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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
1章
19/124

ep18.心的外傷

※話数を修正しました。

 この日の空は、今にも雪が降ってくるのではないかと思えるくらい厚い雲におおわれていた。 おかげで日差しも少なく、眼鏡の必要なかったんじゃないか? と思える。

 

 まぁ変わりにすごく寒いわけだけど――。


 寒い中だけど、お外に出る(病院の中庭だけど)ってことでボクのカッコは重装備だ。

 患者服の上を、ゆったりぎみの淡いピンクのタートルネックのセーターに替え、その上にエリやソデ、スソにファーの付いたふんわりした白いコートを羽織り、赤いタータンチェックのフリースブランケットを膝にかけ、頭にもボンボン付きのピンクのニット帽、足元にもファー付き(内側まで)のベージュ色のブーツ――、というお母さんがこれでもかって言うくらいに着せてくれた。


 心配してくれるのはウレシイけど、かなり恥ずかしいよ、病院の中でコレは。


 

 1年9ヶ月ぶり……になる、お外の空気は冷たくって、息をすると肺の中まで凍ってしまうんじゃないか? って思えるほど。 ほっぺもあっという間に冷たくなって表情を変えるのが難しくなってきちゃう。

 

 でも、そんな寒さや冷たさも今は心地いい。 生きてるって感じがする。


 目が覚めて良かった……って実感できる。



 この病院の中庭は、テニスコートを2面縦に並べたくらいの大きさで、中央に楕円の花壇が2つ、木の植え込みも点在していて、その周囲にベンチが適度な間隔で8基ほど並べてある。 


 ボクは車イスをお母さんに押してもらい、ゆっくりとその中を周って、その久しぶりの空気や雰囲気、匂いや音を体中で感じて……、女の子になったこの新しい、けど不自由なボクの体――、にその感覚を覚えこませるようにゆっくりと時間をかけて周った。


 ――でも、寒くて凍えるかと思った。



* * * * * *



「「メリークリスマ~ス!」」


 お母さんとボクが病室に戻ると、待ってましたとばかりにみんなの声が響く。

 居るのは、春奈に香織さん、それに沙希ちゃん! まだ足が不自由なのに来てくれたんだぁ……、もうすっかりみんなと馴染んでるなぁ。


「みんな、ありがとう! せっかくのクリスマスイブなのにボクのために時間とってくれて。 ほんとにウレシイよ~」

 ボクは、感極まってまた泣きそうになってきたけどなんとか抑えた。(最近すぐ泣いちゃうんで、泣き虫って思われるのいやなのだ)


 今日、ボクがお外に出た日―― は、クリスマスイブ。 せっかくだから戻ってきたら、ささやかながらでもパーティーしよう! って春奈がいい出し、みんなで準備してくれてたんだ。 石渡先生も快く許可を出してくれた(っていうか先生もすごく出たがってた)みたい。


 お、今日はまぁるくて大き目のクリスマスケーキだ。 苺が上に山のように乗ってる! すごぉ~い♪


「さあさあ、お母さん! もう準備万端、いつでも始められるんだから座って座って!」


「お姉ちゃんは、そのまま(車イスのまま)でOKよね?」


「うん!」

 

「じゃあ、早速はじめましょ~!」


 春奈の掛け声とともに、目覚めてから一番といっていい、短くも楽しいパーティーが始まった。


 ケーキの他にもシャンパンにコーラ、フライドチキン、お菓子なんかもいっぱいだ。

 ケーキは香織さんが切り分けてくれている。 待ち遠しいよ~!

 

 パーティーの的にかかるのは、やはりというか――、ボクだった。


「お姉ちゃん、お外どうだった?」


「寒くなかった? 目は疲れなかった?」


「そのファー付きのコートすっごくかわいかったわ~、日向さんが選んだの? さすがだわ」


「め、メガネっ娘~!?」


 一部変な発言が混じってたようなぁ?

 みんな楽しそうだなぁ。 苺のクリスマスケーキもおいしいし、紅茶もおいしいし……。


 でも、ちょっと疲れたなぁ……。


 ――クリスマスパーティーかぁ、なんか久ぶり。


 ボクが物心付いたころには、お家でいつもやってたなぁ。


 お母さんの料理がすっごくおいしかったし、春奈とツリーを一緒に飾り付けたり……。

 それにお父さんサンタが(ボクたちにばれてないつもりで)いつもプレゼントを夜に……。 


 家族で、クリスマス……パーティー。


 家族でお食事……。

 みんなでお出かけ……。


 …………。

  

 ボクと春奈……、いっつも言い争ってた、なぁ……。



 お父さんがそんなボクたちを――。

 

 おとう……さん――。




 …………。

 

 あのとき……、あの寒かった雪の日も――。


 …………。



「うぅ、おと……う……さん」


「いや……だ」 



 ――うぅ、いやだ!

 もう思い出したく……ない。

 思い出したくなんかない……。



 もう思い出させないで……。



 意識が遠ざかる――。



 …………。





「……!」


「蒼空!?」

 日向が蒼空の様子に気付き、声を上げる。


「お姉ちゃん?」

 春奈も気付いて蒼空の方を見る。


「蒼空? どうしたの? 疲れちゃったの?」

 日向が蒼空に大きめの声で問いかけている。




 ボクは、聞こえてるんだけど……、どこか自分じゃない他の人を見てるような、そんな気持ちで声をかけられてる自分を感じてる――。


 そしてボクの意識はどんどんボクから離れていこうとする。 何も感じなくていい……深いトコロへ……。


 ――思い出したない。


 ――忘れたい。


 お父さん……。




「日向さん、私、石渡先生呼んできます!」


「え、ええ……、そうね、お願いします」

 日向は動揺が隠し切れない。


 どうしたんだろう? どうしてしまったんだろう……、ここへ来ての蒼空のただならない様子。


 ついさっきまで楽しそうに微笑んでいた蒼空。

 

 久しぶりに外に出られて、はしゃいでいた蒼空。


 新しい、女の子になってから初めてのお友達も出来て……。


 毎年やっていたクリスマスパーティーも、事件でとぎれてたけど、また久しぶり……に――。


「はっ!?」


 久しぶりの……パーティー。 毎年やっていたクリスマス……パーティー。


 そこにはいつも、あの人がいた……。



 蒼空、もしかして?



 日向は、表情が無くなって空ろな顔を見せている蒼空に近づくと、そのまま肩から抱き寄せその頭に自分の頭をよせ、優しくささやきかける。


 ――春奈は、突然の蒼空の変わりように言葉も出せず立ち尽くしている。 そんな春奈を沙希は肩をよせて慰めているが、沙希も何が起こったのかわからず不安な面持ちで、日向を見ている。


「蒼空、蒼空、聞いて欲しい。 あなた、また思い出しちゃたのね? 昔のこと。 家族との思い出や……、あの人――。 お父さんのことも……」


 空ろだった蒼空の表情が一瞬ゆれる。


「蒼空はもう思い出したくないのよね? そうね、それを思い出すのは悲しいし、いやな事も思い出しちゃうものね?」


 蒼空の目がかすかに揺れた表情を見せる。


「でもね、逃げてちゃダメなの。 逃げてる限りはそれは逆に忘れられず、それどころか今みたいに何かあるたびに思い出して……。 悲しい気持ちを呼び覚まして、つらくて……また逃げ出したくなってしまうわ」


 話しながらも蒼空を優しくなでる日向。 ふと前を見ると、いつの間に戻って来たのか、そこには西森、そして石渡医師もいる。

 石渡は、続けて……と言うようにうなずいて見せる。


「蒼空、お母さんも……お父さん、雅行さんが居なくなって――、死んでしまって、心の中にぽっかり穴が開いてしまったような気持ちで、どうしたらいいのかわからなくなったこともあるわ……」


 春奈が思わず日向の顔を見る。 何か言いたそうな表情を浮かべるが……なんとか気持ちを抑える。

 

 日向は春奈にやさしく微笑むと話しを続ける。


「でもね、私には家族がいた。 そう蒼空、あなたと春奈。 二人の大事な、かわいい子供たち」


 日向は、蒼空の頬を両手でやさしく包み込み、そのかわいらしい顔を覗き込む。 蒼空の、その色素が欠乏して毛細血管がすける為に赤く見える瞳、そのままの状態では満足に外へも出られない、その目をしっかりと見つめる。

 

 そして続ける。

「蒼空、だからあなたも逃げちゃダメ。 悲しい気持ちは素直に認めて、現実を見て? 蒼空の周りにはたくさん蒼空を愛してくれている人がいるわ。 助けてくれる人も。 お母さんや春奈はずっと蒼空の家族なの――、これは何があっても絶対変わらない」


「愛してるわ、蒼空。 大事な私の……娘」

 そう言うと日向は、蒼空を見て……そのかわいらしい額に軽くキスをした。


 蒼空の目が、空ろだったその目が揺れ……、やがていつしか涙が浮かんでくる。


 目に光が戻って来るころには、その目は涙でいっぱいになっていて――、ついには溢れ、頬を伝わり流れ落ちていく。


 日向はそれを拭いつつ、またキスをする。

「大好きよ、大好きなんだから……もう心配させないで」


「お母さん――、ボクも大好きだよ」

 もうしっかりとした表情で、意識もしっかり戻ってきた蒼空がちょっと頬を赤くして言う。


 日向は、今度はしっかりと抱きしめ、頬を蒼空の頬に摺り寄せる。


 蒼空は、気持ち良さそうに目を細める。 そして言う。

「心配かけてごめんなさい」


 春奈はほっとした表情になり、今度はちょっと蒼空をうらやましげに見つめ、つい言ってしまう。

「お母さん、私もお母さんのこと大好きなんだからね?」

 どうやら蒼空に嫉妬してしまったよう。


 それを聞いて、周りの緊張がすっと解けていく。


 西森や、石渡にも笑顔が戻ってくる。

 石渡はそっと思った……。 母は強し――だな、と。


 そして沙希は……、ちょっと付いて来れてなかった。

 西森は何気にフォローを入れるため、沙希に声をかけるのであった。



 そして蒼空が、まだちょっと弱々しげながらみんなに声をかける。


「クリスマスパーティー、途中でこわしちゃってごめんなさい。 ボク、まだよくわかんないけど……こんなことにまたならないよう……うぅ」


 途中でなんと言ったらいいかわからなくなる蒼空。


「ぷっ」

 思わず吹き出す春奈。


「お姉ちゃんったら……、うまく言えないなら始めからいわなきゃいいのにぃ? でも言いたいことはわかるよ」


 春奈は、蒼空、そして日向を見る。 そして、春奈も2人のほうへ寄っていき日向は春奈と蒼空、一緒に肩から抱き寄せて言う。

「2人は私の大事な子供。 そして雅行さんとの愛のあかし。 3人は家族なんだからね? お互いで助け合って、困ったことがあったら相談して、そして尊重しあって、幸せに生きていけるよう力を合わせていかなきゃね!」


「「は~い!」」

 蒼空と春奈はそろって返事をし、日向に頬をよせる。


 

 周りの3人は、ホームドラマを見せ付けられ、少々引き気味だ――。



 ――それにしても、

 

 一時退院まであと3日、蒼空は無事に家に帰ることができるのだろうか?

 心配の種はつきない――。



ああ、うまく表現できない。

変な表現多いかもしれませんがご容赦ください。


文章力が……。


なのになぜかこんな話しを書いてしまう不思議。

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