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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
4章
120/124

ep112.蒼空、街へ!

ちょっと早め? というにはまだまだ遅い?


投稿します。

「じゃあ出かけましょうか」


 お母さんがすごく機嫌のいい声でボクたちにそう告げる。


「うん、ボクの準備はOKだよ」

「私戸締りしとくから、お母さんはお姉ちゃんと先に車に乗っててー」


 ボクの返事に続いていい色に日焼けした春奈が元気にそう答えた。

 相変わらず部活に精を出してる春奈はまじ真っ黒で、ムダに元気でホントうらやましい。ボクなんて、間が悪いことにテスト前あたりからアレが始まって憂鬱な日々送ってたのにさ、ほんと女の子って大変……、男の子のときが懐かしい。


5月も最後の週、いやーな中間考査もなんとか済んだ後(まぁ、若干一名無事じゃないのもいるけど)の日曜日。今日は、ちーちゃんの結婚式でボクや春奈が着るお洋服を見に行く予定になってて、久しぶりのお外でのお買い物ってことで、前々からすっごく楽しみにしてたのだ!


「そう、それじゃ頼むわね。蒼空、帽子もちゃんと持った? ほとんどお店の中だとはいえ、外も少しは歩くんだから油断しちゃだめよ。それと……」


 お母さんに手を引かれ(お母さんは未だにボクに関してはすっごい過保護。もうガッコに行くようになって1ヶ月以上経つっていうのに……)、車に向かう最中もやたら心配げに声をかけてくるお母さん。もう何回同じようなこと聞かされたことか……。


「お母さん、それお家の中でもいっぱい聞いた。心配しなくてもだいじょーぶ。春奈も一緒に準備したんだし全然問題ない、ばっちりだよ」


 ボクはそう言いながらお母さんの手をギュッと握って、大丈夫感をアピールした。お母さんは一瞬ボクの方を見て、うっすらと優しい笑顔を浮かべボクに言う。


「そう、なら安心……かしらね? ふふっ、ごめんねお母さんくどくって。こうやって蒼空とお買い物に行くのも久しぶり……、だからついね。

 ……そうね、それじゃご用、早く済ませて美味しいもの食べにいきましょう。

 さぁ車に乗って? あ、足元、気を付けるのよ」

 

 おしゃべりしながら、ゆっくりとした歩みで駐車場の車まで来たボクたち。お母さんが車のドアを開け、ボクに乗るよう促しながらも、その言葉と様子はいかにも心配そうで……、ボクはもう苦笑いするしかない。


「ありがと、お母さん。さっきの言葉忘れないでね? 美味しいもの食べに行くってやつ。ボク楽しみにしてるからね~」


 とりあえずそんなことを言いながら、ボクは運転席後ろの指定席にポスンと座り、春奈の来るのを待つ体勢となった。


「お待たせ~!」


 けどほとんど待つことなく、勢いよく駆けつけて来た春奈が元気よく車に乗り込んで来た。ボスンと勢いよくシートに座ったせいでボクの方までその余波がきた、むぅ~。


「ちょ、春奈、もうちょっと静かに乗りなよっ、びっくりしちゃうじゃんか~」


 姉としてきっちり文句を言うボク。


「はいはい了解、了解。

 お母さん、戸締りバッチリ、いつでも出発してOKだよ~!」


 ボクの言ったことは軽く流し、お母さんに報告する妹。

 は、春奈め、ばかにして~。


「ちょっと春奈、聞いてる? もういっつもいっつも! もっと静かに車乗んなよね。お家でもそうだけどさ、春奈ちょっとガサツすぎっ!」


 強めに文句言うボク。

 もちろん敵は即座に反論してくる。


「あら、それはごめんあそばせ! どーせ私はガサツでおしとやかじゃありませんからね~。

 でもお姉ちゃんだって、女らしいっていうより、まだ相当お子ちゃま気分のが強いじゃん。むふっ、たいして変わんないよ~!」


 ボクを見てにやけた表情を浮かべながら、そんなことを言う春奈。


「はうっ、は、春奈~!」


 ボクが更に反論をしようとしたその時。


「2人ともいい加減になさいっ! 車出すんだから後ろでわーわー騒がないで。


 春奈、あなたも少し調子に乗りすぎよ! 蒼空は単純なんだから、そんな煽るようなことばかり言って興奮させない!


 それと蒼空。あなたももう5年生(高校2年生)なんでしょ? もっと落ち着きを持ちなさい。春奈に言われたことをいちいち間に受けて、同じレベルで言い争いをしないっ!


 わかった?」


「「はーい……」」


 お母さんにそうぴしゃりと言われ、一瞬のうちに静かになったボクたちだった。

 まぁ春奈は舌をペロッと出してにやけた顔してたから、絶対反省なんてしてないだろうけどさ。


 ちぇ。なんかボク、こんなのと一緒に怒られてさ、割りに合わない気がする~、ふんだ。



* * * * * *



 出発時、色々あったとはいえ無事家を出たボクたちが向かった先は駅前のショッピング街。

 ここに来るのもすっごく久しぶりで、ボクはもうすっごくわくわくしてきた。とは言え、別にどこに行きたいってわけでもないんだけど……なんか、お買い物行くのって見て回るだけでもすっごく楽しいよね。

 まぁ今回は行先は決まってて、お母さんが懇意にしてるお洋服屋さんに行くみたいで、街に近づくにつれて、楽しみなんだけど……なんかちょっとドキドキしてきてた。


「蒼空ったら、随分静かになっちゃって。どうしたの?」


 早々にショッピング街の駐車場に入りクルマを停めるところを探しながら、お母さんがボクに話しかけてきた。


「お母さん、お姉ちゃんきっと初めて行くとこだから緊張してきちゃったんだよ。ふふっ、かーわいっ」


 春奈がさっきのことなんて無かったかのように、相変わらずの調子でお母さんに言う。ボクはむっとした表情で春奈をにらむ。


「あらあら、そうなの蒼空? 大丈夫、お母さんのなじみの店だし、店長さんもすっごく気さくで優しい人よ、安心なさい。でも……、だからといってお店ではしゃいだりしちゃダメよ。もちろん春奈もね。わかった? ん?」


 お母さんがそう言ってやさしく説明してくれたけど、そんなこと言われたらなんかかえって緊張しちゃう。


「わ、わかった。うん、だいじょーぶ、ボク騒いだり、はしゃいだりなんかしないもん。いい子にしてる」


 ボクはきりっとした表情を作ってお母さんの方を見つめる。そんなボクを春奈はにやけ顔で見てるけど、さっきのことがまだ多少効いてるのか今度は口を挟んでこなかった。


「そう。期待してるわね」


 お母さんはちょっと笑いを含んだ声でそう答えた後は、駐車スペースを見つけて運転に集中しだしたのかお話は自然とお終いになった。


 はぁ、やっぱちょと緊張しちゃう……、でもちーちゃんの結婚式に出るためだもん、がんばろ!



* * * * * *



「さぁここよ、2人とも早くいらっしゃい」


 先を歩いていたお母さんが振り向いてボクたちに言う。


 ここはショッピング街でもファッション関係のお店がずらりと軒を並べているエリアで、そのエリアのなかでもけっこう外れの方にあるお店だった。ここに歩いてくるまでボクの足で軽く15分以上はかかってて、それに加え、道行く人、すれ違う人たちに好奇の目にさらされ、勝手に写メとか撮る人なんかもいたりして……、すでにボクはお疲れモードに入ってきてる。そんなことから、普段ならきっとボクはここまで連れて来てもらえないに違いなかった。

 でもさすがに今日は披露宴で着るお洋服。っていうか、ど、ドレス……を買わなきゃいけないからボクが居ないことにはサイズとかも合わせられない。普段着ならきっとお留守番させられてただろうけど……、こればっかりはお母さんもボクに実際採寸とか試着とかさせたかったみたいで、なんとか連れて来てもらえたみたい。


 お店はビルの中とはいえきっちり壁で仕切られてて、その壁には大きなショーウインドウがはまってる。その中にはきれーなドレス着たマネキンやぴしっとしたスーツ着たマネキンとか、いろんなマネキンが様々なポーズして並んでる。そんなショーウインドウに挟まれるようにガラス張りの自動ドアがあって、お母さんはそこでちょっと遅れて歩いて来てるボクたちが来るのを待ってた。


「お待たせお母さん。お姉ちゃん、ちょっと疲れてきちゃったみたいでさ。

 で、ここなの? お母さんのよく来るお店って。な、なんかすっごく入りずらそうなお店なんだけど……」


 ボクの方をちらっと見ながらお母さんに話しかける春奈。むぅ、ホントのことだけに反論できない。けど、春奈の意見には賛成。いかにも高級そうな雰囲気のお店で、学生なんかとても入ってけそうな雰囲気じゃない……。


「ふふっ、ちょっと子供の2人には敷居が高く見えるかしら? でも大丈夫、さっきも言ったと思うけど店長さんはすごく気さくで、やさしい方よ。ほら、そんなところで立ち止まってないで早くいらっしゃい」


「「はーい」」


 揃って返事したボクらは軽く見つめ合ってから、あきらめてお母さんの元へと足を進めた。


 店内に入ると外の騒がしさがウソのように静かで、変わりに気持ちが落ち着きそうな、雰囲気のいい軽音楽がかすかな音量で流れてた。ボクはお母さんにまとわりつくくらいの距離で、片手はしっかりお母さんのスーツを掴みながら、恐る恐ると言った感じで歩いてる。春奈はすでに慣れたのか早速キョロキョロと周囲の様子を窺ってて、今にも離れて見に行ってしまいそうな勢いだ。ちぇ、ほんと図太い神経してるんだから、こいつ。


「いらっしゃいませ。……あら、柚月様じゃありませんか。それにまぁ……なんとも、かわいらしいお連れ様もご一緒のようで……。

 今日は何をお求めになりますか?」


 はわっ、店員の人が声かけてきた!

 なんかお母さんと親しげにお話してる。なじみのお店っていうのはほんとみたいだ。あの人が店長さんなのかな? うう、ちらちらボクの方見て来る……、は、恥ずかしい。


「お久しぶりね、鈴村さん。

 ふふっ、今日はこの娘たちにパーティー用のドレスを見立ててもらおうと思って、お邪魔させてもらったのよ。来月なんだけど、私の姪っ子が結婚するものだから……」


 お母さんと鈴村さんって呼ばれてたお店の人が楽しそうに会話しだした。ボクと春奈は手持無沙汰になり、店の雰囲気にも慣れて来たボクも、春奈みたいに店の中を見る余裕が出て来た。まぁボクの目じゃしっかり見れるわけじゃないから、だいたいの雰囲気を感じれるだけなんだけど。

 お店の中はけっこう広くって、女性専門店なのか中は全部女の人のお洋服ばかりが置いてあるみたいで、きっちり下着のコーナーとかまである。うん、男の人が居ないんなら安心出来ていいかも。


「ほらお姉ちゃん、なんか高そうな服いっぱい並んでるよ。あっちにはお母さんがお仕事で着てそうなスーツとかもいっぱいあるし! なるほど、いつもここで買ってたのか。あ、あそこなんてすっごいかっこいいジャケットとか並んでるっ! いいなぁ」


 春奈がなんか目をキラキラさせながらそんなことを言う。ボクも釣られて言われたとこを見る。でも、まぁ、ボクはそんなのよくわかんないし……、買ってもらったお洋服で十分満足してるし。つうか春奈だって普段いっぱい買ってもらってるだろうにさ。ほんと女の子って欲張りだ。

 それよりも、何より、放課後は部活の陸上三昧、朝練もしてるし、休みの日だってボクそっちのけで部活行くこと多いし。家でもジャージとかTシャツ、短パン姿でさ、一体いつおしゃれとかするの? って言いたい! 突っ込みたい!


 そんなこと考えてたら……、


「まぁ、なんてかわいらしいお嬢さんたちでしょう、前々から伺ってた通りですわね。……それにお2人、ほんとになんとも対照的なご様子で、ふふっ、柚月様もさぞや、かわいがられてらっしゃるんでしょうね?」


 ちょっと離れたとこで話してたお母さんたちがいつの間にか近づいてきて、目の前でまたお話を始めちゃった。


「ふふっ、そうね。確かにそうなんだけど……この2人ったらいつもケンカばかりで……。苦労させられてるわ」

「あらあら、それは大変。でも片や活発そうで健康的なお嬢さん、片やお人形さんのようなお嬢さん、どちらも可愛らしくって……、柚月様がうらやましいですわ」


 ボクや春奈をしっかり見ながらそんなことを言う鈴村さん。な、なんかすっごく居づらいんだけど。


「蒼空ちゃん……かな、そのベレー帽、小顔なお嬢様にはすごく似合ってますね。耳前から横髪を出しているのもとてもキュートだし、セーラー襟のシャツも清楚な女の子って感じで……すごくかわいらしくて素敵かと」


 やたら褒めてくれながら更にボクのほうに近づいてくる。なんかそんなに言われるとこそばゆい~。


「では、お嬢様。まずは採寸から始めましょう!」


 鈴村さんがにこやかな表情でついに目の前まで来て、そっとボクの両肩に手を乗せ、そのままカラダをくるっと回されちゃう。で、肩に置かれた手でぐいぐいとある所へと押し進められてく。


 進んだ先、目の前にあるのはどう見ても試着室。


「お、お母さんっ?」


 思わずお母さんの方を見つめるボク。

 そんなボクにお母さんは言う。


「蒼空、観念してしっかり測ってもらいなさい。

 それと春奈。あなたもドレス作るんだから同じよ。蒼空にちょっかいばかりかけてないで、あなたも隣で測ってもらいなさい、わかった?」


 ボクに注意したのに続けて、それをにやけて見てた春奈にもお母さんのきびしい一言が飛ぶ。あは、いい気味。

 そしてボクらの返事といえば――、


「「はーい」」


 今日何度目かの2人そろってのお返事で決まりだった。

 近くにいた他の店員さんにくすくす笑われちゃった……、やん、もう恥ずかしい!


 観念して試着室に鈴村さんと入ったと思ったら、あっという間に下着姿にされちゃったし。まぁこうなること見越して、ブラとパンツ、それにキャミもちゃんとおろし立てのきれーなやつ、付けて来たから大丈夫なはずだけど……。

 春奈も隣で別の店員さんに測ってもらうみたいでゴソゴソ音がしてる。2人でこんなことするのって、初めてだ。えへっ、なんか不思議な感じ……。男の子のままだったら、高校にもなってこんなことなんて絶対なかったはずだし。


「ごめんなさいね、ここまで来るのでも相当疲れちゃってるでしょうけど、もう少しだけ我慢してくださいね。はい、両腕を少し上げてもらえるかな?」


「ふぇ? あ、はいっ」


 いっけない、よそごと考えるのやめっ。

 もうあきらめきったボクは、鈴村さんの言葉にしたがってちゃっちゃと測定してもらうことにする。

 お母さんに色々聞かされてるのか、ボクの白い髪や赤い目、青白く痩せたカラダを見ても特に何のリアクションをすることもなく……、やさしく気遣いしてくれながら採寸を進めてくれた。

 それにしてもやたら細かい採寸で、ここまで細かく測ってもらったのは初めてだった。胸のさきっちょの間まで測るなんて、いくら女同士……とはいえ、恥ずかしすぎっ。


 採寸が無事? 済んだら今度は試着が待ってる。

 お母さんはボクらが採寸をしてる間にも候補を色々選んでたみたいで、有無を言う暇もなく……、再び試着室に放り込まれちゃった。


「蒼空ちゃんは髪はとてもきれいな白だし、肌も透き通るかのように白いからどんな色でも似合いそうね。ただ白色は花嫁さんの色だからそれ以外になっちゃうけど……、参考までにどんな色がお好みかしら?」


 鈴村さんが好みの色とか聞いてくれるけど……、正直あんまりこれはという色なんてない。でもまぁ、しいていえば……、


「青っぽい色が、その、好き……かも」


 周りはよくピンクとか、いかにもかわいい系の色をすすめてくるけど、ボク的にはもうちょっと目立たない色がいい……と思う。青系って落ち着くから好き……。


「うーん、青系ねぇ。鮮やかな青とかはないけど……、ネイビーやラベンダー系の色ならあるかなぁ。ネイビーだとちょっと蒼空ちゃんには重いかしら? ならボレロを羽織ってその色を明るい系の色で……」


 なんか鈴村さん、ボクを見ながらブツブツ言い出しちゃった。


 はぁ、かわいいお洋服着せてもらうのはいいけど、こういうのは苦手。

 早く終わらないかなぁ……。


 ボクは人に面倒かけてるにもかかわらず、お気楽にそんなこと考えながら、言われるがままにいろんなドレスを着つけられ――、


 春奈の分もあったとはいえ……、結局終わったのは入店後2時間以上たったお昼前。

 ボクのお腹はきゅーきゅー文句を垂れちゃってて、恥ずかしいったらなかった。


 でも……、これでちーちゃんの結婚式に向けて準備はバッチリ……なのかな?

 人前式って言ってたっけ? どんな式なのかよくわかんないけど……。

 

 ま、いいや。

 

 あーあ、ちーちゃんのきれーな姿見るの楽しみだなぁ。

 横に余計な男がいるのがちょっと……あれだけど。



 でも、今は――。


 とりあえず、お腹減った。


 ごはん、ごはん~!



読んでいただきありがとうございます。


サブタイトル、難しい……。

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