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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
36/124

ep34.外出(前)

※話数を修正しました。

 梅雨も明け、真夏の暑さが本格的になって来る頃――。

 世の中は、ほとんどの学生が一番の楽しみにしているはずの夏休みに突入した。

 もちろん春奈もその恩恵にあずかる学生の一人だ。


 夏休みに突入して間もない日、ボクと春奈は沙希ちゃんと会うために駅前のショッピングセンターで待ち合わせをした。 駅とショッピングセンターは2階のフロアで繋がっていて行き来が便利なのだ。


 ボクは車イスを卒業してから初めて自分の足で外出することになり、ちょっと緊張しつつもワクワクしていた。


 沙希ちゃんと会うのは、もちろん高校の進路のお話しをするためだ。

 最初は沙希ちゃんがお家に来てくれるって言ってたんだけど、今回は駅まで迎えに行ってくれる人がお家に誰も居なくて、でもバスでわざわざ来てもらうのも悪いからってことで駅での待ち合わせになったのだ。

 その時ボクは、大いに駅での待ち合わせを主張し、自分の足で一度外を歩いてみたいと精いっぱいアピールした。

 お母さんは最初あまりいい顔をしなかったけど、春奈が一緒に行くし、サポートもキッチリする。 もし具合が悪くなったら無理せずタクシーで帰るなり、お母さんに電話するなりするってことを約束して、なんとか許しを得ることに成功した。



 当日。 ボクは外出のための装備の確認を春奈にされていた。


「お姉ちゃん、日焼け止めはきっちり隅々まで塗った? 眼鏡忘れないでね? ワンピの上にポンチョ羽織ってくといいよ。 あ、それに帽子! つば広のやつね」

 などと、次々と確認されちゃった。 ありがたいけどちょっとウルサイ……。


 そして準備が出来たらいよいよ外出。 とは言うものの、お家からバス停までは徒歩1分もかからない距離。 目と鼻の先で、元々大して心配するコトないのだ。

 

「さ、お姉ちゃん行こっか!」

 お家から出ると春奈が手を差し出す。 ボクは素直にその手を握り、もう一方の手で杖を持つ。

 ボクのカッコはアタマには、つば広帽子、日焼け止めを露出してるトコロ全てに塗り、顔には眼鏡サングラス、ワンピースにレースのポンチョを羽織り、足元は歩きやすいように底の浅いサンダルだ。 ほんとフル装備だ。

 対する春奈は、夏らしくTシャツ、ショートパンツにサンダル履きのシンプル装備。


 手をつないでボクの横を並んで歩く春奈。 そのペースはボクに合わせてゆっくりで、不測の事態に備えてくれてる。 ボクはそれに申し訳なく思いつつも安心し、杖を突きながら一歩一歩確実に進む。


「うぅ、まぶしい……それになんて暑い」

 ボクは小さい声でたまらずグチった。

 まだお昼前だけど、お外はすでに真夏の暑さになりつつある。

 ほんの1、2分でじんわり汗がにじみ出てくる。 そんな中、バス停までの短い距離をゆっくりと進む姉妹ぼくたち。 


 無事バス停についたものの簡易的な屋根にベンチがあるだけで、壁もなく暑さはぜんぜん防げてない。 それでもとりあえず座れてほっとするボク。


「お姉ちゃん、大丈夫?」

 春奈が体の調子を聞いてくる。


「うん、大丈夫。 ちょっと暑いだけでぜんぜん平気!」


「そう、ならいいけど。 疲れたり、気分悪くなったりしたらガマンしないですぐいってね?」

 そういいながら、うそついちゃダメだからね? と念を押してくる春奈。


「わかった。 そん時はすぐいうよ。 約束する!」

 ボクはそういって首をうんうんって感じに縦に振った。


 バス停のベンチで仲良く並んで座るボクたち。 たぶん周りの人から見ると春奈がお姉ちゃん、その横にちょこんと座るボクが妹なんだろうなぁ。 ただ元々バスの利用者は減少してる上に夏休み、しかもお昼前ってこともありバス停にはボクたち以外に誰もいない。 バス会社ってこれで商売になるのかな? 余計な心配をしてしまう。


 そんないらないコトを考えてたら駅行きのバスがちょっと遅れてバス停に来た。

 バスに乗り込むのは、道路とバスとの間に段差が出来るし、更に席のある床まで階段になってるから少し大変だ。 春奈はそんなボクを見守りはするものの手伝いはしない。 それはボクのためにならないから。

 ボクはバスの握り棒と杖を使いながら階段をなんとか登りきった。 バスの運転手さんはボクが登り切るまでバスを発車させず待ってくれていた。 待たせてゴメンナサイ。

 ボクは車内に入ると運転手さんのほうに向って軽く会釈し、春奈と空いてる席に座った。 といってもガラガラだから好きなとこに座れたけど。


「はぁ、涼しいねぇ♪」

 ボクは春奈にそういった。


「だよねぇ、冷房サイコー! 極楽、ごくらく!」


 春奈ったらオヤジくさい。 でもホント外と違って天国だよ。

 駅までは15分ちょっとで着くから、ほてった体も落ち着くかな。 ボクは短時間とはいえ、肌に当たった夏の日差しでほてった体を手で仰いで冷ますそぶりをした。

 

「お姉ちゃん、ほんとに大丈夫? 無理してない?」

 そんなボクの行動を見て不審に思ったのか、また聞いてきた。


「ほぇ? あぁ、体? 大丈夫だよ! 今はただホントに暑いだけなんだから」

 春奈ったら心配してくれるのはウレシイけど、過保護すぎだよ。 今はほんとに全然問題ないいんだから……。


「そ、そう。 ならいい」


 なんだか同じことの繰り返しだなぁ。 この先何回もあるのかなぁ? コレ。

 ちょっとげんなりしそうになるボクだった。


 そうこうしてるうちにバスはすでに駅前の道まで来てる。 バスは駅の西口までで終点だ。


「もう着いちゃうね? 早いよねぇ」

 ボクがいうと、


「そりゃ距離にしたら4キロもないんだから早いわよぉ。 お母さんの車で来たら5分もあれば着いちゃうんだから」

 春奈がちょっとえらそうに説明する。


「あっそう。 まぁいいけどさっ」

 ボクはちょっとムッとして答え、続けて聞いた。


「で、沙希ちゃんとはどこで待ち合わせなの?」


「ショッピングセンターのパスタ屋さん前辺りで待ち合わせにした。 そこでごはん食べながらお話しすればいいでしょ?」

 ボクのむくれ加減については全無視で春奈が答えた。 くそぉ、ほんと春奈ってボクのこと完全格下で見てるよね……くやしすぎ!


「う、うん。 そうだね」

 そこで強くでれないとこがまたボクなんだけど……。


 「・・・駅西口、駅西口前〜。 このバスはここで終点です」

 バスの運転手さんの声がする。 そしてバスが停まりドアが開く。


 ボクたちがしゃべってる間に到着しちゃった。


「さ、お姉ちゃん降りよ! 沙希ちゃんもう待ってるかもよ?」

 言うなり春奈はボクの手を取り出口へ向う。 ボクは慌てて杖を取り、半ば春奈が支えるようにしながら引っ張っていく。


「もう、春奈もうちょっとゆっくり!」

 ボクはさすがによろけて、こけそうになり春奈に抗議した。


「あっ、ご、ゴメンなさい。 ちょっと調子にのりすぎちゃった……」

 春奈はさすがにまずいと思ったのか素直にあやまった。


「まぁ、いいけどさぁ。 春奈たまにあるよね? こういうの。 ほんとすぐ調子のるんだからぁ」

 ボクはちょっとグチっぽくいってしまった。 バツが悪いのですぐに話を変え……、


「さ、行こ行こ!」

 ボクは春奈を促がした。 数少ないお客さんはすでにみんな降りてしまっている。


 が、最後の関門がそこにはあった。

 バスの出口……、下りの階段だ!


「春奈。 先に下りて見てて? ボクなんとか降りるから」


「うん……。 でも大丈夫? 支えながら降りたほうがいいんじゃ……」


「大丈夫だって。 じゃ行くから見ててね」

 下りは登りよりよっぽど足に負担がかかってつらいのだ。 バランスも取り辛くって前につんのめりそうになっちゃうのだ。

 ボクはバスの握り棒をしっかりとつかみ、それから半ば飛び降りるようにして地面に足を下ろした。 残念ながら体の勢いも殺せず足は腰砕けぎみになってしまい、……春奈に支えられてしまった。


「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」

 バスの運転手さんが心配して声をかけてくれた。 恥ずかしいなぁ……。


「は、はい! 大丈夫です。 心配してくれてありがとぉ!」

 ボクは元気よく答えてお礼を言った。


「そうかい、それじゃあ」といって運転手さんは手を振りそれと共にドアが閉まりバスは出て行くのだった。


「春奈もありがと。 でもやっぱ下りの階段はまだまだかぁ……」

 ボクは結構ショックだった。 あ~ぁ、もうイケると思ったのになぁ。


「お姉ちゃん、そんなにしょげることないじゃん。 バスのはちょっと段差がきついしさ。 手摺りも無くなっちゃうし」

 そういって慰めてくれる春奈。 それに、と続ける。

「建物の階段ならずっと手摺り続くし、段差も低いし大丈夫だよ。 今日はエスカレーターもあるし、なんならエレベーターでもいいんだしさ」


「うん……、そうなんだけど」

 それはそうなんだけど、ただただ悔しかっただけなんだ。

 そして帰りのバスでは今度こそ成功させてやる! と密かに心に誓ったボクであった。


 ボクがそうやって悶々と悩んでたとき、すでに春奈は気持ちを切り換えて携帯をしていた。 ついさっきまでボクのこと心配してたのに……。


「あ、沙希ちゃん? 今着いたよ。 どこに居るの? え、もう待ち合わせ場所にいるんだ? 早いね」

 春奈はボクを見て、小声でもう着いてるって と伝えてくる。


「じゃあ、私たちも急いでそっち行くね。 もう少しだけ待っててね~」

 そう言って携帯を切るとボクに向っていう。


「じゃ、パスタ屋さんにとっとと行きましょう~!」



* * * * * *


「お待たせ~!」

 春奈が沙希ちゃんを見つけて声をかける。


 ボクはすでに少々、疲れ気味な表情だ。 もちろん歩き疲れたっていうのもあるけど、どちらかっていうと人で疲れたほうが大きかった。

 街中の見知らぬ人々が杖を突いて歩く、やたら色白の小さい女の子であるボクに好奇の目を向けてくるのが痛いほどわかったから……。

 もちろん遠慮してさりげない態度をとる人もいるけど、やっぱ不躾に見てくる人も多い。 帽子や眼鏡で容姿自体はそう目立たないはず と自分では思ってるんだけど、そうでもないのかなぁ?

 でもこういうのにも早くなれちゃわないとね。 これからは何しろ高校に通うことになるかもしれないんだから……。


「あ、春奈ちゃん! おひさ~。 蒼空ちゃん! とうとう歩いてここまで来れるようになったんだね~?」

 沙希ちゃん、感動しちゃってる?


「うぅ~、蒼空ちゃん! よかったねぇ~!!」

 そういうなり思いっきりハグされてしまった。 しまった、久しぶりなんで油断しちゃた。 沙希ちゃんは要注意人物だったのだ!

 ボクはなんとか自由になる顔を春奈の方に向け、救いを求めて目を合わせる。 眼鏡してるからちゃんと見えてるかどうかわかんないけど。


まぁ、それはともかくとりあえず春奈は救いの手を差し伸べてくれた。


「沙希ちゃん、ばしょ、場所! 場所考えてやって? ここじゃ目立ちすぎだって」

 春奈? その言い方だとここ以外じゃいいみたいじゃない? それじゃダメじゃん?


「あ、ゴメ~ン。 蒼空ちゃんのあまりのかわいさ、健気さについぃ」

 めがねっ娘の天使ちゃんは帽子も似合うんだねぇ……うふふっ。


 なんか沙希ちゃんがブツブツいってにやけてる。 これはしばらく近寄らないほうがよさそうだ。

 ボクはジワジワ沙希ちゃんから離れ、春奈の脇にすり寄った。


「さ、こんなトコでダベってないで早くお店に入ろう? 私もうお腹ペコペコだし」

 春奈がそういってお腹をさする。


「「さんせ~!」」

 ボクと沙希ちゃんは声をそろえて同意の言葉をあげた。

 

 肝心の高校の話はいつになったら始まるんだろ? ふと疑問に思いつつ、ボクも何を食べようか?ってコトにアタマが向かってしまうのだった。




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