お呼び出し
アデルに見送られ、魔法店を出たその瞬間、目の前には美しい緑色のローブを着用し、手には杖を持ったニ人の若者が立っていた。そのローブをよく見てみると、胸元にグリンティアの至る所に立てられている旗と同じ模様が入れられており、恐らく目の前の二人はこの町の正式な関係者という事が分かった。その兵士達は後ろの魔法店に用がある訳ではない事がはっきりと分かるほど、明らかにラオトとウィンディを見ていた。
「ウィンディ様とそのお連れ様ですね」
その優しい声は明らかに敵意を含んでおらず、ラオト達を捕まえにきたのではない事がわかり、ひとまずラオトとウィンディは安心した。
「ええ、そうだけど、、、私達に何か用?」
「トラウム様がお呼びです、我々にご同行願います」
それを聞いたウィンディは、思わず驚いた顔をした。
「え、トラウムさんが?」
「はい、話したい事があるそうです」
「そう、、、分かった、それじゃあついて行くわ」
それを聞いた若者達は静かに頷くと、グリンティアの中央にある大木に向かって歩き始めた。その後ろをウィンディとラオトの二人もついて行った。
話についていけず、とりあえず流れに身を任せていたラオトは、今のうちに分からなかった事についてウィンディに聞くことにした。
「なぁ、この人達は誰だ?」
「この人達はこの町の兵士だね」
「兵士?兵士って鎧とかを着ているもんじゃないのか?」
「そういう装備にしている町もあるけど、この町の兵士はこういう魔法に特化した服装なの、この町は魔法が主力だからね」
「へぇ、それじゃあ他の町は違う装備なんだな」
「そう、これから冒険して行くうちに見れると思うよ」
「楽しみだな!」
ラオトは今後の出会いに期待を高まらせつつ、もう一つの気になっていた単語についてウィンディに尋ねた。
「もう一つ聞いても良いか?」
「うん、なんでも言って!」
「トラウムって誰だ?」
「この町の町長よ、私とメレアにグリーフ大森林の魔獣討伐の依頼を出した人でもあるの。今は西側の戦争で忙しい筈なんだけど、そんな中、私達に何のようだろう」
ラオトはなんとなくメレアに関する事を言われる気がしており、恐らくウィンディもそう思っているだろう。そんな事を考えていると、なんだか二人は気まずくなってしまった。
兵士達と共に町の中央にある大木のような建物に着いた二人は、兵士達に続いてその中へと入って行った。その建物の中はありとあらゆる物が植物でできており、まさに緑の町と言うのに相応しかった。その後は兵士達と共に葉っぱでできた階段を上がっていき、恐らくこの建物の最上階と思われる階層までやってきた。最上階の階段を上がると、すぐ目の前に大きな扉が待っていた。
「着きました、この先でトラウム様がお待ちです」
兵士が案内した扉は、グリンティアらしい植物の装飾が沢山施された綺麗な扉だった。兵士が扉を開けている間に、ラオト達は恐る恐る扉の先へと進んでいった。扉の先は広い部屋となっており、部屋の壁には様々な表彰状のような物や、様々な人物の肖像画が壁に掛けられていた。その下にある棚には一般の店には売っていないような見事な水晶やアクセサリーが飾られており、この部屋の特別感を増幅させていた。部屋の奥には大きな机が置かれており、その奥には一人の男が座っていた。その男はラオト達が入ってくると、目を合わせて挨拶をした後、机の奥の扉に手をかけた。
「ウィンディ君、それに君もよく来てくれた、感謝する。二人共、こっちに付いてきてくれ」
男が扉を開けると、その先は外の大きな木の枝の上に繋がっていた。その枝はきちんと整備されており、人が立てるように平らになっている表面、端には落下防止の柵が立てられており、そこからはグリンティア全体を眺める事ができた。
「さあ、二人とも座ってくれ」
トラウムと共に、二人はグリンティアの景色がよく見える場所に用意されていた椅子に座った。
「自己紹介が遅れて申し訳ない、私の名はトラウム、グリンティアの町長を務めている。ウィンディ君と会うのは2回目だが、君と会うのは初めてだね、どうかよろしく」
そう言った後、トラウムは申し訳なさそうな顔で二人を見つめた。
「改めて言おう、二人とも、呼び出しに応じてくれて感謝する。それとウィンディ君、君には謝りたい事がある」
「謝りたい事、、、」
トラウムは椅子から立ち上がると、ウィンディの目の前へとやって来た。すると、深々と頭を下げ、誠心誠意の謝罪をした。
「私がウィンディ君とメレア君に魔獣討伐の依頼を出さなければ、メレア君が行方不明にならずに済んだというのに、、、本当に申し訳ない」
ウィンディは急いで頭を下げるトラウムを止めた。
「いやいや、トラウムさんが謝る事じゃないですよ、私がちゃんとメレアと一緒にいれば良かったんです」
「本当に申し訳ない、、、」
トラウムは再び深々と頭を下げた後、元いた椅子へと戻っていった。その様子は、とても一つの町の町長とは思えない程に覇気がなかった。椅子に座ったトラウムは、今度はラオトに話しかけた。
「君が門番の言っていた男の子だね、初めまして、名前はなんて言うんだい?」
「ラオトって言います」
「ラオト君、いい名前だね、君達は魔法店に居たようだけど、何をしていたんだい?」
「ああ、俺の魔力量の調査をしていたんです」
「魔力量の調査?という事は、職業の選択はまだなのかな?君の使える属性を教えてくれないかい?」
「土属性です」
「土属性、、、なるほど、いい属性だ、何かやりたいと思う職業などはあるかい?」
「それが、まだどんな職業があるか分からないんです」
「おっとすまない、どんな職業があるかも言わずにやりたい職業を聞くのは、少し野暮だったね」
そう言うとトラウムは一度部屋に戻り、一冊の分厚い本を持ってきた。
「これを見てくれ」
そう言うとトラウムは本を開き、とあるページをラオトに見せた。そこには土属性についてが詳しく書かれており、中には土属性と相性の良い職業が書かれていた。
「ここに土属性と相性の良い職業の一覧が書かれている。気になる物があったら何でも聞いてくれ」
そう言われ、ラオトはそのページに書かれた文章をじっくりと見た。
「(重戦士、重騎士、守護者、ゴーレム使い、、、どうやら、土属性はタンク系や、機動力が低い代わりに重い一撃を入れるタイプが多いようだな、けど俺はそんなものには興味ない、こんなファンタジーな世界に来たら、やりたい職業はただ一つ!)」
ラオトは、この土属性用のページには書かれていないあの職業の名前を発した。
「魔法使い」
「、、、え?」
「俺は魔法使いになりたい」
魔法使いという、土属性のページには書かれていない職業を急にラオトが口にした事に、ウィンディはとても驚いた様子だった。そんなウィンディとは対称的に、トラウムは取り乱さずに、静かにラオトを見つめているだけだった。
「魔法使い?土属性と相性の良い職業の中に魔法使いは入ってないでしょ、何で急に?」
「良いだろ、魔法も使えるようになったし俺は魔法使いをやってみたいんだ!」
ウィンディは呆れた様子で、土属性の魔法使いについて説明した。
「あのねラオト、土属性の魔法使いって本当に少ないんだよ、魔法を覚えたくても、他の町に土属性の魔法書があるとは限らないんだよ!」
「良いんだよ、その時は完全に自力で習得するから」
「自力って、それめちゃめちゃ大変なんだよ!」
「、、、フフ」
その時、今まで黙っていたトラウムが、いきなり大きな声で笑い始めた。
「ハハハハハハ!」
突然笑い出したトラウムに、ラオトとウィンディは困惑した。
「え、どうしたのトラウムさん?」
「やはりか!ラオト君、キミは魔法使いを選ぶと思っていたよ!」
「え?」
トラウムは興味深そうにラオトを見つめた。
「ラオト君、本当に魔法使いで良いんだね、一度決めた職業を変える事は難しいよ」
ラオトは一切の迷いなくトラウムに返事を返した。
「ああ、俺は魔法使いになりたい」
ラオトの答えを聞いたトラウムの顔は、どこか嬉しそうだった。
「分かった、それじゃあ、そんなラオト君にいい物をあげよう、二人ともついて来てくれ」
二人はトラウムに連れられ、厳重な作りになっている部屋の前へとやってきた。トラウムが魔法を使い扉の結界を解除すると、扉はゆっくりと開き始めた。扉の先は小さな部屋となっており、そこにはグリンティアの要素を詰め込んだような鮮やかな緑の服と、綺麗な緑色の宝石が埋め込まれた杖が厳重に保管されていた。部屋に入ると、トラウムはその服と杖を見ながら、ラオトに話しかけた。
「ラオト君、君にこの服と杖をあげよう」
「え!?」
明らかに普通の物では無いオーラを放っている服と杖を急にあげると言われたラオトとウィンディは、部屋から飛び出すほど驚いた。
「え!?良いんですか!?この服と杖から、物凄い力を感じるんですが、、、」
「あぁ良いんだよ、確かにこれにはすごい価値がある。しかし、私が持っていても意味が無いからね、それに、ラオト君になら何の躊躇もなくあげられる」
「え、何でですか?」
「それは、、、私がラオト君に期待しているからだ」
「(期待している?まだ期待されるような事何もしていないと思うけど、、、)」
そんな事を考えていたラオトだったが、トラウムに真剣な眼差しで見つめられてしまい、結局、トラウムの要望を聞くしかなかった。
「ありがとうございますトラウムさん!それじゃあ使わさせてもらいます!
「ありがとう」
そう言ったトラウムの顔は嬉しそうだった。
トラウム
好きな物、読書 歴史 とあるおとぎ話
嫌いな物、魔王 冬
職業 町長
使用属性 草
先祖代々受け継がれてきたグリンティア町長の家系の87代目、小さい頃から読書が好きで非常に博識、昔母親が読み聞かせてくれたとあるおとぎ話が原因で読書が好きになった、しかしその母親もトラウムが成熟する前に、前町長の父親と一緒に魔王軍に殺されてしまった、それ以降普段は表に出さないが、心の奥底では深く魔王軍を恨んでいる




