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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
38/124

ep36.いろいろな想い

※話数を修正しました。

== 蒼空の悩み ==



「はぁ、いい気持ちぃ……」

 思わず声がでるボク。


 今はお家のお風呂で、一人ゆったりとした気分で湯船につかってる。


 一人でお風呂に入らせてもらうようになって2週間ほどたった。

 やっぱお風呂は一人でゆっくり入ったほうが落ち着くよねぇ……うふふふっ。


 思えば今までは一人で入るのは危ないからって、いつもお母さんか春奈が一緒に入ってたんだけど、ボクは正直すごく恥ずかしかったから、なかなか落ち着いてお風呂に入ってられる気分じゃなかった。

 なんでお母さんはともかく、春奈も平気でボクと一緒に入れるんだろ? ボクは元男の子なのに……。 そりゃあ小さい頃はよく一緒に入ったりもしてたけど、小学校も高学年になる頃には自然と一緒に入ることもなくなったのにさ。

 

 やっぱこの体のせいなのかな……。


 ボクは湯船の脇に作り付けてある手摺りを持って立ち上がり、洗い場に出ると鏡を見る。

 そこに写ってるのは、小さくて華奢な女の子の姿。 出るトコはほとんど出てないし、あそこもまだ……その、ツルツルだ。 今では肩よりだいぶと下まで伸び、肘くらいまである真っ白い髪の毛、普通黒目のはずのところは赤い色で……。 お日様の光ですぐに赤くなっちゃう白い肌。 ただ外に出るだけでも気をつけなきゃいけないわずらわしい体。


 人はボクのことをかわいいだとか、キレイだとか言って褒めてくれるけど……、ボクはそんなものより普通の、みんなとお外で思いっきり遊べる……普通の体が良かったよ。 男の子のときみたいにみんなと一緒に遊べる……。


「いっけない、また考え込んじゃった」

 つい考えこんじゃう……悪いくせだ。


 ボクはまた鏡を見る。


「それにしても……、いつ見ても成長しないよねぇボクって」


「背は伸びる気配ないし、体つきもぜんぜん子供だし、それにおっぱい……大きくなるのかなぁ?」

 そう言いながらほんの少し膨らんで微妙な主張をしている胸をさわる。


「はぅ」

 そんなコトを考えてる自分にショックを受けた……。


 近頃自然とそんな考えをしている自分に気付くことがある。 これも女の子になったんだから普通のことなんだろうけど……ボクの心は複雑なのだ。


 でも。

 

 考えてみればこの体は11才。 まだまだ成長はこれからのはず……だ。

 がんばれボク!


 そういえば、石渡先生によるとこの体の誕生日は8月らしい。 だとするともうすぐじゃん? 誕生日。 12才……成長に期待しよっと。





== 春奈の想い ==



 お姉ちゃんが目を覚ましてくれてから、早いものでもうすぐ1年になる。


 お兄ちゃんからお姉ちゃんに変わってしまったけど私にとって、たった一人の"姉妹" だということに変わりはない。 まぁちょっと字が違うけどね? ふふふ。


 お姉ちゃんは認めたがらないかもしれないけど、今も昔もお姉ちゃんの顔つきってよく似てる。 そりゃあ、同じ遺伝子? ていうのから成長した体なんだから似てるのも当たり前よね? 

 そう。 お姉ちゃんは男の子のときから女顔で、よく私とは姉妹? って間違われてた。 その頃のお姉ちゃん(お兄ちゃん)は、そのことけっこう気にしてたっけ。 たぶん友達にもからかわれてたんだろうなぁ?

 今は私と体の大きさは逆転しちゃったけど姉妹は姉妹、お互い変わっていってもその関係が変わることはずっとない。


 目が覚めたばかりの頃、お姉ちゃんは自分で動くことさえ満足に出来なくて、そんなお姉ちゃんに少しでも早く元気になってもらいたくって……毎日のように病院に通ったっけ。

 日に日に元気になって、だんだん動きまわれるようになり、表情も豊かになっていくお姉ちゃんを見ているとすっごくうれしかったなぁ……。 


 慣れない女の子の姿や、お洋服にとまどってるお姉ちゃんを見るとついからかいたくなっちゃって、それでよくふて腐れちゃたりするけど……それがまたすごくかわいいし。


 お風呂に一緒に入るときの恥ずかしがる姿もまたすっごくかわいい。 お姉ちゃんったら、まだ男の子気分が抜けないのかほんと反応面白いんだよねぇ……ふふっ。 自分ももう女の子なんだから気にしなくていいのに。


 でもお姉ちゃんがたまに落ち込んでる姿を見るといたたまれなくなっちゃう。 その小さな体であの事件の後遺症に悩まされてるお姉ちゃんを見てると悲しくなってしまう。

 

 そんなお姉ちゃんの気持ちを、ちょっとでも楽にさせてあげられればいいのに……。


 

 お母さんとも一緒になっていつも色々考えてる。


 たまにやりすぎちゃって叱られちゃうこともあるけどね。


 これからも私やお母さんは、ずっとお姉ちゃんの味方。

 大事な家族なんだから何があっても絶対守ってあげるからね!


 妹の私が言うのはちょっと変かもしれないけど、そんなのはささいなコト。


 お姉ちゃんにはちゃんと幸せになって欲しいから……。



 これからもいっぱいおせっかい、やいたげるね!





== 沙希とママ ==



「ねぇママ。 ちょっと相談があるんだけどぉ?」


「あら、なにかしら沙希ちゃん? めずらしいわねぇ、あらたまって」


「ひどぉ、私はいつでもあらたまってるもん!」


「沙希ちゃん? 国語……ちゃんと習ってる? ママ心配になってきちゃったわ」


「…………」



「ともかく! お話し聞いてくれる?」


「はいはい、どうぞ」


「……あ、あのねぇ、私の進路のことなんだけど?」


「まぁ、沙希ちゃんにしてはめずらしく動きが早いじゃない! もう高校のお話し?」


「も~! 茶化さないでよぉ。 私はマジメに言ってんのっ」


「あら、茶化してなんかないわよ? 褒めてるんじゃないの」


「ううっ……。 いいっ! じゃ話し進めるよ」


「ふんふん、進路よね? それでどうするの?」


「そのぉ、私……清徳大付属に行こうかと思ってるんだけど……ママどう思う?」


「あらあら、まぁまぁ!」


「えっ、なに? だ、ダメなのかな?」


「清徳大付属に行きたいの? あらあらぁ……。 あなた、あそこ女子高なのよ? わかって言ってる?」


「ママっ? いくら私でも志望校のそんな基本的なことくらいわかってるに決まってるでしょ! も~!」


「うふふ、そうよねぇ? 我が子を疑うなんて母親失格ね。 ゴメンねぇ? はい、なでなで」


「ちょ、ママなにいきなりアタマなでてんのよぉ」


「あら、イヤだったかしら。 沙希ちゃん昔からこうしてあげたらご機嫌だったじゃない?」


「あ~ん、もう! 話し進まないじゃな~い!」


「えっ、ちゃんと進んでるじゃない。 清徳大付属に行きたいんでしょ? いいじゃないママ大賛成!」


「ふぇ?」


「あら、聞こえなかった? 賛成よ、ママ」


「ど、どうして? ずいぶんあっさり?」


「だって、沙希ちゃんが自分でそこに行くって決めたんでしょ? だったらママはそれを応援してあげるだけだもの」


「信頼してるわよ! 沙希ちゃん」


「ま、ママっ! ありがと~!」


「あらあら、やっぱり沙希ちゃんったら甘えんぼさんね? よしよし」


「ん? 沙希ちゃん、あなた胸大きくなったわねぇ? やっぱママに似たのねぇ」


「やん! ママ! いきなりもまないでよぉ、親がセクハラするなぁ~!」


「なにいってるの、母親がセクハラだなんて? いやねぇ。 ……それとも親でも訴えられたりしちゃうのかしら?」


「……ママ、もういいから。 それじゃホントに清徳大付属を志望校にしてもいい?」


「ええ。 沙希がそうしたいのならね」


「うん、したい!」


「意思は固いみたいね。 じゃ、これ以上なにもいわない。 合格出来るよう、がんばりなさい! 応援してるからね」


「ママぁ、ありがとぉ~!」


「うんうん、よしよし」




「あ、そうそう。 清徳大付属なんだけどさ」


「うん、なに?」


「そこってママの母校だから。 頑張って受かりなさいよね? 後輩候補さんっ」




「なっ!!!」




 とてつもない脱力感を味わう沙希だった――。




セリフのみって難しいですね。

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