2-6【魔王連行】
子供たちの賑やかな声が聞こえる。辛いことなど何も無いと言わんばかりに、今この瞬間を精一杯楽しんでいる。
その中に一人、見知った顔が、周りと同じくはしゃいでいる。生きた年月は遥かに上だろうに、そこに壁は無いのだと、違和感無く混ざっていた。
あれから、預けた小銭がすべて無くなるまでひたすら飯を食われた挙句、転がした仕返しだと、魔法で派手にふっ飛ばされた。
その時に思いついたのか、自分の後ろから魔法を放てば、望むように進めると、車輪付きの靴で試している時だった。
子供は目新しい物に興味が尽きない。制御が難しく転んでばかりの魔王を見て、物怖じせず寄ってきた。
魔王も魔王で、凄い凄いと純粋に褒められている内に調子に乗り、子供達にも同じ靴を創り、皆で競争などして遊んでいる。
俺? 俺は吹き飛ばされた後、仕置じゃと、木に縛り付けられたまま放置されている。流石のティナも苦笑いしていたが、助けてくれはしなかった。なんでも、もう少しリリィちゃんに優しくしてあげて下さいとのことだ。今はクロと一緒にスヤスヤと寝息を上げている。
「しかしアイツ……ほんとに子供と変わらんな……」
そろそろ遊び疲れた頃だろうか、子供達も休み休みになっている。俺は縛られている身体を魔法で解放し、魔王の下へ向かう事にした。
「おい、もう十分遊んだろ。そろそろお終いにしないか?」
最後まで一人元気な魔王が物足りないといった様子で近づいてくる。腐っても魔王、体力は子供の比ではないらしくピンピンしている。
「そうじゃの、そろそろ終いにするかの。しかし存外コレは楽しかったの。流石ワシじゃ」
「そりゃあ良かった。一緒に遊んでもらえて良かったな」
「たわけ、ワシがあやつらと遊んであげとるんじゃ」
どっちもどっちだろう。精神年齢が近いから遊べるんだよ……。
「さて、じゃあそろそろ行くか。ティナー! そろそろ行くぞー!」
木陰で寝ているティナが、慌てて飛び起き、寝癖でボサボサになった髪を整えながら、駆け寄ってくる。クロは気がつけば姿を消している。最近、身体を小さくしてティナの服の中に入るのがお気に入りのようだ。
「ごめんなさい、寝ちゃってました……」
「良いさ、魔王が飽きるまでどうせ動けなかっただろうしな」
魔王が子供達に別れを告げようと話している時だった。向こうから鎧兜を付けた兵士が近づいてくる。
数は五人。子供達は物々しい雰囲気に、少し怯えている。
「ココで妙な事をしていると言うのはお前たちか」
先頭にいた男が見下しながら話しかけてくる。
「妙な事? さて……ワシらは遊んでいただけじゃよ」
魔王の言葉など聞いていないように、男は子供の一人から靴を奪いとってマジマジと見ている。
「なんだこれは。車輪のついた靴……? この街で鍛治が出来るものは皆、城へ招集されたハズだが」
ギロリと子供を睨む男。この街に鍛治屋が無いのはそういう訳か。鍛冶師を集めて、あの剣を量産してるのか?
「それはワシが創ったものじゃ」
「ほう……貴様のような小娘が。良いだろう、貴様も城へ連れて行く。逆らうなら……わかるな?」
男は剣の鍔に手をかけ、暗に脅しをかけてくる。魔王には何の脅しにもならないだろうに、それを見て魔王は――
「うむ、ならば仕方ない。ここは大人しく城へ行くとしよう」
そんな事を口にするのであった。
「ちょっと待て! 何勝手に話を進めてる!」
思わず兵士に突っかかるが、俺の動きを遮るように魔王は一言、
「早めにワシを助けておくれ? でないとまたお仕置きじゃぞ?」
そう、含んだ笑みを浮かべながら、兵士に連れられて行ったのであった。
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