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精霊殺しの学園生活  作者: はる
第2章 調査
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買い出し

 アリスは一人で街にある公園でいた。もちろん、理由もなくいるわけではない。セントラル調査のために支度をするために街に買い出しに来ていた。今回、任務に参加するのはアリスに加え、”水神”アレクシア、”女神”シェリルが参加することになっていた。

 全員で買い出しに行くため、こうしてアリスは他の二人が来るのを待っていた。


 しばらくすると、少し息を切らしてアリスに向かっている少女の姿が目に入った。


 「遅れてすいません!」


 そう言ってペコペコアリスに頭を下げるのは”女神”と呼ばれているシェリルである。しかし、シェリルはアリスより年上のはずなのだが、身長も低く顔付きも幼いので、どうしてもアリスよりも年下に見えてしまう。


 「大丈夫ですよ。僕も今来たところですから」


 実際にはアリスは10分前にはここにいたのだが、それはアリスが早めにこの場で待っていたからだ。だからシェリルが遅いというわけでなかった。






 しばらくシェリルと話していると、もう一人のメンバーであるアレクシアがやってきた。


 「遅れちゃった! てへっ」


 アレクシアは遅れてきたことに対して全く罪悪感を持った様子はなかった。その様子を見てアリスは腕を組みながら、こめかみに血管を浮かべる。


 「……待ち合わせからどれくらい立っていると思う?」


 「……ええっと、10分?」


 「1時間じゃ、ボケェっ!」


 「ひいっ!」


 アリスたちが合流してから、さらに1時間がたってからアレクシアはこの場に来たのだ。少しの時間ならアリスも許したであろう。しかし、アレクシアは遅れた挙げ句に全く反省していなかったのだ。これではアリスが怒るのも無理はない。


 「……で、何故遅れた」


 アリスはアレクシアを睨めつける。普通の人であったらアリスに睨めつけられただけで動けなくなるだろうが、腐っても”エルフリーデ”の人間だ。アレクシアに全くひるんだ様子はなかった。


 「……観光?」


 「観光ぐらい終わってからにしろ!」


 しょうもない理由だった。第一、ずっとこの地にいるので観光などしなくてもわかるだろうに。


 「しょうがないじゃん! だってあんなにおいしそうな食べ物がたくさん! 食べたくもなるわよ!」


 自分が悪いのに挙げ句には食べ物のせいにする始末。この様子にはアリスも呆れるしかない。

 とうとうアリスも諦めたようで、アレクシアが遅れたことに対しては、もう何も言わなかった。


 「……はぁ、では買い出しに行きましょうか」


 「そうですね」


 シェリルもアレクシアに呆れながらもアリスに返事をした。そして三人は街に向かった。






 街に着いたら着いたらでアレクシアが「あれ食べたい!」とか「あの店に入りたい!」と駄々をこねていた。そのたびにアリスは「うるさい」とか「我慢しろ」と言い、アレクシアを落ち着かせていた。

 一応、アレクシアはこの中では最年長のはずなのだが、これでは誰が年上なのかわからない。


 (アレクシアを連れてきたのは失敗だったな……)


 アリスはただそれだけを後悔していた。






 「よし、ここで最後だな」


 今、アリスの目の前には一件の店が建っていた。そしてこの店こそが今日の買い出しの目的地でもあった。アリスはドアをゆっくりと開け、その中に入る。


 「いらっしゃい」


  そこにいたのは黒髪黒眼の美しい女性だった。その女性はアリスの顔を見た瞬間、少し驚いたような表情をした。


 「あなたがこっちから来たってことは仕事?」


 「ああ、母さん・・・


 アリスがそう言った瞬間、アレクシアたちはかなり驚いたようだった。実際にアレクシアたちがここに来たのは初めてのことだ。知らないのも無理はない。


 「ということは、お隣はアリスの仕事仲間? 初めまして。アリスの母のマリアです。いつも息子がお世話になります。」


 「あっ、私はアレクシアです」


 「あ、え、ええっと、シェリルです……」


 マリアが笑顔で挨拶をしたので、アレクシアたちも慌てて自己紹介をする。


 マリアの姿からはアリスの母だとは思えないほど若かった。それもそうだろう。なにしろ、マリアはアリスの本当の母親・・・・・ではないのだから。


 「母さん、今日は魔法石を買いに来たんだ」


 魔法石――それはこの世界に流通している魔力がこもっている石のことだ。魔法石を使うことで普段、使えない属性の魔法を使うことができる。しかし、魔法石にも二つの種類がある。


 「転移石を6つ、よろしく」


 1つは人間が使える火などの属性の魔法だ。主に生活に使われたりするものだ。大体の魔法石はこちらに分類される。そしてもう1つが人間が単体では使えない転移などの魔法が封印されている魔法石だ。もちろん、こちらの方が圧倒的に値段が高いので買う人はあまりいない。


 「転移石を6つね。で、どこに行くの?」


 「ああ、セントラルまで行く」


 「セントラル!?」


 マリアが驚いたかのように声を上げる。マリアももちろん、セントラルが危険だとは知っていた。しかし、マリアは止めるわけではなく、声をかける。


 「……そう。でも死なないでね」


 マリアが悲しそうにアリスに告げる。いくらアリスが国の頂点に位置する実力者だとはいっても、セントラルでは死ぬ可能性もあるのだ。それほどセントラルは危険な場所なのだ。


 「ああ、あたりまえだ」


 アリスはいつも通り自信満々に言う。その様子にマリアは微笑む。


 「ふふ、あの人と変わらないんだから」


 「父さんの子供でもあるからな。じゃあ、そろそろ行ってくるよ」


 「うん、頑張ってね」


 マリアは店から出て行くアリスの後ろ姿を眺めていた。店から出る際にアレクシアたちはマリアに礼をして出て行った。


 マリアは全員が出ていったことを確認すると、昔のことを思い出していた。


 「……本当にあなたと一緒だわ。自分から危険なことに突っ込んでいって。悪いところだけ似て……まあ、私もそんなあなたに惹かれたんだけどね……」


 マリアは自分の旦那であるガイアとの出会いを思い出していた。今のアリスは学生時代のガイアよりは大分、大人びているが、それでも根本的な性格は似ていた。


 「これからのあの子の幸せを……」


 マリアはただそれだけを祈っていた。

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