27 ファーストコミュニケーション
サイ「ほれ、まずはあったかいミルクでも飲みな。話はそっからだ」
政明「………………………」
政明(……いや飲めるわけねぇだろ)
毒とか自白剤とか、賞味期限が切れてるとか色々と怖い。
だが、俺は飲んだ。結構うまい。
政明「まずはありがとな。お前が助けてくれなけりゃ俺は死んでた。謝礼なら払うから口座番号を教えてくれ」
サイ「おいおい、ガキが勝手に話を進めてんじゃねえよ。それにアタシはガキから金は貰わねぇ主義だ。ンなことより用件は分かってんだろ。お前、今日1日アタシのことを尾行してたな」
まあ、やはりというかバレてたか。こっちが尾行初心者の素人ということもあるが、もっと根本的なところでサイの行動には怪しいところが多々あった。
まず、行先の順番。
普通、物見遊山をするなら荷物をいったん家に置くはずだ。なのにサイはわざわざ荷物を持ったままアウトレットでぶらついたりと矛盾があった。
それに買い物の内容量もそうだ。ひき肉1000グラムは一人用にしては多い。恐らく、他にも仲間がいてそいつが俺の存在を彼女に密告したのだ。
政明「ああ、確かに俺はお前を尾行してた。それに関しては謝る」
サイ「……なんだ、意外と素直だな。んじゃ、その調子でお前の名前と目的も教えな」
すでに店じまいなのか、サイは大分スーツから部屋着に着替る。
政明「俺の名前は【神村 政明】。で、俺はあんたを仲間に勧誘したくて尾行してた」
サイは特に驚いた様子もなく、口を開く。
サイ「そうか。で、誰に言われてきたんだ。国王様か? それとも軍の関係者か? どっちにしても答えはノーだ。アタシは誰にも縛られず自由に生きたいんでね」
【解析者】の称号を持っているからだろう。すでに何人もの奴らから勧誘を受けているようだ。
政明「いや、俺は自分の意志で来た。単刀直入に言おうか。サイ、お前俺と一緒にクラウンゲームを攻略しないか?」
サイ「無理だね。アタシはクラウンゲームにそこまで関心はない。降りかかる火の粉は払うが、自分からファイアすることはない。あと、敬語使いな」
俺は、周囲にホルダーがいないことを確認し【裏切者】の能力を解除した。この時、サイは初めて驚いた顔をする。
政明「これが俺の能力。自分と触れてるやつをホルダーの能力から守る。名前は【裏切者】。多分、この世でそれを知ってるのは俺とアンタくらいだ」
サイ「…………これが、お前なりの誠意の見せ方ってわけかい」
しばし考え込んだ後に、再びサイは口を開く。
サイ「なんでアタシなんだ? 言っちゃなんだが、私は戦闘は苦手だ。戦いの観点で言や、間違いなくお荷物。それに今日会ったばっかだろ」
政明「……んなの簡単だ。俺は、お前がいい奴だと確信してる。攻略するなら、お前との方がいい」
今日、尾行をしていた俺をサイは助けた。
しっかりと追っていた俺だから分かる。あの距離から俺を無傷で助けるには危険を察知して躊躇なく動くしかない。いや、それでも間に合うかどうかギリギリだ。
しかも、この女は俺が尾行をしていたことを理解しながら助けてくれたのだ。
??「―――いいじゃないかサイ君。俺たちの仲間に加えてあげても」
後ろから突然声が響いた。思わず後ろを振り返る。
そこには、一人の青年がいた。年はサイと同じくらいだろう。一目でわかる、男らしい整った顔立ち。服の上からでも立派な筋肉を持っていることが分かり、目は全てを知っているかのように力づよい。
そしてなにより驚くべきは、目の前の男がホルダーだということだ。
先ほどまで、俺とサイ以外の反応はなかった。それなのに、こいつは突然現れた。
まるで、【裏切者】みたいに……。
政明(……なんだこいつ!? サイの仲間か? まさか、存在が確認されてない称号を持ってんのか……?)
「やあ、俺の名前は【天水 涼斗】。よろしく政明君」
金髪赤目のイケメンは俺の肩に触れながら挨拶をする。
サイ「おい、涼斗。勝手に出てくんなよ。アタシはまだ認めてねえ」
涼斗「なにを言ってるサイ君。俺がルールだろう。さあ、そんな距離を取らなくていい。というか、とっても無駄だから。座りたまえ」
涼斗は1番作りがよさそうな椅子に座ると、足を組みこちらを見すえる。
政明「……そのまえに、さっきどうやって現れたのか教えろよ」
涼斗「そうだね。まあ、君の能力も教えて貰ったことだしこちらも称号を開示すべきだ」
サイ「これだから傲岸不遜のイカレ野郎は……」
称号
あなたは【解析者】のホルダーになりました。
称号取得条件
宝具の価値を見出すこと。
特殊能力
直接見た宝具の状態や使い方を理解することができます。
専用宝具
桜色のベル
称号
あなたは【道化師】のホルダーになりました。
称号取得条件
常に人前で笑顔でいること。
特殊能力
自身が直接触れたホルダーの能力を劣化コピーします。
専用宝具
黄金の粘土
涼斗「実は君を助けたのはサイだけじゃない。歴史上最高の人類と名高い俺の助力あってこその救出劇さ」
俺は、サイからの連絡で尾行してるお前をさらに尾行していた。もちろん、50メートル以上離れて。素人の動きだったから、すぐに場所は分かったよ。
そして、トラックに轢かれそうになった時、本来ならサイの救出は間に合わないものだった。
だから、俺が50メートルを一瞬で移動してトラックを少し足止めして時間を稼いだ。で、君が数秒気絶してる間に触れてさっきまで身を潜めてた。
これが真相だ。
政明「……よくわからねえな。なんで涼斗は俺を助けた?」
涼斗「それがこの鑑定事務所のルールだからだ。子供――正確に言えば中学生までが危険にさらされたら全力で助けること。また、いかなる場合であっても危害は加えない。だろうサイ君?」
サイは大きく頷く。
サイ「子供は人類の宝だ。アタシたち大人とは違って未来がある」
涼斗「まあ、俺という存在が1番価値ある人間だが、その考えには概ね同意だ」
政明「……つまり、仲間になるには俺もそれを守れってか?」
別に俺は自分でチームを作りたかったわけじゃない。俺に合うチームがあるなら、そこに入るのも有効な手だ。目的はクラウンゲームの攻略なのだから。
涼斗「ああ。それを守るなら、お前を仲間に加えてやろう」
サイ「おい、勝手に決めてんじゃないよ」
涼斗「――ただ、俺から1つお前に頼みたいことがある。というか命令だな、拒否権はない。失敗したら除籍だ」
不敵な笑みをこぼし、涼斗はレリウス王城を指さす。
涼斗「命令はシンプルだ。あそこの城にいるタクト王子を仲間に誘え」
サイ「…………てんめぇ、まだ諦めてなかったのか」
サイはあきれたようにため息を吐くがそれは俺も同じだ。
あそこには、【聖女】である由美がいるのだ。
自分からあそこに送り込んだというのになぜ自分から会いに行かないといけないのか。
政明「なんで、王子を欲しがってんだ? お前には関わりねぇだろ。それに確かこの国の王子って【劣等者】の称号を持ってたはず……」
俺の称号と合わせて、まだ正確な情報が出ていない謎多き称号である。
涼斗「会えば分かるさ。俺はあの王子の生き様、嫌いじゃないからね」
こいつにここまで言わせる王子とはいったい何者なのか。少し興味が沸く。
サイ「はぁぁぁあ……。結局アタシが折れるのかよ。で、具体的にどうやって会いに行くんだ? 【裏切者】の能力があればホルダーにはバレねぇが、それでも城には厳重な警戒態勢が敷かれてる。ましてや、目当ては王子でホルダーだぞ? どうやって会うんだい?」
涼斗「こいつを使う」
涼斗は懐から1枚の手紙を取り出す。よく見ればよれよれで差出人も書かれていない。……というかその手紙は――
政明「それ俺のだろ。なんでお前が持ってんだ?」
涼斗「いやなに、君とサイ君の会話中、持ち物を検めさせてもらっただけさ。そしたら、思わぬ収穫物が出てきて驚いたよ」
それは、俺が村から出るときに母から受け取った差出人不明の手紙だった。あの時は子供のものだと嘘を吐いたが、正直俺も詳細は知らない。
政明(あとで見ようと思って、そのままポケットに入れっぱだったか)
サイ「何が書いてあんだ?」
涼斗「中身はおびただしいほどの愛のメッセージと王城への入城許可証だ。心当たりがあるんじゃないかい?」
俺は、咄嗟にメンヘラヤバヤバフェスティバルの女を思い出す。が、必死に頭を振る。
政明「……まあ、話は分かった。とりま行けばいいんだろ」




