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第六話 旅の終わり、旅の始まり

「エ……エド……さん……」


 かすれた声が小屋に響いた。


 どうやら俺は気を失っていたらしい。


 聞き覚えのある声にゆっくり目を開ける。


 そこには心配そうにこちらを見つめる勇者アカネがいた。


「勇者様……」


 思わず声が漏れる。


 まだ起き上がれないようだった。


 周囲を見る。


 回復ポーションの空き瓶が床に無造作に転がっていた。


 どうやら気を失う前に手持ちのポーションを全部使ったらしい。


 記憶は曖昧だった。


「勇者様、ご無事で何よりです」


 アカネは弱々しく微笑んだ。


「私もよく分からなくて……」


 俺は荷物を確認する。


 水は少し。


 保存食は二人で数日分。


 簡易テント。


 ナイフ。


 ショートソード。


 ポーションは空。


 かなり厳しい。


 だが生きている。


 それだけで十分だった。


「まずは水を」


 アカネはゆっくり受け取った。


 少しずつ飲む。


 その姿を見て、ようやく胸のつかえが少し下りた。


 俺は今までのことを話した。


 魔王の最後の攻撃。


 勇者様の死を装ったこと。


 セシリオが喜んだこと。


 首を落とそうとしたこと。


 そして抱えて逃げたこと。


 アカネは黙って聞いていた。


「そう……だったんですね……」


 しばらく沈黙が続く。


 俺は意を決した。


「俺はこの国を出ようと思います」


 アカネは顔を上げる。


「勇者様はどうしますか?」



 私は考える。


 頭はまだぼんやりしている。


 でも。


 セシリオ様。


 ミーア様。


 王様。


 みんなの顔が浮かぶ。


 魔王を倒した。


 なのに。


 私は殺されかけた。


 帰る場所はない。


 もうこの国にはいられない。


 しばらくして。


 ようやく答えが出た。


「私も……この国を出ます」


 エドさんが黙って聞いている。


「もしよければ……」


「連れて行ってください」



 勇者様はそう言った。


 俺も腹をくくる。


「分かりました」


「しばらくここで休みましょう」


「食料は数日分あります」


「俺が狩りや採集もします」


「勇者様は体を休めてください」


 勇者様は小さく頷いた。


 俺は立ち上がる。


 外はもう夕方だった。


 薪も集めないといけない。


 火も必要だ。


 生きるためにやることは山ほどある。


 小屋を出る前。


「エドさん」


 振り返る。


「ありがとうございました」


 勇者様は少しだけ笑っていた。


 その笑顔を見て。


 俺は初めて。


 助かってよかったと思えた。


 俺たちの旅は終わった。


 そして。


 新しい旅が始まろうとしていた。

 

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