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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第4章 忍び寄る敵
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緊急会議2

 「さて、ここが会議室だ」


 剛毅に案内されて、アリスは会議室の前に立っていた。

 見た感じは他の部屋と大差ない。特に特徴といった特徴はなかった。


 「それでは、入りますか」


 扉の取っ手に手をかけ、アリスは奥に押し出す。


 会議室の中にはすでに何人かの人が席に座っていた。机は円形のものであり、その周りを囲うように席に着いている。

 入り口から一番遠い位置――誰も座っていないから恐らく剛毅の席であろう。その隣には剛毅と年が近そうな人物。この国の宰相であろう人物が座っている。

 そして、剛毅の席の隣には“青龍”である龍司。宰相の隣には”炎帝”の楓。さらに、その隣に祐斗が座っていた。

 楓たちの服装は昨日までの制服姿ではなく、黒で統一された服装――”神無月”の象徴である衣装を身につけていた。楓たちはアリアのことをアリスとは当然思わず、少し見た後に興味を失ったかのように視線を外した。


 (ここにいるのは”炎帝”と”破壊神”、そして“青龍”か。残りの二人はいないようだな)


 ”神無月”全員がそろっていないことに疑問を持つが、特に気にすることではない。


 アリスは一つだけ空いている席――一番手前の席に移動する。


 剛毅は中に入ると颯爽と自分の席まで移動し――


 「とりあえず腰を下ろしてくれ」


 アリスに座るように促す。アリスもこのままでは話が進まないと思い、言う通りにする。


 アリスが座ったことを確認すると、剛毅は真剣な表情を作る。


 「君たちに集まってもらったのは他でもない。例の事件のことだ」


 しかし、ほとんどの者が危機感を抱いていない。それもそうだろう。たかが祠を破壊されただけだ。そんなことは重大なものとは思わない。


 「少しいいですか?」


 そんな中、手を上げて質問するのは祐斗だ。


 「ん? どうした?」


 「あの者は何者ですか? この場にいてよい人間とは思いませんが?」


 祐斗の言葉はこの場にいる全員の代弁であった。


 仮にも今から国の重大な話をするつもりなのだ。その中に不審な者がいるのに疑問を持つのは当然だ。


 祐斗の質問に剛毅は笑いをこらえようとする。


 「何故、そこで笑うのですか?」


 自分が馬鹿にされていると理解した祐斗は少し機嫌が悪そうにする。


 「いや、すまない。決してお前だけを笑ったわけではない。この場にいる全員に対して笑ったのだ」


 剛毅の言葉を誰一人、正しく理解することができない。全員、何を言っているのかという顔だ。

 それを見て剛毅はさらに笑い出す。


 「……クク、ここまで気づかないものか。一応、全員知っている者なのだがな」


 その言葉に祐斗たちは一斉にアリスを凝視する。しかし、わかった者は誰もいない。

 ここまで言って気づかないのかと嘆息しながら――


 「楓は一度、戦ったことがあるのだがな」


 楓は眉を寄せつつアリスを見つめ直す。そして、あっと気づいたような表情をする。


 「も、もしかしてアリス!?」


 楓の驚く声が響くと同時に、部屋にいる全員がアリスに対して身構える。


 祐斗は楓を打ち負かした相手に警戒を。宰相は得体の知れない相手に対して。そして龍司は自分の存在を看破した同等の存在を。


 「どうしてかしら? 敵対されているような感じがするのだけど?」

 

 アリスが言葉を発すると、さらに祐斗たちの警戒は厳しくなる。アリスの姿で来ればよかったのだが、アリアの姿で来てしまったことで、変装することも出来るのかと、さらに警戒せざる状況を作り出してしまったのだ。


 「え、でも、アリスは男……だよね? 変装だけならまだしも、声も女の子だし……陛下、やっぱり間違えじゃ……」


 今まで笑いをこらえることに必死だった剛毅だが、楓の何気ない一言で崩れ去る。


 「ブッ! まだ信じられないとは……アリス、もしよければ仮面を取ってはくれないか? どうも、うちの人間は君のことを信じられないようだ」


 このままでは、いつまで経っても話が進まない。そう判断した剛毅は皆を納得させるためにアリスを仮面を取るように促す。


 「まあ、いいですけど。一応、私のことは公にしたくはないので、他言は控えてくださいね」


 そう言いつつ、アリスは顔の上半分を隠している仮面を取り外す。すると、全員の動きが固まる。


 「……ほぅ。確かにアリスの面影はあるが……なかなかの美人ではないか。下手すれば、そこらの女よりも可愛らしいな」


 初めに口を開いたのは剛毅だ。剛毅はアリスの顔を品定めするかのように注意深く見つめる。


 アリアの容姿はリーゼロッテのような美しさではないが、どちらかといえば、楓のような可愛らしい容姿であり、あまりにも違和感がない顔の作りに誰もが言葉を失っていた。


 「……結局、話が進まないままですね。早くしないといけないのでは?」


 もし本当に祠の破壊が敵の目的なのであれば、一刻も早く阻止しなければならない。そのために、少しでも早く行動に移りたいとアリスは思っていた。


 「そうだな。おい、お前たち。これでわかっただろう? 彼は”エルフリーデ”の一人だ。今回はイーストで起こっている事件を解決してもらうために来てもらった。わかったら、いつまでも固まっていないで席に着け」


 驚きのあまり、アリスと剛毅以外は立ち上げってしまっていた。そのことに気づき、楓たちは慌てて自分の席に腰を下ろす。

 ようやく話が進められると思い、剛毅が先陣を切る。


 「さて、今回の事件だが、俺は重要なことだと思っている。無意味な破壊活動だと思われるが調べた結果、破壊されているのはすべて祠であった。偶然ではない。何か目的があってのことだろう。そのことについてどう思う?」


 アリスと話し合ったことには触れず、内容だけを話していく。ここで、アリスと会ったことを話してしまうと、ややこしくなってしまうからだ。


 剛毅が全員に訊ねるが誰一人、答える人はいない。そもそも、祠だけを破壊していることすら知らず、どう思うと訊かれても答えることが出来ないのは当然だ。


 「ふむ、誰も答えないか……では、話のきっかけを作ろう。アリス。君はどう思う?」


 (きっかけじゃなくて、丸投げと言うのでは……? 仕方がない。ここは俺が話すしかないか。剛毅も祠については詳しくなさそうだし……)


 不満に思うが麒麟の情報がなければアリスも祠の存在を知らなかった。そう考えると、剛毅はおろか、この場にいる全員が祠の存在自体、知らないであろう。


 「私としては思い過ごしであってほしいものですが、色々とサウスの問題と重なるところがありまして」


 「……どうのようなものだ?」


 もはや、イーストだけの問題だけではないと思ったのか、剛毅だけではなく、今まで本気にしていなかった人たちも表情を硬くする。


 「以前、サウスに戦争時代に活動していたファフニールが現れたのをご存じですね? 奇跡的にも被害はそれほどなかったですが。その原因を探るために、まずはセントラルを調査した。見事、一発目で原因がわかったのですが、ファフニールはそもそも封印されていたらしく、何者かによって封印を解かれたのです。その何者かが現在、私たちが追っている者です。話を戻しますが、ファフニールが封印されていたものこそが祠なのです」


 「……ッ!? それは本当かッ!?」


 剛毅は思わず立ち上がる。

 サウスを襲った厄災竜。サウスは事なきを得たが、そんな化け物がイーストで解き放たれたとすると――


 (今はサウスの学生もいる。国の護衛だけでは足りないかもしれない――!)


 重大な事件。誰もがそう思い始めたとき――


 「ですが、私が得た情報では、イーストの祠には精霊は封印されていないらしいです。なので、サウスのような事件には発展しないと思います」


 続くアリスの言葉によって、力が抜けたかのように剛毅は座り込む。


 (で、では、とりあえずは大丈夫か……ん? 待てよ?)


 安心したと同時に剛毅はあることに気づく。


 (どうして、そのようなことがわかる――?)


 麒麟に訊いたとは知らない剛毅はアリスの言葉を不審に思う。


 剛毅の訝しげな視線に気づいたアリス。瞬時にその原因を察する。


 「ちなみの情報源はセントラルの守り神、麒麟からの情報です。彼は私よりも長い時を生きているので、間違いはないでしょう」


 淡々と説明するが、アリスは事の重大さに気づいていない。


 (セ、セントラルの麒麟だとっ!?)


 セントラル――誰もが恐れる危険地帯。そして存在自体が不明であった麒麟。

 麒麟が存在していたということよりも、麒麟と簡単にコンタクトが取れることに全員が驚いていた。


 説明したはずなのだが、剛毅の視線は変わらない。それどころか、より厳しくなったように見える。


 (あれ、おかしいな。何か違ったか……?)


 常識を知らないアリスはいつまで経っても答えにたどり着けなかったのであった。


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