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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第4章 忍び寄る敵
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平穏

 その後は淡々と話が進み、任務決行時は今夜となった。


 「今夜、アリス、楓、祐斗は祠の守護を頼む。龍司は念のためにアリスたちで防げなかった場合の被害を食い止めてくれ。任務については以上だ。それまでに各自、準備をしてくれ」


 それが剛毅の出した命令だ。


 (特に準備は必要ないのだがな……)


 アリスとしては、このまま祠のところに行きたい。しかし、三人で行けとのことなので、約束の時間まで――


 「あっ、いた! おーい、アリス!」


 アリスに呼びかけるは、昨日まで一緒に行動していたリーゼロッテである。リーゼロッテの後ろにはアリスの友人、レンとティリカも着いてきたいた。


 「おいアリス! 相手の大将によく勝ったな! 流石だな!」


 バシバシとアリスの背中を思い切り叩く。


 「わかったから、叩くのはやめろ」


 「でも、本当にすごいよな! まさか1年が勝つなんてな! 他の奴らも応援するのも忘れて決闘に見入っていたからな!」


 それほどの決闘だったのかとアリスは感心する。

 ”エルフリーデ”と”神無月”のトップが争う決闘。制限があったとしても、普通の生徒から見ればレベルが違う戦いだったのは言うまでもなかった。


 「じゃあ、アリスとリーゼロッテの活躍を祝おうではないか! ということで、まずはあの店に行こうじゃないか」


 レンは周りを見渡し、よさそうな店を見つけたと同時に店に向かった。


 「アイツ、自分が食べたいだけじゃないの?」


 ティリカがジト目になりながら、店の中に入っていくレンを見つめる。その言葉に隣にいたリーゼロッテも苦笑している。当然、アリスもティリカと同感である。


 「とりあえず、俺たちも中に入るか」


 アリスたちも店に入ったレンの後に続くように店に入るのであった。


 




 「――でさぁ、上級魔法を何度も使うんだぜ。そりゃぁ、すげえ迫力があったぜ」


 「確かにアリスの決闘もすごかったけど、あたしとしてはリーゼロッテの決闘も捨てがたかったなぁ。学年の代表相手にあそこまで追い込んだのよ? いつかあたしも、あんなふうになりたいわ」


 店には行って早速、アリスたちを祝う――ということは最初だけ。決闘の話題になった途端、レンとティリカはお互いに印象に残った戦いを話し合いだす。最初はちょっとしたことだったが、時間が経つにつれて熱が入り、本格的に話し出した。

 そんな話し合いの中にアリスたちは割り込むことが出来ず、なんともいえない表情でレンたちの話を聞いていた。

  

 (話に入り込んでも話せる自信がないな……今のうちにリーゼロッテに話しておくか)


 アリスがリーゼロッテたちとイーストでの最終日を過ごそうと思ったのは純粋に楽しみたいと思ったのもある。

 しかし、アリス本来の目的は任務についてである。任務の内容を詳しく教えることは出来ないが、任務決行日、それと――


 (夜になる前にサウスの生徒はイーストから出る。それまで持ってくれればいいが……)


 夜――つまり、任務決行の時間までにはサウスの生徒はイーストの外にいる。戦いになるとすれば、被害に遭わない時間帯。

 しかし、敵が夜に仕掛けてくるとは限らない。それまでは警戒を解かないように伝えるつもりだ。


 (本来はリーゼロッテを守らなければならない立場だが、仕方がないか。敵が大した者でなければ問題ない。だが、本当にファフニールを解放した奴らだとすると……)


 最悪の場合、リーゼロッテとイースト、どちらを取るか迫られるかもしれない。ただ、リーゼロッテを守ったとしても、これはイーストだけの問題ではない。後々、ここで防がなければ支障が出るかもしれない。かといって、イーストを守ってリーゼロッテを見捨てるということも出来ない。

 それに、敵の数はわかっていないが、二つを守ることは出来ないであろう。ファフニールを解放したとなると、それ相応の実力者。下手をすれば”エルフリーデ”や”神無月”と同等であるかもしれない。そんな相手に何かを守りながら戦うなど不可能だ。


 (とにかく、リーゼロッテには警告しておくか。出来れば戦って欲しくはないが……)


 そう思いながらも、アリスはレンたちの話に入るタイミングをうかがっているリーゼロッテの肩を叩く。


 「ん? どうしたの、アリス?」


 どうしたことかと、リーゼロッテは首をかしげる。そして、何かに気がついたようで、視線を下の方に向ける。


 そこには一枚の紙切れ――任務についてのことが書かれていた。


 少し驚いたようで、リーゼロッテは目を見開いてアリスを見つめるが、声はなんとかして抑えこむ。だが、その表情は何か言いたげだ。


 「ちょっとトイレに行ってくる」


 リーゼロッテと話す時間を作り出そうと席から立ち上がり、誰もいなさそうな場所を探す。


 「あっ、私も」


 アリスの意図を察してリーゼロッテもアリスに着いていくように歩いて行く。


 レンたちは話に夢中なようで、アリスたちにあまり気を配っておらず、わかったとだけ言っていた。

 

 誰もいなさそうな場所。結局は店の外ということになり、アリスたちは一端、店の外に出る。


 「で、あれはどういうこと?」


 最初に話を切り出したのはリーゼロッテだ。あれというのは紙に書かれていたことであろう。


 「あれってなんだ?」


 「とぼけないで。『俺はお前を守れないかもしれないから、出来るだけ戦いを避けろ』って。馬鹿にしてるの?」


  苛立った声でリーゼロッテが告げる。


 「ああ、あれか。別に馬鹿にしているわけじゃない。ただ、今回の敵はもしかしたら、前に話した奴らのことかもしれない。もしそうだったら――」


 「そんなことはどうでもいいの」


 途中でアリスの言葉を遮る。アリスは重要なことをどうでもいいと言ったリーゼロッテの意図がわからなかった。


 「そんなことを言ってるんじゃないの。私が言っているのはアリスの言葉よ。なに? 守れないから戦うな? 何を言ってるの? 私は守れる力を身につけるために学園に行ってるの! それなのに戦うな? お姫様だからって馬鹿にしないで!」


 リーゼロッテは不満をぶつけるかのように叫ぶ。


 リーゼロッテはこう見えても、かなりの負けず嫌いである。玲奈との決闘に負けてからも密かに自主練をしていたくらいだ。学園に来ているのも自身が強くなるためである。

 なのに、アリスから伝えられたのは敵を前にしたら逃げろとのこと。リーゼロッテが勝てない相手だとしても、初めから逃げ腰なのはリーゼロッテにとっては許しがたいことであった。

 

 当然、店の外なので通行人がいる。突然、道端で叫んだリーゼロッテに何事だろうとアリスたちを見る。

 端から見れば、アリスがリーゼロッテを怒らしたように見える。次第に通行人のアリスを見る目が蔑むようなものになっていく。


 「リ、リーゼロッテ。少し落ち着いてくれ……」


 アリスも当然、周囲の視線に気づいており、これ以上に騒ぎにしたくないとリーゼロッテをなだめる。


 先程のことはアリスも軽率だったと思う。リーゼロッテが強くなりたい理由を訊いていたはずだ。なのに、リーゼロッテのプライドを傷つけるようなことをしてしまった。


 「俺が悪かった。だが、わかってほしい。今回の敵はリーゼロッテどころか、リンさん――学園最強の人間でも勝てないかもしれない。恐らく戦いとなれば、イーストの護衛もお前についてくれる可能性が少ない。だから――」


 「わかってるよ、それくらい」


 リーゼロッテはアリスの言葉を遮りながら答える。


 「私だってわかってるよ。アリスが言うくらいだもん。私どころかアリスでも苦戦する相手なんでしょ? だったら、今の私が勝てるわけがない。でも、私だって初めから逃げるのは嫌なんだよ。王族だから守られる? 違う。王族だからこそ守らないといけないんだよ。だから私は戦うよ。あっ、もちろん、危なくなった逃げるから、それだったらいいでしょ?」


 リーゼロッテの決意――守るための力が欲しい――自身のみが危険だとわかっておきながらも、目の前の少女は戦いに挑もうとしていた。


 (はは、参ったな。こうなれば、どうしようもないか……)


 一度やると決めたことは最後までやりきる。自分が仕える人と同じ考え方で、アリスは苦笑するしかなかった。

 

 「わかったよ。俺の負けだ。リーゼロッテの思うようにすればいい。だがな、絶対に死ぬなよ」


 「それくらいで死ぬならとっくに死んでるよ。私がピンチになった時はアリスが助けてくれたからね」


 リーゼロッテは過去に二度、アリスに助けられている。運も実力のうちとはいうが、本当にその通りだとアリスは思った。


 (確かに強くなるためには、いい経験かもしれない……メーティス。リーゼロッテの契約精霊は光だったな。何かあったら俺に連絡するように伝えてくれ)


 (んっ、わかった)


 王級精霊だから成せる技。これで一応の保険をかけることは出来た。


 (後は俺が任務を遂行するだけだな――)


 リーゼロッテの決意を聞いたアリスは密かに闘志を燃やすのであった。


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