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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
37/124

ep35.外出(後)とその顛末

※話数を修正しました。

 入ったお店はパスタメインのファミレスっぽい感じのトコロで、店内は平日とはいえ夏休みってこともありそこそこのお客さんが入ってた。

 ボクたちは店員さんに4人がけのテーブルへと案内され、メニューを受け取る。


「さぁ、何食べよっか?」

 春奈がメニューをみんなに見えるようテーブルに広げ、うれしそうに聞く。


「私はホウレン草のクリームパスタ!」


 沙希ちゃんが迷うことなくメニューを決める。

 もしかしてここ初めてじゃないのかな?

「沙希ちゃんクリームパスタかぁ……、う~ん」

 春奈ったら悩んでる。 人のことはドンドン決めてっちゃうのに自分のことはなかなか決められないんだから……ふふふ。


「じゃあ、ボクはカルボナーラね」


 悩んでる春奈を尻目にボクが先に決める。

「ええっ、お姉ちゃんもう決めちゃったの~?」

 春奈がちょっと焦ったような口ぶりでボクに言う。

「決めちゃったよ? 春奈ほらほら早く決めちゃって?」

 ここぞとばかりに春奈を攻め込むボク。 えへへ春奈の上手につけるなんていい気分だ♪

 妙につまらないことで優越感にひたるボク。

 ……沙希ちゃんは苦笑いだ。

 いいじゃんたまにはさ? こんなことほとんどないいんだから……。


「よし決めた! 私は和風キノコパスタにする。 それとさ、シーザーサラダみんなで食べない?」

「あ、それいいね。 賛成!」

「ボクもいいよ」

「了解! あ、それとみんなドリンクバーも付けていいよね?」

 春奈の問いに沙希ちゃんとボクはうなずく。


「よしそれじゃ注文しよ~!」

 そう言いうと春奈はテーブルのすみにおいてある呼び出しボタンを押す。



# # #



 みんな出されたパスタに舌つづみをうつ。


「ここって安いけどおいしいんだよねぇ……」

 出された料理に沙希ちゃんが言う。 その顔は満足そうだ。


「ホントだねぇ、私ここ入ったことなかったけど……またこよっと!」

 春奈も相づちを打つ。

 そしてみんな、出されたメニューをおいしそうに平らげ一息つける。


「はい、お姉ちゃん」

 春奈がボクにコーラを手渡してくれた。

 沙希ちゃんとドリンクバーでお代わりのオレンジジュースを入れて戻ってきたのだ。 で、そのついでにボクの分も一緒に入れてきてくれたわけ。


「ありがとう!」

 ボクはお礼をいい受け取る。 ボクはコーラが大好きで、ごはん食べながらでもコーラを飲んでてよくお母さんに叱られちゃう。 でも今日はお母さんいないからおおっぴらに飲んでるのだ。 ……別に何飲んで食べてもいいと思うんだけどなぁ?


 そしていよいよ本題に入る。


「沙希ちゃん、今日はわざわざ出てきてもらってゴメンね?」

 ボクはそう言って切り出した。

 沙希ちゃんは座りなおしてボクの方を見る。


「それで、その、高校の進路……なんだけどぉ」

 ボクがちょっと言いにくくてもじもじしてると……、


「うん。 えっと、もしかしてもう決まったとか?」

 沙希ちゃんが言いにくそうなボクを見て先に聞いてくる。

「あ、そうじゃなくって……、いや、そうなのかな? えっとぉ」

 ボクがうつむいてなかなかハッキリしない姿を見て、春奈が業を煮やして言う。


「ああん、もう! じれったいんだからぁ」


「沙希ちゃん、あのね、お姉ちゃんって体がちょっと他の人と比べると弱いし、色々気を使わなきゃいけないコトあるじゃない?」

 そう言って話し出す春奈。

「う、うん。 そう…だね」

 沙希ちゃんは話しの内容からちょっと真剣な表情になる。

「それでそんなお姉ちゃんをちゃんと受け入れてくれる高校って、案外少ないのよね? そりゃ表向きはどこでも受け入れてくれるでしょうけど、実際入ってからキッチリ対応してもらえるかなんて微妙でしょう?」


 春奈説明上手だなぁ……。

 ボクは沙希ちゃんに話す春奈を横目で見ながら考えてる。 ダメだなぁ……、これはホントはボクが説明しなきゃいけなかったのに――。


 春奈ゴメンね。


「それでお姉ちゃんのいた中学の計らいでねぇ、中卒認定試験さえ受かれば、ある私立高の推薦ならしてもいいってことになったの。 お姉ちゃんの入ってた病院の先生からも口添えしてもらったみたいだけどね」


 沙希ちゃんは一生懸命、話を理解しようとしてるのかぼーっとした表情で固まってる。


 それにしても春奈ホントうまく言うなぁ。 今言った話、半分ウソだもん……ホントのことなんて言えないし……。


「沙希ちゃん、ゴメンね? あの、だから公立の高校にはボクたぶん行かないと思うの」

 ボクは春奈から先を引き取って、ようやく自分で沙希ちゃんに言うべきことを告げた。

「推薦してもらえる私立高校なら、ボクの体のこととかちゃんと理解してもらった上で受け入れてもらえるみたいなの……」

 これも半分ウソ。 ホントは篠原製薬から私立高校に働きかけることで受け入れてもらう体制を作るはずなのだ。


「そ、そうなんだぁ」

 まずそう言った沙希ちゃん。

 そしてようやく話が見えてきたみたいで、更にボクに聞いてくる。

「それじゃ公立高校にはまず進まないってことでいいよね。 それで私立なんだけど……、推薦もらえるのどこの学校か聞いてもいいのかな?」

 沙希ちゃんスゴイ、どこまでも前向きだよね。


「うん……。 修瑛学園か、清徳大付属なんだけど……」

 ボクは2つの高校名を伝えた。

「えぇ! 清徳大付属ぅ?」

 沙希ちゃんが思わず聞き返す。 やっぱそうなるのかな?

「うん、清徳大付属……」


「そこって確か……、女子高だよね?」

「うん、女子高……だね」


 沙希ちゃん……、やっぱ共学のほうがいいよね。

 ボクとしては入れればどっちでもいいんだけど――。

 あれ? 逆に男子と一緒に学校に通うってどうなんだろ? ボクとしては。 あぁん、まあその問題はあとだ。


「その、やっぱ共学のがいいよね? 修瑛学園は共学だけど……ちょっと偏差値高めかも」

「う~ん。 悩ましい~!」

 沙希ちゃんがさすがに悩んでる。

 悩むのは当然だ。 自分の進路なんだもん、いくら友達と一緒のトコロに行きたいからっていっても限度あるよね。


「は、春奈ちゃんはどうするの?」

 自分の問題を先送りにして聞く沙希ちゃん。

「私? 私はたぶんお姉ちゃんと一緒のトコ行くと思う」

「えっ! そうなの?」

 沙希ちゃんよりもまずボクが驚いちゃった!


「春奈? そんな簡単に一緒のトコって……いいのそれで?」

「いいの。 お姉ちゃん一人で高校だなんて心配すぎだもん! それに学力的にも清徳ならちょうどだし。 まぁ、修瑛の場合はちょっとキビシイかも? だけど」


「でもそれじゃ今の学校の友達とかは?」

 亜由美ちゃんや優衣ちゃん……。

「ああ、それなら元々別に一緒の高校行こうって言ってるわけじゃないし。 まぁせいぜい一緒になれればいいねって話してるくらいだよ」


 そ、そうなんだ。 女の子って案外ドライな関係なのかな? 未だにわからないや……そーゆうとこ。


 ――これは女の子が……というよりも春奈がシスコンなだけなのだが、それに蒼空が気付くことはないのであった。


「春奈ちゃんはあくまでも蒼空ちゃんと一緒と……。 蒼空ちゃん? ちなみに蒼空ちゃんはどっちが希望なの?」

「えっ? それは、そのぉ……清徳、かな?」


 元男の子のボクが女子高を希望するなんて変な気もするけど、ボク的にはこれからずっと女の子として生きていかなきゃいけないわけで、それなら共学より女子高のが都合いいんじゃないか?って考えてみたり。

 さっきも思ったけど、ボク自身が男の子の中でどう振舞ったらいいかわからないっていうか。 ぶっちゃけ男の子に言い寄られたりしちゃったら、ボクはどうしていいかわかんない。 ……まだ小さい女の子にしか見えないボクとしては考え過ぎかも知れないけどさ。


 結局、女子高はある意味時間稼ぎなのかも……、女の子のボクとしての――。


「あ、それに清徳ってお家から近いから通学が楽なんだぁ」

 最後にとってつけたような理由も言うボク。

「う~~ん! 清徳ですかぁ、女子高ですかぁ? ぐふふぅ」

 

 なんか沙希ちゃんまたよからぬこと考えてないかなぁ……発言があやしいよ。

 あれ、そういや沙希ちゃんって勉強のほうはどうなんだろ? 今まで何度も会ったけど成績の話しってしたことなかったなぁ。 ボクが学校いってないし……。


「沙希ちゃん、そういえば沙希ちゃんの成績だと高校のレベルってどれくらいなの? 良ければでいいけど……」

 教えて欲しいな? と言いたかったけど尻すぼみになっちゃった。


「え? 私。 私の成績はぁ……普通? くらいかな。 たぶん修瑛なら受かるかも? って感じかな」

「それじゃ公立だって、そこそこいいとこに入れるんじゃ?」


 ボクは思わずそう聞いちゃった。


「そうかもしんないけどぉ、蒼空ちゃんと一緒じゃない高校生活って、黄身のない卵みたいなもんだと思うんだなぁ、それが3年間続くと思うと……。 う~ん」


 沙希ちゃんったらまた訳わかんない例えですごいこと言うなぁ。 そりゃ人に好かれて悪い気はしないけど、人の将来にかかわることだからあまり簡単に決められても困るし……。


「う~ん、もうボクからは何も言えないよぉ」


 ボクと沙希ちゃん、そろってうなってると……。


「もう! 無理して今日結論出す必要ないじゃん? まだ夏休み入ったばかりなんだしさぁ」

 春奈がじれて言う。

 今日これで二度目だ……、ホント優柔不断ですみません――。


「ね? 沙希ちゃん。 とりあえずお姉ちゃんの進路の話は聞いたんだし、後は沙希ちゃんの判断だよね? お家の人やガッコの先生の意見もあるだろうしさ」

 春奈がまとめにかかる。

「うん。 まぁそうだよね! 私としては一緒に行く方向にしたいけど、確かにママの意見を無視するわけにはいかないもんねぇ」

 沙希ちゃんがあっさり春奈の言葉に乗ってそう言う。 切り替えはやっ! やっぱ女の子のことはまだまだわかんない。


「じゃあ沙希ちゃんはまた結論出たら、私たちに報告ね!」


「了解でありま~す!」

 そう言って春奈に敬礼の真似事をする沙希ちゃん。 かわいらしいね。

「蒼空ちゃん、私一緒に行けるようママを説得するからね。 それまで沙希のこと見捨てないでねぇ~」

 そう言うなり沙希ちゃん、ボクの手をとって自分の頬へスリスリしだしちゃった。


「さ、沙希ちゃん! わ、わかったから。 ね? 離してぇ~」


 恥ずかしいからお願い~。 抱きつかれないだけまだましだけど、やっぱ沙希ちゃん油断できないよぉ~! ひゃ~ん。


 春奈はその様子をあきれて見ながら、残ってたオレンジジュースを一気に飲む。


「それじゃ、あんま長居してもあれだし、そろそろ出よっか?」

 春奈がそう言って出ることを促がす。 携帯で時間を確認するともう14時をまわってた。 すごっ、2時間以上居たのかぁ……。

「うん、そうだね。 出よっか?」

 ボクも同意する。


「沙希ちゃん、このあとまだ時間ある? 良かったらお買い物一緒に行かない?」

 春奈がさらに誘いの言葉も出す。

「うん、大丈夫だよ。 ぜひ行こう! そうと決まれば早く行こ~!」

 沙希ちゃん二つ返事で同意して言い放った。


 ボクたちはそうしてようやくパスタ屋さんを後にしたのだった。



 この後、ボクが2人の買い物で着せ替え人形と化したのは言うまでもないことだよね……。




 P.S.

 疲れ果てたボクが、帰りはふらふらでタクシーのお世話になるしかなくなり、春奈が家に抱えるようにして入ったところで仁王立ちのお母さんにつかまり……春奈は散々お説教をくらってしまったのだった。 その横でボクは疲れて熟睡だったらしい。


 

 春奈、お疲れさま! えへへへへっ。



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