お兄ちゃんの話し
レレレの正体を明らかにしましょう。
レレレは死役所長閻魔大王となった兄に抱きついて再会を喜んだ。するとレレレの身体に変化が起きてきた。平たい布のような身体に厚みが戻ってきて、容貌や姿形が10才くらいのインド人の少年のように変わってきた。兄である閻魔大王はこうなると分かっていたので、レレレがひとしきり騒いで落ち着いてから、ゆっくり話し始めた。
「さて、レムトよ、自分の名前すら忘れてしまうから、無私無欲無我の境地に楽に達してしまう覚者の弟よ。私はお前が羨ましい。私自身は、教団を維持するという欲望に囚われた為に、お前の行く天国より数段下の閻魔大王として転生することになった。さて、お前の転生をどのように審判しようかな。」
これを聞いてレレレは何も分からなかったので、目をパチクリさせていた。
「そうだったな、先ずはお前の記憶を取り戻す必要があるな」と言いながら、閻魔大王はレレレのおでこに手を当てた。すると、レレレのアガシックレコードが空中にディスプレイされた。
「見てごらん、およそ5億年前の三葉虫の時代からお前は転生を繰り返し、1億年前のイカの時代になってからはお前の目は地球神の海中監視カメラとなっている。地球神は地表を観察するための監視カメラとなる生物が必要だが、そのためには、その生物の脳内データをほぼ毎日吸い上げる必要がある。お前は地球神によって頭の中のデータを吸い上げられていたから、自分の名前すら思い出せないんだよ。」
それを聞いた途端にレレレの頭の中に全ての記憶が押し寄せてきた。それは通常の人間の脳であれば昏倒してしまうほどの膨大なデータ量であったが、死んで肉体の脳を取り外したレレレの霊魂にとって、数秒間目を閉じていただけであった。
レレレは全てを思い出した。自分の名前、自分にそっくりな兄のこと、母の顔、シッダルタ王子のこと、何も記憶出来ないと泣いていた時に、ホウキを手渡されて「チューリが浄化した道の上を歩きたい」と言われた時の喜び、全てが自分より優れているのに弟の自分を最後まで見守ってくれた優しい兄のこと、その後の数々の輪廻転生のこと、そして私達の創造主である地球神のこと。
それら全てを把握して、レレレは目を開けた。その目には瞳がなく眼球全体がコバルトやルビーや金色に色を変えながら輝いていた。身体全体が光輝いて、地面から数センチのところに浮いていた。無邪気な子どもの顔から静かに整った智慧に満ち足りた風貌に変わっていた。そしてその手には金色に輝く短いホウキが握られていた。
「ようこそ戻られた。16羅漢の一人、第3天の浄化の神、チューリ・パンダカ様。」そう言って、閻魔大王はレレレの前にひざまついた。
「にいちゃん、それやめてよね、って前の時も言ったよね。」
そして、仲の良い二人の兄弟は、クスクスとひとしきり笑いだした。
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