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1-21:【奇跡の朝食】

 読み返すとプロローグで回復の要は恋人って書いてるやん……。

 妹=回復、恋人=攻撃魔法です。訂正しました。

「ん……んん……朝……か?」


 隠れ家として用意したこの家は窓が少ない。加えて治安も良い方では無い為、寝てる間に襲われる事を考えて寝室には窓が無い。その為、目が覚めたとき朝なのかどうかがイマイチ分かりにくい。


「取り敢えず起きるか……」


 ベッドから出ようと手をつくと、ふにょんとした柔らかな感触。


 はて?こんなに柔らかい素材だったかと手の先を見ると、そこには真っ赤な顔をしたティナが涙目で震えていた。


「うわぁっ!す、スマン!」


「あのっ……その……アレウスさん。仲良くなろうとは言いましたけど、こういうのは……えと、まだ早いと……」



 そうだった……。昨日はあの後、ティナが、もっと仲良くなりましょうと、三人揃ってベッドで寝たんだった。

 色々話をしている内に、寝てしまったのか。


 それでも一応真ん中に魔王を挟んで、問題が起こらないようしたはずなんだが……。


 肝心の魔王はどこに行ったかと辺りを見回すと、ベッドから落ちて床で爆睡していた。……こいつ、寝相悪すぎやしないか?


「あーいや、スマン。わざとじゃ無いんだ……」

 

「いえ……びっくりしただけですから……」


 微妙に気不味い空気が流れる。


「あー、その、顔洗ってくる。ホントに悪かった」


 半ば逃げるように寝室を出る。顔を洗うと幾分か頭がハッキリしてきた。どうやらまだ早朝らしい。


「おはようございます……」


 ティナも寝室から出て来たようだ。さっきの件があるから微妙に顔を合わせづらいな……。


「ああ、おはよう。魔王は? いや、聞くだけ無駄だったか」


「ええ……起こしたんですけど……」


 まぁあいつの事だ、そう簡単には起きないだろう。


「取り敢えず朝飯でも作るか。ティナ、手伝ってくれるか?」


「え?その……あ、はい!」


 俺とティナ、個々で作ると酷い味になるが、協力して作れば美味いものになるかも知れない。

 そう思い、俺達は朝飯を作り始めた……。



◇◆◇◆◇◆◇◆



「これは……」


「ア、アレウスさん……」


 目の前にあるのは二人で協力した朝飯……だと思われる物体。

 ティナの料理は、味以外はマトモなので、味付けにさえ気を付ければ美味い飯が作れると思ったんだが……。


「うーん……何で黒くなったんだ……?」


「ドロドロするものなんて使ってない筈ですよね……?」


 未知の物体と化した朝飯は、スライムの様に蠢いている気すら感じられる。断言しよう、これは人の食うものじゃない。


「取り敢えず、捨て……いや、魔王に食わせるか」


「えっ!? こ、コレをですか……?」


 もしかしたら味は素晴らしいかもしれないからな。味が悪くても目覚めたら御の字だし。

 味見? コレを味見しようだなんてとんでもない。


「さて、魔王は――」


「阿呆!いくらワシでもそんなもん食えんわ! 味見するまでも無く不味いに決まっとろう!」


 うお!ま、魔王が目覚めた!


「まったく……恐ろしい物を創り出すのお主ら……」


 魔王が危機を感じて目覚める程の物体……。よし、コレを魔王の目覚めと名付けよう。二度と作りたくないが。


「それにしてもお主……くふふ、朝から良い思いをしてたのぅ」


 ニヤニヤしながら魔王がゲスな顔をしてくる。あれは事故だっての。

 見るとティナも思い出したのか、心なしか顔が赤い。


「うるさい。蒸し返すなよ」


「そんなに触りたければ、ホレ。特別に触らせてやっても良いぞ。ん?」


「リ、リリィちゃん!?」


 魔王がペタンコの胸を突き出して挑発してくるが、残念ながら幼女に興味は無い。


「育ってから出直して来い。そんな胸かどうかも分からんものを出されてもな」


「そうかそうか。ならばコレならどうじゃ?」


 そう言うと魔王は一瞬で姿を変えてしまう。変身?認識阻害? 何をしたかもわからない程早業で、目の前の魔王が姿を変えていた。


「ほれ、お主好みに成長してやったぞ?」


 そこには黒く手触りの良さそうな髪を腰まで伸ばした美女が立っていた。

 裾から出る足はスラリと長く、出るところはコレでもかと大きい。逆に腰はキュッと細く締まっており、男なら誰でも自分の手に、と一度は夢見るであろう絶世の美女だ。


「魔王、お前……」


「リリィちゃん!駄目です!はしたないですよ!?」


 魔王は俺と同じ位の身長にまで成長している。着てる服は俺のシャツ一枚だ。つまり、その、色々危ない。ギリギリである。


 慌ててティナが魔王の前に行き色々と隠してしまう。魔王だとわかっているのに、魔法にかかったように目が離せない。ん?魔法?


「お前……チャームかこれ!」


 チャーム――いわゆる誘惑魔法である。それを魔王クラスで使うとなれば、抵抗出来る奴はそうそういないだろう。


「カカカ、バレてもうたか。認識阻害とチャームの合わせ技だったんじゃがのぅ。効いたじゃろ?」


 魔王が元の幼女に戻る。恐ろしい事をする……さすが魔王。

 しかしこれは使える……か?


「魔王、それは俺にもかけられるか?」


「えっ!? アレウスさん!?」


「なんじゃお主、男に襲われる趣味でもあるのかえ? うーむ、ワシにもティナにも手を出さんと思ったらまさかソッチの趣味とは……」


 誰がだ、誰が。そんな趣味はねーよ!


「アレウスさん……そうだったんですね。だ、大丈夫です!どんな趣味があってもアレウスさんは仲間ですよ!」


「だから違うと言うに! 勇者共に近づく手段として使えないかと思ったんだよ!」


 ティナを勇者共に突き出すのは論外だが、俺が化けていれば問題ない。魔王の魔法なら、そうそう破られる事も無いだろう。


「ふむ……。手としては悪くないが、所詮手遊びの魔法。王子共にかけた呪いと違い、あの女にかかれば流石に破られるんではないかの」


 パーティの中で回復の要であった妹……。アイツが選ばれた武具は宝玉。傷や病気などに強い、癒しを司る武具だ。当然その中には幻惑や誘惑を解く力もある。


 いかにアイツが好色とは言え、今は王だ。城に上がってくる人間はしっかりチェックされているだろう。手を出した女が呪い持ちでした、なんて間抜けな事にならないように。


「それでも、城の奥深くまでは入れそうだ」


 コレだけでは見破られてその場で終わりだ。まだ、他に手がいるな。


「ふむ。少しは前向きになったようじゃのぅ。よし、お主よ。なんぞ飯でも買ってくるのじゃ。腹が減っては何も出来んからの」


「飯?飯ならそこに……」


 例の物体――魔王の目覚めを指差す。相変わらず危険な物体だ。何か、変な声まで聞こえてくる気がするな……。


「あんなもの食い物とは認めんのじゃ! というか、何故そうワシに食わせようとするのじゃ!」


「いや、魔王の目覚めって名前だしな……」


「やめい!ワシのイメージが悪くなるじゃろ!? 良いから早う買うてこんか!」


 そうして俺は家から叩き出された。今更魔王のイメージも何も、元々最悪だろうに……。

ここまでお読みいただきありがとうございますm(_ _)m

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