勉強のための大前提 その1
「その3つの条件とは? 」私が太郎吉先生に訊く。
「まあ、じっくり話をしようか。
お茶でも入れよう。」太郎吉先生、お湯を沸かし始めた。
「勉強のための条件その1、それは、
『生活の安定』じゃよ。」
「なんですか、その『生活の安定』って、
両親の収入ってことですか? 」
「別に金持ちであれと言っているわけではない。
朝・昼・晩と、バランスのとれた食事がとれて、
それなりの住環境にいられることが大切じゃが、
生徒本人にとって大切なのが
『睡眠』なんじゃよ。」
「『睡眠』? 」
「ここに来ている子たちは、
その大半が医師による神経発達症の診断が下りているか、
その子たちと特性が酷似している子たちだ。
共通点として、睡眠になんらかの障害があることもわかっている。
具体的には、
よく眠れず、夜中に何回か目が覚める『途中覚醒』、
睡眠時間そのものが短い『ショートスリーパー』など、
睡眠がしっかりとれていない子がいる。
問題なのは、『睡眠』の問題によって、生活リズムが崩れることだ。
もっと簡単に言えば、
『決まった時間に決まったことをする』という『生活習慣』が
身につく第一歩がつくりにくいということだ。
朝何時に起きて、夜何時に寝るのかが毎日バラバラだったら、
起きる・寝る以外の活動の時間が不安定、
ひどいと、思いついたことしかしないで一日が終わるなんて
だらしない状態となる。」
「つまりは、『ルーティーン』ということですか? 」リコさんも加わる。
「そうじゃ。『ルーティーン』というと、
MLBのイチローや大谷翔平など、
その分野で一流の人間がやることだと思うとる者がおるが、
断じて違う。
凡人こそが『ルーティーン』に添って、
毎日一定の日課で生活すべきじゃ。
『勉強』は毎日少しの時間でよいから、
一日の、決まった時間に続けることが大切。
だから、はじめに確認すべきは『睡眠』の質なのじゃ。」
「その点、実咲は問題なかった。
アタシが家庭教師に来る前は、
家で昼寝ばかりしていたくせに、
学校には遅刻せず通い続けていた。」
「リコさん、恥ずかしいよ。」




