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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
32/124

ep30.約束

※話数を修正しました。

 ちーちゃんからお勉強を教わるようになってから、ボクの日課には多少の変化が出た。

 今までなら昼からの時間、暇をもてあましていたボクだったけど今はそこにはしっかりと……お勉強の時間が食い込んできている。


 最初、ボクの実力確認って言ってテストされたときはあせっちゃった。 中学1年のときした勉強をどこまで覚えてるか確認したかったみたい。

 後でテストの結果どうだった? ってちーちゃんに聞いたら……遠くを見るような目になって、それからやさしい目になってボクのアタマをなでて……「がんばろうね!」って言った。


 なにそれ? ぼ、ボク……そんなにひどいのぉ? 


 でもしかたないじゃん、だってボク…2年も勉強してなかったんだから……。


 中学校卒業程度認定試験、略して中卒認定試験は、実際のところそんなに心配する必要はないみたい。 どうも受からせるのが目的の試験って感じらしくって難易度はそう高くないみたい。

 それに過去の問題とかも公開されてて(※)出題傾向なんかもバッチリわかるらしい。 


 とりあえずボクの実力はしっかり、ちーちゃんに知れちゃったから、これから先はそれに合わせた勉強の進め方になってくんだろなぁ……。


 ちーちゃんはいつも昼からボクに付いて教えるわけにもいかないから、その時の状況に応じてちーちゃんが教えてくれるとき、テストのとき、とか……使い分けるみたい。

 どっちみち夜には確実に会えるからその日の復習をする。 うぅ、もう考えるだけで気が重くなってきちゃう。

 

 でもこれも春奈と一緒に高校にいくためなんだ。 がんばらなきゃ。



* * * * * *



 3月の3回目の日曜日。


 この日は春奈の14回目の誕生日をお祝いするため誕生パーティー決定だ! まぁホントは火曜日なんだけど、お休みの日のほうが都合いいからちょっと早めちゃったのだ。

 3月はお父さんの命日とかぶってしまったから、ちょっと微妙な気持ちになってしまう。 でもそんなことは気にしないでパーッとお祝いすればいいとボクは思う。 お父さんもその方がきっと喜ぶと思うもん。


 この日はボクたち家族の他に、ちーちゃんと……沙希ちゃんも来てくれるんだ♪

 ホントは春奈の学校の友達も呼べれば良かったんだけど……ボクのことがあるから春奈が気を利かせてくれたんだ。 ゴメンね春奈……。


 なんて悪いなと思ってたら――。


 春奈ってば、「私は火曜日の放課後、みんなとカラオケ行って祝ってもらう予定だから大丈夫だよ!」 だって。

 う~、なにそれ。 ボク落ち込んで損しちゃったじゃんかぁ、もう!


 なんかちょっと釈然としないけど、友達に祝ってもらえるんだからやっぱ喜んであげなきゃだめだよね。 なんせボクはお姉ちゃんなんだもん!



* * * * * *



「こんにちは~!」

 あっ、沙希ちゃん来たみたいだ! 沙希ちゃんはお母さんが車で駅まで迎えに行ってくれてたのだ。


「いらっしゃいませ~! 沙希ちゃん来てくれてありがと~」

 春奈が出迎える。

「沙希ちゃん、こんにちは! さぁこっち来て来て?」

 ボクも春奈に負けじと呼びかけた。

「うん! それじゃオジャマしま~す」

 沙希ちゃんがうれしそうに笑顔を見せてお家に入ってくる。


 沙希ちゃんは、すでに松葉杖なしに普通に歩けてる。 骨は一応つながって普通に生活する分にはなんの問題もないらしい。 さすがに駆けっことかはまだしちゃダメらしいけど。 ボクはあっさり勝負に負けちゃった。 あ、どっちが先に歩けるようになるか?ってやつだよ……まぁやっぱそうなるよね、あ~あ。


 沙希ちゃんをリビングに案内して、これで今日のメンバーが勢ぞろいだ。


 ちーちゃんに沙希ちゃん、お母さんにボク、そして今日の主役の春奈!

 みんな楽しそうに笑ってる。 そんなみんなの集まってるテーブルには、お母さんとちーちゃんが用意してくれたバースデーケーキにお菓子、飲み物なんかが所狭しと並んでる。 


「春奈!」「春奈ちゃん!」「春ちゃん!」「「お誕生日おめでと~♪」」


 お祝いの掛け声でパーティーが始まる。


「春奈、あなたも14才になったのね? ……子供の成長って早いものねぇ」

 お母さんが感慨深げに話しかけてる。 みんながそれを聞いて色々話かけてる。


 成長かぁ……。


 ボクってそれについては微妙なんだよね。

 ボクの体は今11才。(これは最近石渡先生に聞いた……)これは確定。  11才っていったらまだ小5じゃん! ボクは先生に聞いたとき、がく然としたもん。 せめて13才、中1くらいはいってて欲しかったよ……。

 このことはお母さんは知ってるけど春奈にはナイショだ。 あいつがもしこのことを知ったらと思うと――。(実は春奈はとっくに知ってるのだが……蒼空は知らない)

 ごほんっ。

 そんでもって精神年齢は15才。 これにも説があって、13才のときからずっと眠ってて今、目覚めたんだから精神的には13才のままじゃない?って……。 ちなみにこの説は春奈先生の説ね。 ボクが幼稚だってことがいいたいらしい。 周りからもよく子供っぽいって言われるし。 この体に心が引きずられてるんじゃないかって言われたり。

 なんか自信なくしちゃうよ。

 

 でも誰がなんと言おうとボクは、蒼空! 生まれてからこれまで15年5ヶ月経ってるのは間違いない事実なのだ! だからボクは15才でOKなのだ。 うん!


 ううっ……、また考え込んでしまった。


 やばいと思って春奈のほうを見ると今は、プレゼントを渡すイベントになってるみたいだ。

ボクも早くもってかなきゃ! 春奈ににらまれちゃう!


「春奈! ボクからもプレゼント。 はい、どーぞ!」


「わぁ、お姉ちゃん、ありがと~!」

 うれしそうに笑う春奈。

 喜んでもらえるとプレゼントしたほうも気持ちいいよね。

 ボクは春奈にはすごく感謝してる。 目が覚めてからずっと春奈には面倒を掛けてばっかりだし。 こういうときくらいキッチリ感謝の気持ち、表さなきゃね。

 春奈はみんなからも次々とプレゼントをもらって、それはもう顔からこぼれそうなくらいの笑顔を見せてる。


 よかったね春奈。

 

 パーティーはその後もまだまだ続き、ボクたちはゲームやおしゃべりをして大いに楽しんだ。 そうしてひとしきり遊んだ頃、沙希ちゃんが高校の話を振ってきた。


「ねぇねぇ、蒼空ちゃん! 蒼空ちゃんって今は千尋さんにお勉強教えてもらってるんだよね?」

「えっ、うん! そうだよ。 ちーちゃんに家庭教師してもらってるの」

 ボクはちーちゃんのほうをちらっと見ながら沙希ちゃんに答える。

「そうなんだぁ、すごいよねぇ? ちゃんと自分からお勉強するなんて。 私なんかお家帰ったら教科書とか見るのもいやだもん!」

 えへっとかわいいしぐさで、でも勉強嫌いをアピール。


「私もときどき教えたりしてるんだよぉ!」

 春奈が割り込んでくる。

「えぇ~? 春奈の場合、教えてくれてるっていうより自分の宿題を持ってきてさ、説明するふりしてちーちゃんに教えてもらってるだけじゃ~ん!」

ボクがそう指摘すると春奈が反論。


「お、お姉ちゃん! わかってないなぁ。 あれで学校の勉強が実際どんな感じかな?ってのがわかるじゃん! そんでもってお姉ちゃんはこれからの予習になって、私も学校の勉強の復習になって……ついでに! 宿題も完了できるだなんてぇ、すっごく効率的だと思わない? ねぇ、沙希ちゃん?」


「へっ? あ、うん、そうだよね! 効率は大事だよね。 私もあやかりたいくらいだもん♪」

 沙希ちゃん……自分で何言ってるかわかってるのかなぁ? 春奈は自分が正義!みたいな顔してるし……。 ボクはタメ息をつきながらちーちゃんの顔を見る。


 ……ちーちゃん、苦笑いしてる。


 そして沙希ちゃんが、また話す。

「それで蒼空ちゃん? どこの高校に行くとか、目指すとか……そういうのって決めてるのかなぁ?」

 沙希ちゃんが目を輝かせながら聞いてくる。


 ん~なんだろ? 沙希ちゃん何狙ってるの? そう思いつつ答える。

「ん~ん、まだどこに行くって決めたわけじゃないよ。 今はとりあえず中卒の認定試験通るのが目標だし。 でも春奈と一緒の高校がいいなぁとは思ってるけど」


「ふーん、そうなんだぁ。 そうするとぉ、春奈ちゃんはどこの高校に行きたいとかはあるのぉ?」

 今度は春奈にふる沙希ちゃん。

「高校かぁ、私はそんな高望みしないし成績も普通だし。 地元の公立がいいんだろうけど……。 私立のほうが色々融通きくかもしれないしぃ、まだちょっとわかんないね」

 春奈もちょっとは考えてるのかな?


 ボクはああは言ったけどたぶん行くとしたら私立の高校になると思う。 お母さんもボクの体のことを考えると私立のほうが安心みたいなこと言ってるし。

 春奈がちらっと私立のこと言ったのもそれがあるのかも知れないなぁ……。

 ボクは春奈と一緒に行きたいと思うけど、春奈の行きたいところを変えさせてまで一緒に行くってことにこだわろうとは思ってない。 春奈の意思は尊重しなきゃ!


「で、沙希ちゃんどうして今から高校のことを?」

 ボクは予想は付いてきたけど、とりあえず聞いてみた。

「え~! そりゃあモチロン、出来れば蒼空ちゃんや春奈ちゃんと一緒の高校行きたいじゃん? だから今からリサーチしとこうと思ってぇ、うふふ」


 やっぱり!

 確かに3人一緒に行けたらボクとしもうれしいかも。

「そっかぁ! ボクも沙希ちゃんと一緒に行けたらうれしいな。 沙希ちゃんはどっか決めてるところってもうあるの?」

「ん~、全然! ねっ、また3年生になってもうちょっと高校の話が具体的になってきたらぁ……またどこいくかお話ししようよぉ?」

 沙希ちゃんがそう提案してきた。


「そだね! まだもうちょっと先の話だけど、その時はみんなで進路相談しよ~!」

 春奈も便乗して言う。

「ボクはまだなんとも言えないけど……、一緒に行ければいいなって思ってるよ」

 はっきりしないなぁ、ボク。 でもほんとまだわかんないんだもん。

「大丈夫だってお姉ちゃん! ちー姉ちゃんに教えてもらってるんだよ? 私も付いてるし!」

 それが心配ですって言ったら怒るだろうなぁ? ふふふ。

 でもみんな協力してくれて、気にかけてもらってるんだし……よし!

「そうだね! じゃまたみんなで進路相談、絶対しようね」

「「うん、そうしよ~!」」

 2人も揃って合いの手をいれる。

 

 そうして再度、進路の相談をするって約束を3人でして、ボクはそのためにもがんばって勉強しなきゃ! と決意を新たにした。

 

 

 でもやっぱ、勉強っていやだなぁ。



 いつの間にか話しが脱線しつつも楽しい時間が過ぎて行き、春奈の誕生パーティーも終わりを告げた――。


 沙希ちゃんはお別れの挨拶をし、お母さんは車で再び駅まで送ってあげるのだった。


 

 来年の今頃はもう進路も決まってみんなで誕生パーティーと一緒に合格祝いとかやってたりしてね? ふふふっ。


 

 そうなるようボクはボクなりにがんばろう……。

 ボクは心の中でそう誓うのだった。



※文部科学省のWebサイト

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