3-3【フィーナとウォルナック】
岬灯台の地下にある小部屋で俺達を迎えたのは二人の亜人族。
角を生やした男と、耳を垂らした少女。
今、その二人は俺達をそっちのけで討論していた……いや、これは討論ですらないな。少女が一方的にまくし立てているだけだ。
「だーかーらー! 人間族なんて信じられないって、言ってるでしょ!」
「……シロウの判断だ」
「何よシロウシロウって! あんなキツネ顔の判断なんて知らないわよ!」
「ぶふっ!」
いかん、思わず笑ってしまった。キツネ顔か……確かにそう言われたらそう見えるな。種族と相まってもうキツネにしか見えなくなってきたぞ……。
「なんか失礼な事考えてないかい勇者サマ……」
「いや、気にするな……」
俺に隠れているがティナも身体を震わせて必死に笑いを堪えている。魔王は……まだそれどころじゃ無さそうだな。
「それで、止めなくていいのかアレは」
「気が済むまで騒がせておけば良いさ。いつもの事だしな」
あんなに姦しいのによく今まで無事で居られたな。そう思いながら見ていると、ギロッと睨まれる。
「なによ、言いたいことがあるならハッキリ言いなさいよ!」
「……いや、別に何もないんだが」
「なにそれ……どうせアンタも一緒でしょ。ワタシ達を化け物か何か見たいな目で見るんでしょ! ちょっと耳と尻尾がはえてるだけで!」
人間族と似ているが、決定的に違う。それだけで亜人族は迫害されている。この子もそういう扱いを受けて来たんだろう。些細な理由で人は他人を攻撃出来るからな……。
「あのな、俺は――」
「アレウスさんはそんな人じゃありません!」
俺の言葉を遮るようにティナが少女に食って掛かる。
「アンタ何よ?」
「私はアレウスさんに助けて貰いました! 亜人族だと最初から分かったうえで! そんな心無い人達と一緒にしないでください!」
ティナの言葉を聞きながら俺は微妙に気まずくなっていた。まぁ、そのあたりはティナも知っているので今更だろう。
「どうだか! どうせアンタの身体が目的だったんでしょ! 男なんてみんなそうよ、いやらしい!」
いや、そんなつもりはなかったし、今でもないんだが……。
「そんなことありません! だってアレウスさん、いつまで経っても私に手を出してくれませんからっ!」
「ごほっ!」
勢いなのか釣られてか、ティナがとんでもない事を口にする。見ると全員の目がこっちに集中していた。
「アンタ……」
「…………」
「勇者サマ、それはちょっと酷いんじゃないか?」
「コヤツにそんな甲斐性は無いのじゃ……」
何で俺が悪者見たいな空気になってるんだ。さっきまで言い争いしてたんじゃないのか……。後、余裕無いのにこんな時だけ参加するな魔王。
「ふーん、そう……アンタ、名前は?」
「え……あ、ティナです。猫豹族のティナと言います」
「そう、ワタシはフィーナ。犬狼族のフィーナよ。こっちのデカイのがウォルナック。牛鬼族だったかしら」
「ウォルナックだ」
「え、え?」
「アンタ察しが悪いわね! よろしくって事よ!」
唐突過ぎてキョトンとしているティナに、手を差し出すフィーナ。どうしてあの流れで認めたのかよく分からんが、まぁ良いか。亜人族という事で心なしかティナも嬉しそうだ。
「あ、でも勘違いしないでよね! アンタの事はまだ認めて無いからね!」
こっちに向かってそんな事を言ってくるフィーナ。というか指を指すな指を。
「……あんな事言ってるんだが?」
「ただの照れ隠しだな。気にしなくて良いぞ」
「うるさいっ! 余計な事言わないでシロウ!」
何だかテンションについていけないが、いい加減先に進めるか? そろそろ本題に入りたいとこではあるんだが……」
「アホのお陰で紹介も軽く済んだようだし、そろそろ本題に入るとするか。っと、その前にこの子はどうするんだ?」
シロウが魔王を見ながら聞いてくる。見た目は幼女で今は二日酔いで死にそうな顔をしてるからな。置いて行くとでも思ったのか?
「ああ、もちろん一緒に行くさ。その内フィーナと同じくらい煩くなるから先に謝っておく」
フィーナがアホじゃないとか、呼び捨てにするなとか喚いているが無視してシロウと会話する。
「それで、ここにいるメンツで全員なのか?」
「ああ、細かい事を手伝ってくれる奴はいるが、アストラを目指すのはこれで全員だな」
「ついでにもう一ついいか? 秘密結社って何だ?」
ここに入った時、ウォルナックがそう言っていた気がする。こいつらは何かの組織なのか? 亜人族が組織化しているとか?
「そうよ、ワタシも聞きたかったのよ! 急にウォルナックが言い出したけど何なのよソレ!」
「ああ、それな……別に意味は無い」
ん?
「いや、ウォルナックにそう言わせたら面白いと思ってな、言ってもらっただけだ」
「なにそれ! 分けわかんない上につまらないわよ!」
「同感だな。何だ気が合うじゃないかフィーナ」
思わずフィーナに同意してしまう。勘ぐって損しただろう。
「うっさい! 呼び捨てで呼ぶなこのヘタレ!」
うーん……こう言う性格の子は気安く接すれば大丈夫かと思ったが、なかなか難しいな。というか、ヘタレか……。
「自業自得じゃな。ワシとティナでフラフラしとるのが悪い」
だから要所要所で変な突っ込みを入れてくるなよ魔王……。誰がフラフラしてるだ誰が。
「……アンタ、そんな小さい子まで手にかける気なの? 変態じゃない……」
フィーナが軽蔑したような目で俺を見てくる。こんな事なら魔王に魔法なんてかけるんじゃなかったか……恩を仇で返すような真似しやがって。
「……そんな訳無いだろう。ティナはともかく、コイツは頼まれてもゴメンだ」
「ほほう……泣いてワシに頼み込んだのは誰じゃったかの……」
「話を端折って捏造するな!」
なおもフィーナは俺に当たってくるが、もう相手にしない方が勝ちだな。というか、いつになったら本題に入れるんだ……。
「なぁ、いい加減本題に入って良いか?」
しびれを切らしたのかシロウが呆れ顔で言ってくる。
「すまん、話してくれ」
ここは強引に進めてもらおう。シロウが一つ咳払いをし、真剣な表情で話しだす。
「あー、知っての通りこの町の住人は今、海には近付かない。それはなんでだと思う?」
「さぁな……誰も彼も口を閉ざしていたからな。海に何かあるんだろうとは思ってるが……」
海は穏やかなのに、出たら死ぬと言っていた。となれば海自体に何かあるんだろう。
「そう、普段は何もないんだがな。アストラにもすぐに行けるし、海に出るのも自由だ。だが、今はそうじゃない。今の海にはな――」
もったいぶる様にシロウが溜めをつくる。
「――今の海には、人魚が出るんだよ」
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