上げられてる気がするんだけど……。 まじめに選んでよねぇ、お願いだから。


「お姉ちゃん! これとぉ、優衣がもってるやつ。 どっちがいい?」

 春奈が手にしてるのは、白地に小さな花柄のビキニで胸元にリボン、腰まわりはフリルスカート、ビキニっていうのが気になるけどまぁ見た目はけっこうカワイイ感じの水着だ。


 対する優衣ちゃんの水着は、淡い青にドットと花柄のフリルスカート付ワンピースで胸元に帯状のフリルが付きその前にリボンが付いてて女の子っぽい感じ。


 そこに亜由美ちゃんも一着持ってくる。


「蒼空ちゃん、私のも見てくれます?」

 亜由美ちゃんのは、これもワンピースながらフリルや、リボン一切なしのシンプルなデザインだけど、明るいピンク地にドット柄で後ろがけっこう大きく開いて、背中で肩ヒモが交差してて、しかもけっこう肌にピッチリしそうな感じでちょっと大人っぽい感じ。


「ねっ? どれがいいと思う~?」

 春奈が解答を迫ってくる。

「そんなこと言ったって……、よくわかんないし」

 ボクに選べなんて言われたって。

「思ったこと言えばいいんだからぁ、ほらほらぁ」

 なおも迫ってくる春奈。


「うぅ、じゃあ言うけど。 ……春奈のはビキニだからいや、かも。 ボク胸もないし……」

 それを聞いてガックリする春奈。


「優衣ちゃんのは、ワンピースだしスカートとか付いててあんまり恥ずかしくないのがいいかも。 ただちょっとかわいすぎないかなぁ?」

 優衣ちゃんが春奈を見てどや顔をする。


「それで亜由美ちゃんのは、ワンピースなんだけど……、そのぉ、ピッチリした感じがするし、背中が大きく開いてて……恥ずかしい」

 これもガックリする亜由美ちゃん。


「いぇーい! これは私ので決定ですねぇ~?」

「そ、そんな……、お姉ちゃんがそんな少女趣味に走るなんて」

「いえ、私のシンプルイズベストこそが蒼空ちゃんのカワイさを……」


 はぁ、みんなして勝手なこと言ってるよ。

「ねぇ? もうボクは優衣ちゃんのでいいと思うから、そろそろ行かない?」


 ボクは周りの視線がイタイの。 みんなが騒ぐから……。


 結局その水着とスイミングキャップ、ゴーグルとかも一応買ってお店を出たのだった。



* * * * * *

 


 ボクたちが来たのは、隣街であるU市の運動公園内にあるプールだ。

 お家からだと、いつもの駅までまずバスで行き、そこからプール行きのバスに乗り換えて行くことになる。 所要時間は10分で、トータルでも30分もあれば着けるからけっこう便利な場所にあるって言えるんじゃないかな?

 ここの屋内プールはドーム状のおっきな屋根でおおわれてて50mあるプールはちょっと深め。 ボクの背丈だと身長制限ギリギリなのだ。 それに対して屋外は大小2つのプールがあって、小さいながらすべり台まであったりする。 ちなみに小さい方が子供用だ。


「お姉ちゃん、日焼け止めはしつこいくらいに塗っておいてね? それとすぐ塗りなおせるようにポーチに入れとくんだよ」

 更衣室でお洋服をよたよたと脱いでると、春奈がまるでお母さんみたいに注意してくる。 まぁいつものことだけど。


「うん、わかってるって。 ボクだって日焼けして痛い思いなんかしたくないんだから」

 そう言って口答えしてみるボク。

 そしていつも通りスルーした春奈が更に言う。

「それと眼鏡はプール内ではしちゃいけないから外してね。 あっ、しまった! お姉ちゃん、カラコン持って来た?」

 春奈がうっかりしてたとばかりにボクに聞く。

「うん、大丈夫。 眼鏡やコンタクトはいつも携帯するようにしてるから」

 ボクはそう言ってポーチをちょっと上げて見せる。

「そっかぁ、良かったぁ。 プールって水がキラキラしてお日様の光を反射するから目にあんまり良くないんだよ。 安心したよぉ……」

 こういう時の春奈はホントにボクのことを心配してくれてるってコトがわかって胸が熱くなる。(もちろん春奈にはナイショだけど)


「そういえば、杖って持っていっちゃダメだよね? やっぱり」

「うっ、どうなんだろ? でも、まぁ大丈夫だよ。 どっちにしてもプールサイドを歩く時は私が横につくつもりだから杖なくても大丈夫っしょ? プールサイドでころんじゃシャレになんないからね」

 その辺お母さんにもクギさされてるからと、言いながら春奈がボクを見る。


 亜由美ちゃんと優衣ちゃんはそんなボクたちの会話をうかがいつつ、そそくさと着替えて、「お先に~」 と更衣室から出て行った。 素早い着替えにビックリだ。 もうちょっと、ちょっかいかけてくるかと思ったのに……。


 ボクは春奈に着替えを恥ずかしながら手伝ってもらい、なんとか水着を着ることに成功した!

 やっぱ一人での着替えはこういう手がかりの少ないところだと、お家と違ってやりにくい……。

 個室だったら、まだゆっくりと出来るんだろうけど……数が少ないから全然空かないんだ。


 その後、春奈は速攻で着替え、遅れること5分少々で2人の待つプールサイドへと出ていった。



後編となる次話へ続きます。


最近このパターン多いなぁ……。

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