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魔女の一族  作者: 月鳴
8/8

008:すべては大団円

これにて、完!(今のところ)

 


 それから、時は経ち……。

 魔女の家には家族が増えていた。家族の誰からも最も愛されているアイドル的存在だ。

 その娘は人外の姉たちとは違い、人と同じようにゆっくりゆっくり成長した。だからこそ誰もが守り慈しんで大切に育てられている。

 家族の中で一番か弱い生き物が、この末の娘だった。

「トトネー、ミルクの時間ですよぉ〜」

 カラカラとなる玩具を片手に赤ん坊を覗き込むのは長女のイドゥア。

「……いっぱい飲め」

 瞬きもせず凝視するのは次女ロギニ。

「母様、これどうぞ」

 適温にしたミルクを入れた哺乳瓶を差し出すのは三女のハベル。

「お母様ー、私も抱っこしたい」

 そう言って手を差し出すのは四女ニナ。

「……………………バァ」

 無表情の顔を手で隠したり開いたりしているのは五女ホロスティス。

「みんなー! 新しい揺りかご出来た!」

 ばたばたと階段を降りてくるのは六女のヘリオーシュ。

「ハベル、ありがとう。ほれトトネ、ミルクだ…」

 優しい顔で腕の中の宝物に微笑みかけるのは魔女。

 魔女の家は尊い暖かさに包まれていた……。



 一方、外の森では。ドゴンバコンという派手な破壊音が絶え間なく響いていた。

「いい加減諦めろ魔王! お前にあの家での居場所などない!!」

「五月蝿い! それは魔女が決めることだ!!」

 あれから色々あって勇者となった男ソリィルとまだ諦めていなかった魔王ワルグルドが、「どっちが魔女に相応しい男か」という魔女が聞いたら鼻で笑いそうな名目で死闘を繰り広げている。

「お前、あそこに混ざる気あるか?」

「笑えない冗談は嫌いです。それと勝算のない戦いも」

「……だよな」

 ドワーフのレーヴェンとエルフのタランベルクはどこか遠い目でその戦いのさまを見ていた。

 そこへひょこりとどこかから現れたのは夢魔のヨキ。ヨキもまた眼前の様子を見て遠い目になった。

「………あそこには混ざれませんよね」

 居た堪れない場の空気を壊したのは彼らの愛すべき娘たちだった。

「父さーん! そんなとこいないでこっち来てー!」

「ああ、今行く!」

 父に似て小柄だががっしりとした身体に育ったヘリオーシュが呼ぶ。それにニコニコとしながら答えたレーヴェンを彼の里のものが見たらおそらく三度見はされるだろう。(里だと恐ろしく無愛想なのだ)

 袖の袂をくいっと引かれた感触がしてタランベルクが下を見ると自分と同じとんがり耳の少女がいた。

「…15秒後にはここに木が落ちてくる。危ないから家に行こう…?」

「そうか。教えてくれてありがとう。じゃ、行こうか」

 焦点の合わない目に目を合わすと袖を持っていた手を離して自分の手と繋いだ。それだけで暖かい気持ちになるなんて、タランベルクはこうなるまで知らなかった。

 そんな二組の親子をヨキが羨ましげに見ていると顔に影がかかった。自分と同じコウモリの翼を持った女の子が頬を膨らませてこっちを見ている。

「し、仕方ないからお父様もくればっ!」

 ふんっと効果音が聞こえそうな感じでそっぽを向いた娘に思わず笑みを漏らす。

「うん、ありがとう。ニナ」

「っっっ…! 早く来ないとお茶冷めちゃうんだからね!」

 バサバサと音を立てて飛んでいく娘の耳が、真っ赤になっているのを父は見逃さなかった。


 外の破壊音は一向に止みそうにない。流石に止めようと思ったイドゥアの胸の前に手が伸びる。

「……ロギニ? どうしたの?」

 妹が自分を止めるなんて。

「大丈夫。ねえさんが止めなくても、ストッパー来た」

 姉妹の中でもっとも聴力に優れた妹がそのケモミミをぴくぴくさせながら答える。

「…そっかぁ。じゃあいいわね」

 その言葉にイドゥアはにまにまと悪戯っぽく笑った。

「母さんを困らせてばかりの連中には鉄拳制裁もありだよね」

「………目には目を。力には力を」

「そうそう! あーでもたまには思いっきり暴れたい!」

「…わかる」

「………行っちゃう?」

「………うん」

 そして長女と次女は勢いよく飛び出した。


「あーあー。姉さんたち行っちゃったよ」

「まあ、たまにはいいんじゃない。姉さんたち最近はトトネを気にしてあんまり動いていなかったから」

 六女と三女はそんな姉たちを見送る。


「お姉ちゃんとヘリちゃん、お茶入ったよ!」

「…入ったよ」

 扉の向こうを見ていた二人を四女と五女が呼ぶ。


「ニナ、あと一人分追加しておいてくれる?」

「え? …ああ、ガラムさんも来たの?」

「そうみたい。姉さんたちも参戦しちゃったから防音魔法かけ直さないとかなー」

「大丈夫。もうやっておいたから」

「さっすがハベル姉さん!」

「褒めてもクッキーはあげません」

「ほらほらしゃべってるとお茶冷めるよー」

「………………(モゴッ)」

「ああっホロス姉さんもう食べてるっ! 私も食べる〜!」







 生まれも、種族も、何もかもわからないわたしに。

 きっかけはとんでもないものだったけれど、こんな幸せが訪れたことは、感謝せねばなぁと思う。しかし許すかどうかはまた別だ。

 勇者と娘たち(※自分の子含む)にボッコボコにされた可哀想な魔王と、争いを止めにきたはずが「あんたも同罪よね」という無慈悲な娘の一言により同じくボコボコされた人狼族長は魔女の一族の団欒を窓の外から歯を食いしばって見ることしかできなかった。

 ボッコボコにした方は家の中でお茶を楽しんでいた。



 騒音の消えたあとの森には、おぎゃーと元気に泣く赤ん坊の声と楽しそうな笑い声が響いていた。








 END

読み返してみればとんでも展開ばかりのお話にお付き合いいただきましてありがとうございました。


結局、家の外組もお家に入れてもらえます。みんな仲良し(棒読み)


このあとは設定メモでも載せようかなぁと思っていますが、はてさてどうなることやら。


ではここらで一旦お別れいたします。またどこかでお会いできればうれしいです。

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