表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
1章
11/124

ep10.来訪者

※話数を修正しました。

 今日はお客さまが来るってことで、お母さんがボクの "おめかし" をするって言い出した。


 ここは病院なんだし、ボクは患者なんだし、患者服のままでいいじゃないって言っても聞いてくれない。

 

 お母さんと春奈は、ずいぶんとその人のお世話になったみたい(ボク自身もお世話になってるらしい……、ボクは当然知らないけど)で、失礼なカッコでは会わせられないって……、ボクの意見は全無視の構えだ。


 春奈もモチロンお母さんの味方だから、ボクに勝ち目なんてあろうはずもなく……。


 ボクは、生まれて初めて……、す、スカート! を履くこととなった。

 元男の子だから、当たり前といえば当たり前なんだけど、うぅ、複雑だ。


 だいたい会うにしても、どうせボクは車イスに乗ってるんだから、わざわざスカート履く意味あるのかなぁ? と、まだブツクサ言ってると、


「お姉ちゃん、いいかげん覚悟きめたら?」

 春奈が、にやけ顔で言ってくる。


「お姉ちゃんは、すっごくかわいい女の子なんだからキレイなお洋服着ないと、もったいないよ?」


「それに今日来てくれるお客さまも、お姉ちゃんのかわいい姿見たらきっと喜ぶよ!」

 春奈め、お客さまをたてに、だめ押ししてきた。


「じゃ、今日はこれを着てもらうからね~♪」

 そう言って、春奈はボクに着せるために買ってきたんだろう、洋服の入った包みを見せる。


「昨日、お母さんと二人でお姉ちゃんのために選んできたんだからね? きっとすごく似合うよ!」


「かわいさ100倍かも?」


 ついにそんなことまで言い出す春奈。 更に……、


「ね~?」

 と言いながら、春奈がお母さんに振る。


「そうよねぇ~、きっと喜んでくれるでしょうね」

「それにお母さんも、かわいく着飾った蒼空、見てみたいしね」


「………………」



* * * * * *



 ボクは、お母さんと香織さんに支えてもらいながら春奈の着せ替え人形と化していた。


 みんなすごく楽しそう。

 かわいい、かわいいって言いながら、ボクはなすがままにされてる。

 そんな着せ替え人形だったボクの前に、春奈がある物を立てかけた。


「はい、お姉ちゃん! これ見て」


 それは、全身を見るための姿見だった。

 こんなものいったいどこから持ってきたんだろ? 病院の備品なのかなぁ? と、どうでもいいことを考えつつも鏡を、恐る恐る見てみる。


 鏡の中には、上目遣いでこちらを伺う、真っ白な髪に透き通るような白い肌、それにウサギのような赤い目をした、触れれば壊れちゃうんじゃないかって思える、かわいらしい女の子が写っていた。


 女の子になってからの……、全身の姿をこうやって見るのは初めてじゃないかな?

 

 ボクは写ってる自分の姿をじっと見つめた。

 

 春奈とお母さんが買ってきてくれたのは、胸元にリボンの付いた淡いピンク色をしたワンピースだった。 それに、七部袖のカーディガンを羽織らせてくれて、足元にはレースのソックス。

(ついでに下着まで買ってきてくれてあったのはどうかと思うけど……、しっかり履かされたし)


 まだじーっと見つめているボク。

 じれてきた春奈が問いかけてくる。


「お姉ちゃん、どう? 気に入ってくれた?」


 はっきり言って……、我ながらかわいいって思ってしまった。

 自分の姿なのに。


「う、うん……、まぁ、い、いいんじゃないか……なぁ?」

 ボクは、顔を……たぶん赤くして、うつむきながら答えた。


「ふ~ん?」

 そう言いながら、春奈はボクの顔を覗き込んで見透かすように笑うと、


「お姉ちゃん? 思ってることは正直にいった方がいいよぉ? すっごく気に入りましたって顔してるもん? ねぇ、お母さん?」


「春奈、お姉ちゃんをあんまりからかっちゃダメよ。 まだ女の子の姿になれてないんだから……ね?」


 やっぱりお母さんだ……、春奈とは違うよ。 そう思い、ボクがうれしそうに顔を上げると……。


「でも蒼空。 ほんとにすごくかわいいわ! 似合ってる。 もう食べちゃいたいくらかわいいわ」

 やっぱり、お母さんも一緒でした。 更に、


「ほんと、すっごくかわいい! せっかくかわいいのに、ずっと患者服ばっかりで、かわいそうだなぁ って思ってたんだけど、こんなに可愛い服着せてもらっちゃって、よかったね? 蒼空ちゃん」

 香織さんまでそんなことを? ボクに味方はいないみたい……。


 ボクは、(たぶん)耳までまっ赤になったままうつむいて、みんなが飽きるのをじーっと待つしかなかった。



やれやれだよ。



* * * * * *



 お客さまを迎えるために、お母さんは談話室を借りることにしたみたい。


 談話室はいくつかあるものの、僕たちが貸し切ってしまって、ちょっと他の患者さんに悪い気がした。

(まだ他の患者さんとお話ししたことはないけど……)


 ボク自身の体調は、元々病気ってわけじゃなかったから、特に問題はない。


 とは言ってもいろんな病気に感染しやすいから、うかつに出歩いたりしちゃダメっていわれてるけど――、それでもずいぶん体力も付いてきたから、そのうち外に出してもらえるんじゃないか? と期待してる。


 携帯をしてたらしいお母さんが、病室に入ってきて言う。

「蒼空、お客さまがもう少しで病院に着くみたいだから、談話室に行きましょうね」

「は~い」

 ボクが答えると、春奈がボクの車イスに寄ってくる。

 いつお客さまが来てもいいよう、車イスに座って待機してたのだ。


「春奈、それじゃ談話室までよろしくね!」

「うん、まかせて!」


 そのままボクと春奈は、談話室に向かい、お母さんはお客さまを出迎えに1Fのロビーへ向かった。

(ちなみに、病室は3F、談話室は2Fにあるのだ)


 看護師の香織さんも、今日のお客さまとは面識があるらしく同席するみたい。 先に談話室の準備があるから……と、出ていってるので今はもういない。


 今さらながらどんな人なんだろ? 今から会うお客さまって。 みんな、どんな人なのか聞いても教えてくれないし。


 ちょっと不安になってきた――。

 そんな気持ちが態度に出ていたのか、春奈が話しかけてきた。


「お姉ちゃん、心配しなくていいよ? 今から会う人は、すっごくかっこよくて、とってもいい人なんだから!」

 春奈は、そう言って車イスを押す力を強めた。



* * * * * *



 談話室にボクと春奈、それに香織さんがそろって間もなく、お母さんが入ってきた。

 お母さんの後ろから、もう一人……お客さまだろう、も入ってきた。


 ボクは、恐る恐るその人を見ようと、不安でうつむいていた顔を上げようとしていた矢先……。


「きゃ~! 蒼空ちゃんね~?」


「か、かわいい~!」




 そう言うなり、そのお客さまは……ボクに飛びつくように抱きついてきた。

 

 ボクはしばらくあっけにとられ、呆然としたまま抱きつかれていたのだった……。




ファッション……わかりません。

適当ですのですみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ