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第一章:見えない隣人

都内の古びたマンションに住むフリーライターの佐藤は、最近、夜な夜な天井裏を走る小さな足音に悩まされていた。

「またか……」

ネズミだ。都会の喧騒に隠れ、彼らは確実にその数を増やしている。

テレビのニュースでは、地方で発生したハンタウイルスの症例が報じられていた。ネズミの排泄物から舞い上がった塵を吸い込むだけで、肺や腎臓が蝕まれる。佐藤は鼻先をかすめる埃っぽさに、言いようのない嫌悪感を覚えた。

ベランダに目を向ければ、手すりには鳩が羽を休めた跡がある。乾燥した糞が風に舞い、白く濁った粉末となって室内に忍び込む。

「クリプトコックス」——鳥の糞に潜む真菌が脳を冒すことなど、平和を享受する人々は誰も気に留めない。

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