表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/73

1-23:【剣の勇者ジルベルト】

 あれから色々と準備を終え、俺達はついに城へ突入した。

 流石にティナまで連れて行くのは危険すぎる為、家で待ってもらっている。


「ホントに人っ子ひとりおらんのぅ」


 城の中にも兵は一人も見当たらず、異常な静けさだけが辺りを支配していた。


「ここまで居ないとなると何かあったか……」


 コレでは俺達のみならず、誰でも入りたい放題だ。まぁ、邪魔が入らないのならそれに越したことは無いんだが……。


「どこぞの部屋に入った瞬間、出て来ると行った事もなさそうじゃのぅ」


「てっきり待ち構えてると思ったんだがな……」


 そうこうしている内に、玉座の間への門まで来てしまった。ココにも門番など居ない。


「さて、着いた訳だが……」


「ここまで来て躊躇する事もあるまい」


 そうだな。さあ、ご対面と行こうか……!



 ◇◆◇◆◇◆◇◆



 扉を開け、玉座へと進む。ここ、玉座の間にすら兵は居ない。


「……誰も居ないのか?」


 まさか城の人間全てを連れて何処かへ行った?いや、流石にそんな事をすれば嫌でも気付く。



「……誰だ?」


 不意に玉座から声が問いかけが聞こえてくる。


「ジルベルトっ……!」


 玉座に独り座っているのは、あの日、全てを奪っていった男、ジルベルト。しかし……


「歳を取って……いない?」


 ジルベルトは当時、あの時の姿のまま玉座から俺達を見下ろしていた。

 おかしい。以前見たアイツは相応に歳を取っていた筈……。


「その声……アレウスか」


「黙れ……! お前と楽しくお喋りしに来た訳じゃないんだよ!」


 あの時自分が取った行動など、何も覚えていない、恥じていないとばかりに平坦な声で話かけてくるジルベルト。


「お前一人か!?他の者達はどうした!?」


「何を言っている?そこに居るじゃないか」


 話が噛み合わない。そこに居るだと?

 周りを見渡すが、何処にも、誰も居ない。魔王を見ても、同じく首を横に振るだけだ。


「様子が変じゃな。小僧!ワシを覚えておるか!」


「お前は……誰だ?いや……お前が魔王か!そうだ……俺は……お前を殺す!」


 魔王を憎しみの篭った目で睨みつけ、そのまま玉座から駆け出してくるジルベルト。生憎だが魔王の前に俺と相手してもらおうか!


「お前の相手は……俺だっ!」


 駆け寄ってくるジルベルトめがけ、魔法を放つ。当時はまるで勝てる気がしなかったが、今の俺は違う。その為に付けた力だ。


「邪魔を……するなぁ!!」


 白刃一閃、俺の放った魔法を切り裂くジルベルト。奴が選ばれた宝剣、その切れ味は実態の無いものすら容易に切り裂く。


「ちっ。なら、これでどうだ!」


 流石にコレで終わるとは思っていない。すぐさま別の魔法を放っていく。今度は数で押す。


「効かねぇんだよぉ!」


 しかしジルベルトは、無数に襲いかかる魔法弾を的確に切り裂いていく。

 そうこうしている内にジルベルトが眼前まで迫ってくる。


「邪魔だアレウス!!」


 まるで俺を路傍の石の様に、一薙ぎで斬り伏せようとするが、それは俺を見くびり過ぎた。


 俺はジルベルトの刃を後ろに軽くステップして躱すと、スキだらけの身体に魔法を叩き込むが――


「なっ!?」


 確かに魔法は直撃した筈だが、ジルベルトは意にも返さず剣を振るう。

 今度は逆にスキを見せた俺へ、振り下ろされた刃が、頭上から迫って来る。


「舐めんな!」


 ジルベルトの放った刃を障壁で受け止め、そのまま離脱。

 ……どうも違和感があるな。


 ジルベルトはプライドが高く、戦場で傷付くのを良しとしなかった。もちろん傷付く事が無かったわけではないが、今みたいにダメージを受けながら強引に進んで来るのは奴らしくない。



「試して……みるか」


 俺は両手に魔法をセットし、すぐさま一つ目を放つ。

 ジルベルトの足元に魔法陣が展開され、そこから幾条もの鎖が獲物を捉えようと迫っていく。


「ぐっ!ええい!邪魔くさい!」


 ジルベルトは鎖を切って抜け出そうとするが、次々と伸びてくる鎖に次第に追いつかなくなっていく。


 俺はもう一つの魔法に全力を込め、動きを封じられているジルベルトめがけ解き放つ。


「吹き飛べ!!」


 俺の背丈程もある光が、奴にめがけ迫る。身動きの取れないジルベルトは、そのまま成すすべもなく光に飲まれていった。


「ぐ、ぐあぁぁぁぁ!!!」


 ジルベルトはそのまま玉座をも越え、背後の壁へ叩きつけられ倒れ込む。



「やっぱりな……」


 かつてのジルベルトなら、今の魔法に直撃など無かっただろう。そもそも、その前の魔法で拘束される事がおかしい。

 俺の知っているジルベルトは、ムカつくがこと戦闘に関して、優秀な事に違いはなかった。


 魔法で足を止めさせ、大技を叩き込む。コレは魔法使いの基本的な動きだ。当然、当時もこの手のパターンで攻めてくる魔族は多かった。なのにアイツは、愚直に魔法を受けた。次に備えることもなく力技で抜け出そうとした。


「ジルベルトじゃない?いや……宝剣は使ってるしそれは無いか……」


 どうにもチグハグな印象だな。これじゃあまるで……出会った頃のジルベルトのような。



「魔王、お前から見てどうだ?何か違和感は無いか?」


「ワシはあの時勇者共と戦ってはおらんからの……。しかし、あの程度であればワシまで辿り着くことは出来んかったじゃろうな」


 魔王に話を振ってみるが、俺と同じく違和感を持っているようだ。


 何かある、とジルベルトを注視していると、傷ついた身体を宝剣で支え、満身創痍で起き上がってコチラを睨む。


「邪魔だアレウス……!そこをどけ……! 何故魔王をかばう!俺達は勇者だろう!」


「何を言ってやがる!俺を勇者じゃないと言ったのは、お前だろうが!」


 ジルベルトが、俺を勇者だと、勇者の一員だと言ってくる。俺を除け者にしたのは、他ならぬジルベルトだと言うのに。


「俺が、お前を……?ぐっ、ぐあぁぁ!!!」


「ジルベルト!?」


 俺の返答に記憶齟齬を起こしたように、困惑した顔を見せたジルベルトだが、急に頭を抱え、もがき苦しみだす。


「ぐぅ……! そ、そうだ……俺はあの時魔王を封じ……俺は王に……がぁぁぁぁ!!」


 宝剣を無茶苦茶に振り回し、暴れまわるジルベルト。床や壁を、斬りつけていく。


「はぁっ……はぁっ…………ふぅぅぅ……」


 不意にジルベルトの動きがピタリと止まる。息を整え、コチラを振り向くと――




「よっ!初めましてだな!俺はジルベルト、宝剣の勇者だ!よろしくなアレウス!」



 屈託のない笑顔で、まるで初めて会った時のように、そう言って、手を差し出してきた。


 なんだ?何が起こっている……?

ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ