1-14:【二人の王子】
「さて、何か食べたい物はあるか?」
「えーと……私は何でも良いですよ」
何でも良いと言うのが実は一番困る……が、ティナも街にそう詳しい訳でもないだろうから、適当に歩きながら良さそうな店に入るか。
因みに俺もティナも認識阻害の魔法をかけてある。ティナが亜人族だと絡まれても面倒だしな。
「あ、あそこのお店オープンしたてみたいですよ!」
ティナが指差した先には新しく出来たばかりなのだろう、他に比べて綺麗な店があった。早い時間だからか、さほど混んでもなさそうだ。
「じゃあ、あそこにするか」
店はまばらに人が居る程度であり、これなら落ち着いた雰囲気で食事が出来そうだ。初めての店と言う事もあり、ひとまずオススメのメニューを二人分注文する。
「でもリリィちゃん、残念でしたね」
「いつまでも寝てる奴が悪い。俺達は起こそうと努力したしな」
他愛のないことを話しながら注文が届くのを待っていると、店員が器用に二人分同時に運んできた。よく落とさないな……。
「お待たせしましたー。どうぞごゆっくり」
おお、コレは美味そうだ。メインである肉は鳥か?それが丸々豪快に焼かれている。付け合せのサラダも鮮度が良さそうで輝いて見える。スープは俺の作ったものとは雲泥の差で、先日ティナが作ったスープと遜色ない。いや、見た目の話な。
「じゃあ早速食べるとするか!」
まずはスープを、とカップを手に取った瞬間、そいつらは店にやって来た。
「何だよ客いんじゃん!せっかく朝早くから来たってのによぉ!」
「追い出せば良いだろ。どうせ平民ばかりだ」
いきなり物騒な事を言い出す若い二人組。一人は金髪を後ろに流し側面を刈り上げた、見るからに他者を威圧するような見た目。もう一人は長い金髪を後ろで結び垂らしている。顔そっくりだな……双子か?
「つーわけだからよ、お前らさっさと出て行けや」
「今なら酷い目に合わずに済むぞ。さあ、出ていけ」
同じ顔で言いたい放題の二人。厄介だな……。面倒だが黙らせるか?
そう考えて立ち上がろうとした次の瞬間、俺はテーブルやら椅子やらを薙ぎ倒しつつ、派手に吹き飛ばされていた。
いきなり起きた衝撃に、咄嗟に障壁も張れなかった。
「おら早く出てけや!」
「早くしないとあのおっさんと同じ目に合うぞ」
突然の暴行に客が蜘蛛の子をちらした様に逃げていく。コイツラには少しお仕置きが必要だな。
「ガキ共、調子に乗りすぎだ!」
俺は両手に呪文を発動し、ガキ共に向けて放つ。
手のひらから二本の雷が、複雑な軌道を描きながら二人へ向かう。当たれば痛いでは済まないが、命に別状は無いだろう。せいぜい暫くの間痺れ、火傷が残る程度だ。
そう思った矢先、しかし俺の放った雷はガキ共の前で掻き消える。古文書の魔法を掻き消した!?
「あっぶねぇな、おっさん!死んどけや!」
「残念だったな、おっさん!」
髪が短い方のガキが何も無い空間から一振りの杖を取り出し魔法を放つ。その杖に俺は見覚えがあった……。
成人男性程の長さのあるその杖は、先端で女神の様な女が祈りを捧げている。持ち手となる部分には女神から垂れた布が絡み合い、先端まで伸びており、荘厳な雰囲気を出しつつも、見るものを威圧するようなプレッシャーもある。
「がはっ!?」
ガキの放った魔法は、やすやすと俺の魔法障壁を破壊し、そのまま俺を壁まで吹き飛ばす。
「はっ!俺ぁ勇者の息子だぜ!? 歯向かうなんざ百年はぇーんだよ!」
「死んでないだけ大したもんだろ。そいつを使ってんのに、あのおっさん、そこそこ有名だったりする訳?」
そうか……あの杖……アイツの……あの糞女の息子かっ……!
「ちっ!クソ弱ぇし、たまたまだろ……。なんか白けたな。おいそこの女ぁ!腹いせにちょっと付き合えや!」
「なーに、ちょっと良い思いするだけだ」
「きゃ!!離して! アレウスさん!!」
ティナの助けを求める声が聞こえる。しかし、俺の意識は深く沈んでいった……。
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