勉強のための大前提 その3③
「たいていの算数嫌いは、
1年生の足し算・引き算が
スムーズにできないことから引き起こされている、
ということも分かってきているんじゃ。」
そんな段階で!
まあ、そんなことは、子供たちの算数の宿題の面倒を見ていて
うすうすと感じてはいたけど、
まさにそのレベルの困難がすべての元凶とは!
「まず、ここの子たちは、
指を使って足し算、引き算をすること自体が苦手、という
『微細運動障害』の子が多い。
要するに『不器用』ということだが、
これによって、いわゆる『体で学ぶ』ことが困難なんじゃ。
それを頭を使うことで補おうとしがちだが、
今度は『境界知能』という、知能の問題が生じる。
まあ、このあたりは専門的なのでこのくらいしか話さんが、
問題は『7+6=13』の繰り上がりや、
『13-7=6』の繰り下がりがスムーズでないということじゃ。
これを暗記で乗り越えようとするから、余計にできなくなる。」
「『さくらんぼ計算』論争がありましたね。」リコさんが口をはさむ。
「あれは、1年生の算数で扱われる
『5の分解』『10の分解』を踏まえた上で指導される、
良い指導法で、
ワシはあれを提唱した、小学校教員にも直接会ってきた。
もう30年近く前の、姫路でのことじゃがな。」
「ところが、あるインターネット掲示板で、
『なんであんな面倒なことをさせる』などの批判が出て、
1年生にしっかり指導することがなくなった。
また、あの指導法は、ある程度勉強している教員でないと
使いこなせないこともわかってきて、
今の多忙で凡庸な教員では指導できない。
だから、1年生の段階で計算が反射的にできない子ばかりになる。
かけ算九九は、覚えられない子には表を渡していいんじゃ。
それこそ素朴な『合理的配慮』じゃろ?
だけど、繰り上がり・繰り下がりは
しっかり教えないと、後々まで足を引っ張り、
小4までの計算力が身につかないで、生活面まで影響しかねない。」
そう言って、太郎吉先生は深くため息をついた。




