表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
1章
22/124

ep21.決意

※話数を修正しました。

 2年ぶりのお正月をお家で迎え、お母さんや春奈と、楽しく穏やかな気分を満喫した10日間はあっという間に過ぎ、ボクは病院に戻った。


 お家にいる間、ボクはこれといって体の調子を崩すこともなく、いたって健康だった。

 1週間の検査入院で問題が無ければ、ボクは晴れて正式な退院が出来ることになる。

 検査結果を待つ間は、久しぶりのリハビリをがんばってこなした。 久しぶりだったけどお家でも出来る運動はしてたし、そんなになまってはいないはず! と自負してたんだけど……、やっぱりきつかった。


 退院が決まれば、リハビリは通院してすることになるはずだ。 その間はお母さんに送り迎えをしてもらうことになっちゃうから、なるべく早くリハビリに来なくていいようにならなくちゃ!

 

 久しぶりに会った香織さんには、お家での出来事をいっぱい聞かれちゃった。

 お母さんや、春奈とお風呂に一緒に入ったことまで白状させられたのはすごく恥ずかしかった……。(まだ危ないからって、一人では入らせてもらえなかったのだ……。 お風呂にも手すりとか付けてもらってあったし、なんとか一人で入るって言ってみたけど、ダメだった)

 今は女の子の体とはいえ、元男の子としては複雑なのだ、中学生になってからはもう一人で入ってたし……。


 自分の(女の子の)体には、さすがにもう慣れちゃって平気なものなんだけど……、目(視力)が弱くなったのだけはなかなか慣れない。

 男の子の時もそんなに見えるほうじゃなかったけど、この目はちょっとした光でまぶしさを感じてしまい何も見えなくなってしまう……。 視力0.3どころの話しじゃなくなっちゃうのだ。 字を読むにもルーペで拡大して(香織さんに貰ったのが大活躍!)見なきゃ読めないし、遠くのモノを見るのにも一苦労。(双眼鏡なんかも必要だよ) ホント大変なんだ。

 

 そんなこんなを香織さんと話したり、知り合いの入院患者の人達と話したりと、ボクは病院で、リハビリや、お散歩しながら1週間を過ごした。

 もう慣れたものだったから、お母さんは週末に来るだけで、春奈が3日に一度づつくらいで着替えを持ってきてくれるくらいだった。 夜はやっぱりさみしかったけど、春奈とメールとかして、さみしさを紛らわしたりしてた……。



* * * * * *



「柚月さん、蒼空ちゃんの検査結果ですが……」

 石渡医師が、日向に1週間の検査入院の結果を報告し始めた。


「はい、いかがでしたでしょう?」

 日向は、心配げに問いかける。


「結論から言いますと……、ご安心ください。 特に問題もなく、このまま退院しても大丈夫かと思われます」

 いつになく真面目な口調で話し始めた石渡。


 日向は、それを聞きほっとした表情を見せる。


 石渡はそれを見つつ、いくつかの頭部の断面画像を用意し、続ける。

「頭部CTやMRI、それに脳波測定など、頭部を重点的に検査し、その他一通りの身体検査も実施しました。 結果、それらについて全て異常ナシと出ています」


「リハビリの成果もかなり出てきているようだし……、免疫力の方も、蒼空ちゃんの体力の上昇とともにずいぶんと向上してきています」

 石渡がそう言いながら、ニッコリと微笑みかける。


 日向はつられて、思わず微笑みを返す。


 しかしその後、石渡は表情を微妙にくもらせて言う。

「後は、心的外傷トラウマについてが懸案事項として残るわけですが、これについては私も専門ではないので、正直これ以上突っ込んだ対応はできません。 しかし、今後再び症状が出ることが心配なのであれば、専門の医師やカウンセラーを紹介することは出来ます」


「そうですか、体の方は大丈夫ってことで安心しました。 先生や、病院の方々には感謝の言葉もありません」

 日向はまずお礼をいい、

「蒼空の心的外傷……については、あの子が過去の悲しい思い出にとらわれないよう、家族で出来る限りのサポートをして行きたいと思っています」

 今後の決意を新たにすることを告げた。


「うん、わかりました。 それでは、蒼空ちゃんは今日をもって退院ってことで手続きを進めておきます。 長い間お疲れさまでした!」

 そういって石渡は手を差し出した。


 握手を求める石渡に、一瞬戸惑った日向だったが、すぐに手を差し出し握手を交わし再びお礼の言葉を言う。

「石渡先生、本当にお世話になりました。 ありがとうございます」


「こちらこそ、長期にわたってしまい申し訳なかったです。 それにまだリハビリに通ってもらわないといけませんからね? もう少し頑張りましょう!」


「はい、よろしくお願いします」

 そう言いながら日向は、石渡にお辞儀をし、立ち去るのであった。



* * * * * *



「ただいま~!」

 ボクはお母さんに家の中に入れてもらってすぐ、帰宅の声をあげる。


 そうすると中から春奈が駆け出してきた。

「お帰り~! あ、お姉ちゃん! 一緒に帰ってきたってことは、無事退院できたんだね? よかったぁ~、これからはずっと一緒だね♪」


「うん! もう全然問題ないって。 あとはリハビリに通うだけだよ!」


「あ、そっかぁ、リハビリはまだ通わないといけないんだね……。 まだしばらくは大変だね?」

 春奈は、笑ったり、しょぼくれたりと、見てて表情がくるくる変わってかわいい。


「そうなんだけど、行けば香織さんにも会えるしさ、その方が早く歩けるようになるんだし! ボク、早く歩けるようになって春奈やお母さんとも、お買い物とか一緒にいきたいし。 がんばらなきゃ」


 それを聞いて春奈もぱぁーっと明るい表情になって、

「そうだね! 一緒にお買い物行かなきゃね? お姉ちゃん、がんばって早く歩けるようになってねぇ~」

 そう言うが早いか、春奈は車イスを勢いよく押し出し、ボクは危うく舌をかみそうになっちゃった。


「もう、春奈ぁ! 急に押さないでよぉ、舌かみそうになったじゃん!」


「あは、ごめんなさぁ~い」

 舌をぺろっと出してあやまる春奈。 こいつ全然悪いと思ってないよなぁ……もう。


 そんなやり取りをしていたら、お母さんが入ってきて、

「ほら、2人ともそんなところでグズグズしないで! 蒼空、あなたは荷物早く片付けなさい。 春奈も手伝ってあげるのよ?」


「「は~い!」」


 怒られたボクたちは、2人して返事をしながら逃げるようにボクの部屋に向かった。


 日向は、そんな子供たちを見てあきれつつも、うれしそうな表情を見せ、自らも荷物の片付けを始めるのだった。




 ――これから始まる新しい生活に、ボクは期待と若干の不安(勉強とか、勉強とか……)が入り混じりながらも、楽しみで仕方がなかった。 でもとりあえずは早く歩けるようにならなきゃ!



 そう思いながら、ボクは "がんばろう!" と新たな思いを心にきざんだ――。


 


次回から第2章に入ります。


学校に入れるようになるといいんですが……、蒼空の頑張りに期待です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ