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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
2章
27/124

ep25.伯母さんが来る

※話数を修正しました。

 "無断外出事件"から1週間……、ボクはずっとベッドから出してもらえなかった。

 退屈でたまらず無断外出して――、その結果が1週間のベッド暮らし。 我ながら意味のない、自分の首を絞めるようなことをやっちゃたなと……、ただただタメ息が出るばかりの時間を過ごすしかなかった。

 

 病院では、石渡先生に心配されながらもからかわれ、香織さんにはお説教をくらっちゃうし……。

 ほんと散々だったよ……。


 今はようやく熱も下がり、日焼けで炎症を起こしかけていた肌も、適切な治療のおかげで大事に至ることもなく、普通にお家の中をうろうろ出来るようになった。 でも寝込んでたおかげでリハビリが進まなかったどころか、また弱っちゃう結果になってガッカリだ……。


 でもボクが無断外出をしようとした原因……、お家で一人っきりでいるしかないボクの気持ち……は、お母さんや春奈もわかってくれていて、色々気を使ってくれているのがうれしかったりする。 ありがとね、お母さん、春奈!



 ――そんなことがありながらも、また平穏な日々の暮らしが戻ってきたある日の日曜日。


「蒼空、今日はお客さまが来るから、ちゃんとお外に出ても恥ずかしくないカッコしましょう!」

 お客さま? 誰が来るんだろ? そう思いながら自分の姿を見る。

 淡いピンク地に花柄をあしらった裏起毛の長袖、長ズボンの部屋着で、上着の襟元にはボアがついててカワイイ。 そして足元はもこもこした、これもピンクのルームブーツを履いてる。 はっきりいってやたらとカワイらしいかっこですごく恥ずかしい(やわらかくて着心地はいいけど)。

 もちろん選んできたのは春奈だ。

 なんだかボクのために用意してくれるお洋服って、ピンク色が多くて女の子女の子してる。 2人ともボクのこと子供扱いしずぎだ!


 そしてお母さんがボクの部屋にお洋服を持って入ってきた。 どうやら今日のためにまた新しいのを用意したみたい。(お母さんってなんでこういう時、お洋服をきめたがるんだろ? いつも着てるのでも充分じゃないかと思うんだけどなぁ)

 ボクは、着ている服を有無を言わさず脱がされて、下着姿にされちゃった。 胸がまだほんのちょっとしか出てない(これから成長するのかなぁ? でも胸のあるボクを想像するのもなんだか変)ボクはキャミソールにパンツ姿だけど、お色気なんて全然ない。

 

 新しいお洋服を着せられたボクは、姿見の前に震えながらもなんとか立ってその姿を見てる。モチロン横でお母さんが支えてくれてるけど。

 今度のお洋服は、ちょっと清楚なイメージのするお嬢様っぽい服だ。 白い長袖のブラウスに赤いチェックのティアードスカート、首元にはこれも赤チェックのリボン。 黒っぽいジャケットを羽織って、キラキラしたチェーン付きのボタンで留めてアクセントにしてる。

 お母さん、こんなにきめてボクをどこの発表会?に連れ出すつもりなの? って感じの仕上がりですね。 正直、お家に来るお客さまへの対応?としてはやりすぎだと思うんだけど……。

 ボクがそんな思いで、お母さんを見ても全然相手にされないどころか……、


「蒼空、すごく似合ってるわ! かわいいわよ~」


 一人盛り上がってます。 だめだこりゃ。


 そこに輪をかけるように春奈が入ってきた。

「お母さん、お姉ちゃんの着替え終わったぁ?」

 入るときはノックしようよ? 春奈。


「終わったわよ、見て春奈。 かわいいでしょう?」


「きゃー! すんごくかわい~! お姉ちゃん、フォーマルなスーツも似合うね」


 す、スーツ? これってやっぱスーツになるの? 女の子のお洋服はよくわからないけど……、やっぱ思いっ切りよそ行きのかっこなんじゃない?


「これなら伯母さんもきっと褒めてくれるよ~?」

「お、伯母さん?」

 春奈の言葉にボクは思わず聞き返した。

「え? うん、そう伯母さん。 あれ、聞いてなかった?」


「聞いてない……」


 伯母さん……。

 お母さんのお姉さんで、某有名広告代理店に勤めてる、超が付くほどの……、昔で言うキャリアウーマンでボクがすごく苦手にしてた人だ。

 海外に長く赴任してることもあり、スキンシップがハンパなく、当時キスされまくってたボクは、いくら小さかったとはいえあまりの恥ずかしさに、いつからか伯母さんの目から離れるよう、目に付かないような行動をとるようになった――という、いわく付きの恐ろしい人なのだ!


「あら? そうだったかしら。 言ったと思ったんだけどなぁ?」

 お母さんが白々しく誤魔化した。 ぜったいわざとだよね。


 ボクはジト目でお母さんを見る。 お母さんは目をそらし、春奈を見る。 春奈は、あははっ と笑って誤魔化す。


 ま、いいけどさ。


 でも、お母さんがすごくうれしそうにしてる。

 ボクはいつも心配かけてばかりで、お母さんに悲しい思いさせてるから、これはやっぱいいことなんだもん。 ボクは伯母さんのキス&抱き付き攻撃に耐え切ってみせるもん!


 あ、でも伯母さん……、ボクのことって?


 ボクは突然不安になり、表情を曇らせた。 それをお母さんは見逃さず……察して言葉をかけてくれた。


「蒼空? 心配しなくても大丈夫。 伯母さん……私のお姉さんはねぇ、蒼空のことはちゃ~んとわかってくれてるわ。 だから蒼空は全然気にしなくていいの」

 そう言って、ボクのアタマをなで、笑いながら続ける。

「何しろ、あの(事件の)後、私一人じゃ心配だから一緒にこっちに来て住めばいい……なんて言ってくれたくらいなのよ」

 お母さんはホントにうれしそうにそう語り、ボクのお洋服スーツ姿を再度確認する。


「よし、完璧ね!」


 ボクの両肩を軽くポンッとたたきながらそう言うと、車イスに座らせてくれた。

 ボクはそれが少し残念だった。 ボクがあんなことさえしなかったら……、もうちょっと長く立っていられるくらい、それこそ伯母さんを立った姿でお迎えすることも出来たかもしれないのに――。


「それじゃ、蒼空。 お母さんは空港へ姉さんを迎えに行ってくるから、あなたは春奈とおとなしくお留守番しててね? ……お外に出ちゃだめだからね?」

 最後の一言を茶目っ気たっぷりに追加して、再度ボクのアタマをなで、次いで春奈もなでるとお母さんは、見送りはいいからと言い、いそいそと部屋を出て行った。


「お姉ちゃん、今日は覚悟しておいた方がいいかもね? 最近のお姉ちゃんはいつも会う人会う人に抱きしめられちゃってるけどぉ……」

 そう言って春奈はボクの方を見てニヤリと笑い、

「今回はそれの比じゃないと思うなぁ……いひひひ」


 は、春奈。 なんていやな笑い方。 ボクはなんだかアタマが痛くなってきた気がするよぉ。


「でも、お姉ちゃんはあの時ずっと寝たまま目が覚めないし、……おと……さんは、……だし、ほんと真剣に伯母さんは、お母さんを連れて行きたがってたよ。 ……心配してくれてた」

 春奈は、ぽつりと当時のことをボクに話した。


「うん。 お母さんの大事なお姉さんだもんね。 ボクも逃げてばっかじゃ、お母さん悲しむもんね。 まかせといてよ、ボクちゃんと伯母さんにご挨拶するしその後も……」

 ボクはちょっと言葉をさがして、……こう言った。


「がんばるよ!」


「がんばれ!」


 春奈がそれに同じように答えた。

 そう言った春奈の顔は、やっぱ、ちょっと……にやけてた。


 しばらくしてお母さんのクルマが出て行くのが窓から見えた。



 伯母さん? どうかお手柔らかにお願い――。

 ボクは飛んで来ているだろう飛行機の方向に向って……、お祈りした。

 

 モチロン心の中で……。



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