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REZON 完全版 コトノハノ鏡 -秘められた神話の旅-  作者: 壇 瑠維
第1部 「神話の門」 第3章 

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「八岐大蛇と伝説の剣」 04

2025.5.25 島根・島根県立古代出雲史博物館前


 現在改装中の博物館に入ることは叶わなかったが、1984年当時から発掘に関わってきたという人物にコンタクトを取る事が出来た。今は現役を退き、博物館の訪問者を案内するガイド役としてボランティアに勤しんでいるらしい。

 博物館の前で待ち合わせたのは小谷と名乗る老人で、「やあやあ」と人懐っこい笑顔を浮かべながら近づいてきた。


「小谷さんですね?初めまして、御堂と申します」

「桐生です。よろしくお願いします」

「はいはい、こちらこそよろしくお願いします。東京から偉い先生さんが来られた言うんで、緊張しとります」


 3人は博物館近くの喫茶店に入り、そこで小谷の話を聞かせてもらうことにした。

 ドアを開けるとカランカラーンとベルがなる昔ながらの喫茶店だ。


「いらっしゃいませー」


 どこか脱力したような店員の女性に案内され、奥まったボックス席に陣取る。


「ご注文はお決まりですかー?」


 メニュー表を見て特に異存もなかったので真理が注文した。


「では、ホットを3つで」

「ホット3、入りまーす」


 えらくマイペースな人だな。桐生は都会の急かされるようなカフェとの違いに居心地の良さを感じていた。


「では、発掘当時のお話からお伺いして良いですか?」


 真理の言葉に小谷が嬉しそうに話し始める。


「ご存知やと思いますが、これは農道を作る調査をしてた時、一人の調査員が田んぼで“須恵器”のカケラを拾ったことが始まりでして。“これ、あるんちゃうか?”って慎重に掘り進めたら、1年後に斜面から出てきたんですわ。あのびっくりした事。四列になった銅剣が“ビシーっ”と並んでて、みんな“えらいこっちゃ”とお騒ぎですわ」


「1984年のお話ですね。それから続けて、銅鐸や鉾も発見されたとか」


「そうですねん。“もっとあるんちゃうか”言うて、私ゃそんな欲かいたらあかんの違うか、とか言うてたんですけどやっぱり出てきて。今では全部国宝ですわ」

「すごい発見ですよね……その後、特に大きな発見とかは無かったんですか?」


 一瞬小谷の表情に迷いが見えた。


「いや、それは、何ちゅうかその・・・」

「言い難いことかもしれませんが、私達には必要な情報なんです。秘密は必ず守ります。お教え願えませんか?」


 小谷は俯いて逡巡していたが、伺うように真理の顔を見た。


「本当に、誰にも言わないと約束していただけますやろか?」


 真理は小谷の目を見つめ、力強く頷いた。小谷は半ば諦めたような感じで語り始めた。


「銅剣は・・・出ましてん。小規模ながら、ですけんど」

「荒神谷遺跡からですか?」

「・・・場所は言えんのです。勘弁してください・・・」

「分かりました。それは、いつ頃のお話しでしょうか?」


 小谷は少し考え、コーヒーに手をつけてから答えた。


「4年前。今からちょうど4年前です、はい」

「小規模と仰いましたがどれぐらいの数が発掘されたんですか?」

「8本。固まって。荒神谷の時と同じように固まって」

「その銅剣は、今どこにあるんですか?」

「マキしか、知らん」

「マキさん?」


「銅剣を見つけた奴です、はい。マキが見つけて、多分今も持っとります」

「・・・出土品を、見つけた個人が持っている?色んな意味であり得ない話に聞こえるのですが・・・」

「本物なら、ねえ、本物ならあり得ん話ですよ、はい」

「・・・つまり、見つかった銅剣は本物ではない・・・?」


 小谷が悲壮な表情を浮かべながら真理に訴えた。


「私ゃ、言うたんですよ。欲かいちゃいけねって、何遍も。言うたんですよ!」

「その時の状況を詳しく教えていただけますか?」


 小谷が弱々しく椅子にもたれかかり、疲れたように話し始めた。


「きっかけはマキでした。色んな伝承を調べる中で、8本の剣が埋まってる可能性が高い場所を見つけたと。近くには目立つ遺跡もなかったんで、初めは誰も本気にしとりませんでした」

「それで?」

「しかしマキは粘り強く交渉して、色んな資料を作って、高杉館長さんがその熱意を買ってくれた事もあって小規模ながら発掘の許可と予算がおりましてん。足りん分は、マキが自分で色々工面しとりました」

「で、発掘調査が行われたと」

「はい。高杉館長とマキ、私の3人で“部活みたいやな”と笑いながら始まりました。マキの予想した地点を慎重に調べ、金属探知機が反応した場所を慎重に掘り進めると・・・ホンマに出てきたんです」

「で、それがどうして本物ではないと分かったんですか?」


 小谷が苦悶の表情を浮かべながら答える。


「そこに、あっちゃならないものがあったからなんです、はい」

「あってはいけないもの?」

「さすがの高杉館長も、それは見過ごせんかった。怖い顔して、“これは何だ”と。マキは答えることも出来んと、真っ青になって震えとるだけでした。一言“これ持って消えろ”って言い残して、調査は終わり。帰り際に“小谷さん、この事は誰にも言っちゃいけねえ”って言われたんで、今の今まで胸の内にしまっとりました」

「その後、マキさんは?」

「次の日から来なくなった。今はどこで何をしてんのか・・・」

「ありがとうございました。よくお話しくださいました」

「・・・自分でも分かんねえんだ。これは墓まで持ってこう、って決めてたのに・・・でも、今この人に伝えなきゃ、って思ったんだ」


 小谷はこの1時間ほどで数年分も老け込んでしまったように見える。


「ちなみに、マキさんを探したいと思うのですがどのような漢字を書くのか教えていただけますか?」


 小谷は驚いたような顔をして、次に苦笑いをしながら答えた。


「すんません、皆があいつの事をマキと呼んどるので、ついそのまま言うてしまいました。マキはあだ名で、本名は鐘巻一路かねまき・いちろと言います。漢字はお寺の鐘に巻く、真実一路の一路です、はい」


 何かが、繋がった。

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