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心のゆくえ  作者: ゆきのいつき
3章
100/124

ep94.クリスマスイブのできごと

1/21 一部不適切な表現がありましたので修正しました。

 クリスマスイブ。

 今日は春奈からお出かけするって前フリのあった日だ。結局なにするか詳しいことは教えてくれなかったけど……今日という日を考えればクリスマスパーティーだってことくらいしか考えられないよね。


 ボクは気になって眠れないってわけでもなかったけど、休みの日にしてはめずらしく春奈が起しに来る前に目が覚めた。

 窓にかかる厚いカーテンを少し開け、日差しの眩しさに目を細めながらもお外を見てみると、キレイな青空が広がっていて、残念ながらホワイトクリスマスってことにはなりそうもなかった。


 体調はここんとこ微熱が出ることも無くいい感じ……といいたいとこだけど、ちょっと足がむくんできちゃってるのが気になるところ。ちょっとがんばって歩く練習とかしすぎちゃったかな? それともお薬のせいなのかな? 月曜日はまた病院だから、先生に聞いてみよ……。

 そういや瑛太、元気にしてるかな? 体の方は順調に回復していってるのかなぁ。勉強見るって話もあったし……、またお話しなきゃ。


『コンコン』


 んと、ノック? えへっ、きっと春奈だ。


「お姉ちゃん、起きてる? 入るよ~?」

「ん~、起きてる~、入っていいよ~」

「おっ、りょーか~い!」


 ボクはそう返事し、春奈はそれを確認すると元気良くドアを開けて入ってきた。


「おっはよ~、お姉ちゃん。ちゃんと起きてるじゃん? 優秀優秀! んふっ、今日は夕方にお出かけだかんね? 体調、だいじょ~ぶ?」


 入って来て早々、そんなこと言う春奈。ったく、心配してくれるのはいいけど、ボクを何だと思ってるんだろ?


「もう春奈ったら、ボク、そんなお寝坊さんじゃないもん、失礼しちゃう。……まぁ、とりあえずそれほど体調は悪くないよ? それより、いいかげん今日のお出かけの場所とか、何するのか教えてよ? ……きっとクリスマスパーティーなんでしょ?」


 ボクはとりあえず思ってたことを聞いてみる。でもパーティーって、いったって……ボク、退院してガッコにも登校したとはいえ……まだまだお外を自由に出ていいって感じじゃない。そう簡単にお母さんが、遊びに出させてくれるとは思えないんだけど……そのお母さんの許可も得てるっていうし。


 いったいどこでやるんだろ?


「うっふふ~、知りたい? ん~……まあ、そう隠すことでもないもんね。

 そ、今日はクリスマスパーティーするから。メンバーは、お姉ちゃんも想像出来るメンバーでほぼ正解。あと、どこでやるかはぁ……ま、お楽しみってことで。あっ、あんまし過度な期待はしないでよね~? お姉ちゃんも、ある意味良く知ってるとこだから」


 やっぱ、そっか。

 それにしてもボクもよく知ってるとこ? いったいどこだろ。カラオケとか、そんな人が大勢来るとことか……お母さんがまだ許可してくれないだろうし……。


「ちぇ、もったいぶっちゃってさ。……でも、ありがと春奈。今日はほんと楽しみだよ。あっ! じゃ、それならボクだって何か用意しとかなきゃいけなかったんじゃ?」


 プレゼント交換とか……。


 ボク、そんなの何にも用意してない……。まぁ、まだお外に出してもらえないから、どっちにしてもそんな買い物も出来ないけど。


「うん、だよね。だからお姉ちゃんには悪いけど、私とお母さんでその辺は勝手に用意させてもらっちゃった。あとで渡すからメッセージカードにコメント書いといてね」

「はう、そ、そうなんだ。わかった……」


 うう……。用意済みですか、そうですか。……はぁ、なんかちょっと残念。プレゼント選び、したかったなぁ。


「お姉ちゃん、ごめんね。気持ちはわかるけど……。でも、いかにもお姉ちゃんっての選んでおいたから。ね?」


 春奈はボクがちょっとしょげちゃったのを気にしてくれたのか、そんなことを言ってくれる。


「う、うん。まぁいいよ、仕方ないし……」

「そ、そう? それじゃ、朝ごはん食べよっ? そもそもごはんって言いに来たんだったよ」


 春奈は微妙な空気を振り払うかのように、今までの話しをさっと切り上げ、そう言った。


「うん。ボク、もうお腹ペコペコ。ごはんごはん~!」


 ボクもあっさりそれに乗っかり、春奈に手をとられながら部屋を後にし、お母さんの作ってくれるおいしい朝ごはんを食べに食堂へと向った。



* * * * * *



「えっ、ここ? ほんとに? でもここって……」


 まさかこんなとこでパーティーやるだなんて……。


 ボクは春奈にいいようにいじられ、出かける準備を整えると、ちーちゃんのクルマに乗せてもらい、横には春奈が乗り家を出たわけなんだけど……


「いいかげんどこに行くのか教えて?」って言うボクの言葉にも、「着けばわかるから」っていう言葉を繰り返すばかりで、ぜんぜん行き先を教えてくれなかった。

 ったく。

 そんなの隠したって意味ないのにさ。どうせ行けばわかるのに……。

 ほんともったいぶっちゃって、いじわるなんだから。


 でも……うん、確かに知ってるとこだった。


 夕暮れの迫る空の下、クルマから下ろされたボクの目の前にあるのは見覚えのあるオフィスビル……。

 っていうか、ぶっちゃけお母さんの会社が入ってるビルだった。

 そのビルは駅前通りにある10階建てのそこそこおっきいビルで、窓の面が多めの、なかなかカッコよくて目立つ建物だ。そこの3階フロアにお母さんの会社は入ってる。外からは何度か見たことあるけど入ったことはない。


「えへへっ、驚いた? 今日はお母さんの会社の会議室借りてやるんだよ~!」


 春奈が、クルマから出たボクの手を取りながら、こともなげにそんなことを言う。

 ちなみに車イスは持ってこなかった。歩く距離もほとんどないし、エレベーターもあるから大丈夫っともいわれてたし……それに歩く練習にもなるしね。


「うん……驚いた。まさかお母さんの会社でやるだなんて……そんなことして怒られないの?」


 ボクはもっともな心配を春奈に告げる。いくらガッコが休みでクリスマスイブだって言っても……今日は平日。お母さんの会社だってお仕事あるのに……夕方からとはいえ、迷惑になるんじゃ?


「あぁ、その辺は大丈夫だから。そもそもお母さんの目の届く範囲でならっ、てことでお姉ちゃんの外出やパーティー許してもらったんだもん。それに会議室はある程度防音されてるし、今日は会社も定時で終わらせるから大丈夫ってことで、お母さん自身の勧めもあってここになったんだもん」

 

 春奈は自信たっぷりにそう言う。会社の中には簡単なキッチンもあるし、トイレとかも当然備えてるしで、ちょうどいいみたい。


「ふーん、そうなんだ? じゃあいいけど……」

「そうそう、なんの問題もなし!」


 ボクと春奈はそんな会話を交わしつつ、ちーちゃんとはクルマを駐車場へ置きに行くってことでいったんお別れし……、ビルの中、お母さんの会社がある3階フロア目指して杖を突きながら入っていった。


 エレベーターに乗り込むときには、そのフロアにいたスーツ姿の人たちにちょっと不思議そうな、驚いたような顔をされちゃって恥ずかしかった。ボクはこんな白い髪だし、杖ついてるし……それにちょっと……このカッコも恥ずかしいし。

 だからエレベーターのドアが開くと、たどたどしいながらも逃げるようにして中に入っちゃった。

 そんなボクを春奈はおかしそうに見てて、なんか悔しくなった。

 ちぇ、こんなカッコさせたのは春奈なのにさ……なんか理不尽だ。まぁでも、かわいくってボク自身、いいって思ったからあまり強く文句もいえないのが悔し過ぎ~!


 そんなことを考えつつ、春奈と軽くお話してるとあっという間に3階に到着。

 エレベーターから降りると、全体に明るい灰色の、何もない殺風景な廊下。所々の角に観葉植物が置いてあるくらいだ。

 春奈が、初めて来る場所にキョロキョロ周りを見回してるボクの手を再び取ると、


「ほら、こっちだから。いこっ」


 そう言いながら急かすように手を引く春奈。


「あん、もう、わかったからそんなに引っ張らないでよぉ、せっかちなんだからぁ!」

「えへ、ごめん。でも、もうすぐそこだから」


 そんなやり取りをしながらも静か過ぎる廊下を少しだけ歩き、ミーティングルームって書いてあるドアの前に到着。ちょっと緊張しちゃうボクを尻目に、春奈は何の気負いもなくさっさとドアを開ける。


「おっまたせ~! 主役、連れてきたよ~!」


 春奈がおっな声でそう叫ぶと、


『パンッ、パパ~ン!』

「「「「「メリークリスマ~ス!」」」」」


 入った部屋の中に響く、春奈の声なんか目じゃないおっきな音。

 そう、パーティーじゃおなじみのクラッカーの音、それに部屋にいた人たちのかけ声だった。

 ボクはそのおっきな音に思わずビクッとし、耳元に手をやりながらカラダをすくめてしまった。ううっ、たかだかクラッカーの音にひるんじゃうなんて……恥ずかしい。


「メリークリスマス! 蒼空ちゃん、待ってたよ~! 春奈、ほら、こっちこっち、蒼空ちゃん連れてきてよ!」


 そう声をかけてくれたのは……優衣ちゃんだ。


「オーケー! みんな待たせてごめんね~、思ったより準備に時間かかっちゃってさ。だれかさんのおかげで」


 ボクはその春奈の一言にむっとし、ちょっと春奈を見て睨んだやったけど……今はそれより部屋に居るみんなの方が気になってしまう。

 席のほうへ杖をつきながらも向い、そしてメンバーを確認しようと見渡すボク。

 十畳ほどの広さのお部屋に大きめの長机が2個、縦に並べてあって、そこに座ってるみんながボクたちの方を笑顔を浮かべながら見てる。

 ちなみに壁際には余ったイスとか長机が置かれてて、なんかいろんな荷物が乗せてあった。そして部屋の奥の壁付近にけっこう大きめのクリスマスツリーが置かれ、飾りつけられたイルミネーションがきらびやかに明滅を繰り返し、華やかな雰囲気を作り出していた。


 メンバーは春奈がいった通りボクの見知った人たちばかりだった。

 優衣ちゃんに亜由美ちゃん。もちろん男の子たちもいて、青山くん、高橋くん、それに山下くんといういつもの3人。

 あ、亜由美ちゃんが手を振ってくれた。ボクも思わず手を振り返しちゃった。

 っと、それから……

 

 あ~! 沙希ちゃんにエリちゃんまで!


 くすっ、優衣ちゃんったら……沙希ちゃんとは顔合わすといつも口ゲンカしてるのに……ちゃんとパーティーに呼んでるなんて。へへっ、見直しちゃった。

 あとは……、


「か、香織さん!」


 す、すっごい! さんざんお世話になった……看護師の香織さん。香織さんまで来てくれてたなんて……。


「は~い、蒼空ちゃん。今日は私なんかまで呼んでもらちゃったの。ふふっ、よろしくね」


 相変わらずの優しい笑顔でボクにそう声かけてくれた香織さん。うーん、香織さん。クリスマスイブの日にこんなとこ来てて良かったの? ボクはちょっと失礼なことを心に浮かべながら……香織さんに何度も頷き、そして優衣ちゃんの方を見る。

 ボクの視線に気付き、親指を立てながら手を差し出してくる優衣ちゃん。このパーティーは優衣ちゃん主導で春奈たちみんなが協力して計画したらしい。来る途中で春奈にそれだけは聞いてたとはいえ……ほんと優衣ちゃんにはアタマが下がる。

 あとは……ちーちゃんが来たらメンバーみんな揃うのかな? と、そう思ってたらドアが開きちーちゃんが入ってきた。それを見る優衣ちゃんと、その優衣ちゃんに頷くちーちゃん。


「それじゃ、とりあえず全員そろったとこで……クリスマスパーティーを始めたいと思いまーす! みんな、グラスに飲み物注いでね」


 優衣ちゃんの言葉に、一斉に用意してあったグラスを取り、お互いで飲み物を注ぎあうみんな。用意してあったのはシャンメリーっていうシャンパンみたいなノンアルコールの飲み物で、封を開けると「ポンッ」って音がするからいつ開けてもビックリしちゃうんだよね。

 ボクは春奈と隣り合って座り、もう一方にはちゃっかり沙希ちゃんが陣取ってる。エリちゃんはその沙希ちゃんの隣りだ。ちーちゃんは香織さんの隣りへと行き、大人の女の人同士で話が合いそうだ。

 青山くんの横に亜由美ちゃん、高橋くんの隣りに優衣ちゃんが座り、山下くんは男の子二人の間に挟まって座ってる。


「準備OK? それじゃ、とりあえず今日は蒼空ちゃんの退院祝いも兼ねたクリスマスパーティーなんで、みんなかわいい蒼空ちゃんと久しぶりの親睦をかねて、めいっぱい楽しんじゃってくださいね~! じゃ、メーリークリスマース!」


「「「「「メリークリスマース!」」」」」


 優衣ちゃんのかけ声でみんなも一斉にそう声を出し、差し上げたお互いのグラスを合わせれば涼しく高い音が部屋に響き、中身を空けると共にみんなして笑顔になり、そこからは一気におしゃべりのペースが上がる。


「蒼空ちゃん、そのお洋服めっちゃかわいいよ! まっ白な髪にその濃紺のワンピがすっごく映えるし、胸元のまっ赤な大きなリボンもとってもいいアクセントになってるし。裾がフレアになってるのもとってもかわいいよ!」

「うん、蒼空ちゃん……似合ってる」


 沙希ちゃんがエリちゃんと並んでボクのそばに立ち、2人してお洋服を褒めてくれる。なんかすっごく照れるんだけど……。


「そ、そうかなぁ? これ……ちょっと裾が短くって、太ももが見えちゃって……恥ずかしいんだけど……」


 ボクはワンピの裾を軽くつまみ上げ、沙希ちゃんたちにそう言った。

 そう、このワンピ。ちょっと丈が短めでミニスカートまでは行かないまでもかなり足が見えるデザインなのだ。

 足元はこれも濃紺のハイソックスを履いてるとはいえ……すっごく心許ない……。

 それにしてもスカートって、いつ履いてもなんか腰下がスースーしちゃって……なんとも不安になっちゃう。制服でも着てるとはいえ……ほんとこれにはなかなか慣れないよ。


「ふふっ、それくらいで恥ずかしがってちゃダメだよ。そんなのじゃまだミニスカートともいえないレベルだよ!」


 そう言って沙希ちゃんは自分のスカートを指差し、


「これくらいの履かなきゃ恥ずかしいだなんて言わせないんだからね?」


 そう言って腰に手をやると軽くその腰を振り、かわいらしくポーズを決める沙希ちゃん。

 そのスカートは確かに短く、ニーハイのソックスとスカートの隙間には微妙に素肌が覗いてる。それを見てるボクに、エリちゃんがそっとささやく。


「なんかあれ、絶対領域とか言うんだって沙希ちゃん言ってた。私には、その、ちょっと……よくわかんなかったけど」

「あはっ、そ、そうなんだ……」


 ボクはエリちゃんと顔を合わせ、2人して残念な子、沙希ちゃんを見つめるのだった。



 パーティーは優衣ちゃん進行で、どんどん進んでいく。

 カードゲーム「UNO」や「ジェンガ」で軽く盛り上げ、ビンゴゲームで更に盛り上げる。

 こういう時って男の子も女の子も関係なく騒げるから気楽でいいよね。ボクは男の子たちの上がりを阻止すべく、女の子同士で協力しジャマしてあげた。

 それにしてもカードや卓上のゲームならボクにだって問題なく出来るからいいよね。まぁ、ジェンガは目の悪いボクにはちょっと微妙で細かい、ちょっとした加減が難しいってとこもあったけど。それはそれで盛り上がったし……まぁいっか。(でもちょっと悔しい)


 出された料理は定番のチキン、それにポテトやハンバーガーにドーナツ。もちろん、今日のメイン、クリスマスケーキは外せない。いちごショート好きのボクが居るからか、そのケーキは生クリームの上にこれでもかってくらい苺が乗ったホールケーキで、真ん中にはチョコのプレートとかサンタさんで飾られたほんとにおいしそうなケーキなのだ。

 それを切り分けてみんなで食べたんだけど……なんかみんながボクに苺あげるって言ってボクのお皿においてくれるから、うれしいんだけど、もう食べきれないっていうか……まさにうれしい悲鳴をあげてしまった。



「蒼空ちゃん、ほんとよくがんばったね。病棟違ってほとんど会いにいけなかったけど……恵から蒼空ちゃんのがんばってる様子は色々聞いてたから……ほんと……うれしいわ」


 香織さんが優衣ちゃんの企画の隙間を縫って、ボクに話しかけてくれる。その表情はやさしい笑顔なんだけど、でも、目元はちょっと潤んでる。


「うん、ボクも香織さんと会えないのはすっごく残念だったよ。でも、恵さんもとっても良くしてくれたし、村井先生もやさしかったよ。石渡先生と違ってイジワルじゃないし」


 ボクは石渡先生の名前をだしてペロっと舌をだし、笑顔を見せた。


「まぁ、蒼空ちゃんったら。ふふっ、ほんとにもうっ、かわいいんだから~!」

「はわっ」


 香織さんにアタマを抱えるように抱きつかれてしまった。

 それを見た沙希ちゃんが興奮し、「私も~」とやってきたのは言うまでもないことだよね。そしてそれをちーちゃんやエリちゃんがは呆れて見てる。


 ほんと、やれやれだよ。


「ほらみんな、次の企画あるんだから、一旦席についてついて~!」


 優衣ちゃんが思い思いに盛り上がってた場を沈め、話始める。

 今度の企画はプレゼント交換だった。ちなみにボクのプレゼントとして春奈とお母さんが選んでくれてたのは絵本だった。小さなかわいい女の子が主人公。

 ううっ、なんかこれボクをイメージして買ってきたんだろーか? 確かにボクらしいっていうのかも知れないけど……これ、もし男の子が当たったとして、うれしいかな? なにげに疑問に思うけど、まぁボクがもらう物じゃないから……ま、いっか。


 交換はくじ引きで行なった。ボクの前にはキレイな包装をされた小さめの物体。うーん、なんだろ?


「みんなプレゼントは行き渡った~? じゃ、一斉に開けて見てみよ~!」


 優衣ちゃんがすっごくうれしそうにそう言い、自分も手元のプレゼントの包みを開けだしてる。

 さぁ、ボクのは一体なんだろな?


「わぁ、かわいい~!」

「うわっ、な、なんだこりゃ~!」

「へぇ、なかなかステキね」


 なんか色んな反応が聞こえてくる。

 ボクのはチョコレートの詰め合わせだった。えへへっ、ちょっぴり幸せな気分。


「ったく、高橋くん? これはいったい何なの?」

 

 亜由美ちゃんがちょっとテンションの低い声で高橋くんに問いただしてる。


「えっ、わかんねぇかな? オレのサイン入りボールなんだけど。それ持ってたら将来絶対プレミア付くの間違いないぜ? しかも投げればその速度がわかるってスグレモノだぜ? いいいだろ~」


 高橋くんのその答えにみんな一瞬呆気にとられ、その後、これもみんなで大笑い。


「智也。面白いけど……誰がそんなものもらって喜ぶわけ? ほんとあんた、考えなしね?」


 呆れ果てて固まってる亜由美ちゃんの変わりに優衣ちゃんが高橋くんに突っ込んでる。


「ええっ? オレのサインボール、そんなにいやかぁ? マジ、プレミア付くの間違いないのによぉ」

「はいはい、わかったから。でもそんなのはまず結果の一つでも出して、実績作ってから言ってもらえる?」


 などと軽い悶着はあったものの、おおむねプレゼント交換は無事終了した。

 あ、ボクの絵本はといえば、山下くんのところに渡った。うーん、なんか作為を感じるのはボクの心が素直じゃないからなんだろーか?

 ボクはそう考えながらも優衣ちゃん、そして春奈の顔を交互に見つめる。

 ボクの視線に気付くと目を泳がせる2人。――あ、あやしい。


 山下くんはといえばボクのプレゼントを見つつ、


「蒼空ちゃんだと思って大事にするね」


 などと、ボクに向ってちょっと歯の浮きそうな言葉を口にしたり……。

 はわっ、なんか山下くんの言葉がなにげに重かったり。なんなの? ちょっと前と、様子が違うような……。


 あーもう、まぁいっか。……とりあえず今日は楽しまなきゃ。


 

 その後もパーティー定番、王さまゲームをやったりサイコロゲームをやって悪のりに近い盛り上がりになっていった。

 

 はぁ、ボク、手の甲にキ、キスされちゃった。これも山下くんに。いくらゲームとはいえ……ボクの肌に人の唇が触れるだなんて……。しかもみんなが見てる中で。

 まあ、他に青山くんが高橋くんのホッペにキスってのもあったけど。これはこれでなんというか……あれだけど。


 もう、ほんと……恥ずかしい。

 

「蒼空ちゃん、お顔、まっ赤だよ」

「お姉ちゃん、照れちゃってかわいいよぉ」

「いやー、蒼空ちゃんを男になんてあげないんだから~」


 反応も色々あったけど……沙希ちゃん、それはそれでどうかと思う。

 そ、それにしても恥ずかしすぎだよ……。ボクは緊張で乾いたノドを癒すため、コーラを一気に飲み干し、そうすると当然の結果として、


 「けぷっ」


 やっぱ出てしまった。

 そしてそれにキッチリ反応する沙希ちゃん。


「やーん、蒼空ちゃん、ゲ○プもかわいい~!」


 再びボクに抱きつこうとする沙希ちゃん。そしてそれを止めようと羽交い絞めにするエリちゃん。


「あうっ、エリリン。何するの? 離してぇ~」


 ナイスだよ、エリちゃん。ボクはエリちゃんにありがとうの視線を送り、エリちゃんも優しく微笑みを返してくれた。

 それにしても沙希ちゃん、いっとき落ち着いてたのに、なんかまたスキンシップに激しさが出てきたような……。っていうか初めて会った頃に戻ったような。


 はぁ、もうアタマ痛いよ。

 とりあえず一連の騒ぎで、みんなの中で沙希ちゃんはイタイ子って認識で一致していったようではある。

 沙希ちゃん……もう少し自重しよ?



 とまぁ、それはともかく、そんなこんなで優衣ちゃん企画のクリスマスパーティーはなかなか盛況に進んでいき、無事お開きの時間を迎えることになってしまった。


「じゃ、最後にみんなから蒼空ちゃんにメッセージね」


 優衣ちゃんがそう言うとボク以外のみんなが一斉に席を立つ。

 驚くボクを尻目にみんなが言う。


「「「「「蒼空ちゃん、退院おめでとう!」」」」」


 最後の最後、いきなりのみんなからの言葉に、もうボクは一気に涙腺が緩んでしまった。


「ふぇ……み、みんな。そ、そんなそろって言うだなんて、ず、ずるいよぉ」


 もう、声まで震えてきちゃう。でも、一言お返し言わなきゃ。


「でも……あ、ありがとう」


 なんとかそう言い、そしてもう涙が止まらず大泣きしてしまうボク。

 そんなボクをみんな、なだめたり、冷やかしたり、背中をさすってくれたり。 



 ボクは今、とっても幸せな気分だった。




なんだかまとまりのないお話ですみません……

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