第十一話 vs禁忌の子
地鳴りがする程の魔物の群れへと跳ねながら、俺は冷静に魔物を一匹一匹を見定めていた。
『(初めて見るのは、跳ねる氷、やたら数の多いキノコ、走り回る根っこか。デカ猪や巨大蝿は相変わらず鬱陶しそうだが、奥にはヤバそうな木と女王蝿っぽいのも見えるし、中々どうして骨が折れそうだ)』
各種入り混じっても争いこそしないが、奴らとて一枚岩ではないのか、魔物間の意思疎通はとれていないようだった。
事実、奴らの陣形は不細工に細長い。
足の速いジャイアントボアや空を飛んでいるヴァンピィフライは明らかに独断専行しているし、逆にその他の魔物は進行がかなり遅れていた。
『(数は多いが猪や蝿なら犬人さん達が負ける訳がねぇ、目指すべきは後ろに控えている奴らだな)』
俺は即座に方針を固め、その場で大きく溜めを作る。
直後、空中のヴァンピィフライ目掛けて二十メートル程跳躍し、奴ら蹴落としながら奥へ奥へと進んだ。
奴らの数が多いこともあって、足場に困ることはなく、俺はぐんぐんと犬人さん達から離れていく。
次第にヴァンピィフライが途切れ始め、後続の魔物に近付いた所で、すかさず俺は《鑑定》を発動させた。
まずは大地を跳ねるバレーボール大のゴツゴツした氷塊。
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個体名:(なし)
種族名:アイススライム Lv 3/30
状態 :魅了、飢餓
生命力:174/210
精神力:280/280
攻撃力:16
知力 :19
敏捷 :35
技量 :21
運 :14
技能:
《雹弾》
特性:
《水氷耐性 Lv3》
称号:
《禁忌の子》
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続いて、最も数の多い三十センチ程の手足の生えたキノコの群れ。
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個体名:(なし)
種族名:レッサーマイセリア Lv 23/30
状態 :魅了
生命力:420/420
精神力:450/450
攻撃力:53
知力 :58
敏捷 :46
技量 :49
運 :35
技能:
《伸菌》《菌界》《自己再生》《意思伝達》
特性:
《水氷耐性 Lv2》
称号:
《禁忌の子》《共食い》
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最後に、体の割に随分と大きな口を持った十五センチ弱の太い植物の根っこ。
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個体名:(なし)
種族名:デスマンドレイク Lv 4/30
状態 :魅了、飢餓
生命力:146/170
精神力:260/260
攻撃力:20
知力 :28
敏捷 :37
技量 :14
運 :36
技能:
《叫走》
特性:
《水氷耐性 Lv2》《劇毒》
称号:
《禁忌の子》
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奴らに共通するのは魅了の状態異常と《禁忌の子》とかいう不穏な称号だ。
称号の影響なのか、明らかに普通の魔物よりステータスが貧弱だが、正直あまり人のことを言えた義理ではない。
それに、弱さを打ち消すだけの圧倒的なまでの個体数こそが一番の問題点だった。
まずは、《共食い》でレベルが上昇しているレッサーマイセリアを最大限警戒しつつ、アイススライムとデスマンドレイクの数を減らすべきだろう。
そう決心すると同時に俺は目に入る魔物という魔物に《鑑定》をかけた。
『さあ、こいよ魔物どもっ!! おめえら全員俺様の経験値にしてやらあぁぁ!!!』
脳を埋め尽くす膨大な情報を吐き捨てる様に声をあげる。
瞬間、小鼠の挑発と《鑑定》の不快感に怒り狂った魔物達は、俺目掛けて殺到した。
進路を急に変えて一目散に向かってきたせいか、少なくない数の魔物達が衝突、追突し、奴らの陣形が乱れ始める。
とはいえ大多数の魔物がこちらに向かっているという事実に変わりはなく、俺は命がけの戦いが始まったことを悟る。
『さて、成長した俺の攻撃力はどんなもんかなっ!』
気丈に振る舞いながら最大の脅威であるデカキノコへと弾丸のように跳ね、奴の首筋? を一齧りする。
固いゴムを齧ったような感触の後、《齧削》《瘴牙》《練気》を乗せた俺の前歯は首尾よく奴の耐久を貫通し、緑色の体液が噴き出た。
奴は痛みにぶるぶると体を震えさせ、声帯がないのか極めて静かにどさっと前のめりに倒れた。
『ペッ、ペッ、エリンギみたいな顔して毒キノコなのかよっ、舌がピリピリしやがる』
口に含んだ奴の体液をできるだけ吐き出しながら、相手の状態を確認する。
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個体名:(なし)
種族名:レッサーマイセリア Lv 23/30
状態 :魅了、麻痺、出血
生命力:289/420
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『よしっ、攻撃力も《瘴牙》も申し分ねえ……って何してんだあいつら、一応離れとくか?』
俺が無邪気に喜んでいる間に、多くのキノコ達がなにやらさわさわと傘を揺らし、他の魔物を気にした様子もなく胞子をまき散らし始めた。
ステータスにあった《菌界》という技能だろうか?
胞子が周囲に広がり、デスマンドレイクはもがき苦しみ始めたが、アイススライムにその様子はない。
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個体名:(なし)
種族名:デスマンドレイク Lv 3/30
状態 :魅了、飢餓、感染
生命力:122/160
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個体名:(なし)
種族名:アイススライム Lv 5/30
状態 :魅了、飢餓
生命力:192/230
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『感染? 随分とえげつなそうなもん振りまいてくれるじゃねえか。アイススライムに効かねえのはなんでだ?』
効果範囲を確かめるように一歩、二歩と後ろに下がり、様子を伺う。
すると、自らの死を悟ったデスマンドレイクがなりふり構わず奇声をあげながら突っ込んできた。
『《叫走》を使ってるみてぇだが十分遅え、返り討ちに…』
「キィシェェェエエ!!!」
『なっ?!?』
余裕を持って迎撃しようとしたその時、デスマンドレイクは一際大きく叫び声をあげ、俺を威嚇する。
怖くとも何ともないはずなのに、足がガタガタと震える程に奴が恐ろしく、ベルと出会ったあの瞬間が脳に過ぎった。
思考が乱れ、堪えがたい恐怖に抗うように蹲って耳と目を塞ぐと、数秒して俺の小さな体は宙に弾き飛ばされる。
その直後、数匹のレッサーマイセリアによる伸びた腕を使った鞭攻撃、数多のアイススライムによる氷礫が束になって俺を捉えた。
『ぐぁああ!!』
大きく後ろに吹き飛ばされた俺は、目も覚めるような痛みで微かに正気を取り戻し、自身の状況を確認した。
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個体名:ローデント=オーヴィーズ
種族名:スモールジャンピングラット Lv 1/30
状態 :恐怖(小)、感染(小)、氷傷
生命力:623/1110
精神力:769/850
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俺は急いで治癒技能を発動させつつ、迫る魔物達から距離をとり、不整脈の様に脈打つ心臓を何とか宥めた。
『ゲホッゲホッ、やりたい放題しやがって最悪の気分だ……ヤなもんも思い出しちまったし、あの根っこ野郎だけは許しちゃおけねぇ』
《清めの波動》が効いたのか次第に恐怖感は薄れ、いつも通りの冷静さが帰ってくる。これだけの数が居て、未だ一匹たりとも魔物は倒せていなかったが、落ち着いた脳みそは確かな成果に喜びを告げていた。
何せ、あれだけの隙を晒して、奴らの技能という技能をノーガードで受けきってもダメージはたったの四割程度なのだ(数箇所は骨が折れてるしバカ程痛ぇけどなっ!)。
状態異常もわんさか付いて来るが、それだって《清めの波動》で対処が可能。
唯一、恐怖の状態異常が厄介だが、事前に分かってさえいれば耐え切れるという自信があった。自慢ではないが、俺はベルという根源的恐怖を乗り越えて今ここにいるのだ。
根っこ程度で今更びびってたまるものか。
『つまりここじゃあ……俺が格上だ』
強者が弱者を甚振る方法などもう飽きる程見てきた。
工夫も知略も何一つ必要ない。
ただその強さを武器に正々堂々戦えばいいのだ。
ゆえに、ここから先は拮抗した戦闘ではない。
強者による塵殺だ。
『覚悟はできてんだろうなぁ魔物どもっ! おめぇ達に運命に逆らう気概はあるかっ?』
《運命の反逆者》は己に降りかかった苦難を懐かしむ様に高らかに問いかける。
血で血を洗う骨肉の戦い、その火蓋がたった今切られた。
日常描写もさることながら戦闘描写がこんなに難しいとは……。
できる限り毎日更新は続けたいのですが、明日に急遽休日出勤が入ってしまい最新話の更新をするのは厳しそうです。
代わりにといってはなんですが、書き溜めていた一章の番外編を更新しようと思います。
本編とは関係ないので読まずとも大丈夫ですが、よろしければお楽しみください。
番外編リンク:https://ncode.syosetu.com/n0746me/




