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消えたい教師と死にたい生徒  作者: 「」れん
6/6

生きるって?

立花愛果たちばなまなは‥‥いじめをきっかけに死にたいと願っている主人公の高校三年生。優等生。

永田北哉ながたほくや‥‥自称教師失格の少しクズな担任。でもそのクズな行動にも一つ一つ理由があって…。生徒にも人気な先生。消えたいと思っている。

塙玄弥はなわげんや‥‥愛果と北哉と宏哉とは小さい頃からの知り合い。

朝日あさひ先生‥‥北哉の命の恩人。 

松下宏哉まつしたひろや‥‥転校生。玄弥の双子の弟。

真希まきちゃん‥‥愛果の友達。

車に轢かれて死ぬというのは、運転手の人に迷惑になると聞いたことがある。

でも、迷惑がかかったとしても自分が死ぬならいいと思うのが自殺希望者の言い分。

私は、人に迷惑をかけたくない。だけど、死にたい。

「愛果!早まるな!」

車のクラクションと同時に先生が私を歩道に押し出した。

「先生…」

「すぐ死のうとするな、危ないだろ。それに、運転手にも迷惑かかるんだぞ!」

「先生、私、」私は手に持っていたカメラを先生に見せた。

「なにこれ。」

「従兄弟から車の写真を撮って欲しいとのことで、撮ってました。」先生は私から離れて立ち上がった。

「え、あ。」

車から降りてきた従兄弟が「愛果ごめんな。」と言ってやってきた。

「ううん。大丈夫。ごめんね。」

「ん?なにこれ。」

「あ、初めまして。愛果の義理の従兄弟の立花熱喜たちばなあつきです。えっと…どちら様で?」

「初めまして、立花愛果さんの旦那になる予定の…」

「ふざけないでください。ごめんねあっくん、この人私の担任。」

「あ、先生ですか。いつも愛果がお世話になってます。」

先生は私の耳元で「え、なに。従兄弟くんめっちゃ礼儀正しいじゃん。なんか俺にまで敬語使っちゃって。」と呟いた。

私も「はい、めっちゃ礼儀正しいんです。」と呟き返した。

「あ、あとあっくんに言わなきゃいけないことが。」

「ん?」

「先生、あと一週間だけ私の家に泊まるから、あっくんの部屋空いてない。」

あ、そういえば先生がもう一週間泊まることになった。

「え、先生が泊まる?」

「うん。」

「え、先生が?」

「そう。」

「え、それは…色々と大丈夫なの?愛果に何かあったら…。」ちなみに、あっくんは過保護だ。

「大丈夫あっくん。女の子もいる。友達。家出少女。」

「それってハーレムってやつじゃん。大丈夫なの?何もされてない?」

「大丈夫。先生の家、なんか色々ぶっ壊れてるらしくて」

「おい、言い方。従兄弟くん、覚えてない?俺のこと。」

するとあっくんは怪訝そうな顔をして首を傾げた。

「覚えてないか。俺、家隣だったお兄ちゃんです。」

「家隣だった…お兄ちゃん?…あ、あの時の…ほく兄!その節は本当にお世話になりました。」

「いやいや。同い年なんだし、敬語じゃなくていいよ。」

「いえ、先生なので。じゃあ安心だ。愛果をよろしくお願いします。あ、じゃあ部屋がないなら愛果の部屋に寝るよ。」

「あ、そこには友達が寝るから、ごめん。」

「じゃあリビングで寝るよ。」

「邪魔…かな。じゃあ先生の部屋で。」


という感じで、先生の部屋からは夜、はしゃいでいる声が聞こえてきた。そのせいで寝れなかった。

ちなみに、真希はあっくんが家にいるのを見て「誰このイケメン」と目を光らせていた。従兄弟と言うと、その目は穏やかな目になった。


次の日。

「起きてください!起きてー!ほく兄起きて!」

部屋からあっくんの大きい声が聞こえた。

「やべ!!!」

先生の大きい声も聞こえてきた。そして二人仲良く部屋から飛び出してきた。

「先生…。」

「立花愛果!ご飯いらない!」先生はそう言い、バッグを持って飛び出して行った。

私は大きい声で「先生…。今日休みです!!!土曜日ですよ!!!!!」と叫んだ。

「え?」あっくんはキレよくこっちを向いた。

先生もドアを半分開けて「まじ。」と言い、スマホで日付を確認していた。

「あー、まじなやつだこれ。」

「あ、先生すみません。俺もてっきり平日かと。」

「どうりで真希が起きてこないわけだ。」

「うるさいな…。」噂をすれば、真希が目を擦りながら前髪を縛って眼鏡をかけてやってきた。

「ごめんね、真希。起こしちゃった。」

「ううん。大丈…夫」と言いながら真希はソファに倒れるように寝た。

「あ、寝た。」

「とりあえず先生もあっくんも寝ててください。寝不足ですよ。」

「君は寝不足じゃないの?」

「寝不足にしてた自覚あったんですね。」

「じゃあ静まれよ。」真希はむくっと起きてそう言い、また寝た。

「久しぶりすぎて盛り上がっちゃってさ…。で、君は寝ないの?」

「はい。寝不足だから寝なきゃと思ったんですけど、寝れなくて。」

「不眠症ってやつ?」

「いえ、考え事をしていて。」

「でも、ちゃんと寝ないと。」

「ありがと、あっくん。でも大丈夫。元気だし!」

「…そっか。じゃ、俺ももう一睡してくる。」

「うん。」

先生は棚からスルメイカを取り出し、椅子に座り、スマホを見始めた。

「先生は寝ないんですか?」

「うん。なんか目覚めたわ。」

「なるほど。」

「ねえ愛果、」真希は俯きながら起き上がった。

「ん?」

「もし、お父さんが来たって言ったらどうする?」

「急にどうしたの。」

「私、耳いいんだ。…お父さんの声がするの。」

「え…?」

先生が立ち上がって、「どういうことだ。ここがバレたってことか?」と深刻そうな顔をしていた。

「こんなに数日経ったなら、可能性はある。」

その時、ドアを激しくノックする音が聞こえた。

「先生、どうしましょう…。とりあえず私は真希を保護します。」

「わかった。…ってどうしよう。」

「?」

「鍵、開けたままだわ。」先生は微笑み、どうしようと焦り始めた。

「あっくんの部屋に隠してもらいましょう!私はここにいます。先生はキッチンに隠れていてください!」

計画を立てていると「いるんだろ!!」といいドアを開ける音が聞こえた。

私は真希を二階へと運び、急いで一階に戻った。

「ちょ、ちょっとなんなんですか、人の家にズカズカと!」

「真希は。真希はどこだ!いるんだろ!?出せよ!」

「真希?誰ですか。知りません!」

「嘘だ。ほら、そこの脱ぎ捨ててある靴下。俺が真希に買ってやったやつなんだよ!」

真希のお父さんはベッドの下にあった真希の今さっき脱ぎ捨てた靴下を指差してそう言った。

もう仕方ない。言ってしまおう。

「真希は、真希はあんたのものじゃないよ!もう!暴力振るようなお前には真希はやらない!」

そう強く言うと、頬を平手打ちされた。

「そんなの知らねぇよ!」

痛い。けど、真希のために私はめげなかった。

「知らないのはこっちだよ!ていうか、何も言えなくなったから知らねえよとかしか言えなくなったんだろ!弱虫毛虫!確かに家出するのは良くないよ。でもさ、真希は苦しんできたんだよ。あんたの暴力と身勝手を許して我慢してきたんだよ。自由になる権利はある。学生とかそんなの関係ない。真希は真希だ!一人の…命のある、人間だ!私は、お前が反省するまで真希を守る。匿う。真希は一生の友達だ!お前に手は出させない!」

そう、怒りながら強く言うと、今度はグーパンチをされそうになった。

私はやばいと思い、目をギュッと瞑り、手をギュッと握った。

でも、グーパンチはされなかった。

先生が、代わりに殴られていた。

「せ、先生…。」

「真希さんのお父さん。私は遠慮しません。」

「だ、誰だよ…。」

「僕は、こいつの…」

先生は私と肩を組み、「こいつの、か、彼氏です。」と言った。

顔が熱い。きっと、顔が薔薇のように赤くなっているのだろう。私は両手で顔を覆った後、深呼吸をして、手を外した。

「ふぅ、とりあえず、渡しません。真希の心の傷も身体の傷も一生物の傷になってしまったら、あなた、どうにもできませんよね。」

「…。」

「真希さんのお父さん、お子さんのことを大切に思ってるからここにきたんですか?お子さんのことを思ってるなら、もっとこいつも大切にしてください。真希さんの大切な友達なんです。あなたは、真希さんのお母さんと真希さんの心と身体どちらとも傷つけたんです。こいつが今言ったように、一生物の傷になったら…。そういう傷を治すのは、自分でしか治せないんです。しかも傷を治すのは時間がかかる。長い時間、その傷に耐えなきゃいけない。僕は、あなたを許しません。きっと一生。それと同じように、真希さんも一生、あなたのことを許さないし、あなたの元に戻らないと思います。」

「…わかったよ。真希がその気なら…。」

真希のお父さんがドアに向かって歩き出した時、真希が走って降りてきた。そして「お父さん!!!」と叫んだ。

「ま、真希…。」

「確かに、帰る気はないし、お父さんは許さないし大嫌いだし、この心の傷は癒えないけど。私が生まれてきたのはお父さんとお母さんのおかげだって知ってる。わかってるから!私、こんなにいい友達を持ったんだよ!…だから、…感謝、してるから。…じゃあね。」

「真希…。…そうだな。いい友達、持ったな。本当にすまなかった。お母さんにも、暴力は振らない。傷つけて、悪かったな。」

真希のお父さんは少し涙を流して帰って行った。

真希はその背中を見送り、ドアの鍵を閉め、ドアに背をつけ崩れ落ちるように座った。

「真希…。」

「愛果、先生。ありがとう。」

「真希、お前のとった行動は、きっとお母さんも救った。よくやったな。」

先生は真希の頭をポンポンとした。

「ありがとう…ありがとう…。」真希は涙でぐしゃぐしゃになり、声を上げて泣いていた。

ずっと、ずっと。

一時間くらいして、泣き疲れたのかなぜかあっくんの部屋で寝てしまった。

あっくんも部屋で熟睡していた。

私と先生は一階に戻り、無言で座っていた。

さっき殴られた頬がじんじんと痛い。

少し怖くて、我慢していた涙が溢れ出してしまった。

一粒だけ、溢れ出た涙を拭こうとすると、いきなり目の前が真っ暗になった。

先生が私の目を隠していた。

「よく、頑張ったな。」

そして、私の目を拭き、頭をポンポンとした。

「さっき、ありがとう、ございました。」

私はその後も涙が止まらなくて子供のように泣きじゃくった。その度に先生は笑って「君らしいね。よく頑張った。」とよしよししてくれた。

そして、私も泣き疲れて寝てしまった。

起きたら十五時になっていた。私は飛び起きて食卓テーブルにだらっと座っている二人を見て「こ、こんなに寝たんですか!?やばい、昼ごはんとか朝ごはん食べましたか?」と焦ってキッチンまで走った。

キッチンはものすごく荒れていて、あ、頑張ったんだな。と思った。そして、キッチンのゴミ箱にカップラーメン四つ捨ててあった。朝昼と二人で食べたからだろう。

「すみません!お腹空きましたよね!というか私もお腹空いたので何か作ります!…真希も起こさなきゃ!」

私はげっそりした二人の介護と赤ちゃんのように寝てずっと起きない真希のお世話で大変だった。

最終的にはうとうとしている真希を座らせ、ご飯を四人分作り、げっそりしたのは私だった。

ご飯を食べて元気になった三人は私にご飯を食べさせようと必死だったが、私は寝起き五秒でいきなり動きすぎて疲れて思考停止してしまっていた。

そんな時先生が「はい、あーん」といい、私の口にご飯を運んできてくれたから食べたが、その後恥ずかしくなって先生の持っている箸を奪い取り、自分でかき込むように食べた。

「早。」

「ご、ご馳走様でした。」

真希は何故かニヤニヤしていた。

そして先生は顔を赤らめていた。


翌日、この日は先生と私だけだった。

近すぎるとドキドキしてしまうので、ソファに座りながらスルメイカを食べている先生から離れ、私はダイニングチェアに座った。

「日曜日…なんで休みなのにこんなに憂鬱にならなきゃいけないんだー!!!!」

「…先生、なんで休みなんですか?」

「知らないよ…!顧問を持たせてくれないんだ。」

「サービス的なやつじゃないですか?」

「まあ、俺イケメンだから?サービスしちゃうよねー。」

自分で言った。

「にしても静かだなー。従兄弟くんは久しぶりに地元に来たからおばあちゃんにお土産買いに行っていないし、真希は部活。」

「私を除けば、暇なの先生だけですね。」

「なぜ君を除く。」

「先生なのに…暇なんですね…笑」

「嘲笑するな。笑。…まあ、二人きり、だね。立花愛果。」

窓に映る私を見ると、顔が赤くなっていたので私は先生から顔を背け、両手で顔を隠した。

すぐそうやってドキドキさせてこないでください…

すると先生は私に近づき、「立花愛果。」といい、顔を覗いてきた。私は手を外し、また先生から顔を背けた。そしてまた、先生が顔を覗いてきたので再び顔を背けると、「こら。」と頬を膨らましながら私の顔を無理やり自分の方に向けてきた。

「顔赤。笑」先生は少し笑いながら私の顔を両手で挟み、顔を揺らした。

そして私の顔にぐっと顔を近づけて「なんで赤くなってるの?」とニヤニヤして聞いてきた。

「そ、それは、先生が、先生が…」先生が好きだからですよ。言えるわけない言葉を頭に浮かべながら「先生の顔が近いからです。…誰だって、人の顔が近くにあったら赤くなります。」と言った。

顔が赤くなったのは「二人きり、だね。立花愛果。」と言われた時。流石に誤魔化せないかと思ったが、「ふーん。」と先生は不満そうな顔をして返事をした。あ、誤魔化せたんだ。…でもなんでこんなに不満そうなんだ?

「なんですかその返事。」

「いや、別に。」どうしたんだろう。と不思議に思いながらも「あ、そういえば国語の課題なんですけど、」と課題の話に切り替えた。

「ん?」

「もう提出していいですか?」

「だめ。みんな一緒に提出しないと。平等にね。」

「えー、お願いしますよー!」

「だめ。もう君のこと優等生って呼べなくなるから。」

「そんなに呼んだことなかったですよね。」

「とりあえず、だめ。」

「…わかりましたよ。」

私は頬を膨らませながら不満げな顔をしてみせた。

すると先生は悪い顔をしながら「そんなに言うんだったら、俺にキスしてよ。もしキスできたら、今提出でもいいよ。」と言った。

そんなことできるわけがない。だから先生はそう提案をしてきたのだろう。

でも私は、いつの間にか先生の唇に近づいていた。

別に、そんなに早く提出したかったわけでもないし、キスをする気もなかったのに、何故かキスをしようとしてしまっていた。

先生は咄嗟に私の口にスルメイカを入れてきた。

私は我に返り、スルメイカを齧った。

危ない。またキスをしてしまうところだった。

「そ、そんなに早く提出したかった…?」

「あ、えっと、これはその…」

「もしかして、俺とキスしたかっ…」先生が「た」の一文字を発する前に私は齧りかけのスルメイカを先生の口の中に突っ込んだ。

「…?」先生は怪訝そうな顔をしていた。

「そ、それ以上言わないでください。あと…」

私は先生の耳元で囁いた。

「か、関節…キスです…。」と。

その瞬間、先生の顔が柔らかくなり「提出していいよ。特別にね。」と微笑んだ。

私はダッシュして部屋に行き、課題を取りに行き、「お願いします。」と渡したあと、再びダッシュして部屋に戻った。

そしてベッドにダイブして、枕に顔を埋めた。

「…なに、キスしようとしてるのよ…。」



《生きるって?》

屋上なんて、本当は出入りしたらダメなのに。

わざわざ屋上に上がって、下を見下ろしに来てしまう。

「なーに、自殺?優等生なのに屋上なんて来るんだ。」

「自殺じゃないです。でも、ここから落ちたら面白いだろうなと。」

「アトラクションじゃねーんだよ。ま、危ないし行こ。倉庫。」

「倉庫ですか。そういえば全然行ってなかったですね。」

「まあ、家でふたりきりが多かったしな。そうですね…3週間過ぎたのに。」

「いいじゃん。楽しいし。」

まあ確かに楽しいけど、最近はやけにドキドキしていて楽しいけど、楽しくない…。

「…先生、生きるってなんですか。」

「唐突だね。まあもう慣れたけど。生きるか…。息するとか、動く。」

思った以上にふざけた答えが飛んできたので、開いた口が塞がらなかった。

「い、いやそうじゃなくてですね、なんだろう、生きる意味?…わからなくなっちゃって。友達もできたし、いじめもなくなった…好きな人もできた。ある程度充実しているはずなのに、未だに生きる意味がわからなくて。」

「…生きる意味。そんなのはっきりとした意味なんてなくていい。ないんだよ。ただ、今、生きる意味があるとしたら、」

「あるとしたら?」

先生は微笑み、「生きる意味を探すのが、今の生きる意味なんじゃないの?」と、言った。

そして「そんなに死にたいんだったらこっちきて」と私の手を引っ張った。

ついた先には階段があり、先生は私を踊り場まで連れて「ここにいて」といい、先生一人で降りた。

そして「来い」と手を広げてきた。

「行く?私が?この階段を飛び降りろってことですか!?先生に向かって!?」

「うん。まあ、落ちた気持ちになるかなーって。大丈夫だ。君、ジャンプ力凄いんだし。」

「そういう問題じゃ…」

「俺、受け止めるから。君の死にたいって気持ちも!」

受け止める、

この言葉を私は信じることにした。受け止めてくれる人がいる。なら思いっきり飛び込めばいい。

「…わかりました。」

私は三歩下がり、走って

飛んだ。先生の元へ、飛んだ。九段もある階段を思いっきり飛んだ。


先生は下敷きになり、痛そうだった。でも、私を抱きしめてくれて、笑顔だった。

「痛たた…。すみません。でも、私、飛べました。」

「よくやったな。」

先生は下敷きになったまま私の頭をポンポンした。

だから私は座ったまま起き上がった。「あ、ほ、本当にすみません!怪我とか…。」

「ないよ。しっかり受け止められたから。どう?飛んだ気分は。」

「スッキリ、しました。」

すると先生も起き上がり、私にハグをした。

「生きる意味、俺と一緒に探そう。」

「…はい!」

先生はハグをしたまま、また頭をポンポンとした。

「よく頑張ったな、立花…いや、君も頑張ったんだから俺も頑張んないとな。」


「愛果。」


胸がドキッとした。止まらない鼓動。

今くらい、先生じゃなくて…「…ほく兄…。」

先生は目を丸くさせ、「久しぶりだな、愛果からそう呼ばれたのは。」と言った。

「はい。」

「あとさ、」

「?」

先生は顔を真っ赤にしながら「愛果は…その、す、好きな人とかいないの?」と聞いてきた。


「…先生。」

「え?」

「好きです。先生。」

無意識だった。今まで言えなかった言葉が、ポロッと出てしまった。


《先生編》

立花愛果が道路に飛び出した時は、俺ももう死んでもいいという勢いで立花愛果を歩道に押し出した。

でもそれが、従兄弟くんの趣味に付き合ってただけだったなんて。

従兄弟くん、かっこいいから彼氏かと思ったけど、従兄弟でよかった。

好き、だから。



立花愛果が強いことは知っていた。

でも、必死で友達を守る姿は初めて見た。俺は立花愛果の強さに元から惚れていたのにまた惚れてしまった。

「私は、お前が反省するまで真希を守る。匿う。真希は一生の友達だ!お前に手は出させない!」俺は、そう強く言い返す彼女が殴られそうになるのが見てられなかった。

だから、キッチンに隠れててって言われたのに飛び出してしまった。

殴られた時は痛かったけど、怯える彼女を見るのが辛かった。

翌日。

「日曜日…なんで休みなのにこんなに憂鬱にならなきゃいけないんだー!!!!」

「…先生、なんで休みなんですか?」

「知らないよ…!顧問を持たせてくれないんだ。」

「サービス的なやつじゃないですか?」

「まあ、俺イケメンだから?サービスしちゃうよねー。」

自分で言った。

「にしても静かだなー。従兄弟くんは久しぶりに地元に来たからおばあちゃんにお土産買いに行っていないし、真希は部活。」

「私を除けば、暇なの先生だけですね。」

「なぜ君を除く。」

「先生なのに…暇なんですね…笑」

「嘲笑するな。笑。…まあ、二人きり、だね。立花愛果。」立花愛果は俺から顔を背けた。

どうしたのだろうと思い近づき、「立花愛果。」といいながら顔を覗くと立花愛果は嫌そうに顔を背け続けた。

「こら。」と頬を膨らましながら無理やりこちらへ向けると顔が赤くなっていた。

「顔赤。笑」

「なんで赤くなってるの?」と俺はニヤニヤしながら聞いた。もし、好きとか言われたら…と考えてしまった。

「そ、それは、先生が、先生が…」

先生が、

この言葉の先を期待しすぎると、がっかりしてしまう。でも、『好き』という言葉がどうしても思い浮かんでしまっていた。

「先生の顔が近いからです。…誰だって、人の顔が近くにあったら赤くなります。」

なんだ。やっぱり。期待しすぎるとダメなんだよ。

「ふーん。」俺は不満そうな顔をして返事をした。

「なんですかその返事。」

「いや、別に。」

「あ、そういえば国語の課題なんですけど、」

「ん?」

「もう提出していいですか?」

「だめ。みんな一緒に提出しないと。平等にね。」

「えー、お願いしますよー!」

「だめ。もう君のこと優等生って呼べなくなるから。」

「そんなに呼んだことなかったですよね。」

「とりあえず、だめ。」

「…わかりましたよ。」

立花愛果は頬を膨らませながら不満げな顔をしていた。

俺は冗談で「そんなに言うんだったら、俺にキスしてよ。もしキスできたら、今提出でもいいよ。」と言った。

でも立花愛果は近づき、キスをしようとしてきた。

俺は咄嗟に手に持っているスルメイカを立花愛果の口に入れた。

「そ、そんなに早く提出したかった…?」

「あ、えっと、これはその…」

「もしかして、俺とキスしたかっ…」

立花愛果は自分の齧りかけのスルメイカを俺の口に入れた。

「…?」

「そ、それ以上言わないでください。あと…」

そして、立花愛果は「か、関節…キスです…。」と俺の耳元で囁いた。

「提出していいよ。特別にね。」と微笑むと、かおをあかくしてダッシュして部屋に行き、課題を取りに行き、「お願いします。」と渡したあと、再びダッシュして部屋に戻った。

俺は机に頭を打ちつけ、「やば…」と顔を赤くした。


《生きるって?》

立花愛果が屋上に上がるのが見えた。

俺は、自殺かと思って立花愛果を追いかけた。

「なーに、自殺?優等生なのに屋上なんて来るんだ。」

「自殺じゃないです。でも、ここから落ちたら面白いだろうなと。」

「アトラクションじゃねーんだよ。ま、危ないし行こ。倉庫。」

「倉庫ですか。そういえば全然行ってなかったですね。」

「まあ、家でふたりきりが多かったしな。そうですね…3週間過ぎたのに。」

「いいじゃん。楽しいし。」

「…先生、生きるってなんですか。」

「唐突だね。まあもう慣れたけど。生きるか…。息するとか、動く。」

重い質問をしてきたから明るく返すと「い、いやそうじゃなくてですね、なんだろう、生きる意味?…わからなくなっちゃって。友達もできたし、いじめもなくなった…好きな人もできた。ある程度充実しているはずなのに、未だに生きる意味がわからなくて。」と真面目な顔をしてそう言われたので、俺が前に先生に言われた言葉を贈った。

「…生きる意味。そんなのはっきりとした意味なんてなくていい。ないんだよ。ただ、今、生きる意味があるとしたら、」

「あるとしたら?」

「生きる意味を探すのが、今の生きる意味なんじゃないの?」

「そんなに死にたいんだったらこっちきて」と俺は立花愛果の手を引っ張った。

屋上に繋がる階段につき、「ここにいて」と立花愛果を踊り場で待たせ、俺は階段から降りた。

そして「来い」と手を広げた。

「行く?私が?この階段を飛び降りろってことですか!?先生に向かって!?」

「うん。まあ、落ちた気持ちになるかなーって。大丈夫だ。君、ジャンプ力凄いんだし。」

「そういう問題じゃ…」

「俺、受け止めるから。君の死にたいって気持ちも!」

すると立花愛果は覚悟を決めたかのように「…わかりました。」といい、俺の元へ飛んできた。

受け止める。俺は、立花愛果の全てを、受け止めるんだ。

立花愛果は俺に上乗りになり、俺は立花愛果の下敷きになった。

「痛たた…。すみません。でも、私、飛べました。」

「よくやったな。」

俺は下敷きになったまま立花愛果の頭をポンポンした。

立花愛果は座ったまま起き上がると「あ、ほ、本当にすみません!怪我とか…。」と俺の心配をした。

「ないよ。しっかり受け止められたから。どう?飛んだ気分は。」

「スッキリ、しました。」

俺も起き上がり、立花愛果にハグをした。

「生きる意味、俺と一緒に探そう。」

「…はい!」

俺はハグをしたまま、また頭をポンポンとした。

「よく頑張ったな、立花…いや、君も頑張ったんだから俺も頑張んないとな。」

ずっと、ずっと言いたくても言えなかったんだ。

「愛果。」

愛果は目を丸くさせ、顔を赤くしながら「…ほく兄…。」と呟いた。

俺も目を丸くさせ、「久しぶりだな、愛果からそう呼ばれたのは。」と言った。

「はい。」

「あとさ、」

「?」

そして、ずっと聞きたかったこと。俺は、勇気を振り絞って「愛果は…その、す、好きな人とかいないの?」と聞いた。


「…先生。」

「え?」

「好きです。先生。」

その言葉は、とても嬉しくて、とても欲しかった言葉。でも、


一番ほしくなかった言葉でもあった。



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