トラウムの助言
「ねー、まだー?」
ウィンディが、服を着替えるために別室に入ったラオトに対して退屈そうに言う
「ああもうちょっとだ」
それから数分後、綺麗な緑の服を着用し、右手に杖を、左手に瓶を持ったラオトが出てきた
「どうだ」
ラオトは杖をしっかりと握り決めポーズをしている
「おー以外と似合っているじゃない」
「良いじゃないかラオト君」
「そうか?」
二人に褒められラオトは照れていた、そんな中、トラウムがラオトの持っている瓶を見ながら聞いてきた
「ところでラオト君、君はその瓶をずっと大事に持っているようだけど、それは何だい?」
「この瓶か?」
そう言うとラオトは瓶の蓋を開けトラウムに瓶の中身を見せた
「この粉は、、、」
トラウムが興味深そうに瓶の中の粉を見ている
「これは塩だよ」
「塩、、、」
「ついついここまで持って来ちゃったけど、使い道が無くてちょっと困っているんだ」
それを聞いたトラウムは何かを思いついたようにハッとした
「ラオト君、私から一つ提案があるんだ」
「提案?」
「君の持っている塩を私に売ってくれないか」
「え?この塩を?」
「そうだ、君は塩がどれくらいの価値があるかを知っているかね」
塩の価値、、、確かウィンディと初めて会った時も「塩は希少」とか言ってたような
「見た限り、その瓶には100gほどの塩が入っている、それ程の塩を買うには大体1000万カウリィ程かかるだろう」
「1000万カウリィ!?ってどれくらい凄いんだ?」
「うーむ、大体一年間は何も収入が無くても贅沢出来るだろう」
カウリィ、やはりこの世界にも通貨があったようだ、俺が元いた世界の通貨と価値に差が無いか心配だったが、どうやら大体同じらしい
「トラウムさん、1000万カウリィとこの塩を交換してくれるのか!」
「ああ、もちろんだとも、それを聞いたと言う事は、ラオト君も大丈夫だね」
「ああ、もちろんだ」
それを聞いたトラウムは嬉しそうな表情をした
「交渉成立だ、少し待っていてくれ」
そう言うとトラウムは部屋を出ていった、ふと横を見たら、ウィンディが安堵の表情をしていた
「良かったーこれで一番心配だった資金不足は解消されたね」
「ああそうだな、ていうか、もしトラウムさんが塩を交換してくれなかったらどうやって旅をするつもりだったんだ?」
それを聞いたウィンディは険しい表情をした
「その場合は行く先々でクエストを受けるか野宿だね、砂漠地帯で野宿した時なんて、砂が吹き荒れたり寒かったりで大変だったなぁ、あ、あの森で野宿した時なんて、、、」
ウィンディは相当嫌な思い出を思い出したようで、
「ヒィー」と言いながら身震いをした
「けど、今回の旅とは無縁の話だね、今回は宿でぐっすりと寝られる」
ウィンディは嬉しそうな表情をした、その時トラウムが小さなポーチを持って帰ってきた
「お待たせしました、ラオト君このポーチをどうぞ」
そう言うとトラウムはポーチを渡した、渡されたポーチを開けてみると中身は空だった
「何だこのポーチ?中には何も入ってないけど」
「そのポーチの使い方を説明しましょう、ラオト君、3を思い浮かべてみて下さい」
そう言われ、ラオトは心の中で3を思い浮かべた、数字の3、漢字の三、三匹の羊、、、するとさっきまで何も無かったはずのポーチの中に3枚の銅色に輝く円盤が入っていた
「おぉ凄え!」
「ラオト君、次は1万を思い浮かべて下さい」
ラオトは心の中で1万を思い浮かべた、数字の10000、漢字の一万、100×100は1万、、、その時、ポーチの中にはさっきの銅色の円盤の他に金色に輝く円盤が入っていた
「よし、ちゃんと動作してますね、そのポーチに出したい金額を思い浮かべれば1000万カウリィ分の通貨が出て来ます、ただし、一度にポーチの中に出せるのは100枚までです」
「それと、もうラオト君も気づいていると思いますが、銅色が1カウリィ、金色が1万カウリィの硬貨です、それと、、、」
トラウムはポケットから一枚の銀色の硬貨を取り出した
「こちらが1千カウリィの硬貨です、もちろんこれもそのポーチで出せますよ、それと、硬貨をしまいたい時は、ポーチに硬貨を入れ、0と思い浮かべて下さい」
ラオトは0を思い浮かべた、0、零、O、その瞬間、ポーチに入っていたはずの硬貨が全て無くなっていた
「安心してください、消えた訳ではありません、そのポーチに収納されただけです」
「なるほど、教えてくれてありがとな、それじゃあこれ」
そう言いラオトは手に持っていた瓶をトラウムへ渡した
「ありがとうございます」
トラウムがそう言った時「グー」とラオトのお腹がなった
「そういえば、もうお昼ですね、お二人はこの後の予定などはありますか?」
「いや、特に無いな」
「そうですか、宜しければ一緒にお食事でもどうでしょうか」
「え!良いんですか!」
ウィンディが嬉しそうな声をあげた
「ええ、もちろんです、ラオト君はどうでしょうか」
「俺も大丈夫だ」
「ありがとうございます」
二人はトラウムに食堂に連れてこられた、その後、トラウムは「少し急用が出来た」と言い、席を外した、食堂は貸切のようで料理をウキウキで待っているウィンディとラオトが残された
「ウィンディ、ウキウキだな」
「まぁね、この町の野菜や果物はすっごく新鮮で美味しいって評判なんだよ」
「そうか、野菜かぁ」
「もしかしてラオト、野菜嫌い?」
「、、、まあな」
「もう、お子ちゃまだなぁ」
「そう言うウィンディは野菜好きなのか?」
「うーん好きって訳じゃ無いけど、新鮮な野菜を食べられるのはこの町くらいだからね」
そんな事を話している時、トラウムが食堂に入って来た
「すまない、遅くなってしまった、全く、戦争は厄介だね」
トラウムは苦笑いをしている
「戦争、、、獣人同盟のですか?」
ウィンディが興味深そうに聞く
「あぁそうだ、我が町の兵を貸して欲しいとしつこくてな」
「まぁ、この町の魔法使いは精鋭揃いですからね」
「まぁな、確かにこの町の兵を送れば、戦況は動くかもしれない、しかし兵を危険に晒したくはないからな」
「やっぱり町長って大変なんですね」
獣人同盟や戦争という見慣れない単語にラオトは付いていけなかった、トラウムはその様子に気がついた
「おっと失礼、二人で盛り上がってしまった、ラオト君も入れるような話題にするべきだったね」
「それじゃあ話題を変えよう、門番から話を聞いたのだが、君達は魔王城へ行くそうじゃないか」
「ああ、その予定だ」
「ウィンディ君は知っていると思うが、魔王城へ行くには、まず全部で10人いる魔王軍幹部達の本拠地へ行かなくてはならない」
「え?何でだ?」
「魔王城には特殊な結界や敵が侵入出来なくなる魔法が多数貼られている、それらを解除するには、結界魔法の陣がある本拠地8ヶ所の制覇と、他の2ヶ所にいる幹部本人を倒す必要があるのだ」
「私達が出会ったドロトもその一人よ、ドロトは陣がある本拠地を守っているタイプの幹部なの、だから基本、本拠地から動かないはずだったんだけど」
「ドロトは恐らく、獣人同盟の戦場へ向かっている最中だったのだろう、グリーフ大森林は彼の本拠地がある沼地から獣人同盟の戦場へ行く際の通り道だからな」
「なるほど、魔王軍は獣人同盟の対処に力を入れているのね、それってつまり」
「あぁ、他の魔王軍幹部も動いている可能性があるのだ、つまり今は陣のある本拠地が手薄になっている可能性がある」
「なるほどな、つまり魔王城へ行くには今出発するのが良いって事か」
「あぁ、実際他の町周辺でも他の幹部を見たと言う情報もある」
「なるほど、じゃあもうさっそく出発した方が良さそうだな」
「えぇそうね」
ラオトとウィンディは出発する決心をした
カウリィ
この世界の主要な通貨、銅が一、銀が千、金が一万カウリィとなる(値段の扱いは一円=一カウリィ)
遥か昔、まだ物々交換をしていた時代にとある一人の男により生み出された画期的な発明の一つ、今ではすっかり生活に馴染み、どの町でも使われる一般的な通貨になった。偽造対策のため、この世界で一人しか使えない特殊な魔法によって加工されており、偽造するのはとても困難である




