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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
29/124

ep27.ちーちゃん

※話数を修正しました。

 あれから伯母さんと千尋さんとの間で、どんな話し合いがあったのかは分からないけど、千尋さんはどうやら住み込みでの家庭教師の件を引き受けてくれたようだ。

 お母さんと電話でやり取りもしたみたいで、今日の昼から、お部屋の様子見と挨拶をかねてお家に来るんだって。 お部屋はボクが以前使ってた2階の部屋を使ってもらうみたい。


「蒼空、千尋ちゃんが来たらちゃんとご挨拶するのよ? 今住んでるアパート引き払ってまで来てくれるんだからね? よーくお礼をいうこと」

 お母さんは、ボクに念を押す。


「うん、わかってる。 ボクちゃんとお礼いうよ! まかせといて」

 ボクは自信たっぷりに答えた。


 千尋さんは、今大学に通うのにアパートを借りてるんだけど(実家からの通学だと時間がかかりすぎ、学生宿舎はいやなんだって)、住み込みで家庭教師をするってことで、その間ずっと借りっぱなしなんて出来ないから引き払うんだって。


 でも、もしボクがすんなり高校に入っちゃって(もちろん入るつもりだけど!)、家庭教師はそこまでってことにしちゃうと、千尋さんはまたアパート借りなきゃいけなくなっちゃう。 だから家庭教師が続く続かないにかかわらず、大学卒業まではボクんちにずっと住み込みしてもらうってことになったみたいだ。


 ちょっと千尋さんに申し訳ないような気もするけど……、ボク的にはうれしいな。


 千尋さんには、ボクが小学校の5年生くらいまではよく遊んでもらってた。

 ――あの頃のボクは、当時すでに高校生だった、やさしくてキレイな "ちーちゃん"(千尋さんのこと)に会うのをいつも楽しみにしてたっけ。 伯母さんが海外へ行ってからはあまり会えなくなっちゃったんだけど――。


 今日はお母さんも、さすがによそ行きの服を着せようとはしないみたいだけど、「でも部屋着はやめなさいね」とはいわれた。 ボクもあのピンクのカワイイので、久しぶりに会う千尋さんをお迎えするのはいやだから、素直に従おっと。



* * * * * *



 お昼ごはんを食べて、ちょっと眠たくなってきた頃……。

 千尋さんは、自分で車を運転してお家までやってきた。 やっぱり車があったほうが便利なんだろうなぁ……、この辺りは車がないと何かと不便なのだ。

 千尋さんは、有名な泥棒アニメの主人公みたいな名前の、淡い緑っぽい色をしたかわいらしい軽自動車に乗って来て、今お母さんが、自分の車の横に止めるよう案内してる。



「おじゃましま~す!」

 玄関から聞こえてきた久しぶりに聞く千尋さんの声。 以前とあまり変わってない感じだ。

 リビングに入って来たお母さんの後ろから、続いて千尋さんが現われる。

 背が高めのお母さんと同じくらいかちょっと低いくらい。(結城の家の人ってみんな背、高いなぁ……、170cm前後ありそうな人ばっかだ)

 髪の毛は以前より伸ばしてるみたいで、肩を少し越えるくらいまであって、ゆるいウエーブさせた髪を内巻きにした感じで、前は真ん中よりちょっと右に寄せたくらいで分けてる。

 お顔は、お母さんや伯母さんは面長のすっきり顔の美人さんだけど、千尋さんは、ちょっと卵型した顔の、目元がやさしい雰囲気の美人さんだ。


「ち~姉ちゃん! こんにちは~」

 春奈がまず、うれしそうに駆け寄ってく。 すばやい! しかもアダ名で?

 そういや春奈はボクが眠ってた時、伯母さんと一緒に会ってるのかな? 他にも会う機会あったかもしれないし……。


「あん、春ちゃんっ。 久しぶり~、元気してた~?」


「うん! 今はもう、と~っても元気だよぉ!」


 そう言葉を交わすと、千尋さんと春奈は両手を取って上下に振り合って再会を喜んでる。 そして一通り再会の挨拶が終わると、次はボクのほうに近づいて来てくれた。


 千尋さんはボクを前にして戸惑いがあるのかちょっと動きがとまる……。


 ボクは先に声をかける。

「あ、あの、千尋さん? こ、こんにちは、蒼空……です。 こんな姿になっちゃったけど……」

 久しぶりに会う緊張からか、ちょっとたどたどしくなっちゃった。 最後の一言余計だったなぁ。


「……蒼空ちゃん!」

 千尋さんがボクの両手を取りぎゅっと握った。 そしてボクの方をしっかり見て言った。

「蒼空ちゃん。 目、覚めてよかったね」


 千尋さんは握っていた手を、今度はボクの肩に回し軽く抱きしめてくれた。

 そしてもう一度、

「よかったね、蒼空ちゃん! おかえり」

 と言って再度、今度はぎゅっと抱きしめてくれた。


「あ、ありがとう! 千尋さん」

 ボクは抱きしめられながらもお礼を言った。 う~ん、一体何度目のハグなんだろ? ふと不謹慎なことを考えてしまうボク。 それから "あのこと" もちゃんと言わなきゃ。


「千尋さん――。 今回はボクのために家庭教師をしてくれて、住み込みまでしてやってくれて……。 その、無理なお願いしてごめんなさい。 でも来てくれてありがとう!」

 よし、何とか言えた?


「うん、うん。 どういたしまして! 私で役に立てるなら、かわいい従妹のためだし、頑張っちゃうよ!」

 千尋さんはそう言って笑顔を見せる。

「それに、これは私にとってもすっごく大助かりなコトなんだから。 蒼空ちゃんは何も気にしなくていいのよ?」

 今度はちょっとニヤリと笑って、ボクを見る。

 やっぱり伯母さんが言ってたようにメリットは大きいみたいだ……。 でも、千尋さんだって一人になりたい時とかあるんじゃないのかなぁ? いつもボク達が一緒だと自由な時間とかあまり取れないだろうし。

 ボクがそんなことを考えたのを、知ってか知らずか千尋さんが更に言う。


「まぁ、たまに羽目はずしたい時とか、一人になりたい時とかは、どっか出かけたりすると思うけどね?」

 そう言っていたずらっぽく笑う。

「あ、それと、"千尋さん" なんて他人行儀な呼び方しなくていいから? 昔一緒に遊んでた時みたいに、"ちーちゃん" でいいよ? ねっ、蒼空ちゃん?」


「まぁ、なぜか春ちゃんは、ちー姉ちゃんって呼ぶけど。 やっぱ妹だから?」

 そう言って笑いながらも、ボクのアタマをやさしくなでる。 これパターンだよね……。


「うん。 あ、ありがとう! その、ち、ちーちゃん……」

 ボクは、はにかんで頬を赤めながらもそう言った。 最後の一言に小首をかしげるオマケ付きで……。


「はぅ!」

 きゅう~。


 ちーちゃん撃沈だった。


 ――後で春奈がボクに言った。

「お姉ちゃん、最近自分の武器が分かってきたみたいだよね? にひひ。 あれはない、あれはないよぉ! 一撃必殺だよ? 使う時はよ~く考えて使わないとヤバイよぉ?」

 と……。

 ボクだんだん女の子としての自分に慣れてきちゃってるのかなぁ、やっぱり。 案外小悪魔みたいな娘になったり? いや、それはないな、ないよ、たぶん――。


 その後、ちーちゃんが落ち着いてからお母さんがお家の中を説明したり、元ボクの部屋の様子(広さとか、どんな物が使えて、何が必要かとか)を確認したり。 細かいとこだと、ちーちゃんの好きな食べ物が何? とか、生活にまつわるいろんなこととか、etc……。

 

 あ、それと忘れちゃならない、これがメイン! の、ボクのこれからの勉強の進め方と、その後、どの高校を目指すのかってことについてとか。

 "中卒認定試験" はともかく、高校については今の段階では、ボクの力がまったくと言っていいほどつかめないから決めようがないみたい。 まぁ、そりゃそうだよね。


「ボク……は、出来たら春奈と同じところに行けたらいいなぁ?」

 どこか希望はあるのって聞かれたときは、一応そう答えたけど。

 これは前にもそう言ってたことだし、ボクも一人ぽっちはいやだから……、出来ればそうなれるよう努力したいんだ。

 ――そういや春奈って成績どうなんだろ?


「まぁ高校については、ある程度勉強が進んでから改めて相談しましょう?」

 お母さんが無難なところを言って、ちーちゃんも「それがいいですね」と同意した。



* * * * * *



 だいたいの話しがまとまったところで、ちーちゃんは帰ることになり、ボクは玄関でお見送りし、お母さんと春奈は外まで行って、車が見えなくなるまで見送ってたみたい。


 ちーちゃんは、アパートの契約の関係で2月いっぱいまでは向こうで生活するみたい。

 そして2月の最後の日までには引越しを終わらせて、3月からは、いよいよこっちでの生活ってことになるらしい。

 

 3月までは、あと2週間と少し。 う~ん、待ち遠しいなぁ。


 

 ――ちーちゃん。


 たぶん苦労させることになっちゃうと思うけど……、3月からよろしくお願いします!

 ……ボクは、心の中でそう願うのだった――。





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