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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
33/124

ep31.友達デビュー

※話数を修正しました。

 ボクが病院を退院してから早くも半年が過ぎ、季節はまた夏に向おうとしている。


 ボクは今では、車イスに頼ることはほぼ無くなってる。 まだまだ、たどたどしくって家の中では手すりのお世話になることも多いけど大きな前進だ!

 お外に出ることはあまりないけど、出るとき杖は必携だ。 さすがに杖なしではすぐバランスをくずしちゃって歩き続けるのがつらいのだ。 だからモチロン一人での外出は禁止だ。

 それにやっぱり長時間の歩行となるとまだまだ無理あるし。 まぁ、そんなに長く歩くようなことはそもそもさせてもらえないけどさっ。 でもお買い物くらいなら、そろそろ行ってもいいと思うんだけどなぁ……。


 リハビリについても6月いっぱいでようやく終了して、理学療法士さんも、後はお家で"さぼらず"自主的に行ってくださいねって言ってくれた。 なんとも微妙なコメントでボクは笑顔で挨拶したけど、ひきつってなかったかどうかは自信ない。


 それにしても長かったなぁ、ここまでくるの……。

 もうずっと歩けないかもって落ち込んだときもあった(ep28.参照)けど、なんとかなったのは家族や病院の人たちのおかげだ! どれだけ感謝しても足りないくらい。

 ほんとボクはいろんな人に助けられて今がある。 お世話になった人たちに、ご恩返しが出来るかどうかはわからないけど、せめて感謝の気持ちを忘れないようにしなきゃ。

 とりあえずは、今までの苦労が無駄にならないようお家でもしっかり歩行訓練トレーニングを欠かさないようにしよう! まだまだ杖が必要だし、なにより早く普通に歩けるようになりたいんだもん。


「お姉~ちゃん、ちょっといい?」

 ボクが決意も新たに、お家の中をうろうろとトレーニングしてたら春奈が声をかけてきた。


「なに? 春奈」

 なんかずいぶん雰囲気があやしい……。


「あのねぇ、ちょっと……お願いがあるんだけど?」

 春奈はこれでもかっていうほどニコニコとそしてかわいさを振りまいた表情で言ってきた。……身内に(しかも同姓に)愛想振りまいても意味ないと思うんだけど……。


「だから、なにさ?」


「うん、あのね? その……」

 いつもなら遠慮なしにビシバシボクに言ってくる春奈が妙に言いよどんでる……。

 う~ん、嫌な予感しかしない……。


「明日の昼からちょっと時間もらっていい?」


「明日? 明日なら別にかまわないけど……いったい何なのさ?」

 明日は日曜日、日曜はちーちゃんの家庭教師はお休みの日だ。 春奈の用を入れても全然問題なしだ。 それにしても春奈ったら歯切れの悪い……、そんなに言いにくいコトなのかなぁ?

 

 春奈はずっと言いにくそうにしてたけど、遂に決心したのか表情をキッとして、

「ひ、昼から学校の友達がお家に遊びにくるの! それでその友達が、あっ、友達は2人なんだけど、お姉ちゃんと一度会ってみたいって! その……変な子とかじゃないから! し、親友なんだから!」

 と、一気にまくしたてた。


 そして春奈は、じーーーっとボクを見て返事を待ってる。


 ボクは拍子抜けした。

「なぁんだ、そんなこと? ずいぶん言いにくそうにしてたから、どんだけ無理難題押し付けられるのかと思ったよ~」

 ボクはそう言って、春奈のアタマをポンポンと軽くたたいた。

 春奈はボクより背が当然高いからこのしぐさをするのは大変なのだ!

 春奈ってば最近背が伸びてきて今は155cmを越えるてるらしい。 胸もちょっと大きくなってる気がするし。

 あ、別に胸のことはいいんだ、胸のことは。 ほんとに。 いやでもちょっとはボクも……。 ボクの身体って、前病院で測ったときも今もほとんど変わらないのに……。 なんでボクって成長しないんだろ? なにげにショックだった。


「ほんとに? ほんとにいいの?」

 春奈が念を押してくる。


「うん、いいよっ。 春奈の親友なんだったら、ボクもどんな子たちなのか会ってみたいもん」

 ボクは本心からそう言った。


「えへへ、いい子たちだよぉ? 私とおんなじで! 亜由美あゆみに、優衣ゆいっていうんだけどさ」

 うれしそうに友達の話をする春奈。


「でもなんでその子たちボクのこと知ってるの?」

 ボクはなにげなしに聞いてみた。


「え! そ、それはぁ……」

 春奈がとたんにオドオドしだす。

 こ、こいつめぇ。 なんかボクがいやがることを学校でしてるなぁ? あっ、そういえば前にも……、そうだ!

「そういや前、担任の井上先生もなんか言ってたよね? 春奈が学校でボクのことをどうとか?」


「えぇ~! そ、そんなこと……。 あったっけ?」

「あった!」

 ちょっとむくれ気味に、今度はボクがじーーーーーーーーっと春奈を上目使いで見つめる。


「ううっ、お、お姉ちゃん……」

 

 ――それは、その技は、はっ反則! お姉ちゃんめ、まさかこの私にまで、むくれ顔+上目使い攻撃でくるとは~! 強敵すぎるぅ……まぁ仕方無い、白状しちゃおう――


「そのぉ、お姉ちゃんの写メ? 2人に見られちゃった……かな?」

「写メ? それってボクが新しいお洋服着るたびに春奈が撮ってたやつ?」

「うん、そう! もうかわいいのいっぱい撮ってあるからさぁ♪ それを……ちょっと学校で見てたら見つかっちゃってぇ……えへへ」

 かわいい顔でこっちを見て、笑ってごまかす春奈。


「でもまぁ、いいじゃん。 別に悪いことしてるわけじゃないんだし。 ね?」

「う、うん……まぁいいけど」 

 ほんとに見つかったのかなぁ? 見せてたんじゃ……あやしいんだからぁ。


「と、とりあえず明日はそういうことだから! お姉ちゃんもとびっきりかわいいカッコしようね!」

 ――見てろよぉ、亜由美と優衣も撃沈だ! いひひひひ。



 やれやれ……。

 春奈ったら、あの顔はどうせろくなこと考えてないんだから……。 はぁ、明日が思いやられるよぉ。


 ――ボクは何事もないことを願うばかりだった。



* * * * * *



「「こんにちは~! オジャマしま~す!」」


「さぁ、入って入って! 遠慮しなくていいからねぇ」

 インターフォンが鳴って、様子を見にいってた春奈が2人の友達と一緒にリビングに入ってきたみたい。

 ボクは自分の部屋で、春奈が呼びに来るまで待ってるように言われて待機中なのだ。 ボクの部屋は廊下を挟んだリビングの向かい側にあって、その様子はバッチリ聞こえてくる。

 ボクは不本意ながら、いつも通り春奈のなすがままのカッコだ。

 ちょっと派手目にユニオンジャックをあしらった黒っぽいカットソーを着て、下にはふわっとした白っぽいチュールスカートを履いてる。 これで部屋着っていうのはつらいと思う。


# # #


「春奈のお家来るのは2度目だけど、相変わらずステキなお家だよねぇ?」

 入る早々、亜由美が言う。 亜由美は私より10cmは背が高く、ロングヘアーをハーフアップにしてまとめてる、ちょっと大人っぽい感じのキレイ系の子。 キャミソールに膝下丈のジーンズを合わせてる。


「うん! インテリアとかもすごくセンスよくまとまってるしさぁ!」

 こっちが優衣。 優衣は私とおんなじくらいの背で、肩にかかるくらいの髪をふわっとした感じでウエーブさせてて、ちょっと丸顔をしたかわいらしい子。 Tシャツにコンビネゾンってカッコウがなんとも少女っぽいね。

 で、そういう私は、さらっとアートなプリントのあるTシャツにティアードスカートだね。


「でもこれって当然、春奈のセンスじゃないよねぇ? うふふ」


「も、もう! 2人とも来るなり何勝手なこと言ってんのよぉ」

 私はふくれて、そう言った2人に文句を言う。

 そして文句いいながらも、用意した冷たいお茶をソファーに座った2人の前に置く。 外は梅雨時ってこともありかなり蒸し暑く、冷たいお茶が暑気を払ってくれるはずだ。


「ありがと! 春奈。 もう外は夏の暑さだよぉ、湿気も多くてうっとしいしさぁ」

 そう言ったのは、優衣だ。 2人は私ん家まで、自転車に乗って来てくれたからそれなりに暑かったことだろう、うん。 家の中は一応湿気取りのため、エアコンをドライ運転状態だ。 お姉ちゃんのため、我が家はあまりエアコンは強く効かさないようにしてるのだ。


「暑い中来てくれてありがと! でも晴れてよかったねぇ。 えっと、じゃあ、とりあえず何しよっか?」

 わざとらしく聞いてみる。


「春奈っ、信じらんなぁ~い! 今さらそんなコト言うわけぇ?」

 優衣がふくれっ面して言う。


「そうそう春奈。 出し惜しみは良くない! ほらさっさと紹介、しょうかい!」

 亜由美が催促してきた。


「えへへ、ごめん、ゴメン! じゃちょっと待ってて? お姉ちゃん呼んでくる~」

 

 リビングを出て行く春奈を見送る二人。

「ったく、しょうがないんだから」

 亜由美があきれる。


「でもようやく春奈のお姉ちゃんにお目通りかなうわけだね? 春奈ったらあんまりお家のこと話さないから、写メ見たときはびっくりしたけど……」


「だよね、だよねぇ! 私もあれ見たとき、てっきり妹さんかと思ったもん」

 優衣もはげしく同意する。


「うん。 まぁ事情を聞いたら、そんなコトもあるんだなぁって思ったけど……。 まぁ、そういうのはあまり言わないでいてあげようね」

 亜由美がそう言って、優衣にクギをさす。


「わかってますって! 春奈を困らせるのは私の本意じゃありませ~ん。 今日は春奈がかわい~って自慢するお姉さんを確認しに来ただけだも~ん」



 2人がそうやって会話を楽しんでいると、その春奈が戻ってきた。


「ほら、お姉ちゃん! 恥ずかしがってないで、こっち来て来て!」

 先にリビングに向った春奈が、ボクに向って声をかけてくる。


「う、うん。 わかってるって、そんなに急かさないでよ。 そんなに早く動けないんだからぁ……」

「何いってるのさぁ、ほとんどドアからドア、廊下を渡るだけの距離じゃなぁい」

 春奈が容赦なく言う。 で、更に追い討ちをかけてきた。

「それに、もうお家の中くらいなら余裕で歩けるって、この間も自慢してたじゃない? 自分でさ」


「うぅ、春奈のイジワルぅ」


 ボクは追い詰められ、もう観念して春奈の、そして2人の友達の待つリビングへと入って行った――。



 

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