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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
35/124

ep33.大人の裏事情

※話数を修正しました。

「蒼空ちゃん、先週やった中2の2学期の分のテスト、採点と添削終わったよ」

 ちーちゃんが開口一番そう言った。


 中2の2学期の分っていうのは聞いたそのままの意味で……、今回ちーちゃんが家庭教師をするにあたって考えたやり方で、春奈が学校で受けた実際のテストをボクにも受けさせるってことだ。 何もないところから試行錯誤するより現実的だし現状にも即してるから…だって。 なによりせっかく春奈の答案が残ってるのに使わないのはもったいないよ! って。


 確かにそうだよね。


 でもこの案は最初、春奈思いっきり嫌がってた。 まぁ嫌がる理由は想像つくよね?

 まぁ、ちーちゃんそんな春奈の抵抗には聞く耳持たずって感じで、今までの答案用紙は全て回収されちゃったんだけど。

 その時、答案を見たちーちゃんに「春ちゃん……、春ちゃんも一緒に復習する?」なんて言われてたっけ。 春奈その時は憮然とした表情かおしてたなぁ……にひひっ。


 ボクの勉強は3月に実力テストから始まり、それを元に中1の勉強を効率よく復習し、締めにはもちろん春奈の答案を活用したテストを行った。

 そして今は中2の勉強の真っ最中で、1学期のテストは5月中にすでに実施済み。 そして続いて2学期の勉強のまとめにと、テストを行ったのが先週末だったわけ。

 正直、このペースでの勉強じゃ、学校の授業のように全てを網羅するっていうのは無理だから、試験に出そうなところに集中した勉強になってしまうのは仕方ないところだ。


 ちーちゃんは添削済みのテストを使って、解説しながら勉強を進めていく。 ボクはちーちゃんの行為を無駄にしないためにも、しっかりと授業? を受ける。

 大事な自分の時間を、毎日に近いペースでボクのために使ってくれているちーちゃん。

 いくら中学の勉強とはいっても5教科を教えるのはホント大変だと思う。 ましてやボクみたいに中学の授業を受けてない子に教えるなんて相当なものだ。


 そんなちーちゃんの好意に報いるためにもがんばらなくちゃ!


「蒼空ちゃん、最近すごくがんばってるね! テストの点もそれなりに取れるようになってきたし、そろそろどの高校に行くか?とか考えてみてもいいんじゃない?」

 勉強の終わり際にちーちゃんがそう褒めながら言う。


「ありがとう、ちーちゃん。 これもちーちゃんのおかげ!」

 ボクはちーちゃんの言葉に思わず笑顔になりそう答えた。


「でもボクって実際どの高校に入れるのかなぁ? 春奈やお友達の沙希ちゃんと一緒の高校に行こうって話はしてたけど……ボクよくわかんない――」

 一転今度はちょっとしずみがちに言った。


 これは今のボクの正直な気持ち。 学校に行ってないボクには自分のレベルを計るものもないし、なにより今の体のままでほんとに高校が受け入れてくれるのか? なんて心配までしてしまう……。


「そうね、蒼空ちゃんの場合その辺やっかいよね……、でも今の感じからすると受験する頃には、そこそこの高校に合格できる力は付いてると思うな?」

 ちーちゃんはそう言ったうえで続ける。


「それとね、これは日向叔母さんから時期が来たら蒼空ちゃんに話して欲しいって言われてたんだけど……一部の私立なんだけど、ある程度生徒の事情にあった学校生活を送れるよう融通してもらうことも出来るって話だよ。 もちろんそれなりの試験も受けなきゃいけないけど、推薦枠でいけるみたい」

 ちーちゃんはそう言うとボクの顔を見る。


 ボクは聞きながらもそんな都合のいい話あるのかなぁ? と思ってる。

 それに……、

「推薦って? ボク中学は自主退学なんだから、推薦してくれるとこなんてないんじゃ?」


「うん、それがね? ちょっと難しい話になるんだけど、蒼空ちゃんの通ってた中学校と、その例の製薬会社? それと司法機関……まぁ裁判所ね……との間で話し合いが持たれてたみたいで……」

 ちーちゃんはちょっと言いにくそうにチラッとボクを見つつ、でも話を続けた。

「要は、蒼空ちゃんが中学を退学せざる終えなくなった責任は製薬会社にあって、蒼空ちゃんはその被害者である。 だから製薬会社は蒼空ちゃんが中学を卒業し高校に入れるようにする責任と義務があるってことになったらしいのね」


 ボクは思わぬ話の流れに息を呑みながらも聞く。


「でも実際はすでに自主退学してしまってるじゃない? だから折衷案として中学側が中卒認定試験に受かればって、条件付きで推薦してくれることになったらしいの。 そして製薬会社はその受け皿になる高校にきっちり話しを通すよう指導されたってわけ」


 あ、そうそうと思い出したように補足する。

「学費のほうも当社でぜひ負担させてもらいますっなんていってたらしいよ?」

 ちーちゃんはそう言ってボクを見ると肩をすくめた。


 ボクはボクの知らないところで進められていた話に唖然としてしまった。


 なんなのそれ。


 そんなコトになってたなんて……それじゃボクが今までがんばってきたことは何だったの? 大人は勝手だ! 

 ボクは思いっきりふてくされ出していた。 当然それは表情ににも出て……。


「蒼空ちゃん、気持ちはわかるけどそんなに怒らないで……機嫌直して。 ね?」

 ちーちゃんがボクをなだめる。 考えてみればボク以上にちーちゃんも怒ってもいい立場なんだ。 それでもこうやってずっとボクに勉強を教えてくれてた。 事情をお母さんから聞いてたにもかかわらず……。


「う、うん。 ちーちゃんごめんなさい。 ボクよりちーちゃんのほうがもっと怒ってもいいくらいなのに……」


「ううん、こっちこそゴメンね。 ずっと黙ってて。 言うとほら、蒼空ちゃんの勉強をやる気が削がれちゃうといけないからって話になってね?」

 ちーちゃんは、ちょっと申し訳なさそうに話す。


「でもさっきの話でもあったでしょ? 中卒認定試験が受かればって条件付きなの。 だからやっぱり勉強はキッチリしないとね。 それにいくら推薦だからって、試験が無いわけじゃないんだしね?」

 そう言ってから、さっきまで"ふくれっつら"をしてたボクの頬をなでるちーちゃん。


「むぅ、確かにそうなんだけど……さぁ」

 まだちょっと納得し切れてないボク。


「ちなみに……なんだけど?」

 ちーちゃんがそんなボクをうかがうようにして言う。


「はぇ?」

 間の抜けた声で聞き返したボク。 


「これ、元はと言えば蒼空ちゃんに黙ってようって言ったのウチのお母さんなの? ごめんね、ホント手前勝手な親で……」

 ちーちゃんがそう言って、顔の前で手を合わす。


「えぇ~! 伯母さんなのぉ? これ仕組んだの~!!」

 瑞穂伯母さん――。

 あなたって人はいなくなってもこれですか? 一時でも好きになったって思った自分が腹立たしい。 あ、いや……それはちょっと言い過ぎかな。 結局はボクのためにしてくれたんだし……。


「ほんと、ごめんね? 私も日向叔母さんも、お母さんに押し切られちゃって」

 苦笑いするちーちゃん。


 お母さん……そこはがんばって欲しかったよ――。


「うん、わかった。 もういいよ? ちーちゃん。 結局はみんなボクのことを思ってやってくれてたんだし、実際勉強もすごく進んだもんね」

 ボクはそう言ってちーちゃんにニッコリ微笑んだ。


「うっ、……そ、そう言ってくれると助かる~。 まぁこれで裏事情はばれちゃったけど……かといって勉強は手抜かないよ? これからもビシバシいくからね~!」


「はうぅ、そんなぁ」

 あ、でも要は今まで通りってことだよね? まぁそれでいいのかぁ……、ってあれ?


「ちーちゃん。 そうすると結局ボクってその一部の私立ってとこに行かなきゃだめなの? たとえば公立とか無理なの?」


「う~ん、ダメってことはないけど条件的にも私立にしたほうが、後々のこと考えるいいいしね……、蒼空ちゃんのことをちゃんとわかった上で受け入れてもらえるわけだし、入試にしたって学科試験3教科になるよ? たしか」

 

 さ、3教科! それは今のボクにとっては大きいよ。 やっぱり言われる通りにしたほうがいいのかなぁ、体のこともわかった上でってことだし……。

 でも春奈や沙希ちゃんとの約束――、守れなくなっちゃう。 まぁ守ったとしても一緒のところに行けるとは限らないけどさ。


「蒼空ちゃん、春奈ちゃんや沙希ちゃんもわかってくれるよ。 みんな蒼空ちゃんのことが好きなんだから、蒼空ちゃんにとって一番いいことなら納得してくれるよ?」


「それに、まだ別々になるって決まったわけでもないでしょ? 候補になってる私立高だってレベル低いとこじゃないよ? そもそも蒼空ちゃんも、いくら推薦があるっていっても条件に満たなかったらだめなんだからね?」


「はぅ!」

 そ、そうだった。 ついもう入れるような錯覚におちいってたけどまだ中卒認定試験すら受けてもいないのに……。


「そうだね、ボクとりあえずは今まで通り勉強がんばる。 そうしなきゃ結局なにも始まらないんだもんね?」


「そうそう! 私もこれまで以上にサポートするからがんばってね!」


「うん、がんばる!」



 そう、がんばろう……。

 とりあえずそれしか今のボクに出来ることはないんだから――。


 

 そしてちゃんとこのこと2人に話そう。


 その上で一緒に行けるようになったら、どんなにうれしいだろう――。



 


 ……だからボクは出来ることをしよう。



話中、いろいろ言ってますがあくまで創作ですので……。

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